OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO で楽しむ天体と望遠星景
望遠レンズで星空写真を撮る
星空風景の美しさや奥深さをカメラで捉えようとする星景写真。天空をまたぐ天の川や星座などの景色を撮影する面白さ・楽しさ。なにしろ天の川は「人の眼で見える最大の構造」だ。被写体がそういう圧倒的な大きさであることが、星空写真の魅力であることは間違いない。
広大無辺な宇宙を見る一方で、人は宇宙を知るために望遠鏡を使ってきた。何百光年・何万光年という宇宙の深淵を理解するために。そんな星空の写真をカメラで撮ってみたくなるのは、天体そのものの美しさや不思議さを自分で捉えてみたいからだ。写真に撮ることで、肉眼では見えない天体の姿が見えてくる。じつは私自身も、写真でこそ見える天体の姿が面白くて写真を始めた一人である。
さて、星の風景を撮る星景写真というと、天の川などの星空の広がりを超広角レンズで撮ることが多いことだろう。本来は超広角レンズに分類される24mmレンズ(35mm判換算で)くらいが「標準レンズ」という感じになるくらいで、それでももっと広く撮りたいと思うことも普通によくある世界だ。
そんな星空写真ではあるが、今回はOM SYSTEMの新しい大口径望遠ズームで撮る星空写真について書いてみたいと思っている。いつもは広く撮りたい星空を深く覗き込んでみたいという気持ち。よろしければお付き合いください。
M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PROの結像
今回使用のレンズは、OM SYSTEMの「M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO」(以降、「M.ZD50-200mmF2.8PRO」と略)だ。35mm判換算だと100~400mm相当の画角になる中望遠~超望遠域をカバーする、手ぶれ補正機能搭載のF2.8通しの大口径ズームレンズである。
手にした第一印象は「軽い!」。そしてファインダーを覗いた瞬間にシャープさを感じさせる像。同時にボケの美しさにも感心させられた。私は近い焦点域の「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」を長く使っているが、こちらは極めてシャープであるものの、後ボケはやや二線ボケっぽくてちょっと不満があった。それがM.ZD50-200mmF2.8PROにはそんな不満はひとつも無い美しいボケ味。しばらく使ってみても、全くと言っていいほど欠点を感じないレンズである。
さて、今回はこのレンズでの星空撮影だ。まずはポータブル赤道儀を使って撮影した天体写真から、このレンズの結像の実力を見てみよう。
次の写真は夏の天の川の最も太く見える部分、いて座に位置する銀河系中心方向を広角端50mm(35mm判換算100mm相当)で切り取ったものだ。F2.8の絞り開放での撮影である。カメラはOM-3の通常モデル。赤い星雲がいくつか見えるが、明るい星雲なのでそれなりによく写っている。
絞り開放でも周辺光量が豊富なのがマイクロフォーサーズレンズの特長だ。ほんのわずかな周辺光量補正(ここでは+1/3段ほど)でほとんど問題なし。微光星が画面全体にばら撒かれたような天の川の一部分だが、最周辺部でも星像の崩れや色収差もほとんど見られず、安心して絞り開放から使えることが確認できる。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(50mm:35mm判換算100mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 60秒 ISO3200 手持ちハイレゾショット×3コマ加算平均
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
ついで同じ場所(散光星雲M8・M20付近)を望遠端200mm(35mm判400mm相当)でクローズアップした写真だ。これも絞り開放の星像の均一性はじつに見事なもの。文句のつけようが無いほどだ。超望遠レンズで見られがちな色収差も全く問題なし。シャープな星の写りに天の川に散在する星雲や星団を訪ねて撮影していくのがとても楽しくなるレンズである。天の川の中に複雑な形を見せる暗黒星雲の存在も非常に興味深い。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(200mm:35mm判換算400mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 60秒 ISO3200 手持ちハイレゾショット×2コマ加算平均
