シグマ「FP2」と「50mm F1.4 CL」発表! 山木社長が語る、新製品に込めた思いと進化の理由

ShaSha編集部
シグマ「FP2」と「50mm F1.4 CL」発表! 山木社長が語る、新製品に込めた思いと進化の理由

はじめに

2026年10月23日(金)、神奈川県川崎市のシグマ本社にて新製品発表会が開催された。今回発表されたのは、フルサイズミラーレスカメラ「Sigma FP2」と、新たなIシリーズの大口径標準単焦点レンズ「Sigma 50mm F1.4 CL DG | Contemporary」の2製品だ。

発表会では、株式会社シグマの代表取締役社長・山木和人氏が登壇。新製品の機能や性能だけでなく、その開発に至った背景や、シグマが大切にするものづくりへの思いが語られた。シグマは2026年9月9日に創立65周年を迎えた。冒頭では創業者である父・山木道広氏のエピソードに触れ、長年にわたり同社を支えてきたユーザーや関係者への感謝を述べた。

高性能化が進むデジタルカメラ市場において、シグマが今回提示したのは、単純なスペック競争とは少し異なる価値観だった。「使い手の自由な発想を大切にするカメラ」と、「あえて収差を残すことで、心地よい描写を目指したレンズ」。それぞれに込められた思いを、山木社長のプレゼンテーションとともに紹介していこう。

新製品発表会でプレゼンテーションを行う株式会社シグマ 代表取締役社長・山木和人氏

SIGMA FP2登場! 初代fpのコンセプトを継承した正常進化

今回の発表会の目玉となったのが、2026年11月11日発売予定のフルサイズミラーレスカメラ「Sigma FP2」だ。2019年に登場した初代「Sigma fp」は、当時、フルサイズミラーレスカメラとして世界最小・最軽量を実現した個性的なカメラだった。「ポケッタブル・スケーラブル・シームレス」という3つのコンセプトのもと、非常にコンパクトなボディに、アクセサリーによって自由に拡張できる仕組みと、静止画・動画の両方を楽しめる機能を盛り込んだ。今回のFP2でも、そうした初代fpの基本思想は変わっていない。一方、カメラとしての機能や使い勝手は大きく進化している。

新たに発表された「Sigma FP2」。初代fpのシンプルでコンパクトなボディデザインを継承している

FP2は、有効約2,450万画素の35mmフルサイズ部分積層型CMOSセンサーを採用。読み出し速度の向上によって、初代fpで課題となっていたローリングシャッター歪みを大幅に改善している。

上はfp、下はFP2で撮影。FP2ではローリングシャッター歪みを大幅に軽減している

AFも従来のコントラスト検出方式から、位相差検出とコントラスト検出を組み合わせた方式へと進化。瞳・顔だけでなく、犬・猫・鳥などの被写体検出にも対応する。連続撮影速度は最高約20コマ/秒。スナップやポートレートだけでなく、動きのある被写体に対しても、従来より使いやすいカメラとなった。

さらに、ユーザーからの要望が多かったチルト式液晶モニターを搭載。上方向約90度、下方向約45度に可動し、ローアングルやハイアングルでの撮影にも対応する。

新たにチルト式となった背面液晶モニター。撮影アングルの自由度が大きく向上している

この進化について山木社長は、会場のfpユーザーに向けて、こんな冗談を交えて紹介した。「大変、皆さまのご意向に反して、大変使いやすくなっております」会場からは笑いが起こった。初代fpは、その独創的な設計ゆえに、使いこなすための工夫が必要な部分もあった。そうした個性を愛してきたユーザーに対して、今回の進化をユーモアたっぷりに説明した形だ。

FP2では、約70GBの内蔵メモリーも搭載したほか、新開発バッテリーの採用によって撮影可能枚数も増加している。機能を充実させれば、当然ボディも大きくなりやすい。しかし、山木社長がエンジニアに強く要望したのは、初代fpとほぼ同じサイズを維持することだったという。結果として、ボディの幅はわずか0.2mmの増加にとどまり、高さは初代fpと同じ69.9mmを維持。奥行きはむしろ薄くなっている。見た目はほとんど変わらないにもかかわらず、中身は大きく進化しているのだ。

初代fpとのサイズ比較を示すプレゼンテーション。機能を大幅に強化しながら、ほぼ同じボディサイズを実現した

「ブリコラージュ」という考え方が示す、fpの本当の魅力

山木社長のプレゼンテーションで特に印象的だったのが、「ブリコラージュ」という言葉を用いたfpの開発思想の説明だ。山木社長は、2019年に初代fpを発表した当時を振り返り、海外メディアから受けた質問について紹介した。「このカメラは誰に向けて作ったカメラですか?」
エントリー向けなのか、ハイエンドなのか。静止画用なのか、動画用なのか。従来のカメラ市場の分類に当てはめようとする質問に対して、山木社長はうまく説明できなかったという。そもそもシグマは、特定のユーザー層や撮影用途を想定して初代fpを開発したわけではなかった。自分たちが使いたい、コンパクトで、静止画も動画も楽しめて、自由にアクセサリーを組み合わせられるカメラを作ったのだ。

