ドラマティックなモノクロポートレートの撮り方
はじめに
今回はモノクロポートレートの撮り方を、初心者さんでも撮れるようにお話ししたいと思います。
用意するものは、モノクロモードで撮影できるカメラです。カラーで撮影してからモノクロに変換する方法もありますが、カラーとモノクロでは露出の決め方が全然違うので、撮影時からモノクロで撮影して露出を決定するのが、上達への近道になります!
筆者はNikon ZRとNIKKOR Z 50mm f/1.8 Sのセットで、ピクチャーコントロールをモノクローム(MC)にして撮影しました。今回はLEDライトやストロボは使用せず、その場の光のみで撮影しています。ワンポイントアドバイスを交えながら、色々な撮影方法をご紹介しますので、ぜひじっくりご覧ください。
撮り方に迷ったら横顔からスタート!

■撮影環境:f/1.8 1/250秒 ISO500
いざ、モノクロでポートレートを撮ろうと思っても、どう撮っていいかわからないと迷ってしまったときは、横顔のシルエットが画になりやすいのでお勧めです。
この写真の光の状況は、カラーのポートレートであれば顔の表情を見せるために露出を上げて、明るくしなければポートレートとして成り立たないような状況です。そこをぐっとこらえて、少し暗めの露出で撮ってみましょう。
モノクロポートレートのコツは、カラーよりも少し暗めの露出で撮影することです。そうすることでドラマティックさが増します。ですが、注意していただきたいのが、このドラマティックなムードは、明暗の差があるからこそ成立するという点です。ただ暗いだけでは、露出を間違えた写真になってしまいます。
こちらの撮影状況は、背景は自然光の入る窓なので明るく、モデルの顔はその光を浴びて逆光になっています。カメラ側の左顔は露出アンダー目のシルエット調ですが、それが成立するのは、右顔が光を浴びて明るくなっており、そのおかげで鼻筋に光のラインが現れているからです。
同じように、モデルの左腕に明暗差があるのが見て取れると思います。このように、明暗差があるシーンを作り出せれば、モノクロポートレートは勝ったも同然です。明るい背景の前にモデルに立ってもらい、斜め上か下に目線を向けたポーズをしてもらえば、この写真に近い状況を作り出せますので、実践してみてください。
前ボケはモノクロポートレートにハマりやすい

■撮影環境:f/1.8 1/250秒 ISO1000
こちらは、カメラの前にある木を前ボケとして使用しています。色数の情報が少なくなるモノクロでは、前ボケはとても使いやすい小道具になります。
カラーですと木の濃い緑と薄い緑、枝の茶色、花がついていればピンクや黄色などと、色数の情報が増えて、ボケていても煩雑になりがちです。その点モノクロでは、濃いグレーから薄いグレーのグラデーションとして、落ち着いた小道具に徹してくれます。
前ボケの効果的な使い方は、画面のひとつかふたつの角を額縁のように縁取ると、見ている人の目を中央の主役の被写体に引きつけられます。この写真では、右上から右下の角を逆「C」の字のように縁取っています。構図右側の空間を引き締めると同時に、モデルの顔が向いている構図左側に明るい空間を作ることで、全体のムードが暗くなりすぎないようにしています。
露出はアンダー目にすると、四隅の前ボケのトンネル効果が強くなり、より、中央に目線が引きつけられるようになります。
アップは引きよりもほんの少し露出を上げて綺麗系に!

■撮影環境:f/1.8 1/250秒 ISO200
ここまで、モノクロのポートレートは露出アンダー目でとお話ししてきましたが、構図割合の半分が顔になるようなアップのカットは、引きよりも少し露出を上げて、肌が綺麗に見えるようにしましょう。
とはいっても、全体が均一に明るいとのっぺりとした写真になってしまいますので、鼻筋のラインがしっかり見えるくらいの明暗の差を作り出すと、ドラマティックさと綺麗さを両立できます。
このカットのように、モデルの手や腕を使って顔の半分が少し暗くなるようなポーズをすると、簡単に顔に明暗差を作り出せます。背景にも明暗差が出るように、壁を背にするのではなく、奥行きのある空間を背景に選びましょう。
アップの場合は肌レタッチをしっかりと行うと、より幻想的なカットになります。筆者はEvotoで肌と体のレタッチを行いました。
曲線を大事にして構図する

