ニコン ZR|写真を撮る時間まで変わっていく映像機
ニコン ZRで世界が広がった話
写真を撮ることが自分の表現の中心だった私にとって、Nikon ZRは映像に挑戦するためのカメラでした。ところが使い始めてみると映像を撮る楽しさに気づいただけでなく、写真を撮る時間まで変わっていきました。今では写真作品を撮るときに映像も一緒に撮ることが自然になり、メイン機として使ってきたZ7IIよりZRを手に取る機会が格段に増えています。映像機として迎えたカメラが、気づけば写真でも頼る存在になっていました。

■撮影環境:1/15秒 f/1.2 ISO100
写真でつくってきた世界観を、映像へと広げるきっかけになったNikon ZR。
写真を始めた頃、目の前の景色がカメラを通すことで自分らしい表現に変わっていくことに強いワクワクを感じ、撮り続けるうちに写真で自分の世界観をつくることが少しずつできるようになりました。
ZRをきっかけに、その感覚が映像にも広がっています。今回は、映像を通して見つけた新しい表現と、写真の楽しさまで再発見した日々について書いてみます。
映像機として手にしたNikon ZR
ZRを購入したとき、私の中での役割がはっきりしていました。映像を撮るためのカメラです。写真はこれまで通りZ7IIを中心に撮り、ZRでは映像表現に挑戦する。まずはそのつもりで使い始めました。
写真の機材を選ぶときとは少し違う気持ちで、映像の世界に足を踏み入れたのを覚えています。
ZRはNikonがREDと共同開発した最初のカメラということもあり、初めて情報を知った時は映像をメインで撮る人が使うカメラというイメージがとても強かったです。
実際に撮ってみると、動きや時間を記録する映像には、写真とは別の面白さがありました。静止した一瞬を選ぶのではなく、その前後に続いていく時間をどう見せるかを考える。被写体の動きや場の空気を見ながら、どこから撮り始め、どこで終えるかを探す。写真を撮るときと同じ場所にいても、映像を意識すると目に入ってくるものが変わっていきました。

■撮影環境:45mm 1/8秒 f/8 ISO1600
これまでは写真を撮って満足していた撮影地で、映像を撮らないと満足できないようにまでなっていきました。写真で表現したいことを考え、画面の中に自分の世界を組み立てる。その感覚は、映像でも生かせるのだと気づきました。画面の雰囲気や光の選び方は写真とつながりながら、動きや時間が加わることで、表現の幅がさらに広がっていきます。ZRを手にしたことで写真を続けてきた自分の延長線上に、映像という新しいアウトプットの方法ができました。
映像では、被写体が動き出す前の静けさや、視線が移る一瞬、場面が変わった後に残る余韻も表現の一部になります。写真で大切にしてきた「何を見せたいか」という問いはそのままに、時間の流れをどう組み立てるかを考えるようになりました。静止画で培ってきた感覚を手放すのではなく、映像ならではの要素を重ねていく。そこに、自分の表現を広げる手応えがあります。
一枚に込める写真と、動きや時間を含めて見せる映像。同じ場所から異なる表現が生まれる。
色をつくる楽しさが、映像にも広がった
もう一つ、映像を始めて気づいた楽しさがカラーグレーディングです。写真を仕上げるとき、色や明るさを調整して作品の印象を整える工程が好きでした。映像でも自分の手で色をつくれると知り、写真で楽しんできた色表現を、時間の流れがある画面にも広げられることに惹かれました。
ZRを使う中で、R3D NEによるシネマチックなRAW映像にも挑戦するようになりました。撮影した映像をそのまま完成形と考えるのではなく、素材から自分のイメージに近づけていく。どんな色に仕上げるかを考えながら編集する時間も、撮影と同じくらい楽しみになっています。写真で色を追い込んできた経験が、映像のカラーグレーディングへの入口になりました。
もちろん、写真と映像では仕上げの考え方も作業の流れも異なります。映像ではカットをまたいだ色のつながりや、動きの中での見え方も考える必要があります。まだ試行錯誤の途中ですが、思い描いた雰囲気に近づいていく過程そのものに夢中になっています。新しい技術を覚えながら、自分の表現を探していく。その時間が、写真を始めた頃に感じていたワクワクを思い出させてくれました。
カラーグレーディングを試すと、同じ映像でも色の方向性によって受ける印象が変わることを実感します。写真では一枚ごとに整えていた色を、映像ではカットの流れの中で考える。その違いを研究しながらも、少しずつ自分の好みや表現したい雰囲気を探すのが面白いところです。どんな色にすれば、その場で感じた空気や自分が見ていた世界に近づくのか、撮影後にも表現を考える時間が続いていきます。
カラグレ比較映像。R3D NEで記録した映像を、自分のイメージに合わせて仕上げる。
写真を撮る日は、映像も撮る
映像表現の楽しさを知ってから、写真作品を撮るときには映像も同時に撮るようになりました。以前なら写真を撮って撮影を終えていた場面でも、「この前後の動きも残したらどう見えるだろう」「この場所の時間を映像にしたら何が伝わるだろう」と考えるようになりました。写真だけを撮っていた頃には、撮影の対象として意識していなかった小さな動きや、場面が移り変わる時間にも目を向けるようになりました。

