シグマ 20-60mm F2.8-4 DG Contemporary レビュー|軽快で撮り歩くのが楽しくなる一本
はじめに
シグマからコンパクトな標準ズームレンズ「20-60mm F2.8-4 DG | Contemporary」が発表された。ライカLマウントとソニーEマウントが同時に発売されるが、今回はLマウントをいち早くお借りできたので、シグマ BFで実写してみた。
なおBFは私物のシルバーで、そこに黒いレンズを着けるといわゆる“パンダカラー”になってしまう。だが実際に装着してみると、思いのほかマッチしている。もちろんブラックボディのBFやfp/fp Lとは文句なしに合うだろうし、デザイン的にライカSLシリーズにもフィットしそうだ。

同じ焦点域のライバルより小型化
この20-60mmという焦点距離、既視感がある人も多いと思う。ライカLマウントでは2020年にパナソニックからLIMIX S 20-60mm F3.5-5.6(以下S-R2060)が発売されている。カバーする焦点距離はまったく同じだ。実は僕もシグマfpで使おうと発売日に購入したのだが、あまり出番がないまま手放してしまった。焦点距離だけを見れば散歩のお供にぴったりなのだが、今思えばシグマfpに装着するとどこかアンバランスだったように思う。後にLUMIXのボディーとともにお借りする機会もあったが、当然ながらボディーとのバランスもよく、デザインの影響の大きさを実感したのだった。
そんなS-R2060に比べて、本レンズは明るさが広角端で半段、望遠端では1段明るい。質量こそ385gと35gほど重くなっているものの、最大径は72.2mmで-5.2mm、全長は86mmで-1.2mmとダウンサイジングも実現している。シグマらしいすっきりとしたデザインもあるのか、実際には数値にスリムな印象を受ける。
なお、外装はシグマ製のズームレンズやArtライン単焦点レンズでは定番となったTSC(Thermally Stable Composite)。シグマ独自の特殊なポリカーボネートで、マット処理は金属とは違った高級感がある。また防塵防滴構造のほか、レンズ最前面には撥水防汚コートが施されている。

この軽さはαユーザーにも朗報
ソニーαシリーズのユーザーもこんなレンズの登場を待っていたのではないかと思う。ソニー純正レンズでもっともスペックが似通っているのがFE 20-70mm F4 Gで、これは僕も所有している。2本を並べてサイズ感を比べるとひと回り、胴体に限ればふた回りは違う。質量も約488gと約385g、実に103gの差がある。もちろん本レンズのほうが軽く、それは望遠端が10mm短いゆえなのだが、明るさを比べれば本レンズは広角側が1段明るい。さらに価格もリーズナブルだ。

■撮影環境:焦点距離20mm 1/100秒 絞りF4 ISO1000 WBオート(色残し) カラーモード ティールアンドオレンジ
FE 20-70mm F4 Gには絞りリングがある(本レンズにはない)ので、動画撮影などでそれを必要とする人は必然的にこちらを選ぶことになる。ただ動画でもたとえばα7Cシリーズをジンバルに載せて、なるべく身軽に……となると、本レンズが候補になってくる。α7C IIとFE 20-70mm F4 Gでは総重量が1kgを超えるが、本レンズなら約899g、ほぼ900g。ジンバルの選択肢が広がってくる。静止画でもα7Cシリーズのユーザーであれば、スリムな本レンズを選ぶほうが多いのではないだろうか。

■撮影環境:焦点距離20mm 1/1000秒 絞りF4 ISO320 WBオート カラーモード ティールアンドオレンジ

■撮影環境:焦点距離49mm 1/500秒 絞りF8 ISO1000 WBオート カラーモード FOVクラシックブルー
BFに装着して富士山へ
そんな本レンズをお借りした直後に、たまたま小学生の息子と富士山へ登る予定があった。BFと24mmF3.5 DG DN、35mmF2 DG DNを持っていく予定だったのだが、それに本レンズも加えることに。焦点距離が重なっているから本レンズだけで行くことも考えたのだが、3本まとめても約935g。それなら全部持っていってしまえ、とリュックに詰め込んだ。

■撮影環境:焦点距離20mm 1/50秒 絞りF4 ISO400 WBオート カラーモード ティールアンドオレンジ
EVFがなく背面液晶で撮るBFは、構えた両手を前に出す格好になる。右手でカメラをホールドしながら、左手でズームリングを回すというのは、脇を締めて顔に密着できる(=ホールド性が高い)EVF付きのカメラに比べるとやりにくい。質量が1kgを超えたり、全長が20cmを超えるようなレンズになると、構えるだけで腕力やコツがいるだろう。その点で本レンズは富士登山の途中といった厳しい環境でもストレスなく使うことができた。

