【夜絶景】なんでもない風景が絶景に変身する夜撮影:マニュアルモード編

星野佑佳
【夜絶景】なんでもない風景が絶景に変身する夜撮影:マニュアルモード編

はじめに

夜絶景記事の後編では、夜のマニュアル撮影についてお話しします。
撮影モードを前回の絞り優先オートにするか?マニュアルにするか?の判断基準のひとつは、「状況の変化の有無」です。

薄明薄暮で、明るさなどの状況が刻々と変化する時は、暗くなるのに合わせてカメラがシャッター速度を遅くして、適正露出で撮ってくれる「絞り優先オート」が有利でしょう。
雲から月の光が出たり入ったりする時も同様に、絞り優先オートが楽ちんです。

逆に夜が更けて、暗くなりきってしまった状況や、雲がないクリアな夜空など明るさの変化が少ない時は、マニュアル設定でシャッター速度を任意に設定できる方が、イメージ通りの作品が撮りやすくなります。

マニュアルの設定方法

マニュアル設定では、ISO感度、絞り値、シャッター速度をそれぞれ選びますが、夜の撮影で一番作品に影響を与えるのは、シャッター速度でしょう。

夜のマニュアル撮影での優先順位としては、1.シャッター速度 2.絞り値 3.ISO感度です。
ISO感度は抑えた方が画質はよくなりますが、最近のカメラは性能が良いので、極端に高感度でなければあまり気にしなくても良いと思います。

絞り値は、開放から2絞り位までの設定を使うことが多いです(例外もあります)。
夜の場合、一番見せたい部分にしっかりピントが合っていれば、そんなに絞り込まなくても全体にピントがきている感が出ます。
レンズの絞り開放付近で出やすい周辺減光も、夜らしい暗さの残る作品なら日中より悪目立ちしませんし、周辺減光は現像時の調整も可能です。

最も作品に反映されるシャッター速度は、完成イメージを想像しながら決めましょう。なんといっても、夜はスローシャッター(長秒露光)の作品が撮りやすいのが醍醐味ですね。
1分、10分、1時間とスローシャッターで撮った作品は、肉眼では見ることのできない描写が楽しめます。

作例1「風とマーガレット」(ストロボ有無)

▼ストロボ無し

■撮影機材:ニコン D810 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
■撮影環境:f/14 15秒 ISO400 WB晴天 風景

▼ストロボ有り

■撮影機材:ニコン D810 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
■撮影環境:f/16 30秒 ISO400 WB晴天 風景 手持ちストロボ

日没40分後、水田と白い花と町明かりをマニュアルでスローシャッターに設定しました。月齢4で月光は弱いですが、薄暮の時間帯なので、長秒露光撮影で画面全体の明るさが保たれています。
そのうち風が出てきてしまい、なかなか花が静止してくれません。
そこで、ストロボを使用。光が届いた瞬間は花が鮮明に写るので、風で揺れてブレた花の描写との組み合わせで、柔らかさを演出しました。

注意点は、ストロボの光がなくても適正露出で描写できる設定で撮影すること。
全てをオート設定にしてしまうと光の届いた花だけが明るく写り、他は暗くなってしまいます。

作例2「紫陽花と雲海」(セルフライティング)

■撮影機材:ニコン Z9 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:f/8 30秒 ISO1600 WB3500KB vivid
■撮影機材:ニコン Z9 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:f/8 90秒 ISO1600 WB3500KB vivid

▼完成形の1枚

■撮影機材:ニコン Z9 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:f/8 180秒 ISO800 WB3500KB vivid

こちらは紫陽花をセルフライティングした作品です。

雨名残(愛媛県四国中央市) | もっと撮り旅 | 楽しむ | ニコン
上記のフォトエッセイに掲載した作品を撮るまでの過程をごらんください。

雨上がりで霧がたなびく夜でした。
風がなかったのと、雲で星が見えず、月明かりもなく、かなり暗かったため思い切って180秒の長秒露光に設定しました。
長秒露光している間に、手で持ったヘッドライトを弱めの光量にして、多方向からアジサイをセルフライティングします。 
なるべく自然な仕上がりにするために光の感受性を抑えるべく、ISO感度はあまり上げずF8まで絞り込み、その代わり露光時間を延ばしました。

▼作例バリエーション

濃い霧がかかった状態
■撮影機材:ニコン Z9 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:f/8 120秒 ISO800 WB3500KB vivid
濃い霧でシルエットにしてみた1枚
■撮影機材:ニコン Z9 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:f/8 30秒 ISO1600 WB3500KB vivid
夜明けではまた違った雰囲気に
■撮影機材:ニコン Z9 + NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S
■撮影環境:f/8 30秒 ISO1600 WB3500KB vivid

