第13回フィルムカメラを始めよう!写ルンですから一歩先へ、手のひらサイズの名機:Rollei 35S編

鈴木啓太|urban
第13回フィルムカメラを始めよう!写ルンですから一歩先へ、手のひらサイズの名機:Rollei 35S編

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はフィルムカメラを始めよう!シリーズ第13回として、僕がカメラの基礎を学んだ銘機「Rollei 35S」を紹介していきます。

Rollei 35(ローライ35)シリーズは、手のひらに収まるほど小さなボディに本格的なレンズと機械式シャッターを搭載したカメラです。中でもRollei 35Sは、Carl Zeiss Sonnar 40mm F2.8を搭載した上位モデルとして知られています。

一方で、一般的なコンパクトカメラとは異なり、ピントはファインダーで確認するのではなく、被写体までの距離を自分で見積もる「目測式」です。初めて使う方には少し難しく感じるかもしれませんが、距離を意識しながら撮影することで、写真を撮る行為そのものを楽しめるカメラでもあります。今回はRollei 35Sの魅力と使い方、購入時のポイントを紐解いていきたいと思います。

Rollei 35Sのスペックと目測機の使い方

Rollei 35Sの生産100万台達成記念のシルバーモデル。月桂冠マークのある本機はアメリカ輸出用のレアモデル。

Rollei 35シリーズは1967年から販売された小型35mmフィルムカメラです。Rollei 35Sは1974年に登場し、40mm F2.8のSonnarレンズを搭載しています。小型化を追求しながらも、撮影に必要な機能をしっかりと備えているのが特徴です。

本機の魅力は、何と言ってもコンパクトな金属製ボディ。レンズを収納できる沈胴機構を採用しており、携帯性に優れています。旅行や日常のスナップなど、カメラを持ち歩くこと自体が負担になりにくいのは大きなメリットと言えるでしょう。

ただし、コンパクトさを実現するため、操作系は一般的なカメラとは異なります。シャッタースピードと絞りの操作リングはレンズの左右に配置され、巻き上げレバーや巻き戻しクランクも独特の位置にあります。また、ホットシューがカメラ底面に配置されている点も特徴的です。最初は戸惑うかもしれませんが、慣れてしまえば合理的な操作系であると感じるでしょう。スペックは次の通りです。

発売年 1974年
フォーマット 35mmフィルム(135)
レンズ Sonnar 40mm F2.8
フォーカス 目測式(最短撮影距離0.9m)
シャッター B、1/2~1/500秒
露出制御 マニュアル露出
露出計 CdS式、指針表示
電源 MR-9(H-D)
大きさ 約97×60×32mm
質量 約325g

 

Rollei 35Sを使ううえで、最初に覚えておきたいのが目測式のピント合わせです。一般的な一眼レフのようにファインダーでピントの合い具合を確認できないため、被写体までの距離を予測し、レンズの距離指標を合わせて撮影します。

最初は難しく感じますが、距離を大まかに分類するだけでも失敗を減らせます。筆者のおすすめの合わせ方は、F8でピントを2メートルにする近距離モードとF11でピントを6メートルにする無限遠モードの2つです。前者は、被写体との間にシングルベッドや布団(=2m)があることをイメージし、距離を取って撮影することで目的の被写体にしっかりとピントを合わせることができます。後者はピントを6メートルに設定することで、3m~∞までピントを合わせることができ、咄嗟のスナップも問題なく可能です。この2つを使いこなすことで、目測の苦手意識をグッと低減させることができます。

外部距離計を付けたRollei 35S。不格好ですが、絞り開放の立体感はコンパクトカメラとは思えない程。

デザインは損なわれてしまいますが、本体底のホットシュー部分に外部距離計をマウントし、しっかりとピントを合わせる方法もあります。外部距離計でピントを測り、本体の距離指標に測った距離を移すことで、絞り開放&最短距離でもバッチリピントを合わせることができます。Sonnarは開放描写が素晴らしいですが、目測では使いづらいといった弱点を克服する裏技的なテクニックです。

■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:FUJIFILM 200
絞り開放&最短撮影距離の描写。寄れるレンズではないですが、その立体感は目を見張るものがあります。
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:FUJIFILM 200
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak Colorplus 200
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak ULTRAMAX 400
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Lomography Classicolor 200
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak Gold 200
こちらと1つ前の花の作例も絞り開放&最短撮影距離。外部距離計を使用しています。
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak ULTRAMAX 400
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak ULTRAMAX 400

