何処にでも連れて行く、撮影のよき相棒|富士フイルム XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR

米屋こうじ
何処にでも連れて行く、撮影のよき相棒|富士フイルム XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR

はじめに

鉄道写真撮影では望遠レンズの使用頻度が多くなります。圧縮効果で迫力ある列車の走行シーンを狙ったり、感動的な場面を部分的に切り取ってフレーミングしたりする場合は望遠レンズが有用です。XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WRは、富士フイルム「Xシリーズ」の望遠ズームレンズ。XシリーズのセンサーはAPS-Cサイズなので、35mm判に換算すると焦点距離は107-457mm相当になります。XF70-300mmは列車や車両を主体に撮影する場合でも、鉄道風景写真でも、スナップでも使いやすいズーム域を持った望遠ズームレンズです。

撮影のよき相棒として

XF70-300mmは2021年3月に発売されました。プロモーションのお手伝いをした関係で発売前から使用することができたレンズです。手に取った最初のインプレッションは「とにかく軽くてコンパクト」ということ。機能や画質も好ましくすっかり気に入り、発表と同時に予約注文し発売日に手元に届きました。あれから約5年間使い続けていますが、何処に行く時にも連れ出している、撮影のよき相棒です。どの辺りが気に入り、どのように使っているのかを、お話ししたいと思います。

■使用機材:富士フイルム X-T4 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:109mm 絞りF5 1/800秒 ISO200 WBオート

軽量コンパクトゆえの取りまわしの良さ

XF70-300mmは質量約580グラム、収納時(広角端)の全長は132.5mm。APS-Cのレンズとはいえ、望遠端が450mm(35mm判換算)を超えるレンズとは思えないくらい軽量かつコンパクトです。このレンズを手にする以前は「XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR」を望遠ズームのメインに使用していました。開放値がF2.8と明るく、富士フイルムが技術の粋を集めて設計した“レッドバッジ”の1本です。

XF50-140mmのレンズ質量は約995グラムで、XF70-300mmはこれより4割ほど軽量です。国内、海外ともに公共交通機関を利用し、旅をしながら撮影するスタイルの私にとって軽さは大事です。またXF50-140mmの焦点距離は35mm判換算76-213mmですから、フルフレームの70-200mmF2.8の立ち位置になるでしょう。このズーム域は、鉄道写真撮影の場合、望遠端側で「あともう少し望遠側が欲しい」というケースが多々あります。その場合、1.4倍や2倍のテレコンバーターを使用しますが、XF70-300mmはXF50-140mmにテレコンを装着した場合のズーム領域をカバーしています。

そんな理由もあって、今ではXF70-300mmの方をメインにしています。しかしXF50-140mmの繊細な描写も大好きです。手放すことなく、低照度下での撮影やボケを得たい時に使用するなど、状況によって使い分けています。

■使用機材:富士フイルム X-T4 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:221mm 絞りF5.6 1/500秒 ISO400 WBオート

悪天候の撮影は億劫になりがちですが、厳しい気象条件がよい写真を生み出してくれる場合も多くあります。そんな悪条件下では、カメラバッグからサッと取り出して撮影できる軽快さがありがたいもの。

■使用機材:富士フイルム X-T4 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:214mm 絞りF5.6 1/80秒 ISO400 WBくもり

大正時代に建築された木造駅舎の窓ガラス越しに撮影。油絵具で描いた抽象画のような雰囲気の写真になりました。「こんなイメージも狙ってみようかな…」と、アイディアが湧いたときに気軽に撮影に臨めるのは、取りまわしの良さが余裕を生んでくれるからだと思います。

シッカリとした頼もしい解像感

描写や解像感に信頼感が置けることも、このレンズを気に入っている大きな理由の一つです。非球面レンズ1枚、EDレンズ2枚を使用し、どの焦点距離でも被写体を克明に捉え、近景でも遠景でもシッカリとした解像感でスッキリと描写してくれます。鉄道写真では俯瞰撮影など、大風景に列車を入れて撮影する場合があります。絵の主題は風景になりますが、遠景に小さく写った列車も克明に描写してほしいのが〝鉄道好き〟の本心でしょうか。

■使用機材:富士フイルム X-H2S + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:171mm 絞りF7.1 1/2000秒 ISO400 WBオート

2026年1月中旬にブルガリアで撮影した写真です。この日は氷点下11℃まで冷え込みました。真っ白になった山々の針葉樹をメインに赤い機関車を画面の右下に入れる構図で狙いました。木々の緻密な描写はもちろん、レンズ周縁となる画面隅の列車の姿も克明に描きだしてくれました。

この旅ではGFX(GFX50S II)とX(X-H2S)を併用しました。携行したGFXの望遠ズームは「GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR」(35mm判換算79-158mm相当)。テレコンバーターGF1.4X TC WRを使用しても、望遠端側が足りないケースがあります。また、スナップなどではX-H2S+XF70-300mmの出番となります。GFXとXでは、そもそもの狙いが違いますが、撮影した写真に大きな描写の開きができてしまうようでは併用を考えてしまうところです。もちろん等倍ほどに拡大して比べれば違いはありますが、自分では納得できるレベルで併用できています。

■使用機材:富士フイルム X-H2S + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:300mm 絞りF7.1 1/800秒 ISO400 WBくもり

暗部や繊細な光の表情などを余すことなくセンサーに伝えてくれるレンズです。

■使用機材:富士フイルム X-H2S + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:199mm 絞りF7.1 1/1000秒 ISO400 WBオート

