星空に赤い星雲を美しく描写する『OM SYSTEM OM-3 ASTRO』飯島 裕
はじめに
2026年2月に発売になった「OM SYSTEM OM-3 ASTRO」は、天体写真用として特別に開発されたミラーレスカメラだ。このカメラは2024年7月発売の、同じく天体撮影に特化した「E-M1 MarkIII ASTRO」の後継機種になる。このような特殊なモデルがわずか1年半で新機種発売となったのは驚きだが、最近の星空・星景写真への関心の高さゆえのことだろう。
特殊なモデルにも関わらず、E-M1 MarkIII ASTROの販売はメーカー想定を大きく上回るものだったそうだ。この機種は日本国内のみの販売だったが、新しいOM-3 ASTROは世界市場に広く展開するそうで、欧米での反響もやはり想像以上のものだと聞く。
天文ファン、天体・星景写真ファンにはとても魅力的なこのカメラ。私は発売に先駆け1年ほど前から試作機などでの試写を担当させていただいた。そこで実際に撮影した写真をお見せしながら、このカメラの特別な魅力や楽しさをお伝えしてみようと思う。
そもそも天体用カメラとは?
一般的なカメラは、人が見る色の写真になるように、赤外線をカットするフィルターがイメージセンサーの前に備えられている。しかし、そのために星空の中で赤い光で美しく輝く星雲の光が大幅にカットされてしまってよく写らないのだ。
次のグラフを見てほしい。濃い青の実線が天体用にフィルターを換装したOM-3 ASTROの分光感度を模式的に表したものだ。破線が通常モデルの赤外線カットで、このように赤外線に近い赤い光を大きくカットしている。こうして人の目の色の感じ方(緑の山形の実線)にカメラの色の感じ方を合わせているわけだが、そのために散光星雲に見られる赤い光のHα線(水素原子が放つ波長656.3nmのスペクトル線)の波長で大幅に感度が低下していることが分かる。
この赤外線カットフィルターをHα線を100%透過するものに換装し、星雲の姿をクッキリと描き出すことができるようにしたのがASTROモデルになる。ちなみにグラフにある「S II」も天体写真ファンが写したい散光星雲のスペクトル線だ。こちらをハッキリ写すには特殊フィルターが必要になるのだが、そういうディープな天体撮影にもOM-3 ASTROで対応できるということだ。

実際に星空を撮るとノーマル機とASTROモデルでどのように写りが違ってくるのか。そこを見てみよう。
夏の星空を代表する「さそり座」の一等星アンタレス付近を撮ったのが次の写真だ。ここはカラフルな星雲が入り混じっていて、天体写真ファンにとても人気のあるエリアである。この2枚はノーマルOM-3とOM-3 ASTROの2台で全く同時に撮影し、背景の色がほぼ同じになるように画像調整している。
写真に見られる青やオレンジ色の星雲は、星間分子雲が近くの恒星の光を反射している「反射星雲」で、これはノーマルOM-3でもよく写っている。しかしHα線の赤い星雲の写りはOM-3 ASTROの方が淡い部分まではるかに良く写っていることがわかるだろう。このカラフルさがASTROモデルならではの魅力。肉眼の可視光領域ではほとんどわからない宇宙の姿まで見ることができるようになるのが、このような天体用カメラならではの楽しさだ。


■撮影環境:F3.5 60秒 ISO6400 手持ちハイレゾショット
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
星空撮影のための機能と、星空撮影フローに最適化したOM-3 ASTROの操作系
OM-3 ASTROのベースとなったのは、クラシカルな外観の中に先進的な機能を搭載されたOM-3だ。OM SYSTEMのカメラは、従来より星空撮影に便利な機能がさまざま搭載されているのはよく知られたところで、OM-3もそこは同じ。
モニターやEVFで天の川までよく見える「ナイトビュー」と通常表示の切り替え、MFで必須のライブビュー拡大表示(最大14倍)、ワンタッチで精度の良いピント合わせができる「星空AF」、ピント合わせ後に星空撮影にピントがずれないようにする「フォーカスリングロック」など、よく使われる機能があらかじめFnボタンに割り当てられている。
小型なボディのために厚い手袋を使用する寒冷時などで操作しにくい場合もあるが、効率の良い星空撮影では大いにありがたい機能だ。
ちなみにフォーカスリングロックを効かせた状態でも星空AFは動作するので、結露防止ヒーターをレンズぐるぐる巻き状態でもレンズに触らずに星にピント合わせができるのは、星空撮影の現場でとてもありがたい。また、OM-3はUSB-PD規格に対応していて外部給電が可能なので、長時間の連続撮影でも安心だ。
OM-3にはリモコンケーブルのソケットが無いので、遠隔操作には「ワイヤレスリモコン RM-WR2」を使用することになる。とはいえ、設定で露出開始のディレイが可能なうえ、マニュアルで60秒まで設定が可能なので、リモコンがなくても大抵の星空撮影が出来る。