Rollei 35Sの描写と搭載レンズについて

■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak ULTRAMAX 400

Rollei 35Sの魅力は、コンパクトなボディだけではありません。搭載されているSonnar 40mm F2.8は、日常のスナップから人物撮影まで幅広く活用できるレンズです。40mmという焦点距離は、一般的な50mmよりも少し広い画角を持ち、被写体と周囲の環境をバランス良く写し込めます。広角レンズほど遠近感が強くなりすぎず、標準レンズに近い自然な視点で撮影できるため、街歩きや家族写真にも使いやすい焦点距離と言えるでしょう。

Sonnar 40mm F2.8は、開放F2.8と比較的明るく、日中のスナップはもちろん、少し光量が落ちた場所でも対応しやすいレンズですが、目測機という関係上ほとんどがF5.6~11と絞って使うことになります。絞り込むことで画面全体の描写を整えやすく、街並みや建築物など、細部を写したい場面にも向いています。

また、Carl Zeiss製に加えRollei独自のHFTコーティングが施されたレンズは、反射を抑え、コントラストを確保することを意識した設計です。逆光では光の入り方によって描写が変化するため、光源の位置を意識しながら撮影すると表現の幅が広がります。

一方で、目測式のため、開放付近で近距離の人物を撮影するとピントを外しやすくなります。人物撮影では、先述した外部距離計等を用い慎重に距離を測るか、少し絞って撮影するのがおすすめです。背景を大きくぼかすことだけを目的にするのではなく、被写体と周囲の関係を写し込むことで、40mmならではの自然な描写を活かせるでしょう。

■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak ULTRAMAX 400
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:FUJIFILM 200
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:FUJIFILM X-TRA 400
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Lomography Classicolor 200
■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak ULTRAMAX 400

Rollei 35シリーズのレンズごとの特徴

Rollei 35シリーズには複数のモデルが存在し、搭載レンズによって描写の方向性もやや異なります。購入を検討する際は、ボディの状態だけでなくレンズにも注目してみましょう。筆者おすすめはSonnarですが、TessarやTriotarも根強い人気を誇ります。

Carl Zeiss Sonnar 40mm F2.8

■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Lomography Classicolor 200

Rollei 35Sおよび35SEに搭載されるレンズです。シリーズの中では明るい開放F2.8が特徴で、ピント面の描写と背景のボケを両立しやすいレンズと言えます。明るさと描写性能を重視する方におすすめです。

Carl Zeiss Tessar 40mm F3.5

■撮影機材:Rollei 35
■フィルム:Kodak ULTRAMAX 400

初代Rollei 35やRollei 35T、35TEなどに搭載されるレンズです。比較的シンプルな構成ながら、絞り込むことでシャープな描写が得られます。スナップや風景など、画面全体の描写を重視する方に向いています。

Carl Zeiss Triotar 40mm F3.5

■撮影機材:Rollei B35
■フィルム:FUJIFILM X-TRA 400

Rollei B35やC35、35LEDなどに採用されたレンズです。SonnarやTessarとは異なるレンズ構成を持つ普及モデル向けのレンズですが、日常撮影には十分な性能を備えています。価格や機能を重視して選ぶ際の候補となるでしょう。

Schneider-Kreuznach S-Xenar 40mm F3.5

■撮影機材:Rollei 35
■フィルム:Kodak Gold 200

初期のRollei 35の一部に搭載されたシュナイダー製レンズです。搭載機の流通量が限られており、コレクション性もあります。Tessar搭載機とは異なる選択肢として、レンズの違いを楽しみたい方にもおすすめなレアモデルです。

このように、同じRollei 35シリーズでもレンズによって個性があります。明るさや描写を重視するならSonnar搭載機、シンプルなスナップ用途ならTessarやTriotar搭載機というように、自分の撮影スタイルや値段に合わせて選ぶのが良いでしょう。