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
こちらははくちょう座の一等星「デネブ」の近くにある「北アメリカ星雲」だ。焦点距離200mm(35mm判400mm相当)で隣の「ペリカン星雲」(いずれも星雲の愛称は見かけの形から)バランスよく画面に収まった。OM-3通常モデルで撮影しているが、比較的明るい星雲なのでよく写る。
ここではソフト効果のある「ボディマウントフィルター BMF-SE01」を使用した。それで星の明るさと色に表情が出て、星雲も含めて星の空感の奥行きを感じられるような気がする。望遠・超望遠域では、レンズ前装着のソフトフィルターは大きくボケ過ぎて適さないのだが、超望遠でも程よいソフト効果になるボディマウントフィルターが純正品で用意されているのはありがたい。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(200mm:35mm判換算400mm相当)
■撮影環境:マニュアル F4.0 60秒 ISO6400 40コマ加算平均
ボディマウントフィルターBMF-SE01使用
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
はくちょう座の西側の翼近くには、天文台写真で有名な「網状星雲」がある。これは「超新星残骸」という種類の星雲だ。大質量恒星の最期に起こす超新星爆発で吹き飛ばされたガスが宇宙空間に広がっていくときに周囲の星間ガスと衝突するところが見えるものだ。淡めな星雲なので、ここは赤い星雲がよく写る「OM-3 ASTRO」で撮影した。超望遠域では、こんな不思議な形状の天体も撮影対象として魅力的である。

■撮影機材:OM-3 ASTRO + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(200mm:35mm判換算400mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 60秒 ISO10000 手持ちハイレゾショット×3コマ加算平均
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
天の川として見える我々の銀河系から250万光年の距離にある、お馴染みの「アンドロメダ銀河・M31」である。円盤状の銀河を斜めから見た姿で、暗黒星雲が渦を巻いていることがわかる。光害の少ない条件の良い空だと、中央部の明るい部分が肉眼でもほんのり見える大きな銀河だ。隣接して写っている楕円形の光はM31の伴銀河「M32」と「M110」。
画面全体に散らばった星は全て私たちの銀河系にある近い星だ。これらの距離はだいたい1000光年くらいだろう。それに比べてアンドロメダ銀河の250万光年という途方もない距離には驚かされる。でも、それがすぐお隣の銀河という宇宙空間の途方もなさには言葉を失う。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(200mm:35mm判換算400mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 60秒 ISO5000 45コマ加算平均
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
これら星雲のような淡くて暗い天体は、OMカメラのナイトビューという星空撮影に適したライブビューをもってしても、一発で画面にうまく構図を決めることは困難だ。そこで周辺の星の並びを頼りに目的の天体を探すわけだが、焦点距離50mmという中望遠域でおよその位置を確認し、そこから200mm超望遠域までシームレスでクローズアップしていけることがとても便利に使えた。
また、どの焦点距離でもOMカメラの「星空AF」でピントは正確に合わせることができている。精度の高い星専用のAFで、これは信頼できる。
月の風景を撮る