OM-3 ASTROボディ。背面の「AF-ON」ボタンを押すと星空AFが作動する。左肩の「|⚪︎|」ボタンにナイトビューと通常表示の切り替え、右肩の「Fn」ボタンに拡大表示がセットされていて、MFしたい場合にも速やかにモニター表示を切り替えることができる。同じく右肩の動画ボタン「◎」がフォーカスリングロック機能に割り当てられている。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
■撮影環境:F1.8開放 10秒 ISO8000
ボディマウントフィルターBMF-SE01使用
三脚固定撮影
ナイトビューのおかげで、星々はもちろん水平線や海岸の様子まで確認することができ、構図合わせが容易だ。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO
■撮影環境:F1.4 8秒 ISO6400
ボディマウントフィルターBMF-SE01使用
三脚固定撮影
おうし座のヒアデス星団やプレアデス星団(すばる)の賑やかな星たちに加え、ペルセウス座のカリフォルニア星雲の赤い光が色を添えているのがASTROモデルならではの星景写真だ。
OM-3 ASTROの星空撮影用カスタムモード
OM-3のモードダイヤルには5つのカスタムモードがある。ASTROモデルでは、そのうちC1〜C3の3つが星空撮影用に初期設定、ホワイトバランスや露出の初期設定が星空撮影に適した値にプリセットされている。さらに、OM-3ボディ前面に備えられている「クリエイティブダイヤル」を回して「カラープロファイルコントロール」を使用することで、カメラの撮って出しJPEGでも、より印象的な天体・星景写真にすることができる。
ASTROモデルを開発するにあたりハイエンドのOM-1 Mark IIではなくOM-3をベース機に選んだのは、ボディが軽量であることもあるが、このカラープロファイルコントロールが使えることが大きな理由だそうだ。その機能によってRAW現像することなく、カメラだけで好みの色に星空写真が仕上げられるのが狙いだそうだ。なるほど。
では、それぞれのカスタムについて見てみよう。ここが天体撮影カメラOM-3 ASTROならではの特徴だ。
C1:天体・星雲撮影モード(ASTROPHOTO)
C1は、星雲や天の川を印象的な描写に仕上げるモードだ。「手持ちハイレゾショット」が初期設定され、撮影待ち時間4秒の低振動モードが設定されている。手持ちハイレゾでは12コマの画像がスタッキングされる。ハイレゾショットの効果については後に詳しく述べるが、ここではカメラ内生成JPEG画像のプリセットされた階調や色味を見てもらいたい。

普通のMモードで撮影。ホワイトバランスは「3500K G-5」に手動でセット。仕上がりは「Vivid」設定だが、このままでは、星雲は非常に淡くて低コントラストだが、星雲ではこれが普通の写りだ。

C1モードで撮影。コントラストと彩度が高く設定されているので、赤い星雲がいくらかよく見えるようになった。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:F4.0 60秒 ISO8000 手持ちハイレゾショット
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
C1モードにカラープロファイルを「COLOR1」で撮影。「ハイライト&シャドウコントロール」で背景が黒く引き締まり、赤い星雲が強調されるプリセットだ。このままでもある程度は見栄えのする写真になっていると思う。ただし、色味や諧調は空の条件で大きく変わってしまうこともある。自分の好みでRAW現像する場合の画像調整のスタート地点として考えるのが良いかもしれない。

