キヤノン RF14mm F1.4 L VCM レビュー|広さと明るさが生む、新しい空間描写
はじめに
こんにちは。写真家のGOTO AKIです。今回レビューするキヤノン「RF14mm F1.4 L VCM」は、水平画角104°という超広角でありながら開放F1.4を実現した、風景写真をはじめとする幅広いジャンルで本格的な描写が楽しめるレンズです。
作例はEOS R5 Mark IIと組み合わせ、湿原や噴気の上がる岩場、深い森など、空気感の変化が大きいロケーションを歩きながら撮影を行いました。実際に使いながら感じた写りの特徴や操作性、そしてどのような撮影スタイルに向いている一本なのかを紹介したいと思います。

デザイン・操作性
「RF14mm F1.4 L VCM」は最大径約76.5mm、全長約112mm、質量約578gと、この明るさとしては手に取りやすいサイズにまとまっています。EOS R5 Mark IIとのバランスも良く、今回のように山道を歩きながら撮影する場面でも、標準ズームレンズを装着しているかのような、いつもの感じでノーストレスでした。
操作系で印象的なのが、マウント付近に配置されたアイリスリングです。これは「RF20mm F1.4 L VCM」など他のRF F1.4 L VCMシリーズにも共通する設計で、フォーカスリングよりもさらにボディ側、昔のオールドレンズの絞りリングを思わせる位置に据えられています。
クリックレスで滑らかに回転するため、動画撮影時の露出コントロールに向いた仕様ですが、EOS R5 Mark IIでは静止画撮影時にも絞りリングとして機能させることができます。ファインダーを覗いたまま指先だけで絞り値を変えられる感覚は、懐かしく、楽しい。往年のマニュアルレンズを思い出しました。AF/MF切り替えスイッチとIRISのオン・オフスイッチも隣接しており、迷わず操作できる配置です。


14mmで空間を撮る
超広角レンズを風景で使う際にまず気になるのが、周辺部までの解像力です。噴気の上がる岩場を撮影したカットでは、画面の隅々まで岩肌のテクスチャーがしっかりと描写され、硫黄の質感や湯気の粒子感まで丁寧に再現されていました。開放から絞り込んだ際の破綻もなく、風景の細部を大きく取り込みたい場面で安心して使える印象です。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F5.6 1/1000 ISO400

■撮影環境:F1.4 1/8000 ISO100
湿原の水面と空を大きく写した一枚では、104°という画角の広さそのものが空間の情報量になっていることを実感しました。空、山並み、水面、手前の草叢まで一枚に収めても窮屈さがなく、実際にその場に立っているときの視界の広がり以上の印象を受けます。「被写体」というよりも「空間」を撮っている感覚です。
超広角なのに「ボケる」F1.4
14mmという焦点距離でF1.4のボケを語るのは少し意外に思われるかもしれませんが、最短撮影距離0.24mを活かして被写体にぐっと近づくと、ピントを合わせた箇所の前後に大きなボケが得られます。針葉樹の若い葉先に寄ったカットでは、手前の葉にピントを合わせながら、奥の稜線までが柔らかく溶けるように描写され、広角ならではの誇張されたパースとボケが同居する、独特の立体感を味わうことができました。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F1.4 1/3200 ISO100
パースを積極的に使う
超広角レンズの醍醐味のひとつが、誇張されたパースペクティブです。木々の間から空を見上げたカットでは、放射状に広がる枝葉がレンズの中心から画面の隅へと大きく引き延ばされ、実際に見上げたとき以上のスケール感が生まれました。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F1.4 1/320 ISO160
また、森の中の小径を画面奥へと視線を導くように捉えた一枚では、手前の葉を大きく取り込みながら奥へ続く道を小さく配置することで、画面の中に遠近が生まれ、実際の距離感以上に奥行きのある一枚に仕上がりました。パースを構図の道具として積極的に使いたい方には、相性の良いレンズだと感じます。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F1.4 1/320 ISO200
さらにパースを強調したい場合は、前景の被写体に思い切ってレンズを近づけるのが効果的。手前の岩に大きく寄ったカットでは、岩肌の鉱物質な色味が画面いっぱいに広がりながら、奥の緑や空へと一気にスケールが縮小していく、超広角ならではの誇張された空間が生まれました。同じ考え方で葉に寄った一枚でも、手前の葉脈がくっきりと大きく写り込み、背景がとろけるようにぼけることで、極端なパースとボケが同時に成立しています。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F16 1/13 ISO200

