デジカメでレトロ風撮影を楽しもう|こばやしかをる
はじめに
レトロな色は、どこか懐かしくも新鮮な魅力があります。近年になってトイカメラやオールドコンデジ、フィルム写真も再評価されるなど、昭和や平成のカルチャーは“レトロかわいい”、 “エモい”など言葉でも表現されるようになりました。
今回はカメラ内の設定や機能を使って、写真初心者〜誰でも実践できる「古くて新しい写真」、レトロ風撮影のポイントをご紹介いたします。
レトロなイメージってどんなもの
写真にアンティーク&ノスタルジックな印象を与えるレトロな色合いは、彩度・明度が低めの「くすみと温かみ」が特徴的で、懐かしさ×癒し効果からノスタルジーを生み出すというもの。黄みや茶色を混ぜた「濁りのある色」、どちらかといえば冴えない色を使うことで雰囲気を演出できます。
代表的なイメージは
・色あせたような色設定(セピア・グリーン・イエロー系が強調されるなど)
・粒子感が強く、色が滲んだような質感
・彩度が低く、黄色や緑がかった渋いトーン
レンズ付きフィルムカメラのような感じや、1970年代の映画のような重厚なヴィンテージ感、雑誌のバックナンバーのような淡い色褪せ感、といったところでしょうか。
こうしたイメージの写真は、鮮明に写るデジタルカメラでもカメラ内の設定や機能を使ってレトロ風の懐かしい雰囲気を作り出すことができます。
レトロが似合う被写体選び
人情・風情・生活感・年代物・下町・路地・商店街・喫茶店・洋館など、言葉にしてみるとちょっと古臭さもあり、昭和を感じませんか?
派手さのない静かな場所、時の流れを感じる空間。そんな場所こそがレトロな色合いにふさわしく、郷愁感を抱く被写体です。特に、大正〜昭和初期と、高度経済成長期の昭和30年代後半〜50年代の建物は、当時の空気をまとったままひっそりと街中に息づいていたりします。
また、木目・金属・錆・枯れものなどの経年劣化を感じるもの、生活になじみ人々に使われてきたものこそ、レトロな風合いがよく似合うものです。質感に合わせ、落ち着いた色味で全体を統一することで渋さが際立ち、時を経て生まれる味わいが引き出せます。

■撮影環境:F3.2・1/30秒・ISO640・-0.3EV・WB日陰
■イメージコントロール:シネマ調(Y)

■撮影環境:F3.2・1/50秒・ISO200・-0.7EV・WB日陰
■イメージコントロール:ネガフィルム調

■撮影環境:F2.5・1/2000秒・ISO200・-0.3EV・WB日陰
■カスタムイメージ:銀残し(Y)

■撮影環境:F5.6・1/60秒・ISO200・+0.7EV・WB日陰
■イメージコントロール:シネマ調(Y)
レトロ風に仕上げる設定
色調やコントラストを調整して自分好みの雰囲気に仕上げる機能は、ベースとなる色設定の彩度やコントラストを整えます。
写真の基礎的な雰囲気を決めるにあたり、ご自身のカメラ内に下記の01~04の機能があるか。改めて確認をしてみましょう。思いがけず、いつもと違う撮影が楽しめる機能も備わっているはずです。
【01】ホワイトバランス(WB)
ホワイトバランスは、白い色を白く再現するためのものですが、レトロな表現の場合は、太陽光の下でもあえて「曇天」や「日陰」モード、あるいは手動で5800K〜6500K程度に設定して撮影するようにします。画面全体が黄色味を帯びて、夕暮れ時のような、あるいは色褪せた雰囲気の温かみのある写真に仕上がります。
ホワイトバランスは白くキレイに写すためでなく、イメージ作りにも役立ちます
【02】彩度を下げる
比較的色がくすんで派手さの少ない色合いが適しています。カメラの機種にもよりますが、選んだ色設定をさらに調整する機能があり、その中の詳細項目で「彩度」の調整を行います。マイナス方向に動かして「彩度」を下げます。
Canon「ピクチャースタイル」、Nikon「ピクチャーコントロール」、SONY「クリエイティブルック」、富士フイルム「フィルムシミュレーション」、Panasonic「フォトスタイル」、OM SYSTEMS「ピクチャーモード」、RICOH「イメージコントロール」、PENTAX「カスタムイメージ」など。
詳細項目の設定はメーカーごと、機種の発売時期などにより異なります。

■撮影環境:F3.2・1/640秒・ISO320・WB曇り
■フィルムシミュレーション:クラシックネガ(彩度-1)

■撮影機材:リコー GR IV
■撮影環境:F5.6・1/30秒・ISO500・+0.3EV・WB日陰
■イメージコントロール:シネマ調(G)
【03】粒状感を加える
シネマチックやヴィンテージ、フィルム特有のざらつきを再現する設定の「粒状感」を加えることで、デジタル画像のツヤっぽい質感が抑えられ、プリントしたような手触り感が生まれます。新聞や雑誌に載っていた古い写真や、実家のアルバムに眠っているプリントのような仕上がりは、どことなく記憶の中の光景のようなイメージになります。

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:F4.0・1/4000秒・ISO640・WB 6000K
■フォトスタイル:L.クラシックネオ+LUT:Classic Teal N Orange+粒状(STD)

