マクロで撮ろう!温室の花々|クニさんの季節の花レシピ
はじめに
夏は花の種類も少ないし暑いし、なかなか撮影に行こうという気分にもならないですよね。
近年の夏はどんどん気温が高くなって毎日のように熱中症アラートが出たりするので、ますます外へ出るのもためらわれます。
そんな季節にはぜひ、近くの温室へ行ってみましょう!
どこの温室でも共通するのは、野外の植物園などでは見られない珍しい花に出合えること。
外に出かけにくい季節だからこそ、普段なら見られない花たちの撮影を楽しんでみませんか。
まずはしっかり観察!
花撮影の基本のキ、まずはしっかり観察することです。
温室の花は珍しいものが多いので、ついつい撮らされてしまいがちです。
でもパッと撮ってしまう前に、その花のどこに魅力を感じたのか、なぜ撮りたいと思ったか、じっくり観察して言語化してみましょう。
難しく考える必要はありません。この色が可愛いな、とか、この部分が面白くて好きだな、とか、ちょっとした心の引っかかりを自分自身の言葉で認識できればOKです。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8・ISO400・Pro Neg.Hi
フラグミペディウム・カルルムという、蘭の仲間です。
何気なく見ていると「ああ、変わった形の花だなぁ」で終わってしまいます。
もちろんそれが悪いわけではありませんが、作品とするならもう少し突っ込んで観察したいものです。
で、真正面からよ~く見てみると……。
ハの字まゆげに垂れ目のロングヘア、ちょっと受け口の愛嬌のある顔に見えてきました。
一度そう思ってしまうと、もう顔以外には見えなくなるから不思議なものです(笑)
そんな愛嬌ある顔を、背景に木漏れ日を入れて撮りました。
特徴的なシベを主役に

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.7)・ISO400・Pro Neg.Hi
オオゴチョウという花です。
スラっと伸びたシベが特徴的ですね。また、ヒラヒラした花びらも魅力的です。
でも今回はシベや花びらの形ではなく、色に心惹かれました。
シベの先端にある、赤や黄色が入り混じった葯がとてもかわいらしく、その部分だけをクローズアップ。
花びらや伸びるシベを大きくボカし、主役の葯に視線が集まるように撮影しています。
こちらはサガリバナ。
サガリバナといえば石垣島や西表島に自生しているのが有名ですが、温室でも熱帯の展示室で咲かせているところがあります。
水面に落ちたサガリバナも幻想的ですが、あらゆる方向に縦横無尽に飛び回るシベも魅力的です。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8・ISO400・Pro Neg.Hi
そのシベを真横から見て、花火のように見立ててみました。
シベの動きが面白いな、だけでもじゅうぶんに主役になるのですが、このように何か他のものに見立ててイメージを作ると、より物語性の感じられる作品になりますよ。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.3)・ISO400・Pro Neg.Hi
こちらもシベを主役にした作品です。
まるで空中に突如開いたブラックホールの中から飛び出してきたかのようなイメージで撮影しました。
白くボケているのは花びら。
マクロの最短撮影距離付近までシベの先端に近づいて撮ることで、花びらが大きくボケてこのような不思議な絵になりました。
マクロの魅力は大きくクローズアップして撮れることですが、近づくことで得られる大きくやわらかなボケをどう活かすかが、また面白いところでもあります。
ちなみにこの花の名前は「ロテカ・ミクロフィラ」。どんな花なのか気になった方はぜひ調べてみてください。
クローズアップして邪魔な要素をカットしよう
こちらは皆さんおなじみの花ではないでしょうか。
ハワイアンのレイに使われるプルメリアです。
風車の羽のように花びらが重なった姿が特徴的ですが、黄色やピンクの色も美しい花です。
今回はその色のグラデーションに注目しました。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.7)・ISO400・ASTIA
花にググッと近づいて、花びらの重なった縁の部分にピントを合わせます。
黄色から白への花びらのグラデーションが大きくボケてふんわり幻想的な雰囲気に仕上がりました。
このときのポイントは、画面全体を花びらのグラデーションで埋め尽くすこと。
画面の隅に葉っぱの緑など別の要素が少し入っただけでも、やわらかな雰囲気が崩れてしまいます。
周囲の状況を活かして撮ろう
花そのものをクローズアップで撮ることも楽しいですが、周囲の雰囲気も入れて撮るとちょっと物語が感じられるような作品になりますよ。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+0.3)・ISO400・Pro Neg.Hi
可愛らしい小さな一輪の花。
この姿だけでも素敵ですが、周囲の花も画面に入れて構成してみました。
主役に選んだ花を、周囲の花の真ん中に小さめに配置しました。
可愛い花は小さく写すことで可愛らしい印象になります。
そこに大きめの花を写し込むことで、大人と子供という対比のイメージを表現しました。
大きな花を主役の両側に囲むように配置して、両親が小さな子供を見守っているような物語を思い浮かべていただくことを狙っています。
前ボケを活かして主役の印象を強めよう
ヒマラヤの青いケシと呼ばれる、メノコプシス。
淡いブルーの姿が美しい花です。
この花も、シベやひらひらの花びらに特徴があるのでいろいろな撮り方ができます。
ここではシベを主役にしつつ、特徴的なブルーの色をポイントにしてみました。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.0)・ISO400・Pro Neg.Hi
密集して咲いている場所ではないため、普通に撮ったのでは茎や周囲の煩雑なものが写り込み、主役の印象を弱めてしまいます。
そこで主役の花の手前にもう一輪の花を大きく入れてボカし、主役に視線が集まるようにしました。
ちょっとうつむき加減の花、なんとなく動物の顔のように見えてきました(笑)
高山に咲く花だけに、毛むくじゃらの雪男という感じでしょうか。
そんな想像もまた楽しいものですよ。
人工物も背景に活かそう
温室は室内にあるため、背景に周囲の壁など人工物が入りやすくなります。
花や風景など自然を撮るとき、人工物が入らないように注意して撮影される方も多いかと思います。
何かと嫌われがちな人工物ですが、うまく利用することで素敵な背景になってくれますよ。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.3)・ISO400・Pro Neg.Hi
柔らかな朝の陽射しを浴びて目覚めた花のファミリー。
……というイメージで撮りました。
でも背景の光は朝日でも木漏れ日でもありません。
正解は……?