ライトの有無や当て方、背景の霧の状態でも描写が変わるので、作例で比較してみてください。
このような曇り空だと、星が見えないのもメリットです。というのは、数分程度の長秒露光では中途半端な長さの線になってしまう星は、写したくないのです(私は、星は点か長い線のどちらかで描写したいと思っています)。

作例3「夜の波」(スローシャッター)

■撮影機材:ニコン Z7 + AF-S NIKKOR 70-200mm f/2.8E FL ED VR
■撮影環境:f/8 81.5秒 ISO400 WBオート1(B3.00 M0.25 =3850KB) 風景

長秒露光撮影は肉眼で見るのとは違った描写になるため、なんでもない風景にも不思議な魅力を与えてくれます。
特に夜は明るい時間には目障りだった人工物が見えづらくなり、暗くならないと輝かない人工光も加わるので尚更です。

こちらの作品は海岸で打ち寄せる波を約80秒で撮影しました。
滑らかな水面は色ノリがよくなるため、波打ち際の白と海の青の違いが際立ちます。
遠くの建造物は明かりだけが浮かびあがりアクセントに。
空の雲も流れて滑らかに均一化され、人工光色に染まりました。

作例4「東尋坊」(人工光)

■撮影機材:ニコン Z7 + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/11 143秒 ISO200 WB晴天 ピクチャーコントロール オート

夕日を撮影した東尋坊で、暗くなってからも撮り続けました。
船の光跡を最後まで入れたかったので、途中で撮影が終わらないようにバルブ撮影をしています。
暗くなるにしたがい、周囲の街灯(蛍光灯)の光を拾って岩場が明るく写りはじめました。

緑色被りも強く、光が届く所と届かない部分のムラが目立ちだしたので、撮影を終了。薄暮を過ぎると、人工光の影響で撮りづらくなる場所がありますが、実際に暗くなってからでないとわからないことが多いものです。特に月明かりが弱い時は、人工光の影響をもろに受けるので要注意です。

作例5「そばの花畑」(紙技・失敗例も)

▼F2.8 30秒 ISO1600

■撮影機材:ニコン Z7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/2.8 30秒 ISO1600 (B1.00) ニュートラル

▼F2.8 60秒 ISO1250

■撮影機材:ニコン Z7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/2.8 60秒 ISO1250 (B1.00) ニュートラル

▼F4 60秒 ISO1600

■撮影機材:ニコン Z7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/4 60秒 ISO1600 (B1.00) ニュートラル

▼F4 90秒 ISO800

■撮影機材:ニコン Z7II + NIKKOR Z 14-24mm f/2.8 S
■撮影環境:f/4 90秒 ISO800 (B1.00) ニュートラル

こちらの作例は、白いそばの花と夜空を写したものです。
月齢は3.7。月の入りの1時間半前に撮影しました。
弱い月光で位置も低く、月明かりはあるかないかという感じです。

この時の課題は、空とそば花畑の露出差(明暗差)です。
そばの花に適正露出を合せると、空が白飛びしてしまうのです。
現像ソフトで調整するなら撮影時にヒストグラムを確認しながら、空の白飛びやそば畑が黒つぶれしないよう、暗めに撮っておいて、あとからそば畑の部分を明るく調整する方法もありますが、現場でなるべく仕上げたい場合、私は「紙(神)技」を使います。(黒紙を使う&たぶん難易度が高いが故に、「神」技の愛称があります)

例えば、露光時間の2/3※ほど(30秒なら20秒位)の間、空の部分を黒い紙で隠して、空の露光時間は10秒、そばの花の露光時間は30秒として撮影するのです。
空の露光時間が短くなることで明暗差も解消しますし、雲や星の動きも10秒分だけになるので、星は点に、雲も流れ過ぎません(※状況に応じて、紙隠し率を1/2、1/3など色々試します)。

ハーフNDフィルターだと明暗差は解消できても、星や雲は流れてしまいます。
この紙技、私はハーフNDの入れ物の厚手の黒布を愛用しています。
黒紙(布)がなければ、黒い手袋をはめた手でも代用できます。(指の隙間に気を付けて)
黒布は手で持ち、ブレを防ぐため、レンズに当らないギリギリの位置で使います。
境界線が明確にならないよう、やや上下に揺らすこともありますが、いずれにせよ手で持っているから完全静止はしないので、要領がつかめれば、境界線が悪目立ちしない撮り方ができるようになります。

失敗例はこちらです。

黒布を外すタイミングが遅すぎて端が写ってしまったものや、タイミングが遅かっただけでなく境界線の位置も間違えた失敗例です。
慣れてきても、まあまあ失敗します。ちょっとコツは入りますが試してみてください。
もちろん、紙技なしのRAWデータ撮影も忘れずに。

作例6「漁火」(紙技)