望遠レンズで撮る天体の風景といえば、まずは月。月はレンズの焦点距離のおよそ1/100の大きさの実像となってイメージセンサーに映ることを覚えておくといい。マイクロフォーサーズの4/3型センサーは17.4mm×13.0mmなので、画面いっぱいに大きく月を撮ろうとしたら、せめて1000mmくらいの焦点距離が必要だとわかる。
M.ZD50-200mmF2.8PROでは焦点距離からして月面クローズアップは無理としても、月のある風景にはちょうどいい。そういう例をここでいくつか。
夏の夕方、東に向いた自宅の窓から積乱雲を眺めていたら、その横に満月ちょっと前の月が姿を現した。太陽はすでに沈んでいて、月の明るさが際立ってくる時間帯だ。月の欠けぎわをシャープに写したかったのでF5.6にしてみたが、そこまで絞る必要はなかったかも。
ISO200で1/15秒という400mm相当の超望遠にして手持ちではあり得ないシャッター速度での撮影である。このレンズはボディとの協調手ぶれ補正で、この程度はラクラク止まってくれる。月の模様はもちろん、欠け際のクレーターまできっちりシャープに写っていて感動する。数km先の積乱雲と38万km彼方の月の距離感を思い浮かべると、これも特別な景色に見えてくる。

■撮影機材:OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(200mm:35mm判換算400mm相当)
■撮影環境:絞り優先オート F5.6 1/15秒 ISO200 手持ち撮影
こちらは満月を過ぎ、西側が欠けてきた月だ。天候はほぼ曇りで、時おり雲の切れ間から姿を見せてくれるという気象条件だ。
夜中の月は周りの空に比べると非常に明るくて、空の表情と一緒に描写するのはまず不可能。それで月を完全に隠さない程よい厚めの雲が月の前を通過するタイミングを狙って撮影をする。
この時は雲の流れも表現するために4秒という露光時間に設定した。これだと月は日周運動でブレてしまうため、ポータブル赤道儀で追尾して撮影している。雲を通してもシャープに写っている月面クレーターが楽しい。月の近くが青っぽく、やや離れたところが赤っぽい色のグラデーションが美しい。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(200mm:35mm判換算400mm相当)
■撮影環境:マニュアル F4.0 4.0秒 ISO200
トーストテクノロジー「TP-2」で追尾撮影
群馬県の赤城山から隣の榛名山に沈む月を撮影した。まもなく上弦になる月の影の部分に「地球照(ちきゅうしょう)」が見えている。これは太陽に照らされた地球の昼部分がレフ板のようにくらい部分を照らし出す現象だ。
月の真下のピークが榛名富士。複式火山である榛名山の中央火口丘である。その手前の街明かりは伊香保の温泉街。街明かりのひとつひとつがシャープで美しく写っている。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(200mm:35mm判換算400mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 1.0秒 ISO3200 三脚固定撮影
続いて、高度を下げた月が稜線にかかったところを1.4倍テレコンバーター「MC-14」を装着して撮影した。焦点距離は280mm、35mm判換算560mm相当の超望遠になる。月が大きく写り、より迫力のある月没風景になった。月自体は分厚い大気の影響で揺らぎ、シャープに撮ることは出来ないが、月の光で光って見える稜線の木立はけっこうシャープに写っている。伊香保温泉の街明かりを見ると、明るい光源にいくらか内向きのコマ収差が見られるが、稜線はシャープなところから見て、これは光源に対して露光オーバーになっているからだと思われる。暗黒背景にある光源の過剰露光なので、適正露出なら問題にならない収差が見えてしまうのだ。それでも、大口径4倍ズームレンズとしては、とても優秀なテレコン耐性だと思う。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO + M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14使用(280mm:35mm判換算560mm相当)
■撮影環境:マニュアル F4.0開放 2.0秒 ISO6400 三脚固定撮影
こちらは東京湾アクアラインの「海ほたる」から見た月没風景。ちょうど「横浜みなとみらい21」方向になる月没を狙って出かけてみた。遠方は霞んで山は見えていなかったが、月が沈む間際になって丹沢山地の大山がシルエットになって見えてきた。