Rollei 35シリーズ中古購入時のポイント

Rollei 35シリーズは発売から長い年月が経過しているため、中古購入時には外観だけでなく、各部の動作を確認することが重要です。可能であれば実機に触れたいですが、カメラのキタムラネットショップであれば、状態も細かく載っており安心して購入することができます。もちろん、キタムラ実店舗で触って購入するのも良いでしょう。

【01】レンズの沈胴機構が正常に動作するか
Rollei 35シリーズの特徴である沈胴機構が正常に動作するかを確認しましょう。レンズの引き出しや収納がスムーズに行えるか、ロックが確実にかかるかがポイントです。無理な力を加えると故障につながるため、動きが悪い個体は避けるのが無難です。

【02】シャッターが正常に切れるか
各シャッタースピードで動作するか、シャッター幕や羽根に異常がないかを確認します。特に低速シャッターは粘りやすく既定の速度が出ない機種もあります(筆者の機種も1/8からシャッター粘り発生)。巻き上げやシャッターチャージも含め、一連の操作が正常に行えるかを確認しましょう。1/15以下はほぼ使用しないため、シャッター粘りで安価になっている機種を選ぶのも手です。

【03】レンズにカビや曇りがないか
レンズ内部のカビや曇り、傷などは描写に影響する場合があります。可能であれば光に透かして確認し、絞り羽根に油染みがないかもチェックしておきたいところです。

【04】露出計と電池室の状態
露出計が正常に動作するか、指針の反応や電池室の腐食を確認しましょう。電池は代替電池が販売されていますが、電圧が従来の電池とは異なるため、気になる方は関東カメラサービスが出しているMR-9 (H-D) アダプターを用い電圧を変換し使用するのも良いでしょう。電池を入れて指針が動くことと、露出計の精度が正確であることは別なので、可能なら実写で確認するのが理想です。

【05】フィルム室と遮光材の状態
裏蓋の開閉やフィルム巻き上げ、巻き戻しが正常に行えるかを確認します。遮光材は経年劣化している可能性があるため、状態によっては交換が必要です。外観がきれいでも、実際に撮影すると光漏れなどが発生する場合がある点には注意しましょう。

専門店で動作確認済みの個体を購入するのが安心ですが、古いカメラである以上、購入後に整備が必要になる可能性もあります。価格だけで判断せず、保証や修理対応も含めて検討するのがおすすめです。機械式のカメラのため、露出計以外は今でも修理可能というのが心強い機種です。

まとめ

■撮影機材:Rollei 35S
■フィルム:Kodak ULTRAMAX 400

Rollei 35Sは、手のひらサイズのボディにSonnar 40mm F2.8を搭載した、携帯性と描写性能を両立したフィルムカメラです。目測式という独特の操作には慣れが必要ですが、距離を意識して撮影することで、一般的なカメラとは異なる撮影体験を楽しめます。

デジタルカメラのように撮影結果をすぐに確認することはできませんが、距離を予測し、露出を決め、シャッターを切るという一連の行為には、フィルムカメラならではの楽しさがあります。これからフィルムカメラを始めたい方も、写ルンですからステップアップしたい方も、Rollei 35Sで日常の何気ない瞬間を切り取ってみてはいかがでしょうか。

フィルムカメラの作例がもっと見たいという方は、2026年10/31(土)~11/8(日)まで東京・浅草橋の写真企画室ホトリで開催される筆者主催の「オールフォーマットフィルム写真展」にぜひご来場ください。Rollei 35Sは最も一般的なフィルムフォーマットですが、より小さいサイズから中判や大判と言ったデジタルにはないサイズまで、様々なフォーマットのフィルム写真が楽しめます。ぜひ下記の写真展詳細をチェックしてみてください。ではまた、次の記事でお会いしましょう!

オールフォーマットフィルム写真展2026

フィルムを愛してやまない46名が様々なフィルムフォーマットで展示をする「オールフォーマットフィルム写真展」あなたが撮りたいカメラ、好きなフィルムがきっと見つかる写真展です!11/3(火祝)、11/7(土)、11/8(日)は出展者が持ち寄るカメラ用品等のフリーマーケットも開催予定。フィルム、デジタル問わず写真好きの方、ぜひお越しください。

■場所:写真企画室ホトリ 東京都台東区浅草橋5-2-10
■期間:2026年10月31日(土)~11月8日(日)
■時間:13:00~20:00(最終日:13:00~19:00)

 

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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