新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.047 ライカIIIg スウェーデン軍用モデル

新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.047 ライカIIIg スウェーデン軍用モデル

はじめに

皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという有り難い企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。さて、今日はどんなアイテムを見せてもらえるでしょうか?

ライカフェローのお薦めは?

お薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店でライカフェローの肩書を持つ丸山さん。実はこの取材、いつもの感じとは異なり緊急発進的なスケジュールで組まれたもの。ということは、お店に出したらすぐに買い手がついてしまうような激レアな物件なのではという予感を胸に、いつものカウンター席でカメラの登場を待ちます。

製造数125台の軍用ライカ

「今日ご紹介するのは‥」と、普段とは違ってカメラの背面を見せながら丸山さんが差し出してくれたカメラは、黒塗りのバルナック型ライカでした。これって、もしかして?

「はい、ライカIIIgスウェーデン軍用ブラックペイントモデルになります。特徴はご覧のとおりブラックペイント仕上げで、ライカIIIgのブラックペイントはこの125台のスウェーデン軍用モデルしかありません。もうひとつの特徴としてはスウェーデン軍用品を示す3つの王冠マークがボディ背面に刻印されています」

スウェーデンの国章が刻まれたボディ

それで背面からの登場だったのか! と感心しながら観察すれば、確かに軍艦部のシンクロソケットの右側に3つの王冠が逆三角形の配置で刻印されています。

「スリークラウンのライカIIIgは当店でも開店の初期に店頭に並び、それ以来今回が久々の登場です。その品物を買われたお客様は軍用カメラの愛好家ではなく、自分の生まれ年である1960年製のライカをとにかく集めている方でした。ちなみに前回のライツオークションでは、箱付きの未使用品に近い同じモデルが45万6千ユーロで落札されたということでした」

ということで、ライカ蒐集家であれば知らないものはいない程に有名なスウェーデン軍用のライカIIIgですが、トレ・クローノーと呼ばれる3つの王冠はスウェーデンの略式国章でアイスホッケーの男子代表チームのユニホームからスウェーデン軍用機までいろんな所で見ることができます。不肖ガンダーラはスリークラウンのスタンプが服の内側にあるというだけの理由で欲しくなり、オーバーサイズのスウェーデン軍用コートの放出品を所有していたことがあります。

セットされたエルマーも軍用品

「エルマーの50ミリF2.8もスウェーデン軍用に出荷されたものになります」と、ここで初めてカメラの正面を拝見することに。私の記憶が正しければ、スウェーデン軍用のライカにはIIIgの前に納入されたモデルとしてIIIfもありまして、そのセットのレンズはブラックペイントだったはずですよね?

「このモデルの前には、ご指摘どおり1956年に納品されたIIIfのブラックペイントがあり、レンズも黒塗りでした。スウエーデン軍はブラックペイントのライカが好きだったんでしょうかね? IIIfはシャッターボタンもレンズもブラックペイントで、オールブラックという呼び方にふさわしいものですが、IIIgではシャッターボタンもレンズもシルバー仕上げのままで若干こだわりを捨てたのか?という部分もあります。ただしIIIfにはスリークラウンの刻印がないので、スリークラウンが入っているのはIIIgだけです」

レンズにもスリークラウンの刻印

「セットのレンズにもスリークラウンのマークが入っているのが特徴で、これが入っていない場合はボディとの一致がないことになります。当時はこのエルマー50ミリF2.8の他に、ズマロン35ミリF2.8とエルマー90ミリF4のスリークラウン付きがありました。ライカ通の噂では、スリークラウンのズマロン35ミリF2.8は30本程度しかないのではないかということです。あくまで噂なので真実は分かりませんが、僕もお客様がお持ちのズマロンを1回見ただけで、あとはエルマーが付いている個体しか見たことがないです」

バルナック型最終モデルの使い勝手

「IIIg自体は、皆さんご承知のとおりM3が出た後に最後のバルナックとして製造されたモデルなので、とても使いやすくなっています。それまでのバルナック型ライカでは50ミリの撮影範囲が見えるだけでしたがIIIgではファインダー倍率も0.7倍と大きくなっていて、50ミリのブライトフレームに加え90ミリの撮影範囲も見えるのでバルナック型としては扱いやすくなっています。若干背が高くなりましたけれど最後のバルナックにふさわしく使いやすいモデルです」

後ろ姿が凛々しいブラック仕上げのボディ

こうして丸山さんのライカ講話をお聞きしてからライカIIIgスウェーデン軍用モデルの後ろ姿を拝見すると、ブラックペイントが標準品であった戦前のライカII型やIII型に比べてファインダーを充実させたことで背丈が伸び、凛々しい印象です。

「戦前のバルナック型ライカと比較するとシャッター速度も倍数系列で1/125や1/250秒の設定になったので現在の視点でも使いやすくなっています。あとは背面にフィルムガイドがついた唯一のバルナックライカというのもIIIgの特徴です」

まとめ

「こちらのIIIgは、1960年にライカからスウエーデン軍用として125台が製造・出荷されたものです。IIIgのブラックは、IIIgが生産完了する頃のロットで作られていますので、本当にバルナック型ライカが終焉を迎えるタイミングで出荷された記念碑的なモデルでもあります」とのこと。

ブラックペイントのライカM3の登場からほどなくしてスウェーデン軍用として納入されたブラックペイントのIIIg。軍隊での使用か、そのあとの民間人オーナーの手ずれによるものかは不明ですが、いい感じにペイントが剥がれて真鍮の地金の景色が見えています。
「背面のフィルムインジケーターディスクの剥がれ具合は激しいけれど、巻き上げノブなどはそれほどでもありません」

そして、欧米の方によく見られる両手でがっしりカメラをホールドする人が使ったと思われるペイントの剥がれ具合にも趣があります。
「そこが、いい味になっています。使いごろな外観なので、使いたいですよね」と静かに語る丸山さん。確かにこのライカは、文化財的な価値を重々承知しながらも個人的な写真を撮影する道具として使ってみたくなる雰囲気があります。

■ご紹介のカメラとレンズ
ライカIIIg スウェーデン軍用モデル エルマー5cm F2.8付き 価格550万円
※価格は取材時点の税込み価格です

■お薦めしてくれた人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:ライカフェロー 丸山豊
1973年生まれ。愛用のカメラはM4 ブラックペイント

■執筆者:ガンダーラ上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。

 

新宿 北村写真機店 6階ヴィンテージサロン

撮影協力:新宿 北村写真機店6階ヴィンテージカメラサロン

新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。

 

 

 

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