2倍のテレコンバーター「MC-20」を装着した400mm(35mm判換算800mm相当)での撮影。これほどの超望遠レンズだと、大気揺らぎで遠方の被写体をシャープに撮れることはほとんど無い。月はブヨブヨだし、みなとみらいのビル群や横浜ベイブリッジもぼやけ気味。だが、その大気揺らぎが面白いと思う迫力の月没風景である。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO + M.ZUIKO DIGITAL 2x Teleconverter MC-20使用(400mm:35mm判800mm換算相当)
■撮影環境:マニュアル F5.6開放 2.0秒 ISO3200 三脚固定撮影
ライブGND(GND2(1EV)/フィルタータイプ:ソフト)
ここでは、明るい月に対して暗めな地上部の明るさを揃えるために、OM-3のコンピュテーショナル撮影機能「ライブGND」を使用した。これはカメラ内蔵のグラデーションNDフィルターとして働き、ND効果は2・4・8の3段階、グラデーションのタイプもSoft・Medium・Hardの3種が選択できる。このときは「ND2」で「Soft」を選択、グラデーションの位置はセンターで水平にセットした。
望遠レンズではレンズの前に装着するハーフNDやグラデーションNDを使用することが出来ない。ハーフND効果が得られずに画面が一様に暗くなるだけなのだ。その点で、カメラ内で処理する「ライブGND」はレンズを選ばない。だから、この機能を搭載した「OM-1 MarkII」「OM-3」「OM-3 ASTRO」だけが可能な望遠・超望遠ハーフND表現というわけだ。もちろん、前玉が大きな凸状の超広角レンズや画角180度の魚眼レンズでも使うことができる。風景・星景撮影にとても便利に使える機能なので、積極的に使ってみたい。
望遠星景・彗星と人工衛星と
M.ZD50-200mmF2.8PROのF2.8という明るさを活かした望遠レンズでの星景写真。これがけっこう楽しい。双眼鏡で見る星の風景に近いと思う。
これは千葉県の犬吠埼灯台だ。旋回する灯台の光芒を写し止めるために感度をISO12800に設定した。あいにく雲の多い天気だったが、雲の向こうに小さな星がいくつも見えている。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(50mm:35mm判換算100mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 4.0秒 ISO12800 三脚固定撮影
2025年の秋はレモン彗星 (C/2025 A6)が注目されて、撮影した方も多かったと思う。これは10月28日の夕方に撮影したものだ。焦点距離は150mm(35mm判換算300mm相当)で、対角画角は約8.3度になる。これは6〜7倍程度の双眼鏡の視野に近い。
彗星の尾はとても淡いので、しっかり見えるようにするために超強力な階調調整が必須だ。そのため、周辺光量が豊富なレンズではあるが、画面周辺部の落ち込みをなくすためにF4.0まで1段絞り込んで撮影をすることにした。
薄明のグラデーションに青っぽく伸びる尾は、彗星の本体(核)から太陽熱で蒸発した「イオンの尾」だ。やや曲がった白い尾は、彗星核から放出された「ダスト(塵)の尾」。いずれも太陽風(太陽から噴き出しているプラズマの流れ)に押し流されて太陽と反対方向に伸びるのだが、ダストは重くて彗星核から離れる速度が遅いため、軌道を移動する彗星核から取り残されて曲がって伸びる。
画面を横切る光跡は人工衛星だ。日没後や夜明け前の空は人工衛星がたくさん見えて、本当ににぎやか。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(150mm:35mm判換算300mm相当)
■撮影環境:マニュアル F4.0 120秒 ISO800
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
夕方の西空に現れた彗星が沈みかかってきた。高度が下がると街明かりの影響や分厚い大気による光の吸収で淡い天体は写りにくくなる。それでも望遠レンズならではの天体を眺める視角が楽しい。