■撮影環境:f/1.8 1/250秒 ISO160
カラーのポートレートもですが、女性のポートレートは体の曲線を意識して構図すると、魅力的な写真になります。このカットも、頭からお尻、つま先のラインが逆「く」の字になるように、ポーズ指示と構図作成をしています。
また、黒いドレスと白い肌の組み合わせは、モノクロポートレートで成功しやすいコンビネーションです。それをさらに活かすために、立てた左足の膝が見えるように、ほんの少しスカートを上に手繰り寄せてもらっています。
女性は丸みのある箇所・・・肩、肘、ウエスト、お尻、膝・・・などのラインを見せるポーズや衣装にすると、より女性らしさが増します。モノクロポートレートでこのような衣装の場合、黒い衣装から白い肌が見えるので、さらに丸いラインの印象が強くなる効果があります。
いきなりスカートを上に手繰り寄せてください!というのは言いづらいでしょうし、モデルさんもびっくりしてしまうでしょうから、ポーズ指示のときは、膝の丸みを見せたいという意図を伝えて、衣装には触らず、モデルさんご自身で調整してもらうようにしましょう。撮影した写真をご覧いただきながら説明すると、わかりやすいと思います。
モノクロだからできる挑戦的なカット

■撮影環境:f/1.8 1/800秒 ISO160
モノクロポートレートならではの、ちょっと挑戦的なカットも撮ってみましょう。カラーだと肌に直射日光が当たりすぎて画になりにくいシチュエーションですが、モノクロにすることで粗を隠しながらも、見る人にどんな色味なんだろうと想像してもらえる写真になります。
ブラインドからのシマシマ模様は、腕と体にはしっかり出しながらも、眩しさを避けるような自然なポーズで顔にはかかりすぎないようにします。イメージは、真夏の日焼け止めのCMです。
粒子をプラスしたフィルムライクなカット

■撮影環境:f/1.8 1/250秒 ISO1250
フィルムグレイン:大/強度:4
モノクロの場合、編集時にフィルムグレインをプラスして、ノスタルジックなイメージにしても面白いです。ちょっとだけ足してもわかりにくいので、大きめの粒子をしっかり目に足すのがお勧めです。
このカットでは、わざとカメラを傾けて不安定さも演出しています。これも、ちょっとだけ斜めにすると間違えて傾いちゃったミスカットに見えてしまうので、やるなら思いっきり遊んでしまいましょう!
グレーのグラデーションがモノクロ写真のキモ!

■撮影環境:f/1.8 1/250秒 ISO250
窓辺に座ってもらい、横から撮影しています。多少室内に光は回っていますが、一番強い光はカメラ正面の窓からの自然光です。その次に強い光が、構図の左側、モデルの背中側にある窓からの光です。
このサイド光がいい役目をしていて、モデルの背中と右腕の後ろ側を照らしてくれているので、女性らしい丸いラインが強調されています。また、モデルの右頬も照らしてくれているため、頬の丸みと鼻の筋が強調されました。このラインをつくるグレーのグラデーションが、モノクロ写真のキモとなります。
モノクロ写真は白と黒の写真ではなく、白と黒とグレーで構成されている写真です。そのなかで一番色数が多いのは、白でも黒でもなく、その中間色のグレーです。ポートレートに限らず、モノクロ写真はこのグレーに注目すると成功しやすいです。
このカットでは肌の露出よりも黒いドレスの割合が多いので、背景は明るい箇所を選びました。かといって、全部白飛びしてしまうと落ち着かない写真になってしまうので、一番空間が広い右側に濃い色合いの建物が来るように座り位置を調整して、眩しすぎない写真に仕上げています。
モノクロポートレート成功の秘訣は、明暗差を作り出して、明るいところよりも暗いところに注目したちょっとアンダー目の露出で、グレーのグラデーションが綺麗に出ているかを最終チェックすると、完成度の高い写真に仕上がります。これから太陽が強い季節になりますので、ぜひチャレンジしてみてください。
■モデル:大川成美
https://www.instagram.com/naru_coco/
https://x.com/NaRu_0320
■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。