■撮影機材:F4.0・1/100秒・ISO320・WB曇天
■フォトスタイル:Cinelike D2+粒状(LOW)
【04】デジタルフィルターやLUT(ラット)を活用する
カメラの中にある「デジタルフィルター(アート効果)」や「LUT(Look Up Table)」などを組み合わせて表現することもできます。
意外と知られていないのですが、「デジタルフィルター(アート効果)」は、大抵のデジタルカメラに備わっている機能です。現像ソフトを使わない方でもカメラ内で簡単に雰囲気ある仕上がりにできるのでおススメです。
「レトロ」「トイカメラ」「ヴィンテージ」などのフィルター効果を選ぶだけで、写真に特殊な加工を施すことができます。最近では、色味を変えるだけでなく、フィルムの欠点をあえて再現する仕上がりもトレンドのようです。
OM SYSTEM (オリンパス)「アートフィルター」、Canon「クリエイティブフィルター」、Nikon「クリエイティブピクチャーコントロール」、富士フイルム「アドバンストフィルター」、Panasonic「クリエイティブコントロール」、SONY「ピクチャーエフェクト」、PENTAX「デジタルフィルター」などです。

■撮影環境:F2.8・1/300秒・ISO200・WBオート
■アドバンストフィルター:レトロ

■撮影機材:富士フイルム X Half
■撮影環境:F2.8・1/125秒・ISO500・-0.7EV・WBオート
■アドバンストフィルター:ライトリーク
LUT(ラット)は、写真や動画の色を自在に変換するための色の設計図となるデータです。世界中のクリエイターが公開する多彩な色調のLUTをカメラに読み込めば、映画のような表現が手軽に楽しめます。
撮影中はもちろん、撮影後のカメラ内RAW現像で適用することも可能で、自分の理想とする世界観を後から何度でも追求できる魔法のフィルターのような機能です。

■撮影環境:F3.2・1/2500秒・ISO400・-0.7秒・WB 6000K
■フォトスタイル:フラット+LUT:Flat & Contrast(オリジナル)

■撮影機材:パナソニック LUMIX S5II + SIGMA 45mm F2.8 DG DN | Contemporary
■撮影環境:F3.2・1/800秒・ISO400・-0.7秒・WB 6000K
■フォトスタイル:フラット+LUT:FilmLike-V2
柔らかい描写のレンズ、温かみのある光にも注目
暖かい色味の写真に柔らかい光の表現を加えることで、現代のデジタル写真が一気にノスタルジックな雰囲気に変わります。
夕方の光や逆光を積極的に選んで撮影してみると、西日のオレンジ系のほっこりとした温かみのある落ち着いた色合いになり、さらに、ピントの甘いオールドレンズを使うことで、フレアやゴーストが加わり、懐かしさを感じる一枚になります。

■撮影機材:PENTAX K-3 Mark III + PENTAX Super-Takumar 55mm F1.8
■撮影環境:F2.5・1/5000秒・ISO400・-1EV・WB太陽光
■カスタムイメージ:Gold

■撮影環境:F2.8・1/400秒・ISO320・-0.7秒・WBオート
■クリエイティブコントロール(フィルター効果):レトロ
オールドレンズを持ち合わせていなくても、レンズ前に取り付ける「ブラックミスト」、「ホワイトミスト」などのソフト系フィルターを活用するのも効果的です。光が拡散され柔らかい雰囲気を生み出すことができます。写真に温かみや懐かしいイメージを創り出す特殊効果フィルターを使えば、情景的な表現も可能にしてくれます。

■撮影環境:F2.8・1/25秒・ISO1250・+0.3EV・WB日陰
■イメージコントロール:レトロ+H&Yブラックミストフィルター(1/4)

■撮影環境:F4・1/30秒・ISO400・-0.3EV・WB曇り
■イメージコントロール:ネガフィルム調+H&Y Retro Color フィルター Orange
撮った後はPCやスマホのアプリも活用できます
RAW現像する手間も時間もかけずに、簡単にレトロな雰囲気を創り出してくれるのが、PCやスマホ内のアプリです。意外と盲点ですが、PCのOSにバンドルされている無料の写真アプリはかなり優れもの。
どんなカメラで撮影しても、PCに写真データを取り込んでおけば、写真現像ソフトを使わずとも気軽にレトロ感を加えることができます。JPGデータでOKです。
フィルター効果を選び、パラメータ(スライダー)を適度に調整したり、ビネット効果を加えたりするだけで雰囲気のよい写真に仕上がります。
Mac PC版「写真」アプリ編




■撮影環境:F2.8・1/20秒・ISO320・+1EV・WB太陽光
■イメージコントロール:ネガフィルム調+ドラマチック(暖かい)
Windows「フォト」アプリ編



■撮影環境:F2.8・1/25秒・ISO640・-0.3EV・WB太陽光
■イメージコントロール:ポジフィルム調+焼き込みフィルター
撮影後に「やっぱり雰囲気を変えてみたい」と思ったり、これまで温存していた過去のデータを改めて活用することができる気軽な方法なので、ぜひ試してみてください。
おわりに
レトロやノスタルジックな感覚は、人それぞれですが、昭和時代にフィルムで撮影された映画や、1970~80年代のアルバム写真、雑誌のグラビアなどを目にする機会があれば参考にしてみるのも良いでしょう。
実際に、ご紹介した方法でお気に入りのレトロ写真ができたら、ぜひ写真屋さんの銀塩プリントを体験してみてください。一層レトロな雰囲気が味わえますし、令和の写真がこの先訪れる新しい時代のレトロ写真として残されていくことでしょう。
長い時を経て、プリントされた写真の価値は高まるはずです。
■写真家:こばやしかをる
デジタル写真の黎明期よりプリントデータを製作する現場で写真を学ぶ。スマホ~一眼レフまで幅広く指導。プロデューサー、ディレクター、アドバイザーとして企業とのコラボ企画・運営を手がけるなど写真を通じて活躍するクリエイターでもあり、ライターとしても活動中。
日本作例写真家協会会員・PhotoPlus+主宰


















