ニコン Z6IIIの野鳥/飛行機撮影能力

中野耕志
ニコン Z6IIIの野鳥/飛行機撮影能力

はじめに

有効画素数2,450万画素のフルサイズセンサーを搭載するニコン Z6IIIは、扱いやすい画素数と性能バランスの良さから、ニコンZシリーズの中核をなすスタンダードモデルとしてラインアップされている。初代のZ6はニコンZシリーズの記念すべき初号機として高画素機Z7とともに2018年8月23日に発表され、11月23日に発売された。二代目のZ6IIは2020年11月6日に、そして三代目となる本機Z6IIIは2024年7月12日に発売され、すでに2年が経過した。

ニコンZシリーズのカメラは2021年12月のフラッグシップ機Z9の登場を境に大きく進化しており、Z9の優れた性能や操作性を他の機種にも順次採用していくことでそれぞれのカメラの立ち位置よりもワンランク上の性能をもたらし、Zシリーズ全体の底上げに貢献している。

Z6IIIは中級機のスタンダードモデルとはいえ、世界初の部分積層型CMOSセンサー、9種の被写体検出AF、高速処理が可能な画像処理エンジンEXPEED7、応答性の高いEVF、そしてプリキャプチャー機能を含む高速連写性能を備えるなど、先代のZ6やZ6IIに比べると大幅に動体撮影能力が向上している。

野鳥や飛行機など超望遠撮影を専門とする筆者は、トリミング耐性の高いD800系やZ8のようなフラッグシップ級の動体補足力を持つ高画素フルサイズ機を好んで使うことからこれまでZ6系は縁遠いモデルであったが、Z6IIIでは動体撮影能力が向上したことから何度となく使う機会があったので、野鳥および飛行機撮影の現場での使用感をここにレポートする。

有効画素数2,450万画素フルサイズCMOSセンサー

フルサイズセンサーで2,450万画素というのは、Z8のような4,571万画素の高画素機よりも画素ピッチが大きく高感度性能が高いこともあり、あらゆる撮影ジャンルにおいて扱いやすい画素数といえる。普段Z8をメイン機とする筆者がZ6IIIを初めて使った時の印象は、高感度のみならず低感度域の画質も良好に感じた。立体感や透明感が高くパッと見の印象がとても良いのと、Z8のような気難しさがない。

Z6IIIの最高常用感度はISO64000であり、Z8のISO25600より1+1/3段高いことになる。薄暗い林内で暮らす野鳥や、飛行機の夜間撮影などの超高感度撮影では、Z8よりも良好な結果を残すことができるのも大きな魅力だ。

暗い森の中で水浴びをするクロツグミ。800mm f/6.3に1.4倍テレコンバーターを組み合わせて1120mm f/9で撮影。Z6IIIの高感度性能を試すためあえて高速寄りの1/500秒に設定すると、ISOオートの感度はISO18000に跳ね上がった。にもかかわらず羽毛の細部はノイズで溶けることなくディテールを保っている。
■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 800mm f/6.3 VR S
■撮影環境:f/9 1/500秒 ISO18000(焦点距離1120mm)WB晴天
夕暮れ時の羽田空港。富士山のシルエットを背景にタキシングするJALのボーイング767。写真では明るく写っているが実際には暗く、撮影には明るいレンズと高感度撮影が可能なZ6IIIが有利だ。
■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
■撮影環境:f/1.8 1/30秒 ISO3200 WB晴天

悩ましい超望遠撮影システム構成

筆者がZ8のような高画素機を好んで使うおもな理由は、いざというときにクロップ撮影もしくはトリミングしても必要十分な画素数が得られるからである。フルサイズ4,500万画素(8256 x 5504px)のZ8は、DXクロップすると1.5倍の望遠効果を得られて1,900万画素(5392 x 3592px)残るが、2,450万画素(6048 x 4032px)のZ6IIIは、DXクロップすると1,060万画素(3984 x 2656px)とやや心もとない。

したがって野鳥撮影時に「もうひと伸び」欲しいときにクロップによるごまかしがきかないため、警戒心の強い日本の野鳥を撮るにはNIKKOR Z 800mm f/6.3 VR SやNIKKOR Z 600mm f/4 TC VR Sなど「ネイティブ800mm」と組み合わせるべきで、レンズの要求の高さからシステム全体ではZ8のほうが安上がりになりかねないというジレンマがある。