地上風景も写し止めたいので、彗星重視の赤道儀追尾撮影でも5秒という露光時間に止めることにした。彗星の周囲に写っている短い6本の実線は人工衛星の光跡。おそらくすべてがスターリンク衛星だろう。点滅している光跡は飛行機。35mm判換算172mm相当という望遠レンズの狭い画角(対角14.3度)なのに、この人工衛星の数には驚かされる。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(86mm:35mm判換算172mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 5.0秒 ISO6400
ユニテック製赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で追尾撮影
沈みゆくレモン彗星の周囲にはたくさんのスターリンク衛星が飛び交っていたが、その上方ではスターリンク衛星のフレア現象が盛んに起きていた。人工衛星のフレアとは、人工衛星の金属製外装パネルなどに地平線下の太陽が直接反射して、短時間キラリと強く輝く現象のこと。
以前調べたところ、特定の条件で地平線近い低空にスターリンク・フレアが頻繁に起きることがわかった。この調査の顛末は天文雑誌「星ナビ」2024年3月号の私の記事で報告しているので、興味のある方はバックナンバーで調べてみてほしい。
《星ナビ 2024年3月号》
https://www.astroarts.co.jp/hoshinavi/magazine/backnumber/2024/03/index-j.shtml
レモン彗星が沈んだ後は、このスターリンク・フレアに狙いを定め、OM-3のライブコンポジットで撮影をすることにした。
この写真の右下がりの平行線は日周運動で沈んでゆく星の光跡。ほぼ水平の点滅する光跡はもちろん飛行機。夕方なので運行している便数が多い。それらの馴染み深い光を断ち切るようにクロスする明るい光跡がスターリンク・フレアだ。
実際に見ていると空の限られた狭い範囲を、閃光を放つ人工衛星が次々と行き交う。それがまるでダンスをしているようなので、天文ファンの間では「スターリンクの舞」「スターリンク・ダンス」などと呼ばれている。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(98mm:35mm判換算196mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 15.0秒 ライブコンポジット240コマ ISO1600 三脚固定撮影
フレアの明るさは金星や木星に匹敵するほどのこともあり、次々と現れるフレアは肉眼で見ていてけっこう楽しい。が、その一方で人工衛星の多さに脅威を感じてしまうのも正直なところ。毎日必ず現れるので、興味がある人は条件を合わせて空を見てみてはいかがだろう。
スターリンク・フレアの現れる条件は「太陽が地平線下35〜45度くらいにあるときの太陽の真上50度あたり」となる。太陽の位置は、天文系アプリや星座早見盤などで調べられる。
望遠レンズでライブコンポジット
OM SYSTEMのライブコンポジット機能は、移動する星を光跡につないで描写するカメラ内比較明合成で、OM星景撮影の定番とも言える機能だ。
比較明合成は星景写真では非常によく使われる手法で、一般的には連続撮影したコマを画像編集ソフトで比較明合成をするのだが、これだと光跡が破線になってしまうことがある。ところがライブコンポジット撮影では、星の動きの速い望遠レンズでもきれいな一本の線につなげてくれる。同時に星の色も綺麗に描出してくれて、これ無しにOMカメラの星景写真は語れないほどだ。
さて、この灯台は島根県の出雲日御碕灯台だ。日本一の高さで知られた美しい灯台である。灯台の位置は北緯35度26分。天の北極はその場所の北緯と同じ高度(地平線からの角度)になるので、その日周運動・いわゆる星グルを撮るために背の高い灯台に出かけたというわけだ。
とはいえ、灯台の南側で三脚を立てられる場所は限られる。なんとか程よい位置を見つけて90分間のライブコンポジット撮影を行ったのがこの写真だ。
