新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.048 ライカIIIg ミッドランド

新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.048 ライカIIIg ミッドランド

はじめに

皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという有り難い企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。さて、今日はどんなアイテムを見せてもらえるでしょうか?

ライカフェローのお薦めは?

お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店でライカフェローの肩書を持つ丸山さん。Vol.047から続投していただく展開になりました。とはいえ放送業界で“2本録り”と呼ばれる同日に2コンテンツを収録するダンドリではなく、日を改めて取材をしています。今回はどんなライカなのか、いつものカウンター席でカメラの登場を待ちます。

クローム仕上げだけれど珍しいIIIg

「今日ご紹介するのはミッドランドボディとライカビットのミッドランド製でございます」と、丸山さんが差し出してくれたカメラはバルナック型ライカの最終モデルIIIgでした。前回ご紹介いただいたのは泣く子も黙るスウエーデン軍用のライカIIIgブラックモデルでしたが、今回のライカは普通に見えるクローム仕上げです。これって、丸山さんがお薦めしてくれるということはレアなモデルなんですよね?

「はい。特徴は、それぞれカナダのオンタリオ工場で作られたことで、それ以外はドイツ製のIIIg、ドイツ製のビットと同じものです。とはいえ生産台数がミッドランドの方が極端に少ないということで希少性があります」

カナダで組み立てられたライカ?

「この個体は、ボディもそれほど使われていなくてキレイな状態です。1959年に934001〜934200まで200台がカナダのオンタリオで生産されたロットの中のものです。旧西ドイツ時代のエルンスト・ライツ社は、北米市場への対応などを目的に1952年にカナダのオンタリオ州ミッドランドにエルンスト・ライツ・カナディアンリミテッドを設立したと記録されています。これが後のELCANになります」

ふむふむ。ELCAN(エルカン)というと軍用ライカのKE-7Aとセットになっていたレンズの名前を真っ先に思い浮かべますが、エルンスト・ライツ社が立ち上げたカナダ法人の略称だったのですね。

生産地で異なるトップカバーの刻印

では、ライカIIIgボディのカナダ生産モデルとドイツ生産モデルを見比べてみましょう。どちらもライカIIIgであることに変わりはありませんが、左のカナダ産はErnst Leitz Canada Limited(すなわちELCAN)Midland Ontarioと刻印されています。右のドイツ産はDBP ERNST LEITZ GMBH WETZLAR GERMANY とお馴染みの刻印が読み取れます。ちなみにDBPとは西ドイツ連邦特許で、GMBHは有限会社を示します。

ライカビットも生産地で刻印が異なる

前提としてライカビットって何?という方もいらっしゃるかと思いますのでご説明します。ライカビットとは、ノーマル仕様の底蓋と換装するオプションのアクセサリーです。ライカにつけると厚底スニーカーみたいに見た目が変化するだけでなく、底面に仕込まれたトリガーレバーを引き出して左手を握る動作をするとフィルムが1コマ巻き上げられるという便利グッズです。特にバルナック型ライカではフィルム巻き上げがノブ式なので安定して速写するには効果抜群なのです。

丸山さんによれば「ライカビットにも同じくミッドランド刻印のものが存在しますが、ミッドランド刻印のボディよりも生産台数が少なく、さらに希少です」とのこと。

できれば生産国を合わせて使いたい

左がカナダ産のライカIIIg とカナダ産のライカビット。右がドイツ産のライカIIIgとドイツ産のライカビットです。同じ部品で組み立てられているので、どちらのビットも鋭いトリガーレバーを引き出した際の精悍さは同じ。このトリガーを出したまま転倒したりすると危険なので、取り扱いに注意が必要なのはカナダ産もドイツ産も同じです。

「ライカIIIgは1956〜1960年までの間で合計43925台が製造されました。その中でミッドランド製は1400台だけです。左のカメラは1958年に製造された200台のうちの1台。同年にドイツ製は933001~のロットで1800台が製造されています」とのこと。

できればレンズもカナダ産で合わせたい

ボディやアクセサリーだけでなく、ライカのレンズにもカナダ産がありますよね?

「カナダのオンタリオ工場はご存知の通り名作と呼ばれるレンズをウォルター・マンドラー博士が設計していて、後世には軍用レンズなどを輩出する拠点になっていきます。カナダ工場で養われた高度な光学技術・新素材の活用は、後のドイツにおけるライカ製品の進化にも大きく貢献しました」と静かに語りながら、今回のお薦めライカに似合うレンズとして丸山さんが用意してくれたのは、2本のズミクロン35mm F2でした。

「左がドイツ製造の品物で、右がカナダで製造されたズミクロン35ミリF2の通称8枚玉のスクリューマウントです。そのファーストモデルは確か577本しかないといわれており希少ですが、今回はその後にMLリングを装着した形で発売された最短撮影距離0.7mの1962年製造のバージョンです」

まとめ

ミッドランド刻印のカナダ産ライカはどのようなニーズから生み出されたのでしょう? 諸説ありますがライカにとって大きな市場であったアメリカ合衆国への輸出に際して、当時の西ドイツから輸出する場合に光学機器にかかる関税は1950年代で15~20%。1970年代になっても9~12%でした。それに対してカナダからの輸入品は基本的に無税。ということで関税対策としてのカナダ産ライカの嚆矢としてライカIIIgが少数ながら生産されたということかと思います。このライカ、どんな方に使っていただきたいですか?

「このセットは、コレクターの方向けですね。ウエッツラー製のセットと一緒に並べて楽しめます。あとは、カナダが好きな人ですね。インバウンドのお客様でカナダ出身なのでジャーマニーではなくカナダ製造のズミクロン35ミリF2が欲しいと探している方がいらっしゃったので、そんな方に『カナダ産のバルナック型ライカを探しているんだけれど?』と尋ねられたらお薦めできます」

その流れに乗るならば、金田さんという苗字でカネダさんではなくカナダさんと読む方にもお薦めできる逸品なのではないかと思ったりした次第です。

 

■ご紹介のカメラとレンズ
ライカIIIg ミッドランド カナダ製ライカビットのセット 3,300,000円
※価格は取材時点の税込み価格です

■お薦めしてくれた人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:ライカフェロー 丸山豊
1973年生まれ。愛用のカメラはM4 ブラックペイント

■執筆者:ガンダーラ上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。

 

新宿 北村写真機店 6階ヴィンテージサロン

撮影協力:新宿 北村写真機店6階ヴィンテージカメラサロン

新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。

 

 

 

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