フードをおいしそうに見せる、自然光の使い方|Nana*

Nana*
フードをおいしそうに見せる、自然光の使い方|Nana*

はじめに

フードをおいしそうに見せるためには、光の向きと質を意識することが大切です。今回は自然光での撮影方法を紹介します。光を上手に使うことで、おいしさの表現の幅が広がります。その時に考えることはフードのどこをどう表現したいかということです。見せたいポイントが艶なのか、色なのか、立体感なのか、何を優先にしたらおいしそうで魅力的に見えるのかを考えましょう。

■撮影機材:SONY α7 V + FE 100mm F2.8 Macro GM OSS
■撮影環境: F5.6 0.4秒 ISO100

フードフォトを始める上で知っておくべきこと

この記事を読んでくださる方の中には、もしかしたらこれからフードフォトを始める方もいらっしゃるかもしれません。そんな方に知っておいていただきたいことを簡単に紹介します。まず、室内で自然光を使って撮影する場合には、照明は消すようにしましょう。異なる光源を一緒に使うのは難しいですし、住宅用の照明は、食材の色を正しく表現できず、おいしさが損なわれる場合があります。

慣れないうちは、一面採光の部屋で撮るようにしましょう。多面採光は光の入り方が複雑になり、光の向きを判断することが難しくなります。また光が回りやすく、陰影を表現しにくいことがあります。多面採光の場合は、カーテンなどで遮光し、一面のみの窓を生かして撮るようにしましょう。

窓からの光だけでなく、壁や天井、家具、床、カーテン、庭やベランダの植物などからも光が反射して、写真に影響していることも忘れず意識するようにしましょう。色被りしやすいものは避けた方が無難です。特に晴天時などで光が強いほど、反射光の影響も大きくなります。一方、ダークトーンの壁などでは光が回りにくく、陰影が濃くなりやすい傾向があります。

奥の家具からの反射光により、アサイーボウルがオレンジに色被りしている。

光の向きによる表現の違い

まず光の向きによる表現の違いを覚えておきましょう。部屋に届く自然光は十分に光が回っていることが多く、そのような状況で順光を使うとフードの立体感が表現できません。私は、実際に目の前で見たときに感じる立体感や質感に近い描写の方が、おいしさが自然に伝わりやすいと考えているので、立体感や艶を表現しにくい順光はあまり使いません。フード撮影で覚えておきたいのは主に半順光、サイド光、半逆光、逆光の4つです。

▼半順光(斜め手前からの光)

■撮影機材:SONY α7 V + FE 100mm F2.8 Macro GM OSS
■撮影環境: F8 0.5秒 ISO100

半順光で撮影すると、苺の色は綺麗に表現できていますが、艶が少ないことが分かります。

▼サイド光(横からの光)

■撮影機材:SONY α7 V + FE 100mm F2.8 Macro GM OSS
■撮影環境: F8 0.5秒 ISO100

サイド光は、半順光で撮影したものよりも、苺にもう少し艶が入っています。光が当たっている部分は色が綺麗に見え、陰影もあることで立体感が表現できています。

▼半逆光(斜め後方からの光)

■撮影機材:SONY α7 V + FE 100mm F2.8 Macro GM OSS
■撮影環境: F8 0.5秒 ISO100

サイド光よりも陰影が表現できますが、その分色は乗りにくくなります。艶は入りやすく、シズル感を表現しやすい光です。

▼逆光(後方からの光)

■撮影機材:SONY α7 V + FE 100mm F2.8 Macro GM OSS
■撮影環境: F8 0.5秒 ISO100

逆光は艶を表現できますが、反射が強すぎたり、手前側が暗くなりすぎたりして、色やディテールを表現しにくくなります。

特にフード撮影で最もよく使うのが半逆光です。半逆光は、窓やレースカーテンなどの面光源が、食材の表面に映り込む反射を適度にカメラ側から捉えやすく、みずみずしさや照りといった質感を表現しやすい光です。そのため、シズル感が伝わりやすく、フード撮影では特によく使われます。サイド光は光と影の明暗差ができやすくなります。光が当たる部分は色やディテールが綺麗に表現でき、反対側は影になるので立体感が表現しやすくなります。フルーツやケーキなど、特に立体的な被写体におすすめです。サイド光で影の印象が強くなりすぎる場合には半順光を使います。逆光はグラスに入った透明なドリンクや湯気を撮るのに適しています。