暗い夜空を背景にした灯台の強力な光でも嫌なゴーストやフレアは現れず、すっきりとしたヌケの良い星空写真を撮ることができた。ピントの位置は主役の灯台。この焦点距離だと、無限遠の星もピンボケにならずシャープな軌跡で写ってくれた。被写界深度の深めなマイクロフォーサーズは、こういうところも星景写真に向いている。撮影終了後に確認したら灯台の光に集まった昆虫の飛跡に羽根の羽ばたきも写っているのがわかって、これは面白い発見だった。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(50mm:35mm判換算100mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 5.0秒 ライブコンポジット1350コマ ISO1600 三脚固定撮影
次は東京湾アクアラインの海ほたる。ここで東京都心の星景写真も撮ってみた。さすがに空が明るく、そのうえ望遠レンズ画角の低い空だ。実際に肉眼では星がほとんど見えなくて、比較明合成のライブコンポジット撮影でも星の光跡で空を埋め尽くすというわけにはいかない。それでも、思いのほか星の光跡を美しく描写できたと思う。
星の光跡をよく見るとわかるが、空の低いところでは大気の揺らぎで線がクネクネと曲がっている。空気層の密度差で星が浮き上がって見えたりするために光跡が曲がってしまうのだ。
これはもちろん地上の物体についても同じことが起きる。それで実際にライブコンポジット撮影したコマでは地上のビル群や東京タワーなどは長い露光時間で揺らいでボケてしまう。そのままでは都市星景としての面白さが半減してしまうので、地上物だけは同画角で撮影した別コマのシャープな地上風景を合成してこの写真を仕上げた。
画面下部の平行線は東京湾を行き交う船舶、右上がりの光跡は羽田空港を離陸した航空機だ。写っている星はアンドロメダ座あたりの星たち。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(171mm:35mm判換算342mm相当)
■撮影環境:マニュアル F4.0 4.0秒 ライブコンポジット1600コマ ISO500 三脚固定撮影
次の写真は、木更津の海岸で撮影した羽田空港を離発着する旅客機の光跡だ。16分間のライブコンポジット撮影である。私の後方から滑走路に進入してくる機はどれも同じラインで一直線に降下する。一方で、離陸した機は上昇後すぐに右旋回。この日は空の透明度が悪く、星の光跡はほとんど写らなくて残念だった。一本だけ写っている星の光跡は北斗七星の柄の先端のη星「アルカイド」だ。画面左にある黒い物体は、東京湾アクアラインの「風の塔」。
この写真では、旅客機の灯りや船舶の光跡のシャープさと、大気揺らぎでボヤけた都心の灯りの対比が面白いので、地上風景もライブコンポジット撮影したものをそのまま仕上げた。空気密度の層の揺れで地面(海面)に近い光は上下に揺らぎ、縦方向に伸びて写ることがわかる。水平線の向こうの物体が浮かび上がって見える蜃気楼と同じ原理だ。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(200mm:35mm判換算400mm相当)
■撮影環境:マニュアル F4.0 10.0秒 ライブコンポジット96コマ ISO200 三脚固定撮影
富士山と雲と星
ライブコンポジット撮影は、雲の流れも面白く写ることがある。
次の3枚は同一夜の撮影だが、ちょっとした時間の差でずいぶんと違った表情になった。富士山と雲、そして星の望遠星景写真を紹介してみよう。
1枚目は笠雲がかかった富士山だ。独立峰である富士山の頂上を風が乗り越えるときに、富士山が笠を被ったように雲ができることがある。この時は西風(画面右が西方向)で笠雲が生じた。富士山の上空には月齢13.9の満月に近い明るい月があり、その光で笠雲が色づいた彩雲になった。ほんのり七色で輝く雲が美しい。
この写真では、ソフト効果のあるボディマウントフィルター「BMF-SE01」を使用して、登山者の明かりを少し強調してみた。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(79mm:35mm判換算158mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 1.0秒 ライブコンポジット121コマ ISO3200 三脚固定撮影
ボディマウントフィルターBMF-SE01使用
これは雲が多くかかった時のライブコンポジット撮影。風に流される高積雲(ひつじ雲)が月の逆光で光っており、ライブコンポジットで風の流れが可視化されることになった。流されてゆく雲の軌跡が美しくて面白い。ここでは雲の写り具合をモニターで確認しながら撮影打ち切りのタイミングを計った。それが出来るのがライブコンポジットの便利なところで、このコマでは約12分の撮影時間となった。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(64mm:35mm判換算128mm相当)