■撮影環境:焦点距離37mm 1/400秒 絞りF8 ISO100 WBオート カラーモード ティールアンドオレンジ

■撮影環境:焦点距離47mm 1/1600秒 絞りF8 ISO100 WBオート カラーモード ティールアンドオレンジ
街歩きのお供にもぴったり
その後東京都内で僕が講師を務めるワークショップのロケハン(下見)があった。街を歩きながら作品を撮っていく内容で、ひとりコースを考えながら撮り歩いたのだが、20-60mmというズームレンジがしっくり来た。

■撮影環境:焦点距離35mm 1/250秒 絞りF8 ISO400 WBオート カラーモード スタンダード
僕個人はズームで焦点距離を合わせるより、自分の足で立ち位置を焦点距離に合わせていくタイプ。街を撮り歩くなら35mmと50mmの2本があればいい。ただズームはその中間も使えるし、35mmよりもうちょっと引きたい、あるいは50mmより寄りたいといったときに、プラスアルファがあるのは心強い。街を撮り歩くうえで20mmまで必要はないと思っていたのだが、いざその焦点距離を手中に収めると、使いたくなる場面も出てくる。

■撮影環境:焦点距離20mm 1/100秒 絞りF3.7 ISO3200 WBオート カラーモード スタンダード

■撮影環境:焦点距離41mm 1/200秒 絞りF3.8 ISO400 WBオート カラーモード スタンダード
シグマらしさが詰まった描写力
性能について解説すると、描写はとにかくシャープ。13群15枚のレンズ構成には、SLDガラスと非球面レンズが3枚ずつ使用されている。同じシグマ製でもArtラインの単焦点レンズで見られるような繊細さはさすがにないが、サイズや利便性を考えれば十分過ぎる性能だと思う。逆光にはもちろん強いし、光線状態によってはArtラインの単焦点レンズを思わせるような、リッチなトーンを描くこともある。

■撮影環境:焦点距離60mm 1/320秒 絞りF4 ISO400 WBオート カラーモード 709ルック

■撮影環境:焦点距離35mm 1/160秒 絞りF5.6 ISO1000 WBオート カラーモード ティールアンドオレンジ
AF駆動にはリニアモーターのHLAを採用。無音かつ高速で駆動し、動画撮影時にネックとなるフォーカスブリージング(画角変化)も抑えている。レンズに手ブレ補正機構は内蔵していないが、ボディー側に搭載したライカSLシリーズやLUMIXシリーズ、ソニーαシリーズで使えば、もちろんその恩恵を受けられる。
しっかりと寄れる点も◎
そして最後に「寄れる」という点もポイントだ。最短撮影距離は28mmで15.8cmともっとも短く、撮影倍率は1:2.6。その撮影倍率がもっとも高くなるのは35mmで、1:2.3となっている。望遠端の60mmでも25cmまで寄れ、撮影倍率は1:2.9と高い。

■撮影環境:焦点距離60mm 1/500秒 絞りF4 ISO1000 WBオート カラーモード ティールアンドオレンジ
また、シグマの寄れるレンズに見られる傾向だが、近接時は球面収差が残り、描写はかなり柔らかい。そもそも近接時は被写界深度が極端に浅いので、シャープに撮りたいのなら必然的に絞りを絞ることになる。もちろん1~2段絞れば球面収差は消え、かなりシャープに写る。最短撮影距離を長く取れば描写性能も高くはなるが、それよりもユーザーの利便性や選択肢を広げるという思想はシグマらしい。

■撮影環境:焦点距離60mm 1/500秒 絞りF4 ISO1000 WBオート カラーモード スタンダード
まとめ
同じ20mmスタートの標準ズームということでFE 20-70mm F4 Gとの比較も書いたが、最大のライバルは兄貴分ともいえる20-200mm F3.5-6.3 DG | Contemporaryではないかと思う。本サイトでも以前レビューをしたが(20-200mmの記事はこちら)、これ一本であらゆる状況に対応できる超万能レンズだ。200mmまでカバーできる利点は大きく、何かと望遠域を使う人ならこちらを選ぶだろう。ただし本レンズのコンパクトさも、それと同じくらいの利点といえる。

■撮影環境:焦点距離31mm 1/160秒 絞りF4 ISO1250 WBオート カラーモード スタンダード
またLマウントユーザーであれば、同じ20-60mmをカバーするS-R2060も競合になるだろう。S-R2060は実売価格が本レンズの半分ほどでお買い得ではある。しかし半段~1段明るいことや、ビルドクオリティーの高さを考えると、本レンズには価格差なりの価値や満足感がある。
ともあれ、軽快さと性能、質感のバランスがよく、これ一本で出掛けるのが楽しくなるレンズであることは間違いない。また、単焦点レンズがメインという人ならスーパーサブとして持っておくのもいいし、スポーツや乗り物など望遠レンズをメインで使う人は、広角~標準をこれでカバーするという方法もある。まさに小さいけれど存在感十分。さまざまな使い方ができるはずだ。

■写真家:鹿野貴司
1974年東京都生まれ。多摩美術大学美術学部二部映像コース卒。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。著書『いい写真を取る100の方法』が玄光社から発売中。公益社団法人日本写真家協会会員。
















