ライカ × ポートレート 水咲奈々 Vol.2|ライカQ2

水咲奈々

ライカQ2で撮影したモデルの大城優紀さん.jpg

ライカQ2とポートレート

 初めてライカQ2に触れたとき、コンパクトデジタルカメラに見えないデザインと、試写の1枚目から、驚くほど繊細な写りにびっくりした。あのときは、接写好きな私としてはマクロモードが搭載されていることばかりに目が行っていたが、今回は、「ライカ × ポートレート」シリーズの第2弾として、ポートレートを撮りながらライカQ2と向き合ってみたいと思う。

気軽にコンデジと呼べない

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■撮影機材:ライカQ2
■撮影環境:f/1.7 1/1000秒 ISO100
■モデル:大城優紀

 ライカQ2は、有効画素数4730万画素の35mmフルサイズセンサー搭載、開放F値F1.7の明るいレンズ「ライカ ズミルックス f1.7/28mm ASPH.」が付いた、レンズ一体型のカメラだ。素早く切り替えられるマクロモードを搭載しており、最短撮影距離17cmの接写撮影も可能。

 光学式の手ブレ補正機能、4K動画撮影、スマホアプリとの連携など、最近のデジカメに搭載されている機能は一通り網羅されている。ライカQ2を手に取る人間は私も含めて、それらの機能にこだわりは持たないと思われるが、あるとない、どちらかを選べと言われたら、やっぱり入っている方が便利だろう。特にアプリの「ライカFOTOS」は、カメラ内のスチールやムービーをスマホに転送したり、スマホからカメラの撮影設定をしてリモート撮影も可能なので、セルフポートレート撮影も手軽に行える。

 一般的にはコンパクトデジタルカメラと呼ばれる部類に入るが、そのデザインは高品位で洗練されている。ライカQ2を目の前にすると、気軽に「コンデジ」と呼んではいけない気持ちになる。

モデル・大城優紀という女性

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■撮影機材:ライカQ2
■撮影環境:f/1.7 1/125秒 ISO1600
■モデル:大城優紀

 今回はライカQ2を手に、沖縄へ飛んだ。海とか観光地を撮るためではない。大城優紀さんを撮るためだ。初めて彼女を撮影したのは2019年9月。沖縄の強い太陽の下、街中と海の両方で撮影を行った。沖縄を拠点にタレントとして多彩な活動をしている優紀さんは、知り合いの写真家を通して紹介してもらった。

 実際に会う前の写真の中の彼女は、ふんわりと柔らかい女性というイメージだった。では会ってみてイメージが違ったかというと、そういう訳ではない。細やかな気遣いのできる優しいムードはそのとおりだった。思っていたのと違ったのは、カメラの向こう側の彼女の醸し出す空気だった。

 彼女がポーズや表情を変えるごとに、まとっている空気が色やムードを変えていくのだ。ふんわりと微笑めば、余白の空気は甘くて柔らかくなる。物憂げなポーズを取れば、全体の湿度がしっとりと上がる。こちらをじーっと見つめる力強い目線のときは、周りの空気まで揃ってこちらを見つめているような。

 その空気まるごとを、ライカQ2で撮影したかった。もう、海とか写っていなくていいから。

デジタルズーム搭載機

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■撮影機材:ライカQ2
■撮影環境:50mmデジタルズーム使用 f/1.7 1/1600秒 ISO100
■モデル:大城優紀
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■撮影機材:ライカQ2
■撮影環境:75mmデジタルズーム使用 f/1.7 1/1000秒 ISO100
■モデル:モデル:大城優紀
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■撮影機材:ライカQ2
■撮影環境:75mmデジタルズーム使用 f/1.7 1/1000秒 ISO100
■モデル:大城優紀

 レンズ一体型のライカQ2だが、デジタルズームが使用できる。最大記録画素数の焦点距離は28mmだが、操作ボタンを押すごとに35mm、50mm、75mmのクロップの切り替えができ、その撮影範囲は液晶モニター上に表示できる。単焦点レンズながら、ズームレンズにように使用できるのは、素早く被写体に近付きたいときに役に立つ。

 「ライカ ズミルックス f1.7/28mm ASPH.」は9群11枚のレンズ構成で、非球面レンズを3枚使用している。28mmの焦点距離でも、歪みなく隅々まで綺麗に描ききっており、このレンズだからこそ、75mmまでクロップしても遜色のない、美しい描写が保たれているのだろう。

 また、368万ドットの有機EL電子ビューファインダーを搭載しており、視認性はとても高い。液晶モニターとビューファインダーは、アイセンサーのお陰で目を近付ける、離すの動作だけで、素早く切り替わってくれる。

 撮影場所の光の状況によって、両方を使用して撮影したいことは多々あるので、この切り替わりに難があるとストレスレベルがぐーっと上がってしまうのだが、ライカQ2は文句なしの切り替え速度だった。

風は味方

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■撮影機材:ライカQ2
■撮影環境:f/1.7 1/1250秒 ISO100
■モデル:大城優紀

 沖縄は風が強い。特に海沿いでは、帽子が飛ばされるのなんて日常レベルに風が強い。沖縄撮影のアシスタントの一番大変な仕事は、レフ板持ちだと思う。自分ごと飛ばされそうになるから。そして、当たり前ながらモデルの髪の毛も、風に吹かれてあっちにいったり、こっちにいったりする。

 だが、日常の自然な動作が大好きな私としては、風に吹かれた髪や服などを直している姿は、フレームに収めたいシーンのトップクラスでもある。ポートレートでは滅多に連写を使用しないので、このようなシーンでは、AFのピントを合わせる速さが重要となってくる。

 ピントを合わせて、シャッターを切る…ピントを合わせて、シャッターを切る…この操作を手動で複数回繰り返すことで、イメージに会う一瞬を捉えるのだ。

 また、風の強いときに気になるのがカメラへの負担だが、ライカQ2は保護シーリングが施されていて、ほこりや水滴の侵入を防いでくれる。海辺でも気負わずに撮影できるのは頼もしい限り。

強さと立体感のある描写

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■撮影機材:ライカQ2
■撮影環境:35mmデジタルズーム使用 f/1.7 1/800秒 ISO100
■モデル:大城優紀

 言うまでもないだろうが描写性能は素晴らしい。肌の質感は素直でストレートな描写、柔らかい髪の毛も一本一本丁寧に描き、ボケは滲みなく柔らかい。モデルを主役として、強く立体的に浮かび上がらせてくれる写り方は、連載1回目の「ライカ × ポートレート × 水咲奈々 Vol.1|ライカM10-R」でも感じた。

 控えめというよりも、ぐっと強く、主役を全面に押し出してくれるイメージだ。そんなカメラだと、普段は撮らないような表情やムードを撮りたくなるから、また楽しい。

ライカQ2と私

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■撮影機材:ライカQ2
■撮影環境:35mmデジタルズーム使用 f/1.7 1/500秒 ISO160
■モデル:大城優紀

 ポートレート撮影では三脚や一脚などを使わずに、フットワーク軽く動き回りたい私を、ライカQ2はフルサポートしてくれた。機能面は何より、構えたときのカメラの質感と重量は、シャッターを切るその瞬間までも楽しませてくれる。写真は楽しい。そこに立ち帰れるカメラだ。

撮影日:2021年12月

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。(社)日本写真家協会(JPS)会員。

■「ライカ × ポートレート × 水咲奈々」の連載記事はこちらからご覧頂けます。

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