色や立体感を表現するためにサイド光で撮影したいちご。
■撮影機材:SONY α7 IV + Carl Zeiss Makro-Planar T* 100mm F2
■撮影環境: F値不明 1/3秒 ISO100
半順光で撮影した朝食 トーストの焼き色やジャムの色が伝わりやすい。
■撮影機材:SONY α7 IV + Carl Zeiss Makro-Planar T* 100mm F2
■撮影環境: F値不明 1/3秒 ISO100
逆光寄りの半逆光で撮影した朝食 色よりも艶の方が伝わりやすい。
■撮影機材:SONY α7 IV + Carl Zeiss Makro-Planar T* 100mm F2
■撮影環境: F値不明 1/40秒 ISO100
半逆光で撮影した朝食 一つ前の写真よりも色と艶のバランスが良くなっている。
■撮影機材:SONY α7 IV + Carl Zeiss Makro-Planar T* 100mm F2
■撮影環境: F値不明 1/40秒 ISO100
逆光で撮影したソーダ。
■撮影機材:SONY α7 IV + Carl Zeiss Makro-Planar T* 100mm F2
■撮影環境: F値不明 1/200秒 ISO100

おいしさを引き出すのに適した光と適さない光

私自身は、経験上、フード撮影には薄曇りの日の光が最も扱いやすいと感じています。なぜならば、雲が天然のディフューザーとなり、フードに艶が入りやすくなるためです。雲が厚いほど光量が弱くなり、艶も控えめになるので、光量が十分にある薄曇りがおすすめです。逆に雲一つない澄んだ青空は艶を入れるのが難しい場合があり、その上、青い空の色がテーブルやプレートに映り込むこともあります。晴天時にはディフューザーや、レースカーテンを使うようにしましょう。

▼晴天時・直射光で撮影

直射光はコントラストが高く、ハイライトは飛びやすく、シャドウは潰れやすくなる。ハイライトからシャドウまでの階調が急になり、フードの繊細な質感を表現しにくい。

▼晴天時・レースカーテン越しの光で撮影

レースカーテンで光を拡散させることでコントラストが柔らかくなり、影の輪郭もぼやけていることが分かる。

▼薄曇り・レースカーテン越しの光で撮影

晴天時よりも光が拡散し、さらにコントラストが柔らかくなり、影の濃さにも違いが出ている。アップルパイの艶も表面全体に入っている。

また、プレートの上の食材に満遍なく光を当て、素材の色やディテールを綺麗に表現するためには、器の中まで光が届くような上方からの光を使うのがおすすめです。そのためには、なるべく窓際で撮影し、十分な高さと大きさのある窓から入る光を生かすようにしましょう。

ただし、太陽の高度が低い時間帯には、窓際であっても被写体のトップに光が当たりにくくなる場合があるので注意が必要です。

早朝の光で撮影した例。苺のトップに光が当たっておらず、陰影が濃く出ているのが分かる。

また、窓から離れた場所や、高さのあるテーブルでは、同じように上方からの光を得にくくなります。

そのような時には、ローテーブルなどを使って被写体の位置を下げると、器の中まで光が届きやすくなります。

器の中に光が入るように、窓際の拡散光で、上方からの光を使って撮影した例。
■撮影機材:SONY α7 III + FE 85mm F1.8
■撮影環境: F5 1/40秒 ISO100

また拡散光であっても、強すぎる光はハイライトとシャドウのコントラストが高くなります。下の写真のように、シャドウ部は濃くなり、素材の色や質感を表現しにくいので、そのような光も避けた方が無難です。

さいごに

自然光は再現性の低い光で、雲の状況ひとつで仕上がりが変わります。また室内に届く光は拡散しやすいとはいえ、光源は一つでライティング機材のように、光を当てたい場所に自由自在に当てることができません。大切なのは表現したいことの優先順位を決め、それに合わせて光を使い分けることです。「この光が正解」というものはありません。普段光の使い方がイマイチ分からないという方は、撮影時に記録をつけて比較してみてください。どういう天候でどういう空だったのか。記録をつけるうちに、自分が撮りたい写真はどういう時に撮れば良いか分かるようになります。

 

 

■フォトグラファー:Nana*
スティルライフフォトを中心に、広告撮影、動画撮影、アートディレクション、プロップスタイリング、グラフィックデザインなどのクリエイティブ制作に携わる。パーソナルワークとして2013年から暮らしをテーマに写真を撮り続けている。
2018年4月よりNHK文化センター青山教室「AURORA写真塾」講師

 

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