普通のMモードで撮影。RAW現像で諧調を整えることを前提にたっぷり露光する基本露出だが、このままではフラットすぎる。だが、これが星空撮影の普通。

C1モードで撮影。高コントラスト高彩度な設定で、天の川や赤い星雲がはっきりしてきた。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PRO
■撮影環境:F2.8 60秒 ISO3200 手持ちハイレゾショット
ボディマウントフィルターBMF-SE01使用
ビクセン製赤道儀「ポラリエU」で追尾撮影
C1モード、カラープロファイル「COLOR1」のプリセットで撮影。背景を引き締める「ハイライト&シャドウコントロール」と赤い星雲を強調するカラー設定で、印象的な冬の星空写真になった。
C2:三脚撮影星景モード(STARSCAPE)
C2のカスタムは、地上部の描写も意識した星景写真のためのモード。こちらも手持ちハイレゾショットが初期設定されているが、ここではハイレゾをOFFにした通常撮影のカメラ生成JPEGで、星景写真の諧調や色味を見てみよう。
このカスタムも、C1と同じく撮影待ち時間4秒の低振動モードが設定されている。

普通のMモードで撮影。地上部を描出しようとすると、どうしても星空部分が明るくなってしまう。

C2モードでの撮影。コントラストが高めの設定だが、天体と暗い地上部を明るく中間調を落とすハイライト&シャドウコントロールで印象的な階調に仕上がった。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO
■撮影環境:F1.2 1.0秒 ISO25600
ボディマウントフィルターBMF-SE01使用
三脚固定撮影
C2モードでカラープロファイルを設定。C2では星雲の赤みを強調する「COLOR2」がプリセットされている。赤が強くなるので夜空の青みがおとなしめになるが、ここは好みしだいというところ。自分で仕上げるRAW現像の良いスタート地点にもなるだろう。
C3:手持ち撮影星景モード(HANDHELD)
OM SYSTEMのカメラは手ぶれ補正の強力さに定評がある。OM SYSTEMになる前のOLYMPUS時代に初めてボディ内手ぶれ補正が搭載されたのは、フォーサーズ一眼レフの「OLYMPUS E-510」だった。2007年発売のモデルである。この発表のときにお話しさせていただいた技術者さんが「星空も手持ちで撮れるようにしたい」と言っていたことを、とても印象的に覚えている。その後は手ぶれ補正も進化して、E-M1X(2019年発売)の頃には手持ちで天の川が写せるほどになった。
OM-3 ASTROのC3のカスタムは、手持ちでの星空撮影に適した設定がされたモードだ。色調や階調はC2と同じ設定で、星空AFは速度優先となっている。
カメラを構えてシャッターボタンを半押しすると、ライブビューに重ねて「手持ち撮影アシスト」のインジケーターが表示される。これはカメラのブレを可視化する機能で、数秒を超えるような長秒露光でも手ぶれを効果的に抑えることが出来るようになる。
実際に使用してみた印象としては、フラッグシップ機のOM-1系ほどの効きではないにしろ、十分に手持ちで星空撮影が可能だ。三脚不要ということは、カメラポジションやカメラアングルの自由度が飛躍的に高まるわけで、スナップ撮影に近い感覚で星空撮影が出来てしまうということ。このスタイルはOM-3に最も似合う星空撮影かもしれないと思っている。

画面中央の正方形が手持ち撮影アシストのインジケーターだ。中央の点がカメラの角度ブレに応じて動き、左右の辺にある白線が回転ブレに応じて伸び縮みする。その点や線がなるべく動かないようにカメラを保持すれば手ブレが抑えられるという仕組みだ。
また、C3では撮影待ち時間1秒の低振動モードが設定されていて、シャッターボタンを押す動作による露出開始時のブレを回避するようになっている。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
■撮影環境:F1.8 2秒 ISO12800
手持ち撮影
フラッと訪れた岬で手持ち撮影。1秒の撮影待ち時間を考慮しながら、灯台の光線が回るタイミングを見計らってシャッターを切った。灯台の高輝度部と星空の諧調を両立させるように意識してRAW現像している。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO
■撮影環境:F1.2 5秒 ISO8000
手持ち撮影
遠くの照明で照らされているクズの茂み。その向こう側に「すばる」とカリフォルニア星雲が昇ってきたところを手持ちで撮影した。クズの緑と星雲の赤が印象的になるようにRAW現像して仕上げてみた。
ボディマウントフィルターによるソフト効果&光害カット
E-M1 MarkIII ASTROではセットで販売されたボディマウントフィルターは、OM-3 ASTROではオプションとなった。透明ガラス表面に光を散乱させる加工がされて星の光を滲ませるソフト効果の「BMF-SE01」と、星空撮影に邪魔になる光害を特殊な多層膜コーティングで軽減させる「BMF-LPC01」の2種類が用意されている。ASTROモデルで星空を撮影する時には非常に有用なので、できれば両方揃えて活用することをお勧めしたい。
どちらのフィルターもごく薄いガラスで作られているが、レンズとセンサーの間に入れるのでピント位置や収差補正のバランスが崩れ、焦点距離の短いレンズの場合に画面中央と周辺のピント位置がずれてしまうことがある。そのため、周辺部の星像が流れてしまうことがあるので注意が必要だ。ただ、実際に撮影したところでは魚眼レンズでは像の劣化は少なかった。標準画角の25mmより長い焦点距離のレンズでは全く問題なく使える。