温室の屋根の骨組みでした。
骨組みに反射した光を背景でボカすことで、まるで木漏れ日のようなイメージで撮影できました。
照明などの光もうまく取り込んであげると、いい背景として活かすことができます。
もちろん陽射しが差し込むような温室であれば、木漏れ日や葉っぱの反射などを使った野外での撮影でおなじみのテクニックも使えますよ。
背景ボケを活かして清々しい雰囲気を
高山植物のレンゲショウマ。
下向きに咲いたコロンとした形が可愛らしい花です。

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.7)・ISO400・Pro Neg.Hi
この温室では山の斜面をイメージして作られた斜面があり、見上げて撮るにはちょうどいい場所にレンゲショウマが咲いていました。
そこで、横から花の形を強調する撮り方ではなく、下から見上げて撮ってみました。
下から見上げることで背景に光のボケが入り、高山の夏らしい清々しい印象になったかな?と思います。
映り込みで不思議な印象に
水面に咲く睡蓮。
ですが、よ~く見ると何だかちょっと不思議な感じを覚えるかもしれません。

■撮影環境:絞り優先AE・F5.6(-0.3)・ISO400・Pro Neg.Hi
実はこの睡蓮、実体ではなく水面に映り込んだ花なのでした。
花の実体も写し込んで映り込みだとわかるようにする撮り方もありますが、ここではあえて実体はカットして映り込みだけで構成しています。
キラキラした光のボケも木漏れ日ではなく、水面に映り込んだ陽射しの反射です。
さらに上下逆転させることで、普通に撮っているようでなんだかちょっと不思議だなぁと思ってもらえるような仕掛けを狙いました。
カメラの機能を活かして撮ろう
ウサギゴケという小さな小さな花。
正面から見た姿がウサギの顔のように見えることから付いた名前です。可愛らしいですね!

■撮影環境:絞り優先AE・F2.8(+1.0)・ISO400・PROVIA
地面の低い場所に咲いているとても小さな花なので、普通に撮ると見下ろすような角度になります。
そうすると花と背景の距離が近くなるために背景が煩雑になり、肝心の主役が背景に埋もれて目立たなくなってしまいます。
そこで、花とのカメラの高さができるだけ同じになるように地面にカメラを置いて撮影しました。
花と平行のアングルで撮ることで背景が遠くなって大きくボケるので、主役の花の可愛らしい姿が浮き上がりました。
このようなポジションで撮影するときには、チルト液晶やバリアングル液晶が便利です。
液晶を回転させて見ることができるので、無理な体勢にならなくても自然な感覚で撮影ができますよ。
最後に
普段の野外での撮影とは違った花が見られるとはいえ、撮影の仕方や考え方は同じです。
しっかり観察して花の特徴を掴み、それをどう伝わるように表現するか考える。ここは変わりません。
暑い夏だからといって部屋にこもっていてはもったいない!
本来なら夏の高山に登らなければ見られないような花もお手軽に撮れたりしますので、ちょっと頑張って出かけてみる価値はありますよ!
この夏はぜひ、温室撮影を楽しんでみてください!
ここに挙げた撮り方はほんの一例です。
いろいろな撮影方法にチャレンジしながらぜひ自分なりの撮り方を見つけてくださいね!
■写真家:くにまさ ひろし
1971年生まれ。大阪在住。身近にあるちょっとした幸せ「プチ・ハピ」をテーマに、マクロレンズで花や虫たちの小さな世界をふんわりやさしく描く。各種写真教室では、マクロ撮影の面白さを楽しくわかりやすくお伝えすることを意識している。
写真展 2020年、2022年「花色の息吹」(大阪・東京)、2021年「花の鼓動~Life~」(大阪)、2023年、2024年、2025年、2026年「Nature Flowres」(東京)
写真集「花色の息吹」(風景写真出版)
日本風景写真家協会 会員
一般社団法人 日本写真講師協会認定インストラクター
フォトマスターEX(総合)
カメラのキタムラ写真教室/OM SYSTEMゼミ/リビングカルチャー倶楽部 他講師
クニさんの花マクロ写真塾 主宰