■撮影環境:マニュアル F4.0 4.0秒 ライブコンポジット176コマ ISO800 三脚固定撮影
満月近い月が西の地平に低くなり朝が近づいてきた時間帯。低い月の光が赤っぽくなり、その色が雲に反映している。この時間帯の雲は薄い巻層雲(うす雲)で、星の光が透けてよく見えている。そのため星の光跡も数多く描写されて、カラフルな星景写真になった。日の出まで2時間と少し。ご来光を目指す登山者もだいぶ頂上に集まっている。

■撮影機材:OM-3 + M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO(83mm:35mm判換算166mm相当)
■撮影環境:マニュアル F2.8開放 1.0秒ライブコンポジット1601コマ ISO6400 三脚固定撮影
ボディマウントフィルターBMF-SE01使用
一晩に撮影した3枚を紹介したが、タイミングが少し違うだけでずいぶんと違う星空の表情になった。それぞれ焦点距離も微妙に違うことに気付かれただろうか。雲と富士山、星のバランスで、その時々に最適な画角を選べるのがズームレンズならではのメリットだ。単焦点レンズでは、こうはいかない。また、絞り開放でも星の光跡がたいへんシャープなところにも注目してほしいと思う。M.ZD50-200mmF2.8PROの結像性能の高さがわかるところだ。
コンパクト機材で星空宇宙の光景を追う
4/3型というイメージセンサーで、レンズまで含めた小型軽量が特徴のマイクロフォーサーズシステム。特に望遠系でそのメリットが大きいと言われていることは多くの人が承知のことだと思う(じつは広角系もそうなんだけどね)。
このことは、星空撮影で必要な三脚や赤道儀も、小型軽量カメラに応じた小さな機材で大丈夫ということ。それに加えて、強力な手ぶれ補正、手ぶれ補正機構を使用したハイレゾショット、センサーサイズがもたらすレンズ結像や光量の均質性など、星空撮影に有力な本質を備えたカメラシステムだと私は常々感じている。
さらに、ライブコンポジット撮影やライブGNDのグラデーションND撮影、精度の高い星空AF、フォーカスリングロック、ナイトビューなどなど、星空撮影支援機能も多数備えていて、本当にとても使いやすいOM SYSTEMのカメラだ。
そんなOM SYSTEMならではの軽快な望遠レンズ星空・星景撮影を、より多くの人に楽しんでもらいたいというのが今回の話だ。星景写真だからと言って、広角レンズ一辺倒じゃ面白くない。

あと3万kmほどで月往復の距離を走破する我が愛車(25年もの・雨漏りあり)。これからも星空を楽しむ機材を積んで色々な所の星空を楽しもうと思っている。
写真の機材は、手前がポータブル赤道儀「TP-2」で撮影中の「M.ZUIKO DIGITAL ED 300mm F4.0 IS PRO」と「OM-3 ASTRO」、後方の白いレンズがポータブル赤道儀「SWAT-350 V-spec Premium」で撮影中の「M.ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8 IS PRO」と「OM-3」だ。夏の明け方近くで、東の空にはオリオン座が昇って来ている。
ちょっと向こうでも、一晩中星空を楽しんでいるグループがいたのが、なんだか心地良い気分だった。このときは発表前機材の撮影仕事でお声がけできなかったけれど、またどこかで会うかもしれないね。
■写真家:飯島裕
埼玉県生まれ。1969年アポロ月着陸の頃から宇宙に興味を持ち、星の写真を撮り始めたのが始まり。広告制作会社に勤務後、ハレー彗星が回帰した1986年からフリー写真家として独立する。企業・大学・研究機関などの広報写真、書籍・雑誌・WEB記事等の取材写真撮影を幅広く担当。個人的には、科学的な天体写真をベースに表現性を付加した、いわゆる星景写真に早くから取り組む。
2003年より月刊天文情報誌『星ナビ』に銀塩フィルムによる星景写真+短文『銀ノ星』を現在も連載中。天文・カメラ系出版物などに星空撮影や解説の執筆、写真撮影講座や講演なども多数。
双眼鏡で見る星が大好き。ホンネはいつも「星は撮るより眺めたい」。