■撮影機材:ニコン D850 + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR
■撮影環境:f/3.5 30秒 ISO800 WBオート0(B4.00 M0.25)3590KB 風景

夕日の撮影に訪れた棚田で、海の向こうに光る漁火を撮影。
薄暮の時間帯はまだ漁火の数が少なく、出そろったのは暗くなってからでした。
トップライトの半月が棚田を照らしています。
月が見える上空には雲がなく、明るさが安定していたのでマニュアルで設定。
適正露出のターゲットは、棚田の部分です。
そのままだと空が明るくなり過ぎるので、ここでも紙技を使いました。
30秒露光のうち15秒間ほど空を黒紙で隠した分、雲や星の動きが少なくなったのも良かったです。

紙技を使う時は、必ずマニュアル設定です。
前述の作例でいうと、そばの花畑や棚田が適正露出になるように、マニュアルで設定しましょう。
ハーフNDなら絞り優先オートに対応できますが、紙技の場合、絞り優先オートにすると、黒紙を当てた途端「ものすごく暗い」とカメラが判断して、とんでもないスローシャッターに設定されます。
露光の途中で黒紙(布)は外すわけですから、結果、露出オーバーの画像になってしまいます。必ずマニュアル設定で挑戦してください。

また露光時間のうち、どの位の時間を黒紙(布)で隠すかは、試行錯誤が必要です。
紙技(ハーフND)だけで、明暗差の整った画像を作り上げるか?
あるいは紙技(ハーフND)は控えめに使い、明暗差の軽減されたRAW画像を撮っておいて、パソコンの現像作業で仕上げる。という考え方もアリです。

くどいようですが、必ず紙技なしのRAW画像も撮影しておいてください。

作例7「月夜のドライブ」(アクティブDライティング・WB)

▼未現像

■撮影機材:ニコン D800E + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
■撮影環境:f/4 63秒 ISO800 風景

▼RAW現像で暗部を持ち上げる

■撮影機材:ニコン D800E + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
■撮影環境:f/4 63秒 ISO800 風景

▼さらにホワイトバランスを調整

■撮影機材:ニコン D800E + AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED
■撮影環境:f/4 63秒 ISO800 風景

霧の中を走る車の軌跡を写したかったので、バルブ撮影で車が通り過ぎるまで撮影しました。
一枚目は未現像、2枚目はRAW現像でカメラの機能「アクティブDライティング」を標準にして、暗部を明るく持ち上げた画像です。3枚目は、ホワイトバランスを3500KBにしてみました。
現像時の自由度が高いので、明暗やホワイトバランスの調整をすることが多い夜の撮影ではRAW撮影が必須です。

作例8「光るキノコ」(夜でも絞り込んで撮る)

■撮影機材:ニコン Z9 + NIKKOR Z 50mm f/1.2 S
■撮影環境:f/11 60秒 ISO1600 WB3500KB vivid

夜の撮影では絞らなくても大丈夫と書きましたが、例外もあります。
被写体に近づいて撮る場合は、絞らないとピントの合った一部分以外がぼけてしまい、全体的にピントが合っていない印象になりがちです。
この作例もF11まで絞って、やっとキノコ全体にピントのあった写真になりました。
周りに枯れ落ち葉を入れて、森の中のイメージを強調。光っているキノコと違い枯葉は暗いので、青色光のレーザーポインターをうっすら当てました。

最後に

夜絶景のマニュアル撮影編、いかがだったでしょうか?
何十秒、何分と長い時間露光できる状況は、かなり暗い状況です。
だからこそ肉眼とは違う描写ができるのですが、暗すぎて構図が決まらない、ピントが合わない、合っているかもわからない時に私が助けられているのが、愛機ニコン Z8の「スターライトビュー機能」です。これを使うと、真っ暗な環境でも撮影画面が明るく見やすくなるので、楽に確実に夜の撮影を進められます。

今回の作例では、古い機材で撮影した蔵出しの画像もたくさんありますが、当時と比べて助かっているのが、30秒60秒90秒~とスローシャッターが設定できる機能。以前は30秒以上はバルブ撮影になり、必死で秒数を数えていた苦労がなくなりました。

深い深い夜絶景の世界、まだ味わったことのない方は、ぜひご賞味下さい。

 

 

■写真家:星野佑佳
2000年から海外や日本全国を放浪しながら撮影を始め、現在は地元・京都と風景写真がメインのフォトエッセイストとして活動。写真誌等のコンテスト審査員や撮影会、テレビ番組内での風景撮影指導なども行う。フォトエッセイ「もっと、撮り旅」を、雑誌「風景写真」とニコンイメージングジャパンのWEBサイトの2つで連載中。著書に「京の祭と行事365日」(淡交社)や「撮り旅」(風景写真出版)がある。

 

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