ニコン NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S レビュー|飛行機撮影の最適解レンズ
はじめに

NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sは、2022年2月4日に発売されたNIKKOR Z初の超望遠ズームレンズだ。それまでのZレンズで超望遠撮影をするならZ 70-200mm f/2.8 VR Sにテレコンバーターを組み合わせるしか選択肢がなく、現実的にはマウントアダプターFTZを経由してFマウントレンズを使用するほかなかった。
もっともZ9が登場するまでは超望遠撮影に適したZシリーズのカメラは存在しなかったので、Z9と同時に登場したこのNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sの存在がわれわれ超望遠ユーザーをZシステムへの移行に導いたともいえる。筆者もまさにこのタイミングで2台のZ9とZ 24-120mm f/4 SとともにこのZ 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sを導入することで、長年使い続けた一眼レフからミラーレスへと完全移行したひとりだ。

■撮影機材:Nikon Z9 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S(135mm)
■撮影環境:f/8 1/1500秒 ISO200 WB晴天
飛行機撮影で使いやすい焦点域と安定した画質
100-400mmは飛行機、とくに旅客機撮影において扱いやすい焦点域で、多くの撮影現場においてこれと24-120mmと組み合わせることでベーシックなシステムが完成してしまうほど使い勝手が良い。
本レンズは繰り出し式のズームレンズで、100mm側では短く、400mmまで繰り出すと全長が伸びるタイプ。ゆえに収納時はコンパクトで持ち運びやすいが、それと引き換えにズームリングが硬いため細かいズーム操作が難しいのは機構上やむを得ないといえよう。離着陸の撮影時などで飛行機の接近に合わせて滑らかにズーミングしながらの撮影というのは難しく、ズームリングを少し大きく先送りさせてからのレリーズを繰り返すことになる。

■撮影機材:Nikon Z8 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S(400mm)
■撮影環境:f/8 1/750秒 ISO200 WB晴天

■撮影機材:Nikon Z8 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S(100mm)
■撮影環境:f/8 1/750秒 ISO200 WB晴天
画質面では全域において比較的安定しているが、テレ側8-9割くらいからやや不安定になるのは繰り出し式超望遠ズームの宿命といえよう。それでもFマウント時代の歴代80-400mmと比べるとはるかに安定した高画質が得られるし、ピーク画質は単焦点レンズに匹敵するほどの鮮鋭感を持つ。

■撮影機材:Nikon Z9 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S(290mm)
■撮影環境:f/6.7 1/1500秒 ISO200 WB晴天

■撮影機材:Nikon Z9 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S + Z TELECONVERTER TC-1.4x(470mm)
■撮影環境:f/8 1/1000秒 ISO200 WB晴天
飛行機撮影において気になる周辺減光は、素の状態では絞り開放時にだいぶ目立つが、撮影時にカメラの静止画撮影メニューでヴィネットコントロールをON(「標準」でよい)にしておけば気にならなくなるし、RAW現像時にNX-Studioにて細かく調整することもできる。

■撮影機材:Nikon Z8 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S(400mm)
■撮影環境:f/5.6 1/1000秒 ISO100 WB晴天

■撮影機材:Nikon Z8 + NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S(400mm)
■撮影環境:f/8 1/1000秒 ISO200 WB晴天
手ブレ補正機構VRの補正効果はCIPA規格準拠で5.5段とされており、撮影時におけるファインダー像の安定感は良い。VRモードはNORMAL/SPORTの2種類があるが、動体撮影時は必ずSPORTモードに設定しておきたい。NORMALだと補正効果を最大にするためにレリーズのたびに「露光前センタリング」が行われるため、ファインダー像が暴れて正確なフレーミングができなくなる。なお手ブレ補正の切替スイッチはレンズ側には設置されておらず、カメラ側で設定するため頻繁にON/OFFを切り替えるユーザーにとってはきわめて不便である。
超望遠ズームレンズ共通の落とし穴ともいえるのがこの手ブレ補正機構で、補正光学系がセンターから大きく偏心した場合は片ボケの原因になりやすい。とくに飛行機写真においては、機体前部はシャープでも機体後部はシャープさに欠けるなど片ボケが目立つことが少なくない。もしこのような症状が出たら手ブレ補正をオフにしてシャッター速度を速めることでよりシャープな画が得られる可能性がある。高画質を得るための手ブレ補正機構のはずが足を引っ張っているのが現状である。そもそも動体撮影における被写体ブレは手ブレ補正機構では解消できないので、シャッター速度で抑え込むのが基本だ。
2度目の購入
筆者はこのレンズを発売と同時に購入しているが、2023年8月発売のNIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR購入後にZ 100-400mmの出番が減ったので一度手放している。
Z 180-600mmは非S-Lineレンズで安価ながらインターナルズーム機構のためか画質が安定しており、とくに300mm以上の画質においてはZ 100-400mmよりもZ180-600mmのほうが画質のばらつきが少なかった。しかしながらZ 180-600mmは三脚座込みで2,140gと重く、メインレンズZ 600mm f/4 TC VR Sと組み合わせるにはシステム重量が大きくなりすぎるため、Z 100-400mmを再導入した経緯がある。
ちなみにZ 100-400mmにしてもZ 180-600mmにしてもVRに起因する片ボケや操作性などでやや不満があり、どちらを持ち出すか頭を悩ませることが多い。ただそれは自分の中での高画質の基準が厳しくなったことによるもので、間違いなくZレンズのピーク画質のすばらしさを知ってしまった結果でもある。「Zレンズにハズレ無し」とはよく言ったもので、ZレンズはS-Lineはもちろん、非S-Lineであっても画質面でのハズレはない。

まとめ
飛行機撮影に最適な焦点域をカバーするNIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S。取り回しが良くS-Lineならではの安定した画質と汎用性の高さから、ニコンユーザーなら持っておきたい一本だ。

■撮影環境:f/6.7 1/45秒 ISO800 WB晴天

■撮影環境:f/8 1/750秒 ISO100 WB晴天
(c)Koji Nakano/写真の無断転載禁止
■写真家:中野耕志
1972年生まれ。野鳥や飛行機の撮影を得意とし、専門誌や広告などに作品を発表。「Birdscape~絶景の野鳥」と「Jetscape~絶景の飛行機」を二大テーマに、国内外を飛び回る。著書は「侍ファントム~F-4最終章」、「パフィン!」、「飛行機写真の教科書」、「野鳥写真の教科書」、「飛行機写真の実践撮影マニュアル」など多数。