「シッカリと写る」が基本にあるので、コントラストの弱い穏やかな風景の微細なニュアンスもよく表現してくれます。

■使用機材:富士フイルム X-H2S + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:300mm 絞りF7.1 1/640秒 ISO800 WBくもり

望遠端の300mmで撮影。太陽が山の稜線に隠れる直前にリバイバルカラーの「つばさ」がやって来ました。露出がどんどん落ちる状況下、ISO感度は800をキープするとして、正面方向から来る列車では見かけ上の動きが遅くなるので、シャッター速度を1/1000秒から1/640秒に落としました。そうすることで絞りを開放値から2/3絞って、被写界深度に余裕を持たせています。鼻先から2両目の前方辺りまでピントが来て、シャープに写っています。列車右側の電柱は画面から外したいところでしたが、撮影する方々が多くて前に出ることができず〝致し方なし〟と諦めました。

テレコン装着で最大914mmに

XF70-300mmはテレコンバーターの使用が可能です。焦点距離が1.4倍になるXF1.4X TC WR、2倍になるXF2X TC WRでより圧縮効果を狙ったり、遠くの風景を引き寄せたりした作画が楽しめます。

■使用機材:富士フイルム X-T5 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR + XF1.4X TC
■撮影環境:420mm 絞りF8 1/500秒 ISO800 WBくもり

単線区間の駅で上下列車が別方向へ出発するシーンを1.4倍のテレコンを使用し、望遠端の420mm(640mm相当)で圧縮して撮影しました。2本の列車の配置が楽しい1枚になったのではないでしょうか。

■使用機材:富士フイルム X-T4 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR + XF2X TC
■撮影環境:600mm 絞りF22 1/4000秒 ISO200 WB晴れ

荒川の土手から富士山に沈む夕陽と東北新幹線を2倍テレコン装着の望遠端600mm(914mm)で狙いました(三脚使用)。富士山山頂に陽が沈む日ではありませんでしたが、運転席の窓が夕日に輝く印象的なシーンとなりました。

三脚が不要になる手ブレ補正機構

望遠レンズを使用した撮影では手ブレに注意する必要がありますが、XF70-300mmは約5.5段分の手ブレ補正機構が搭載されています。レンズの軽さと相まってガッチリとアシストしてくれるので、かなりのスローシャッターでも手ブレすることなく撮影可能です。このレンズには三脚座が備わっていませんが「どうぞ、手持ちでお撮りください」と言われているようにさえ思えてきます。

■使用機材:富士フイルム X-H2S + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:231mm 絞りF5.6 1/160秒 ISO1000 WB晴れ

夕闇迫る駅で、発車を待つシーン。焦点距離231mm(35mm判換算で350mm相当)でシャッタースピード1/160秒ほどでは全く問題なく手ブレを防いでくれます。

■使用機材:富士フイルム X-T4 + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR + XF1.4X TC
■撮影環境:420mm 絞りF9 1/3秒 ISO160 WB晴れ

手ブレ補正機構(OIS)に頼って手持ち撮影にチャレンジした1枚です。1.4倍のテレコンを装着し、望遠端420mm(35mm判換算640mm)で撮影、シャッタースピードは1/3秒です。等倍ほどに拡大すればわずかにブレが確認できますが、A3のプリントに伸ばししてもブレが感じられないレベルでした。

■使用機材:富士フイルム X-H2S + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:122mm 絞りF5 1/80秒 ISO400 WBオート

三岐鉄道丹生川駅(三重県いなべ市)に隣接する貨物鉄道博物館を訪ねた際、大物車と呼ばれる多くの車輪を備えた車両を地面スレスレから撮影してみました。シャッタースピードは1/80秒。このような写真はブレていては面白さが伝わらないと思います。手ブレ補正機構のおかげでズラリと並んだ車輪が楽しい一枚になりました。※営業中の線路ではありません。

テレマクロ的に使用する

センサー(撮像素子面)から83cmまでの近撮撮影が可能です。列車の走行写真や鉄道風景写真の撮影では、使用する場面も少ないと思いますが、旅のなかで出会ったアイテムなどにグッとクローズアップして撮影するのも楽しいものです。作品のバリエーションが広がるかもしれません。

■使用機材:富士フイルム X-H2S + XF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WR
■撮影環境:70mm 絞りF11 1/125秒 ISO400 WBくもり

築112年を超える山形鉄道西大塚駅舎。待合室のベンチに浮かび上がった年輪を最短撮影距離(約83cm)で撮影しました。「かなり寄れるなぁ」という印象です。

おわりに

〝いいな〟と感じた時にレンズを向けられるか、シャッターを押した瞬間にシッカリと記録できているかが何よりも大切なこと。スペックも大事ですが、それ以上に使いやすさや心地よさ、信頼感のある機材がお気に入りになってゆきます。富士フイルムXF70-300mmも、そんな意味でお気に入りのレンズ。これからも末永く使っていきたいと思います。

最後になりますが、鉄道写真撮影は鉄道の運行を妨げないよう、また沿線の生活や周囲の人々に迷惑をかけないよう配慮し、マナーを守って撮影を楽しみましょう。

 

 

■写真家:米屋こうじ
1968年山形県天童市生まれ。人と鉄道の結びつきをテーマに、国内外の鉄道を撮影。『ひとたび てつたび』(ころから)、『旅する鉄道写真』(イカロス出版)など著書多数。写真展『Hello Goodbye』(2017年・キヤノンギャラリー)、『鉄道憧憬』(2023年・天童市美術館)など開催。2025年4月より地域おこし協力隊として、山形鉄道に寄り添いながら写真で応援する。

 

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