フォクトレンダー NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount|被写体にじっくり向き合いたくなるマニュアルレンズ

金森玲奈
フォクトレンダー NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount|被写体にじっくり向き合いたくなるマニュアルレンズ

はじめに

フィルムカメラ時代に私が初めて買ったカメラの決め手は「AFが使えること」でした。年々進化を続けるカメラやレンズは、残したい瞬間を捉えるための心強い存在です。特にピント合わせを自動で行ってくれるAFの精度は機材選びにおいて大きなウエイトを占めるのではないでしょうか。スピーディーで正確なオートフォーカスが当たり前になった現代において、コシナのVoigtlanderシリーズはひと味違った視点で写真を撮ることを楽しめるレンズです。今回はそんな「NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount」の魅力をご紹介していきます。

仕様・デザイン

「NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount」はコシナが昨年1月に発売したキヤノンのフルサイズ用大口径マニュアルレンズです。最大径×全長はφ70.8×56.4mm、金属ボディのため重量は400gとそれなりの重さがありますが、コンパクトなサイズ感のおかげかそこまで重いといった印象はなく、手のひらに沈み込むような重量感が心地良く感じられました。

電子接点を搭載しており、撮影情報のExifの記録が可能です。ボディ内手ブレ補正機構搭載のカメラでは3軸のボディ内手ブレ補正の他に、拡大表示、ピーキング、フォーカスガイド(EOS RPのみ非対応)といった3種類のフォーカスアシスト機能に対応しています。
マニュアルフォーカスレンズのため、ピント合わせ時はフォーカスピーキング機能や拡大ボタンを使うことで意図したピント位置をしっかりと捉えることができるでしょう。キヤノンRFマウント用ミラーレスカメラのイメージセンサーに最適化された光学系を実装しており、フルサイズ、APS-CどちらのEOS Rシステムのミラーレスカメラでも使用できます。

やわらかな空気感を纏ったF1.2の描写

「NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount」の開放F値はF1.2と明るく、そのボケ味は非常にやわらかいです。それと共に周辺光量の落ち込みも見受けられます。

地元駅前に鎮座するウルトラマン像。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/2000sec F1.2 +3EV補正 ISO100 WBオート

ただし、これは絞り込むことで解消できますし、画面中心に向かって綺麗なグラデーションを描くこの周辺光量落ちの描写も主役を引き立てる視覚的効果として一役買ってくれると思います。
また、開放時のピントはしっかりと芯はありつつも、それを包み込む、滲むようなボケ味が近年の解像感の高いレンズ描写に慣れた目にはやさしく映りました。もちろん、こちらも絞ることで滲みは解消されシャープな描写を得られるのでシーンによって使い分けを楽しめると思います。

F1.2で撮影。犬のクッキーの周辺が少し滲んで見えます。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/60sec F1.2 +1/3EV補正 ISO640 WBオート
F1.8まで絞ると滲みはほぼ解消しすっきりとした描写に。周辺光量落ちも抑えられています。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/80sec F1.8 +1/3EV補正 ISO1600 WBオート

光をやさしく捉えてくれるレンズ

「NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount」でボケ味の次に気に入ったのは光の再現性です。逆光時の色収差は画面上に太陽が入った場合は多少フリンジが発生しましたが、それ以外ではほとんど気にならず、ただ目の前の景色を包む光のやわらかさが印象に残る気持ちの良いものでした。

平日朝の公園を独り占め。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/800sec F1.8 +1 2/3EV補正 ISO100 WBオート
昨日の誰かの忘れ物。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/800sec F1.8 +1 2/3EV補正 ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Asperical RF-mount
■撮影環境:1/160sec F1.8 +1 1/3EV補正 ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/1000sec F1.2 +1 2/3EV補正 ISO100 WBオート
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/80sec F1.2 +1 1/3EV補正 ISO5000 WBオート

街スナップと相性抜群

私たち人間の視野より少し広い40mmという画角とコンパクトなサイズ感は、街スナップのお供に最適です。今回はフルサイズのEOS R8と一緒に近所を散策してきました。

フェンス越しにチューリップをパチリ。マニュアルでピントを合わせるので徐々にチューリップが浮かび上がってくる様子に気分も上がりました。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/2500sec F1.2 +1 2/3EV補正 ISO100 WBオート
地元の老舗洋食屋さんの食品サンプル。サンプルでも美味しそう。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/80sec F2.0 +1 2/3EV補正 ISO100 WBオート
気持ち良さそうに風に泳ぐ鯉のぼり。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/4000sec F1.8 +2/3EV補正 ISO100 WBオート

マニュアルでピントを合わせるので必然的に動かない植物に目が行きがちに。季節的にも色とりどりの花が街を彩っていて、そんな色彩を探して歩くのも楽しかったです。

■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/1000sec F1.2 +2EV補正 ISO100 WBオート
フリルのような藤の花。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/3200sec F1.2 +1/3EV補正 ISO100 WBオート
一輪に何枚花びらがあるんだろう、なんて考えながら。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/60sec F1.6 +3EV補正 ISO100 WBオート
足元にも可憐な花たち。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/100sec F1.2 +2/3EV補正 ISO100 WBオート
立葵(タチアオイ)を見かけると夏の気配を感じます。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/1250sec F1.2 +2 1/3EV補正 ISO100 WBオート
空に向かって細い茎を精一杯伸ばすヒナゲシ。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/2000sec F1.2 +3EV補正 ISO100 WBオート
数駅先のお気に入りの神社。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/1600sec F1.2 +1EV補正 ISO100 WBオート
境内の樹木にはそれぞれの木の名前が手彫りされた絵馬がかかっていて、字体がなんともかわいらしいです。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/400sec F1.2 +1EV補正 ISO100 WBオート
いつもとはひとつ違う角を曲がると、人とすれ違うのもスレスレな細い暗渠を発見。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/640sec F1.2 +1EV補正 ISO100 WBオート
帰り道の綺麗に晴れ渡った空。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/4000sec F1.2 -1EV補正 ISO100 WBオート

さいごに

「NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount」は開放F1.2のやわらかく美しいボケ味と、純正レンズとはひと味違う独自の世界観を持ったレンズです。即写性においてはAFレンズにはもちろん敵いませんが、じっくりと被写体と向き合いピントを合わせる時間も含めて「写真を撮る」ことを楽しめるレンズだと思います。コシナが追求する唯一無二の世界観を持ったフォクトレンダーシリーズは、写真を表現として楽しむ人にもきっと素敵な世界を見せてくれるでしょう。

右手を枕にされてしまったのでカメラを前後させてピント位置を合わせるアナログな撮り方でパチリ。ひと手間かかったからこそ思い出深い一枚に。
■撮影機材:Canon EOS R8 + Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RF-mount
■撮影環境:1/80sec F2.0 -1EV補正 ISO100 WBオート

 

■写真家:金森玲奈
1979年東京生まれ。東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。東京藝術大学美術学部附属写真センター勤務等を経て2011年からフリーランスとして活動を開始。フォトレッスン「ケの日、ハレの日」を主宰。祖師ヶ谷大蔵のアトリエで写真をプリントする楽しさを伝えるワークショップなども開催しつつ、毎週金曜日は写真と雑貨のお店としてアトリエをオープンしている。個展・企画展多数。

 

 

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