富士フイルム GFX100S IIで撮るサウジアラビアの絶景と世界遺産|三田崇博 海外撮影記
はじめに
こんにちは。旅写真家の三田崇博です。今回、私が富士フイルム GFX100S IIを携えて向かったのは、2019年に観光が解禁されたばかりの中東のサウジアラビアです。砂漠に眠る広大な世界遺産から、聖地の静謐な祈り、そして熱気あふれる近代都市まで、サウジアラビアが持つ多層的な魅力を撮影したいと考えました。
過酷な砂漠環境での撮影で驚かされたのは、最新のラージフォーマット機 GFX100S IIの高い描写力と、その機動力でした。1億200万画素という膨大な情報量が描き出す、サウジアラビアの美しさをこのカメラの使い勝手とともにお伝えできればと思います。
ラージフォーマットの圧倒的優位性
GFX100S IIが採用している「ラージフォーマット」センサーは、一般的な35mmフルサイズセンサーと比較して約1.7倍の面積を持っています。この物理的な余裕が、画質において決定的な差を生み出します。
●解像力とディテールの再現
1億200万画素という膨大な画素数により、遠景の微細な構造まで克明に描き出す圧倒的な解像力を備えています。
●豊かな階調表現(ダイナミックレンジ)
画素ひとつあたりの受光面積が広いため、明暗差の激しいシーンでも白飛びや黒潰れを抑え、滑らかなグラデーションを再現します。
●高感度耐性と低ノイズ
受光効率に優れるため、高感度撮影時でもノイズを最小限に抑え、クリアで質感豊かな描写を維持することが可能です。
GFX100S IIの特徴

●新開発センサー「GFX 102MP CMOS II」と最新エンジン
最新の画像処理エンジン「X-Processor 5」を搭載し、1億画素を超える膨大なデータの高速処理を実現しています。
●進化した「高速・高精度AF」と「被写体検出」
ディープラーニング技術を用いたアルゴリズムにより、AFの合焦速度と精度が飛躍的に向上しました。動体への追従性も高く、ラージフォーマット機ながら軽快なレスポンスを誇ります。
●クラス最高レベル「8.0段」のボディ内手ブレ補正
超高画素機において最大の懸念となる微細なブレを、強力な補正機構が徹底的に抑制します。これにより、従来は三脚が必須だったシーンでも、手持ちによる自由なアングルでの撮影が可能になりました。
今回の旅で選んだレンズ「GF20-35mmF4 R WR」
35mm判換算で16-28mm相当をカバーする、GFレンズの超広角ズームレンズです。
●圧倒的な描写性能
1億画素超のセンサー性能をフルに引き出す光学設計がなされています。
●優れた逆光耐性
強い太陽光が入り込むような環境でも、ゴーストやフレアを最小限に抑え、クリアな描写を実現します。
●機動力と堅牢性
防塵・防滴・対低温構造を備え、砂漠など過酷な環境での撮影でも安心して使うことができます。
中国・上海経由リヤドへ
日本からサウジアラビアの首都リヤドへの直行便は現時点で存在しないため、今回は中国・上海を経由するルートを選びました。長時間のトランジットを利用し、上海の街でGFX100S IIの肩慣らしをすることにしました。
目指すは、上海を象徴する歴史的建造物が並ぶエリア「外灘(バンド)」です。何度も訪れている場所ですが、地図アプリに頼らずとも歩けるほど馴染み深いこの街も、1億画素のラージフォーマットで切り取ると全く新しい表情を見せてくれます。

■撮影環境:F16 SS4秒 ISO400 焦点距離25mm
■撮影地:外灘の夜景(上海)
一度はその場を離れようとしましたが、ふと振り返ると背後から美しい月が昇ってきました。慌てて元の場所へと戻り、再び三脚を据えてシャッターを切りました。対岸にそびえ立つ近代的なビル群の光と満月が織り成すドラマを、1億画素の解像力で克明に記録しました。広角レンズでの撮影ながら、圧倒的な情報量のおかげで、夜空に浮かぶ月の模様までをはっきりと捉えることができたのには驚かされました。