市場の分類にはうまく当てはまらない。しかし、そんなfpを長年愛用し続けてくれるユーザーがいた。特に山木社長の心に残っているのが、2024年頃に開催したfpユーザーの交流イベントだったという。ユーザーはそれぞれ、自分の好きなレンズやアクセサリーを取り付け、思い思いのスタイルでfpを楽しんでいた。

思い思いにアレンジされたfp

そうしたユーザーの姿を見て、山木社長が思い浮かべたのが、フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの提唱した「ブリコラージュ」という考え方だった。

山木社長が紹介した「ブリコラージュ」の考え方。フランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの著書『野生の思考』にも登場する概念だ

ブリコラージュとは、手元にある道具や材料を組み合わせながら、試行錯誤によって新しいものを作り出していくことを意味する。最初に完成形や目的を決め、それに合わせて専用の道具や部品を用意するエンジニア的な考え方とは異なり、今あるものを組み合わせることで、そこから新たな発想が生まれていく。そして、ブリコラージュを行う人のことを「ブリコルール(器用人)」と呼ぶ。

山木社長は、fpを自由にカスタマイズして楽しむユーザーの姿に、このブリコルールのあり方を重ね合わせた。もしかすると、fpは特定の用途に最適化されたカメラではなく、ユーザー自身が用途や楽しみ方を発見していくカメラなのではないか。完成形が決まっていないからこそ、組み合わせを変えるたびに新しい発見がある。それはメーカーが使い方を決めるのではなく、ユーザー自身が主体となってカメラの可能性を広げていくという考え方だ。今回のFP2も、この思想を受け継いで開発されている。

ブリコラージュとエンジニアリングの違いを説明するスライド。fpが大切にする自由な発想を象徴する考え方だ

新レンズ「50mm F1.4 CL」|あえて収差を残すという挑戦

もう一つ発表されたのが、「Sigma 50mm F1.4 CL DG | Contemporary」だ。こちらは2027年早春に発売予定の、新しいIシリーズ「CL」の第1弾となるレンズである。

新たに発表された「Sigma 50mm F1.4 CL DG | Contemporary」。ブラックとシルバーの2色が展示されていた。シルバーはLマウント用のみ

このレンズについても、山木社長は製品のスペックを説明する前に、デジタルカメラとレンズの進化の歴史を振り返った。デジタルカメラの発展は、高画素化と高解像化の歴史でもある。カメラのセンサーが高画素化するにつれて、それまで気にならなかったレンズの収差や解像性能の不足が目立つようになった。レンズメーカーも、より高い解像性能を追求するようになり、現在では非常に高精細な写真を撮影できるようになっている。

山木社長は、この技術の発展が写真文化にもたらした功績を高く評価している。しかし、その一方で、あまりに解像感が高い現代のレンズ描写に対して、どこかしっくりこないという声も聞こえてきたという。フィルム時代の写真にあった柔らかさや温かみ、厚みのようなものが感じられない。映画の世界では、そうした描写を求めて、1960年代や1970年代のビンテージレンズを使用する映像制作者も少なくない。そこでシグマが考えたのが、現代の光学技術を用いながら、従来とは異なる描写を追求するレンズだった。

「ピント面はしっかり来るんだけれども、でも何かカリカリになりすぎない」山木社長が説明したのは、ピントの合った部分から前後のボケへとなめらかにつながる、柔らかさを持った描写だ。シグマのArtシリーズでは、収差を徹底的に補正し、現代的で欠点の少ない描写を追求している。

一方、今回の50mm F1.4 CLでは、あえて収差を残すという、異なるアプローチを採用した。ただし、昔のレンズをそのまま再現するわけではない。現代的なガラス材料や非球面レンズを用いて、不快なゴーストなどは抑えながら、心地よい柔らかさや自然な立体感につながる収差を精密にコントロールしている。

伝統的なダブルガウス型をベースとしたレンズ構成。最新のFLDガラスや非球面レンズを組み合わせ、収差を意図的にコントロールしている

F1.4という明るさを持ちながら、Lマウント用のサイズは最大径64.7mm、全長54.0mm、重量375gとコンパクト。14枚の円形絞り羽根を採用し、美しいボケの表現にもこだわっている。また、金属製の外装や絞りリング、被写界深度目盛など、クラシカルな操作感も備えている。

F1.4の大口径ながら、最大径64.7mm、全長54.0mm、重量375gというコンパクトなサイズを実現した(Lマウント用)

新開発モーター「RDD」に込められた技術者の挑戦

今回のレンズでは、AF駆動用として新開発の「RDD(Rotary Direct Drive)」が採用された。レンズの全群を前後させる全群繰り出し方式では、重いレンズ群を動かす必要があるため、AFの駆動機構が課題となる。そこでシグマのエンジニアは、円周方向にコイルとマグネットを配置した、新しいAF駆動機構を開発した。