NIKKOR Z 600mm f/6.3 VR SやNIKKOR Z 180-600mm f/6.3 VRにZ TELECONVERTER TC-1.4xを組み合わせて840mm f/9でも使えるといえば使えるが、開放f値がf/9では野鳥の飛翔撮影にはAFパフォーマンス的にもシャッター速度/ISO感度的にもやや厳しい暗さなので、撮影シーンはある程度限定される。

オバシギは、日本では春と秋の渡りの時期に見られる旅鳥だ。極東ロシアなどで繁殖し、非繁殖期は東南アジアやオーストラリアなどへの長旅の途中なので、過度なストレスを与えないよう適切な距離を取るべきで、800mm以上の超望遠レンズが推奨される。
■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S
■撮影環境:f/5.6 1/3000秒 ISO400(焦点距離840mm)WB晴天
羽田空港ランウェイ22を離陸するJALのエアバスA350。600mm f/4に2xテレコンバーターを組み合わせて1200mmでの撮影だが、Z8よりZ6IIIのほうが2倍テレコンとの相性は良い印象だ。
■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S + Z TELECONVERTER TC-2.0x
■撮影環境:f/9.5 1/750秒 ISO400(焦点距離1200mm)WB晴天

AF性能

Z6IIIのAFは、Z9やZ8と同じく9種の被写体検出AFを採用しており、基本的な精度や速度は変わらないといっていい。ただしZ6IIIに被写体検出「鳥」モードが搭載されたのは2025年8月公開のVer.2.00からで、発売から1年以上経過している。

Z6IIIに限らずだが、筆者がZシリーズのカメラで野鳥や飛行機を撮影するときに使うAFモードはAF-Cで、AFエリアモードはオートエリアAF、ワイドエリアAF-L、ダイナミックAF-Lの3つを基本とし、状況に応じてカスタムワイドエリアAFを追加する。AFエリアモードの切り替えはL-Fn2ボタンに「AFエリアモード循環選択」を割り当てており、撮影時の姿勢のままレンズを保持する左手親指でL-Fn2ボタンを押してAFエリアモードを変更する。

また、ボディ背面のAF-ONボタンにはAFエリアモード「シングルポイントAF」を割り当てており、押下中のみシングルポイントAFになるようにしている。これにより鳥の目やコクピットに納まるパイロットなど、ピンポイントでピントが欲しいところにAFが合うようにしている。

着陸のため成田空港ランウェイ34Lへアプローチするエミレーツ航空のエアバスA380。被写体検出「飛行機」モードを搭載しており、とくに風景的なショットの撮影時にフレーミングの自由度が高いのが便利だ。
■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S
■撮影環境:f/8 1/1500秒 ISO200(焦点距離24mm)WB晴天

明るく被写体を追従しやすくなったEVF

Z6IIIのEVFは576万ドットと高解像度、かつ4000cd/㎡と明るく屋外でも見やすいファインダーだ。連写時はシャッターモードによってはファインダー像の引っかかりが気になりフレーミングしづらいが、高速連続撮影(拡張)時はブラックアウトが少なく被写体を負いながらのフレーミングがしやすくなる。

飛翔するケイマフリ。ミラーレスカメラにおける動体撮影能力の肝はEVFの追従性であり、連写しながらでもファインダー像がカクつかないことが求められる。Z6IIIでは高速連続撮影(拡張)時には多少のカクつきはあるものの、及第点の追従性だ。
■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S
■撮影環境:f/4 1/6000秒 ISO800(焦点距離600mm)WB晴天

連写性能/部分積層型センサー

動体撮影に欠かせない連写性能だが、Z6IIIはRAWを含む画質モードで最高約20コマ/秒、ハイスピードフレームキャプチャー+時は最高約120コマ/秒という十分な性能を持つ。しかしながらシャッター方式や画質モードごとに連写速度が異なるので、かなりややこしい。

RAWを含む画質モードでの高速連続撮影時は、メカニカルシャッターで約8.1コマ/秒、電子先幕シャッターで約10.5コマ/秒、電子シャッターで約15.3コマ/秒。高速連続撮影(拡張)時は、メカニカルシャッターおよび電子先幕シャッターで約14コマ/秒、電子シャッターで約20コマ/秒となる。これらの連写コマ数はカメラ上では高速連続撮影が「H」、高速連続撮影(拡張)が「H+」として表示され、具体的なコマ速は表示されないのは地味に不便である。電子シャッターのみのZ9やZ8では連写速度が「20」などと常に表示されるので撮影時のステータスが一目瞭然だ。