ボディマウントフィルターは、センサー前に嵌め込んで使用する。この写真で装着しているのがソフト効果のBMF-SE01だ。このフィルターは無色透明で、表面に光を拡散させるための加工がされている。
上に置いてあるフィルターが光害カットのBMF-LPC01。有害な光を反射するための特殊な多層膜コーティングがされ、まるでハーフミラーのように見える。

「BMF-LPC01」は、外灯によく使われる水銀灯やナトリウム灯の輝線スペクトルを効果的にカットするが、星雲の光はしっかり通すように作られている。グラフのHgが水銀灯の放つ輝線、Naがナトリウム灯の輝線だ。
余計な光を通さなくなるので、夜空の背景の明るさをノーフィルターと同程度にしようとすると、約1段分の露出倍数がかかる。そのぶん星雲の光に対してはしっかり露出をかけられることが出来るようになり、星雲の光がよりクッキリと写るようになるわけだ。

焦点距離121mm(35mm判242mm相当)の望遠レンズで星雲をクローズアップ撮影した。これはフィルターなし。

ボディマウントフィルターBMF-SE01を使用。ソフト効果で明るい星が滲み、星の明るさや色の違いがよくわかる。星空の表情が豊かになり、宇宙空間に奥行きが感じられるような気がする。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO
■撮影環境:焦点距離121mm(35mm判242mm相当)F4.0 60秒 ISO5000 手持ちハイレゾショット
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
ボディマウントフィルターBMF-LPC01を使用。フィルター無しの場合と背景の夜空が同じような色と明るさになるようにRAW現像した。光害カット効果で、赤い星雲の淡い部分までしっかり写し出すことが出来た。
ハイレゾショットの効果
ハイレゾショットは、複数枚画像の画素情報から高精細な画像を実現するコンピュテーショナルフォトグラフィー機能だ。OM-3 ASTROには、2つの方式のハイレゾショットが搭載されている。
第一の方式は、センサーを1/2ピクセルずつ移動させて撮影した8枚の画像情報から高精細な画像を得る「三脚ハイレゾショット」で、これはカメラを固定して撮影するのが前提だ。
もうひとつは、わずかな位置ズレがある12枚の画像から高精細な画像を得る「手持ちハイレゾショット」だ。これは、手持ち撮影の連写でカメラがわずかにずれてしまうことを利用している。
いずれもマルチショットのスタッキング(重ね合わせ)効果でノイズが大幅に低減され、天体写真に求められる強力な画像調整が可能になる。これは淡い星雲や天の川などの諧調を整えるうえで大きなメリットだ。
星空撮影では後者の手持ちハイレゾショットがとても有効で面白く使える。これは、OMカメラならではの星空撮影と言えるかもしれない。
【三脚を使った手持ちハイレゾショット】
まずは、三脚にカメラを固定しての手持ちハイレゾショットを紹介しよう。「固定」で「手持ち」とはちょっと謎な言い回しだが、これは機能の名称なので仕方ない。
ご存知のように星は地球の自転による日周運動をしている。この星の動きは広角レンズで30秒程度の短い露出時間でも、三脚の固定撮影ではわずかに流れて(ブレて)写ってしまうのが大きな問題だ。それで星を点像に写し止めるための追尾装置「赤道儀」が必要になるわけだ。あるいは、超高感度に設定して数秒以内に露光時間を切り詰めるか。しかし、それだと高感度ノイズのために諧調を整えるための強力な処理を行うことが難しい。
そこで、その超高感度撮影を手持ちハイレゾショットで実行してみよう。すると、日周運動で位置ずれした画像12コマの星の位置合わせをOM-3がしてくれ、星が点になった高精細画像が得られるのだ。例えば5秒露出の設定で手持ちハイレゾショットをすると、12コマ分の合計60秒露光にもかかわらず、星が見事に点になった写真が撮れるというわけだ。
標準画角から広角レンズに限られる方法にはなるが、赤道儀無しの三脚だけで赤い星雲も含めた素晴らしい満天星空写真が撮れるOM-3 ASTROの手持ちハイレゾショットなのである。