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F1.8 1/800 ISO400
広角でも寄れる
苔むした木の幹に寄ったカットでは、目の前の質感を大きく見せつつ、背後に広がる森の空気感まで一緒に写し込むことができました。近づくほどにパースが強まり、被写体の存在感が誇張される感覚もこのレンズならではの面白さ。目で見るのと違うことを知った上で撮影に行くと、周りの風景に眠っている、今まで気づかなかった表情を捉えることができそうです。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F1.8 1/320 ISO200
「RF14mm F1.4 L VCM」の最短撮影距離は0.24m。被写体に大胆に接近しながら背景ごと画面に収める表現が楽しめます。岩肌の表面ぎりぎりまで寄ったカットでは、鉱物の粒立ちや色ムラが画面全体を覆う抽象的な描写となり、風景の一部を切り取ったとは思えないテクスチャー写真として成立しました。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F8 1/50 ISO400
逆光にも強い
木漏れ日の差し込む森や、雲間から太陽がのぞく場面など、強い逆光条件でも撮影を行いました。「RF14mm F1.4 L VCM」はフレアやゴーストの発生が少なく抑えられており、太陽を画面内に入れてもコントラストの低下が目立たず、雲の階調や空の色味がクリアに保たれています。超広角レンズは画角の広さゆえに強い光源が画面に入り込みやすいだけに、この逆光耐性の高さは風景撮影において大きな安心材料になります。

■撮影機材:Canon EOS R5 Mark II + RF14mm F1.4 L VCM
■撮影環境:F16 1/3200 ISO200
アイリスリングで明暗調整
レンズ名にあるVCM(ボイスコイルモーター)は動画撮影を強く意識した機構で、AFは静かに、そして滑らかに駆動します。フォーカス送りをした際の画角の変化、いわゆるブリージングもよく抑えられており、フォーカスを移動させても画面の見た目の大きさがほとんど変わらないため、映像の中でピント送りを使う場面でも違和感が少なく仕上がります。
また、アイリスリングはクリックレスで滑らかに回転するため、光の変化が刻一刻と変わるような場面でも、絞りを少しずつ動かして露出をなめらかにつなげることが簡単にできる設計です。
まとめ
「RF14mm F1.4 L VCM」は、単に画角が広いだけのレンズではありません。104°という超広角、F1.4の明るさ、0.24mまで寄れる近接性能、そして周辺まで安心できる描写力が高い次元で両立されています。マウント付近のアイリスリングは、動画のための機構でありながら、静止画撮影においても指先の感触だけで絞りを操れる、新しくもどこか懐かしい操作感を思い出させてくれました。
風景だけでなく、星景や建築撮影はもちろん、広角ならではのパースやボケを積極的に楽しみたい方、そして写真と動画を横断して制作したい方に、ぜひ手に取ってみてほしい一本です。
■写真家:GOTO AKI
1972年川崎市生まれ。世界一周の旅(1993~94年)を機に写真と出会う。1999年より写真家として活動を開始。自然風景と旅をモチーフとした写真作家活動の一方、教育活動にも力を注ぐ。写真集・写真展『terra』(赤々舎・キヤノンギャラリーS・2019)にて2020年日本写真協会賞新人賞受賞。新作写真集「terra | Landscape Topologies」(赤々舎)を26年3月出版予定。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科(2017~2025年)、日本大学芸術学部写真学科(2021~2023年)にて非常勤講師を務め、2024年より日本大学芸術学部准教授。CANON表現講座・EOS学園講師。













