新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.011 ライカMP3 LHSA Special Edition Set

新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす|Vol.011 ライカMP3 LHSA Special Edition Set

はじめに

皆さんこんにちは。ライターのガンダーラ井上です。新宿 北村写真機店の6階にあるヴィンテージサロンのカウンターで、ライカをよく知るコンシェルジュお薦めの一品を見て、触らせていただけるという企画、『新宿 北村写真機店のカウンターで、お薦めライカを味わい尽くす』。毎回どんなライカが出てくるのか予測不能な展開を基本としてお届けしていますが、今回に限り何が出てくるのか予告させていただいた内容でお送りします。

コンシェルジュのお薦めは?

前回から引き続きお薦めライカを見立てていただいたのは、新宿 北村写真機店コンシェルジュの水谷さん。ライカMP3という2005年に製造された限定モデルが前回のトピックでしたが、ご紹介したのはボディのみ。実はこのモデルにはレンズとライカビットを組み合わせた特別なセットもあるということで、さっそく拝見することにします。

LHSA別注のライカMP3スペシャルエディションセット

「こちらがそのセットになります」と手渡されたライカMP3には、ボディと同色のレンズとライカビットが装着されていました。ライカMP3は、LHSA(ライカ ヒストリカル ソサエティ オブ アメリカ)という愛好家の団体が2005年に特別注文した限定モデルです。その生産数はシルバーとブラックが各500台で合計1000台。そのうちレンズとライカビットが同梱されたものがシルバーとブラックが各375セット、合計750セットが世に送り出されたそうです。

ボディ単体での販売はシルバーとブラックが各125台で合計250台。販売当時、日本に入ってきたライカMP3はすべてがセット品だったそうで、シルバーとブラックが各150セット、合計300セットを輸入。すごい割合で日本市場がライカMP3を受け入れていたことが分かります。

古き良き時代のディテールを再現

ライカMP3スペシャルエディションセットの外観は、まさに古き良き時代のライカのディテールをよく再現しています。オリジナルのライカMPと同様に、トッププレートのパーツがマウント周辺部までエプロン状に伸びているのがシルバー仕上げだと明確に分かります。

このスタイルはバルナックライカからライカM3に受け継がれた様式ですが、M型ライカではライカM2以降のモデルでは省略されてスパッと直線的になります。ライカM3とライカM2の中間に位置するオリジナルのライカMPは、エプロン部分やファインダー対物側の外枠などはライカM3の意匠を継続しつつ、フィルムカウンターは剥き出しのディスク式というライカM2で採用される簡素な方法を採用している部分も再現されています。

MP3とオリジナルのMPを並べてみる

カメラの天面から、オリジナルのライカMPとライカMP3を観察してみましょう。アクセサリーシューにシンクロ接点があり、裏蓋に内蔵露出計用のフィルム感度設定のディスクがあるのがライカMP3(左)。アクセサリーシューに接点がなく、フラッシュバルブ用とストロボ用の2種のコネクターを備えているのがオリジナルのライカMP(右)です。

ところで、ライカMPとMP3の間にはライカMP2というモデルが存在したのですか? と水谷さんに尋ねると、どうやら後発のライカM2とライカビットMPをセットにしたモデルがライカMP2として登録されていた模様。ライカMP2と刻印された電動モータードライブ対応の特殊なライカM2も存在するようで、それはド珍品で滅多にお目にかかることができないモデルのようです。

LHSAマーク入りの新造型ライカビットMP

ライカMP3スペシャルエディションセットには、迅速にフィルム巻き上げができるライカビットが同梱されています。これはライカM4-2以降のモデルで装備されたモータードライブ用のカップリング機構を用いて手動のトリガーと連動させるもの。21世紀に登場した新造型ライカビットMですが、ライカM4-2、ライカMD-2、ライカM4-P、ライカM6およびライカM6TTLやライカM7でも使えます。

