軽快さと表現に富んだ描写力を両立|フォクトレンダー NOKTON 23mm F1.2 Aspherical Xマウント Silverレビュー
はじめに
フォクトレンダーのNOKTON 23mm F1.2 Aspherical Xマウントは、2022年にブラックモデルが発売され、2026年10月にシルバーモデルが追加されます。
スナップ、ポートレート、テーブルフォトまで幅広くこなす万能なこのレンズは、F1.2の大きなボケ味と、被写体が浮き立つような立体感が魅力です。
今回はNOKTON 23mm F1.2 Aspherical Xマウント Silverを、FUJIFILM X-E4に装着して撮影に出かけてきました。
圧倒的なコンパクトさと金属削り出しの高品質な質感
フラットで洗練されたX-E4のデザインに、金属製レンズの質感がバランス良くベストマッチ。シックで落ち着いた雰囲気は、レンジファインダースタイルのXシリーズにふさわしい仕上がりになっています。

<基本スペック>
焦点距離:23mm(35mm判換算35mm相当)
レンズ構成:6群10枚
最小絞り:F16
絞り羽根:12枚
最短撮影距離:0.18m
最大撮影倍率:1:4.9
外形寸法:φ59.3×43.8mm
フィルター径:46mm
重量:214g
すでに発売済みのブラックモデルから光学仕様の変更はありませんが、フォクトレンダーのXマウントレンズは、電子接点搭載による快適な撮影サポートがありがたい点です。対応ボディとの通信により、EXIF情報の記録やフォーカスチェック(拡大表示)、撮影距離連動表示のほか、ボディ内手ブレ補正やパララックス補正(X-Pro3)にも対応しています。
なんといってもアルミ削り出しの金属の質感が秀逸な仕上がりです。見ているだけでうっとりしてしまいます。

F1.2の大口径でありながら、最大径59.3mm×全長43.8mm、重さ約214gと非常に軽量コンパクト。X-E4の軽量ボディ(約364g)と合わせても合計約580gです。
個人的に好みな「ブラックボディにシルバーレンズ」の組み合わせで、満足度の高い見た目。手にするとしっくりとくる重みも撮影意欲を掻き立ててくれます。


マニュアルフォーカス(MF)を楽しむコツ
X-E4のようにレンジファインダースタイルのカメラでは、右目でファインダーをのぞきつつ、左手でしっかりレンズを下から支えることでホールド感が上がり、ピントリングの操作が安定します。
左手で絞りリング、右手でX-E4のシャッタースピードダイヤルを操作するメカニカルな一体感と、指掛かりの良いフォーカスリングによる心地よい操作感。ファインダーをのぞきながらピントが合っていく瞬間を視界いっぱいに確認できるのは、液晶モニターでは味わえない、ファインダー撮影の醍醐味です。
「自分の意思でピント位置を決めてシャッターを切る」というMFの没入感は、写真撮影体験の豊かさを実感できる心地よさがあるはずです 。

MFレンズでの撮影に慣れていない方もいるかもしれませんが、ボディ側の「フォーカス設定」メニューから、「MFアシスト」の「フォーカスピーキング機能」(ピーキングで色が載る)を活用してピント合わせを行います。
さらに「フォーカスチェック」機能をオンにしておけば、フォーカスリングを回すと自動的に画面が拡大され、利便性が高まります。こうした機能を活かせば、MFレンズが初めての方にも扱いやすいでしょう。そうでなくとも、開放F1.2のシビアなピント合わせではこの機能を頼りたくなるものです。
開放F1.2が魅せるボケ味と近接性能
このレンズにおいて、「最短撮影距離0.18m×開放F1.2」を堪能しない手はありません。
ピント面はかなり繊細でありつつ、その周囲はソフトフォーカスのような描写が得られます。クローズアップ撮影をすると、背景は広角レンズとは思えないトーンの柔らかな大きなボケに魅了されます。
開放F1.2付近では、レンズのコンパクトさと大口径ゆえに画面周辺部でレモン型(口径食)に変形する傾向がありますが、少し絞ることで周辺部まで形が整います。

■撮影機材:富士フイルム X-E4 + フォクトレンダー NOKTON 23mm F1.2 Aspherical
■撮影環境:SS1/100秒 絞りF1.2 ISO320 +1.7EV AWB
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム

■撮影機材:富士フイルム X-E4 + フォクトレンダー NOKTON 23mm F1.2 Aspherical
■撮影環境:SS1/170秒 絞りF1.2 ISO160 +1EV AWB
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム

■撮影環境:SS1/45秒 絞りF1.2 ISO160 -1.7EV WB3500K
■フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス
開放F1.2でのスナップ撮影時は、ボケを活かした奥行きを表現することもでき、意図せずとも、シネマチックなイメージを引き出しててくれます。