■撮影環境:F13 SS1/2秒 ISO800 焦点距離35mm
■撮影地:外灘の夜景(上海)
▼月の部分だけトリミング拡大
世界遺産のあるアルウラへ
サウジアラビアは日本の約5.7倍もの広大な国土を持つため、都市間の移動は飛行機がメインとなります。今回、サウジアラビアで最初に登録された世界遺産を撮影するため、首都リヤドから約1,000km離れた北西部の町、アルウラへと飛びました。飛行機で約1時間40分の行程です。
現地でレンタカーを借り、まず向かったのはサウジアラビアの観光プロモーションでも象徴的に使われる「エレファントロック」。砂漠の中に突如現れる巨大な象の形をした岩石は、まさに自然の造形美です。沈みゆく夕日の光が岩肌の凹凸を際立たせる瞬間を狙い撮影しました。画面上部から地平線へと向かう空の滑らかなグラデーションをとても綺麗に表現することができました。ラージフォーマットならではの余裕を感じさせます。
強い逆光という厳しい条件ですが、GF20-35mmF4 R WRの優れた光学性能により、不快なフレアやゴーストは最小限に抑えられ、太陽の輝きをクリアに表現できました。

■撮影環境:F13 SS1/2秒 ISO800 焦点距離35mm
■撮影地:エレファントロック(アルウラ)
一方、こちらは同じアルウラの地で、深い夜の静寂の中で捉えた瞬間です。奇岩の真上に月が重なり、まるで岩が月を冠しているかのような荘厳な姿を見せてくれました。月を囲む「月暈(つきがさ)」の淡く柔らかな光の輪まで写し取ることができました。

■撮影環境:F4 SS2.5秒 ISO800 焦点距離26mm
■撮影地:アルウラ周辺
アルウラ周辺には、グランドキャニオンを彷彿とさせる巨岩が乱立する荒野が広がっています。まだ観光地化が進みきっていないため、この地球離れした絶景を独り占めできるのは、今のサウジアラビアを訪れる最大の特権と言えるでしょう。
空の鮮やかなグラデーションと、深く沈むシャドウ部という、ラージフォーマットのダイナミックレンジを試すような厳しいシーンでしたが、ここではハーフNDフィルター(H&YのHard GND 8)が大活躍しました。フィルターを空の明るい部分に合わせることで白飛びを防ぎつつ、手前の岩場のディテールまでを滑らかに描き出しています。

■撮影環境:F13 SS1/2秒 ISO400 焦点距離20mm
■撮影地:ハラット展望台(アルウラ)
そして、いよいよナバテア王国の遺跡群「ヘグラ(マダイン・サーレハ)」へ。かつてはツアーでの立ち入りに限られていましたが、現在は「HOP-ON HOP-OFFバス」を利用し、自分のペースで撮影できるようになりました。
荒野に刻まれた巨大な岩の裂け目(シーク)。その圧倒的なスケール感を余すことなく伝えるため、奥に人物が来たときに一緒に撮影し、その巨大さを強調しました。

■撮影環境:F13 SS1/12秒 ISO160 焦点距離20mm
■撮影地: ヘグラ(マダイン・サーレハ)
ヘグラ遺跡の中でも最も有名な「カスル・アル・ファリード(孤独な城)」。巨大な一枚岩を削り出して作られた精緻な装飾を、1億画素で完璧に捉えています。この場所は午後の光で遺跡に光が当たるため、最終バスの時間まで粘り西日に照らされる遺跡の姿を記録しました。

■撮影環境:F16 SS1/340秒 ISO400 焦点距離21mm
■撮影地: ヘグラ(マダイン・サーレハ)
アルウラ滞在の最後の夜、街明かりを離れた真っ暗な砂漠に車を走らせました。そこで見たのは天然の岩石アーチと満天の星空です。この感度においてもノイズは非常に少なく、ラージフォーマットならではの豊かな階調を維持しています。シルエットとなった巨大なアーチのシャープな輪郭と、澄み切った夜空のトーンが完璧に共存しており、GFX100S IIの持つポテンシャルの高さを改めて実感しました。

■撮影環境:F4 SS20秒 ISO12800 焦点距離20mm
■撮影地:アルウラ周辺
アルウラでの撮影を終え、次に向かったのはイスラム教第2の聖地「メディナ」です。アルウラからは砂漠の中を貫くハイウェイを南下し、車で約4時間の道のり。2022年まで非イスラム教徒の立ち入りが厳しく制限されていたこの街も、現在は中心部まで足を運べるようになりました。
砂漠の静寂から一転、街に入ると世界中から集まった巡礼者たちの圧倒的な熱気に包まれます。進化した手ブレ補正と高感度耐性のおかげで人々の行き交うシーンを手持ちスローシャッターで切り取ることができました。

■撮影環境:F16 SS1/5秒 ISO6400 焦点距離22mm
■撮影地:メディナ中心部
聖なる場所である預言者のモスク周辺では、三脚はもちろん、大型カメラの使用が禁止されています。ラージフォーマットのGFX100S IIはどうしても存在感が大きく、こうした場所では目立ちすぎてしまいます。そこで、ここではサブ機として携行していたコンパクトなX-M5とパンケーキレンズに切り替えることにしました。