次の写真は、このようにして撮影した天の川だ。天の川に散在する赤い星雲たち、入り乱れる暗黒星雲、さらには非常に暗い星まで、赤道儀を使わずにここまで写せるのは驚異的だ。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 II
■撮影環境:F1.8 4秒 ISO25600 手持ちハイレゾショット
三脚固定撮影
南の空に南中する銀河系中心方向の天の川だ。明るい天の川の前面に浮かぶ暗黒星雲が立体的に見えてくる。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0
■撮影環境:F2.0 8秒 ISO25600 手持ちハイレゾショット
三脚固定撮影
西の空に傾いてきた夏の大三角。青っぽく仕上げることの多い星空写真で、はくちょう座の赤い星雲が良いアクセントになっている。
【赤道儀で手持ちハイレゾショット】
天体用カメラの本分とも言える星雲のクローズアップ撮影でも、手持ちハイレゾショットが素晴らしく効果を発揮する。
一般的にこのような天体撮影では、焦点距離の長い望遠レンズや天体望遠鏡での長時間露光となり、どうしても精度の高く頑丈な赤道儀が必要になる。それでも赤道儀の据付誤差や追尾速度のふらつきによる追尾エラーはなかなか避けられないもの。そのため、カメラとは別の光学系で星を追いかける「オートガイダー」で赤道儀の2軸をコンピューターで制御したりするわけだが、これはなかなか大掛かりで大変なことだ。そして天体写真でよく行われる複数画像スタッキングは、普通は撮影後にPCでの合成作業が必要になる。
それが小型軽量で望遠に強いOM-3 ASTROの手持ちハイレゾショットならば、赤道儀の追尾エラーの位置合わせを行ったうえ、12コマがスタッキングされたRAW画像がカメラ内で自動的に生成されるのだ。赤道儀も三脚も軽量な機動性の高い機材で良い画像が得られると同時に、撮影後の処理もかなり軽減されることになる。
星空のあちこちにある興味深くも美しい星雲などを探して撮影していくのは面白く、星空撮影ならではの楽しみがある。OM SYSTEMのM.ZUIKOレンズは画面全体の画質の均質性が高く、このような星雲撮影に適したものが多いのも魅力だ。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 8mm F1.8 Fisheye PRO
■撮影環境:F2.2 60秒 ISO1600 手持ちハイレゾショット
ボディマウントフィルターBMF-SE01使用
焦点距離の短い魚眼レンズなので、赤道儀の追尾エラーはまず問題にならない。それでこの写真は三脚ハイレゾショットで撮影した。こうして見ると、淡い冬の天の川もなかなか太いことがわかる。低空の空が赤っぽいのは「大気光」だ。真南の水平線には一等星のカノープスが見えている。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO
■撮影環境:F4.0 60秒 ISO6400 手持ちハイレゾショット
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
赤い星雲を背景にした馬の横顔は、天体写真で超有名な馬頭星雲だ。赤く輝く散光星雲の周辺にも暗い分子雲が広く漂っていることがわかる。手持ちハイレゾショットを繰り返し、それをさらにスタッキングすれば、もっと暗い分子雲まできれいに描出することが可能になるだろう。

左がシングルショット、右が12枚スタックされた手持ちハイレゾショット。馬頭星雲の部分をハイレゾショット等倍に合わせて切り出し並べてみた。強力な画像処理でノイズが目立ってしまうのが星雲の写真だが、ハイレゾショットの方はもちろんはるかに低ノイズ。シングルショットだとノイズに埋もれてしまうような小さな星まで、ハイレゾショットでハッキリと写し出せていることもよくわかるだろう。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 45mm F1.2 PRO
■撮影環境:F3.5 60秒 ISO6400 手持ちハイレゾショット
ビクセン製赤道儀「ポラリエU」で追尾撮影
中望遠レンズで撮影したはくちょう座の散光星雲。左上に北アメリカ星雲、左下には超新星残骸の網状星雲がある。