Z6IIIのハイスピードフレームキャプチャー+はC15、C30、C60、C120で、画質モードはJPEGのみだ。もちろん時間を遡って記録できるプリキャプチャーにも対応しており、野鳥が飛び立つシーンなど通常の撮影モードでは間に合わないような一瞬のアクションを確実に記録できる。

飛び立つオオジュリンを、プリキャプチャーC60で撮影。記録画質はJPEGオンリーながら時間を遡って記録できる便利な機能だ。小鳥は1秒間に約20回羽ばたくので連写コマ速は速いほどよく、シャッター速度も1/4000秒はほしい。
■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S
■撮影環境:f/5.6 1/8000秒 ISO1800(焦点距離840mm)WB晴天

Z6IIIでは世界初となる部分積層型センサーを採用し、高速読み出しにより電子シャッター時のローリングシャッター歪みが出づらくなっている。ローリングシャッター歪みは野鳥撮影においては飛翔撮影時に目立ちやすく、Z6IIIでは羽ばたきの遅い大型の野鳥ではそれほど目立たないが、羽ばたきの早い小鳥では角度により翼の形の歪みが認められる。

野鳥撮影においてはファインダー追従性や高速連写性能を考慮すると電子シャッターを使うのが便利なので、ローリングシャッター歪みについては多少目をつぶるのが得策といえよう。

この写真のように横位置時の上下方向に左右の翼が写る角度では、センサーのスキャン速度が遅いと翼の形が左右非対称に写ることがある。部分積層センサー採用のZ6IIIでは羽ばたきの速い小鳥だとローリングシャッター歪みが出ることもあるが、ホシガラスくらいの羽ばたきの速さだとそれほど目立たない。
■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 600mm f/4 TC VR S
■撮影環境:f/4 1/4000秒 ISO1100(焦点距離600mm) WB晴天

ライバルはZ8

Z6IIIは先代Z6IIより性能が進化したのと、為替の影響を受けた発売タイミングもあり発売当初はやや強気な値付けであったが、2026年9月現在のキタムラネットショップ価格は356,400円(税込)と発売当初から価格は下がり、他社の競合モデルより割安感もある。

ただし、Z6IIIの本当の競合は他でもないZ8である。Z8はフラッグシップ機Z9とほぼ同一スペックを持つ名機で、フルサイズ4,571万画素、RAW撮影時20コマ/秒の連写、ブラックアウトフリーのリアルライブビューファインダー、4軸チルト背面液晶など、野鳥や飛行機などの動体撮影時に圧倒的な信頼感がある。また、Z9/Z8はメカシャッターを搭載していないのとセンサーシールドの恩恵かセンサーダストの着きづらさは特筆すべきで、とくに空バックでの撮影がほとんどの飛行機撮影における恩恵は大きい。

フラッグシップ機はスペックシートに現れない部分での差別化が大きく、撮影現場でのストレスがないのが特徴だ。参考までにZ8の現在の価格は517,770円(税込)で、Z6IIIとの価格差は約16万円。キャッシュバック時はさらにこの差が小さくなるのが悩ましいところだ。

まとめ

Z6IIIはフルサイズ2,450万画素というバランスの取れた画素数で、オールラウンドで活躍できるカメラである。野鳥や飛行機を本気で取り組むユーザーにはZ8をお勧めしているのが正直なところだが、一般ユーザーにはZ8はオーバースペックなのもまた事実。Z6IIIの素直な画質や高感度性能、そしてどこにでも持ち出せる軽快感も大きな魅力だ。

■撮影機材:Nikon Z 6III + NIKKOR Z 135mm f/1.8 S Plena
■撮影環境:f/1.8 1/60秒 ISO12800 WB電球

(c)Koji Nakano/写真の無断転載禁止

 

 

■写真家:中野耕志
1972年生まれ。野鳥や飛行機の撮影を得意とし、専門誌や広告などに作品を発表。「Birdscape~絶景の野鳥」と「Jetscape~絶景の飛行機」を二大テーマに、国内外を飛び回る。著書は「侍ファントム~F-4最終章」、「パフィン!」、「飛行機写真の教科書」、「野鳥写真の教科書」、「飛行機写真の実践撮影マニュアル」など多数。

 

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