山木社長は、このモーターを初めて見たときの驚きを、会場でユーモラスに紹介した。「なんじゃこりゃあ!」これは、テレビドラマ『太陽にほえろ!』で松田優作さんが演じたジーパン刑事の殉職シーンでの有名なセリフになぞらえたもの。山木社長は「すいません、昭和の話で、若い方いらっしゃったら分からないかもしれませんけど」と会場を笑わせながら、それほど驚いたのだと振り返った。

これまでに見たことのない構造に驚き、エンジニアに「なんでこんなの作ったの?」と尋ねたところ、「いや、社長、やっていいって言ったじゃないですか」と返されたという。ユーモアあふれるやり取りだが、そこには、必要であれば新しい機構そのものから開発してしまう、シグマの技術者たちの姿勢が感じられる。

新たに開発されたAF駆動機構「RDD」。全群繰り出し方式を採用したレンズのAF駆動を支える

この50mm F1.4 CLは、単にクラシカルな見た目や昔風の描写を再現したレンズではない。最新の技術を用いて、現代のレンズが失いかけていた表現の魅力を、もう一度見つめ直した製品といえるだろう。

静止画も動画も。FP2が広げる写真表現の可能性

FP2は、初代fpから受け継ぐ静止画と動画のシームレスな撮影スタイルも進化させている。特に注目したいのが、多彩なカラーモードだ。搭載するカラーモードは13種類。シグマの基本となるスタンダードのほか、映画の色表現から着想を得たリッチやウォーム、ティールアンドオレンジ、パウダーブルー、ウォームゴールドなどを備えている。

山木社長によれば、リッチモードの開発にあたって、画像開発チームは1980~90年代の映画を繰り返し鑑賞し、その色彩表現を研究したという。さらに、かつてのFoveonセンサー搭載カメラの色を再現したFOVクラシックブルーやFOVクラシックイエローなど、シグマのデジタルカメラの歴史を感じさせるカラーモードも用意されている。カラーモードを切り替えることで、同じ被写体でも異なる雰囲気を楽しめるのは、撮影者の表現の幅を広げる魅力の一つだ。

また、FP2は動画性能も充実している。6Kオープンゲート撮影に対応するほか、Apple ProRes RAWやL-Logといった本格的な映像制作向けの記録形式を採用。32bitフロート録音にも対応している。山木社長は、動画撮影では特にハイライト側のダイナミックレンジを重視したと説明。明るい部分の階調をできる限り粘り強く残すことで、デジタル映像特有の硬さを抑えた表現を目指したという。

さらに、新しい電子ビューファインダーやLCDビューファインダー、ホットシューユニットなどのアクセサリーも用意されている。

電子ビューファインダーとレンズを装着したFP2。必要に応じてシステムを拡張できることもfpシリーズの特徴だ

カメラ単体で気軽にスナップ撮影を楽しむこともできれば、アクセサリーを追加して本格的な動画撮影に対応することもできる。撮影する人の目的に合わせて自由に姿を変えるというfpのコンセプトは、FP2になっても健在だ。

会場で見た、新製品のディテール

発表会後には、新製品の実機も展示されていた。FP2の外観は初代fpのデザインを踏襲しており、非常にシンプルだ。正面から見ると、直線的で無駄のない箱型のボディが印象的である。

斜め前方から見たFP2。シンプルなボディデザインとコンパクトさが特徴だ

背面には大きな液晶モニターを配置。上面と背面に操作ボタン類が集約されており、従来のfpシリーズとの共通性を感じさせる。

FP2の背面。操作部のデザインも初代fpの雰囲気を受け継いでいる

今回の新レンズはブラックとシルバーのモデルが展示された。金属外装ならではの質感に加え、ピントリングや絞りリング、被写界深度目盛など、写真を撮る道具としての操作感にも配慮されている。

ブラックモデルの50mm F1.4 CL。レンズ鏡筒には絞りリングや被写界深度目盛を備える。高品位な金属外装が印象的だ

おわりに|シグマが提案する、写真を楽しむ新しい選択肢

今回の発表会で印象に残ったのは、シグマが新製品の性能を高めるだけでなく、「写真を撮る楽しさとは何か」という根本的な問いに向き合っていることだった。FP2では、初代fpから受け継ぐ自由な拡張性を守りながら、より多くの人が使いやすいカメラへと進化させた。一方、50mm F1.4 CLでは、高い解像性能だけを追求するのではなく、柔らかさや自然な立体感といった、数値では表しにくい描写の魅力を追求している。それぞれ異なる方向から開発された製品だが、どちらにも共通しているのは、撮影者自身の感性や表現を尊重する姿勢ではないだろうか。

山木社長は、FP2の発表を締めくくるにあたり、このカメラによってユーザーの写真ライフがさらに豊かになることへの期待を語った。カメラやレンズの進化が、より高い性能を実現するだけでなく、写真を撮る人の自由な発想や新たな発見につながっていく。今回の2つの新製品からは、そんなシグマのものづくりへの思いが感じられた。

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