■撮影環境:1/500秒 f/1.8 ISO100
写真の一枚を撮るときに、映像も残したいと思えるようになった。
一枚の写真には、その瞬間に感じたことを凝縮できます。映像には、被写体が動き出す前の間や、動き終わった後に残る空気を含めることができます。どちらか一方が優れているということではなく、伝えたいことに合わせて表現を選べるようになった。その選択肢が増えたことが、私にとって大きな変化でした。写真を撮りながら映像も撮ることは、ZRを手に入れてからの撮影では当たり前になっています。
写真だけの時は、モデルさんに立ち位置や角度、表情などを指示して作り込んだ瞬間の場面を切り取ったらそのシーンを撮り終わることがほとんどでしたが、映像を撮るためにインサート用に周辺の風景を撮ったり、花の寄りや水の揺らぎなども撮影するようになりました。美しいと思える、感動する瞬間が増えたことが一番嬉しいです。
写真を撮りながら、夏の空気感を映像でも記録。

■撮影環境:1/320秒 f/1.8 ISO200

■撮影環境:1/400秒 f/4 ISO100

■撮影環境:42mm 1/500秒 f/4 ISO250
映像を始めてから、花の寄りや水の揺らぎなど足元の景色にも目が行くようになった。
映像機のつもりが、写真でもメインのような存在に
ZRを使う頻度は、当初の想像を超えて増えていきました。映像のために持ち出したカメラを、写真でも使うようになり、気づけばメイン機のような存在になっています。これまで写真の中心にあったZ7IIと比べても、ZRを手に取る機会は格段に増えました。映像を撮るために始めたはずが、写真を撮るときにも自然に選んでいる。その変化は、自分でも少し意外でした。
Z7IIより頻度が高くなった大きな理由は、AFの正確さと速さ、そして一台で写真と映像を簡単にボタンひとつで切り替えられる操作性の良さが大きいです。ZRは写真の画素数が2,450万画素。これまで使っていたZ7IIが高画素機で4,575万画素であることを考えると画素数は少ないですが、大きく引き伸ばして印刷をしたり、かなり細部まで高画質で写したいという場面でなければ十分すぎる画素数です。
Z7IIでは展示や大きいプリントを前提とした写真を撮るときにじっくりピントを合わせて撮る。ZRでは映像と写真を行き来しながらテンポ良くその場の景色を切り取っていくという使い分け方をしています。ZRは映像から写真に切り替えたときに、写真は写真・映像は映像で前回の設定が引き継がれるので、切り替えたら設定を映像用に設定し直さなければいけないという手間がいらないのも魅力です。
写真を撮りながら、この瞬間は映像でも残したいなと思ったらすぐに映像撮影をスタートできるので、1台で完結できる撮影には何台もカメラを持っていかずZRだけを首から下げていくことが多いです。万能だからこそメイン機を上回る使用頻度になっているのだと思っています。

一方で、映像を撮れば撮影後の編集やデータ管理も必要になります。実際、これまでの写真だけ撮っていたときは1ロケーションで50MBの写真を200枚で約10GBのデータ量を消費していたのに対してR3DNEのRAW動画は100GB以上のデータを1つのロケーションで使っています。つまり、急にこれまでの10倍のデータを一度の撮影で消費するようになったことになります。ZRに入れているCF Expressも1TBがあっという間になくなってしまうので驚きを隠せません。しかしそうした手間を含めても、撮影した素材を見返し、自分のイメージに合わせて仕上げる時間には、それを上回る楽しさがあります。膨大な容量のデータを家に帰ってパソコンの画面で見返すときには、データ量の多さなんて気にならないほど撮れた映像の美しさに見惚れている自分がいます。最初は容量問題を恐れていましたが、不思議なことに「この映像のためなら・・!」と思えるようになるのもZRの魅力の1つだと思ってしまします。
動画も写真も最高の瞬間を逃さないこのカメラが、今では私の1番の相棒です。
写真を始めた頃のワクワクが戻ってきた
ZRを使って映像を撮り始めてから、写真を始めた頃のようなワクワクする気持ちが蘇ってきました。
知らなかった表現に出会い、どうすれば自分のイメージに近づけられるか考え、撮影や編集で試してみる。うまくいかないこともありますが、まだ知らない世界を少しずつ自分のものにしていく感覚が楽しいのです。
写真を続ける中で、自分の表現や撮り方が定まってくることは大切です。その一方で、新しいことを始めると、見慣れた景色にも別の入口が見つかります。ZRは私にとって、写真から映像へ移るためだけのカメラではありませんでした。写真で育ててきた世界観を映像へ広げ、色をつくる楽しさを知り、作品づくりの習慣を変えてくれたカメラです。
そして、映像機として買ったZRが写真でもメインのようになった今、これからどんな作品を撮るのか、自分でも楽しみにしています。写真で表現してきたものを、映像ではどう見せられるのか。映像で気づいたことを、次の写真にどう生かせるのか。写真と映像を行き来しながら、これからも自分の世界を広げていきたいと思います。

■撮影環境:30mm 1/500秒 f/4 ISO100
Nikon ZRとともに、写真と映像のあいだに広がった新しい表現を探していきたい。
■フォトグラファー:Koichi (岩松晃一)
岐阜県高山市出身のフォトグラファー。東京を中心に活動。主な作品は風景の中に人を入れた情景写真や、Photoshopを使ったアート作品。「心に響く写真」をコンセプトに、日常を切り取る。最近はフィルムカメラを通して写真の楽しさを伝える活動をしている。