■撮影環境:F5.6 SS1/125秒 ISO3200 焦点距離23mm
■撮影地:預言者のモスク(メディナ)
メディナ市街の南部に位置するこのクバ・モスクは、イスラム教の預言者ムハンマドが、メッカからメディナへ移住した際に、最初に建てたイスラム史上最古のモスクとして知られています。

■撮影環境:F16 SS1/220秒 ISO160 焦点距離35mm
■撮影地:クバ・モスク(メディナ)
メディナでの撮影を終え、次なる目的地、紅海に臨む商業都市ジェッダへと向かいます。移動手段は、2018年に開通したハイテク高速鉄道「ハラマイン高速鉄道」。かつては何日もかかった巡礼の道が、今ではわずか約2時間弱で結ばれています。
到着したジェッダ駅は、聖地の静謐さとは対照的な、近未来的なデザインが印象的な巨大ターミナルでした。

■撮影環境:F11 SS1/15秒 ISO250 焦点距離20mm
■撮影地:ジェッダ駅
ジェッダの旧市街「アル・バラド」に一歩足を踏み入れると、数百年もの歴史を刻んだ重厚な建物が並びます。ここの建築の最大の特徴は、「ロシャン」と呼ばれる美しい木製の飾り窓です。これは、外からの視線を遮りつつ、紅海からの涼しい風を室内に取り入れるための先人の知恵。その精緻な彫刻は、まさに芸術品です。
狭い路地ゆえに明暗差が非常に激しい環境でしたが、ラージフォーマットならではのダイナミックレンジの広さが活きました。影に沈んだ路地のディテールを残しつつ、電飾に照らされた壁面が白飛びすることなく、滑らかなトーンで共存しています。

■撮影環境:F16 SS26秒 ISO200 焦点距離20mm
■撮影地:アル・バラド(ジェッダ)
三脚が立てられない賑やかな路地での撮影でしたが、ここでも強力なボディ内手ブレ補正のおかげで、SS 1/26秒という低速でもシャープな解像感を維持できています。感度をそれほど上げる必要がないため、暗部が潰れることなく豊かな色彩を保っており、現地の賑わいをそのまま封じ込めたような一枚になりました。

■撮影環境:F8 SS1/26秒 ISO1250 焦点距離20mm
■撮影地:アル・バラド(ジェッダ)
旧市街の熱気を抜けて辿り着いた海岸沿いで、この旅を象徴するような光景に出会いました。白亜のモスクが夕陽を浴び、その陰影が古都の記憶を刻んだ「ロシャン」を浮かび上がらせていました。

■撮影環境:F22 SS1/15秒 ISO200 焦点距離24mm
■撮影地:ジェッダ市街
サウジアラビア縦断の旅、その最後を飾るのは、首都リヤドから砂漠を越えた先に現れる巨大な断崖絶壁「Edge of the World(世界の果て)」です。地平線の彼方まで続く広大な乾燥地帯と、垂直に切り立った岩壁。そこへ沈みゆく太陽の光が、すべての風景を黄金色に染め上げていきました。
強烈な輝度を放つ地平線付近の光をいかに制御し、手前の岩肌の質感を両立させるかでした。ここでは、最も明るい中央部を強く減光するタイプのハーフNDフィルター(H&YのReverse GND 16)を使用。太陽の白飛びを抑えつつ、逆光でシルエットになりがちな絶壁の層や、砂漠の微細な凹凸を滑らかな階調で描き出しました。

■撮影環境:F22 SS1/27秒 ISO250 焦点距離22mm
■撮影地:Edge of the World(リヤド近郊)
まとめ
今回のサウジアラビア縦断は、私にとってまさに「未知との遭遇」の連続でした。そこにあったのは、悠久の時を刻む大自然の絶景と、聖地に集う巡礼者たちが放つ敬虔で圧倒的な熱気です。しかし、帰国後ほどなくして、情勢が不安定になってしまったことは痛恨の極みです。一方で、激動の直前、GFX100S IIという最高の機材で、美しい姿を最高の画質で記録できたことには、大きな意義を感じました。いつか再びこの地に平穏が訪れ、より多くの人々がこの素晴らしい光景に出会える日が来ることを切に願っています。
■写真家:三田崇博
1975年奈良県生駒市生まれ。世界遺産撮影をライフワークとし現在までに100を超える国と地域で420か所以上の世界遺産を撮影。定期的に全国各地で開催している写真展は100回を超える。各種雑誌やカレンダーへの作品掲載も多数。主な著書に「世界三十六景」「生駒の火祭り」がある。
日本写真家協会(JPS)会員・FUJIFILM X-Photographer