■撮影機材:富士フイルム X-E4 + フォクトレンダー NOKTON 23mm F1.2 Aspherical
■撮影環境:SS1/800秒 絞りF1.2 ISO320 -0.7EV AWB
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
絞ったときのキレのある解像力
開放F1.2による優しくふんわり、やわらかな表情から一変、F5.6〜F8まで絞ることで写真の印象が大きく変わります。画面隅々までスッキリとシャープに解像する二面性を持ち合わせており、かなり繊細な描写を体感できます。
キレのある写りはもちろんですが、視界の開けた場所ではなぜか23mm(35mm判換算35mm相当)という標準寄りの画角でありながら、どこかそれ以上に広く感じられました。いろいろな表現力を持ち合わせた、変化に富んだ面白いレンズです。
束の間の晴天。久しぶりに広い空を眺めたくて海辺まで出かけた日。青空のヌケ良く気持ちのよい描写に〝やっぱり晴れた日はいいな〟と、レンズの力強さを感じながら撮影を楽しんできました。

■撮影環境:SS1/1250秒 絞りF6.4 ISO160 -0.3EV AWB
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム

■撮影環境:SS1/2400秒 絞りF4 ISO320 +0.3EV AWB
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ

■撮影環境:SS1/1000秒 絞りF4 ISO160 +0.3EV AWB
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ
繊細な描写はモノクロにもふさわしく、雲や波、岩場のディテールを見事に写し出してくれます。手前から遠景まで隙のない描写です。

■撮影環境:SS1/3000秒 絞りF8 ISO320 WB太陽光
■フィルムシミュレーション:モノクロ(R)

■撮影環境:SS1/900秒 絞りF9 ISO320 WB太陽光
■フィルムシミュレーション:モノクロ(R)

■撮影環境:SS1/500秒 絞りF4 ISO160 -0.3EV WB太陽光
■フィルムシミュレーション:モノクロ(R)
フィルムシミュレーションとの相性
「クラシックネガ」や「クラシッククローム」で開放F1.2のボケを活かすと、まるでオールドレンズで撮ったような、どこか郷愁の漂う写真に。彩度が低くなると、イメージの中で「褪色=古さ」を感じさせるのでしょう。
9月の東京は曇天、雨天続きなこともあり日照時間も短く、パッと晴れやかな気持ちになれませんでした。そこで、あえて落ち着きのある色「ETERNAブリーチバイパス」を選んで撮影してみましたが、それはそれでしっくりとイメージがハマってくれたので、かえって撮影が楽しくなりました。
〝普段積極的に使っていないフィルムシミュレーションを意識して使うのも悪くない〟と、NOKTON 23mm F1.2 Asphericalの描写がそう感じさせてくれます。

■撮影環境:SS1/4000秒 絞りF1.2 ISO160 -1EV WB太陽光
■フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス

■撮影環境:SS1/750秒 絞りF1.2 ISO160 -1.7EV WB太陽光
■フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス

■撮影環境:SS1/450秒 絞りF2 ISO320 -0.3EV AWB
■フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス
雨が降ってきて湿り気を帯びると、大人びた空気を漂わせ、グッと引き締まる渋い色味がこれまた魅力的。このレンズには深みのあるフィルムシミュレーションがしっくりとくるようです。

■撮影環境:SS1/240秒 絞りF1.2 ISO320 -1EV AWB
■フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス

■撮影環境:SS1/30秒 絞りF3.2 ISO1600 -0.7EV AWB
■フィルムシミュレーション:ETERNA ブリーチバイパス

■撮影環境:SS1/30秒 絞りF1.8 ISO640 -2EV AWB
■フィルムシミュレーション:クラシッククローム
おわりに
フォクトレンダー NOKTON 23mm F1.2 Aspherical Xマウントは、ただコンパクトで扱いやすいだけのレンズではありません。開放F1.2で魅せるボケ味と幻想的な世界観、寄ったときの優しいクローズアップ表現、そして絞り込んだときのハッとするような解像力——。
一つのレンズの中に表情の異なる描写力をあわせ持ち、フィルムシミュレーションが組み合わさることで、日常の何気ない風景をシネマチックに一変させてくれます。また、ファインダーをのぞきながら自分の手でピントを合わせる操作感は、忘れていた「写真を撮る純粋な楽しさ」を改めて思い出させてくれました。
新色のシルバーモデルが加わることで、愛機のドレスアップとしてさらに選択肢が広がります。ぜひこの上質な金属鏡筒を手に取り、MFならではの濃密な撮影体験を楽しんでみてください。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
日本作例写真家協会会員・PhotoPlus+主宰