スペシャルエディションセットのライカビットはLHSAのロゴが入り、製品名の刻印もライカビットMではなくライカビットMPとなっています。

オリジナルのライカビットの使い心地

カメラの底蓋の代わりに取り付けて、トリガーをグイッと動かすだけで高速にフィルムが巻き上げられるライカビットは、バルナックライカの時代からあったアクセサリーです。その始祖はライカピストルと呼ばれるもので拳銃の引き金みたいな鍵状のトリガーが剥き出しのものでした。その後に登場したライカビットはトリガーが本体に収納できる仕様になり、それをライカビットMPも踏襲しています。

オリジナルのライカビットMPはフィルム巻上げスプールに回転動力を伝える仕組みなので感触が滑らかなのが特徴。でも引き出したトリガーは新造型のトリガーと比べて鋭利なシェイプで現在のPL(製造者責任)法の観点からは危うさを感じます。そもそもそんな法令が存在していたかどうかも怪しい時代の製品なので、万が一転んで体に刺さっても自己責任ということでお願いします。

非球面ズミルックスの特別限定モデル

この限定セットで注目すべきなのは、やはりレンズでしょう。優美なローレット加工が施された古式ゆかしい外観のズミルックス50mm。このレンズは2004年に登場した非球面レンズとフローティング機構を搭載した当時最新の仕様の光学系と機構を採用しながら、初代のズミルックス50mmをトリビュートしたスタイリングで仕上げているのです。

せっかくなので初代ズミルックス50mmとライカMP3スペシャルエディションセットに同梱されていた限定生産のレンズを並べてみると、かなりサイズ感が違うのが分かります。とはいえ光学系や機構の進化に伴って大型化したサイズをものともせず、初代の印象を損なうことなく再構築している手腕はさすがだと思います。

まとめ

ライカMP3スペシャルエディションセットは、ご覧のような豪華な赤い箱に収納されて販売されていました。それにしても本機を発注したLHSA(ライカ ヒストリカル ソサエティ オブ アメリカ)ってどんな団体なの?と思ってサーチしてみると、2023年にLSI(ライカソサエティー インターナショナル)と名称変更されているようです。

LSIはライカユーザーとコレクターの国際的な組織として20カ国以上からメンバーが集まっていて、今年の4月中旬には北米テネシー州ナッシュビルで撮影イベントがあるみたいです。毎年開催している撮影イベントにLHSA時代のこのカメラを持っていけば注目されること間違いなしですね。

 

■ご紹介のカメラとレンズ
・ライカMP3 Special edition set(中古AB)  価格550万円
※価格は取材時点での税込価格

■お薦めしてくれた人
ヴィンテージサロン コンシェルジュ:水谷浩之
1985年生まれ。憧れのカメラはM3J、M3ブラックペイント。

■写真家:ガンダーラ井上
ライター。1964年 東京・日本橋生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、松下電器(現パナソニック)宣伝事業部に13年間勤める。2002年に独立し、「monoマガジン」「BRUTUS」「Pen」「ENGINE」などの雑誌やwebの世界を泳ぎ回る。初めてのライカは幼馴染の父上が所蔵する膨大なコレクションから譲り受けたライカM4とズマロン35mmF2.8。著作「人生に必要な30の腕時計」(岩波書店)、「ツァイス&フォクトレンダーの作り方」(玄光社)など。企画、主筆を務めた「LEICA M11 Book」(玄光社)も発売中。

 

 

新宿 北村写真機店 6階ヴィンテージサロン

撮影協力:新宿 北村写真機店6階ヴィンテージカメラサロン

新宿 北村写真機店の6階ヴィンテージサロンでは、今回ご紹介した商品の他にもM3やM2、M4のブラックペイントなどの希少なブラックペイントのカメラ・レンズを見ることができます。
どのような機種が良いか分からない方もライカの知識を有するコンシェルジュがサポートしてくれますのでぜひ足を運んでみてください。

 

 

 

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