手前の赤道儀はM.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROレンズを搭載したユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」。後方はM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO搭載のTOAST TECHNOLOGY製赤道儀「TP-2」。コンパクトなシステムで星雲のクローズアップは狙えるのはOM-3 ASTROの魅力だ。ちなみにこの写真はOM-1+M.ZUIKO DIGITAL ED 17mm F1.2 PROレンズでの手持ち撮影だ。
ライブコンポジット
現在ではOMカメラの星撮り機能の代名詞的存在となった「ライブコンポジット」。カメラ内で比較明合成がされ、星の光跡が美しく写し出されるコンピュテーショナルフォトだ。
OM-3 ASTROは赤い光に感度が高いので、普通の星空の色に仕上げても赤い色の星が強目に描き出されるのが特徴だ。それで、同じ星の光跡でも通常機に比べて華やかな印象の写真になる。天体用カメラだからといって、星雲だけ撮るのではもったいない。さまざまな星景写真を楽しんでいきたい・もらいたいと思うところだ。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8
■撮影環境:F1.8 30秒 ISO1600 ライブコンポジット18コマ
オリオン大星雲の赤い光が印象的。小さな星の光跡も赤っぽい星が多く写っているのがわかると思う。

■撮影機材:OM SYSTEM OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0
■撮影環境:F2.8 60秒 ISO1600 ライブコンポジット15コマ
草原に立つ一本木の真上に北極星。撮影時はものすごい強風でカメラが飛ばされそうなほどだった。それで三脚の足を大きく開き、地面に近い低さでカメラをセットして撮影した。
星空撮影のススメ
星空の写真を撮ることで、肉眼ではわからない星空の姿が見えてくる。ちょっと難しいと感じることもあるが、これが星空写真の面白いところだ。それだけに、思ったような写真が撮れた時の楽しさは格別だし、撮れば撮るほど星空に見える宇宙の奥深さや美しさが見えるようになる。本当に奥が深い星空写真の世界だ。
そんな星を撮りながら夜空を見上げると、自分が確かに無限に広大な宇宙の「ここ」にいることを実感させられてしまう。もしかしたら、星を撮りに夜な夜な出かけたくなるのは、そのような感覚を求めているからなのかもしれない。
ここで紹介した「OM SYSTEM OM-3 ASTRO」は、普通のカメラではよく写せない星雲の光を余すところなく捉えられるようにチューニングをされたカメラだ。ある意味、宇宙を見る私たちの眼の限界を押し広げてくれる装置だとも言えるだろう。このカメラに備えられた星空撮影のための機能は、かつては特別な知識や技術が必要だった天体撮影を、とても近くに引き寄せてくれた。
星空・星景写真に興味を持っている人も多いと思うが、このスペシャルなカメラだと、さらにもう一歩先の星空・天体写真も狙える。そして、実際に使ってみるとわかることなのだが、多くの星空撮影支援機能が搭載され、さらに星空撮影に適したカスタムモードもプリセットされているので、初めてだとしてもハードルはそんなに高くない。ぜひ多くの人に星空写真を楽しんでもらいたいと思う。

■写真家:飯島裕
埼玉県生まれ。1969年アポロ月着陸の頃から宇宙に興味を持ち、星の写真を撮り始めたのが始まり。広告制作会社に勤務後、ハレー彗星が回帰した1986年からフリー写真家として独立する。企業・大学・研究機関などの広報写真、書籍・雑誌・WEB記事等の取材写真撮影を幅広く担当。個人的には、科学的な天体写真をベースに表現性を付加した、いわゆる星景写真に早くから取り組む。
2003年より月刊天文情報誌『星ナビ』に銀塩フィルムによる星景写真+短文『銀ノ星』を現在も連載中。天文・カメラ系出版物などに星空撮影や解説の執筆、写真撮影講座や講演なども多数。
双眼鏡で見る星が大好き。ホンネはいつも「星は撮るより眺めたい」。















