ソニー α7 Vレビュー|風景写真家 高橋良典
はじめに
ソニー α7 Vは従来からのベーシック機の概念を塗り替えて2025年末に登場しました。2021年末にリリースされたα7 IVから4年を経てどのようなアップグレードを果たしたのか気になっている方も多いはず。そこで今回は筆者が発売直後から約9か月に渡って撮影した写真と共にα7 IVとの比較を交えながら風景写真家目線(静止画メイン)で優先度が高い順にレビューをお送りしてまいります。
使いやすさが劇的に向上!4軸マルチアングル液晶モニター
α7 IVユーザーで「バリアングル液晶」から「4軸マルチアングル液晶」への進化を心待ちにしていた方は多いのではないでしょうか。この4軸マルチアングル方式はα7R Vで初搭載されましたが、バリアングルとチルト両方の長所を兼ね備えた利便性に初めて触れた際、感動すら覚えたものです。筆者は長らくα7R V(現在はα7R VIを使用)とα7 IVを併用してきましたが、モニター可動方式の違いにもどかしさを感じるほど4軸マルチアングル式は優れた機構だと実感していました。手持ち撮影での使いやすさはもちろんですが、特にメリットを感じたのは三脚撮影時です。従来のバリアングル式では、L型プレートを装着して横位置のローアングル撮影を行うとプレートと横に開いた液晶が干渉してしまいます。干渉を防ぐ切れ込み入りのプレートを使っても可動域が制限されてしまい、どうしても使いづらさを感じることに・・・。
しかしα7 Vで4軸マルチアングル式が採用され、これらの問題が一気に解消されるとなれば三脚撮影が多い方はこのモニターの進化だけでも買い替えの充分な理由となるでしょう。液晶モニターの解像度が大幅に増え視認性がアップしていることもポイントです。
(α7 IV:約103万ドット → α7 V:約210万ドット)

■撮影環境:焦点距離16mm 絞り優先AE(F8、30秒、補正なし) ISO400 太陽光 CPL/NDフィルター

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 16-35mm F2.8 GM II
■撮影環境:焦点距離21mm 絞り優先AE(F8、30秒、補正なし) ISO400 太陽光 CPL/NDフィルター
▼撮影の様子






■撮影環境:焦点距離35mm 絞り優先AE(F1.8、1/1000秒、+0.5EV) ISO100 太陽光 CPLフィルター
※2枚ともデータ共通
手持ちのローアングル撮影でも、4軸マルチアングル液晶モニターはとても便利です。縦位置はもちろん、横位置撮影でもモニターを横に開かずチルトさせて使えるため、レンズの光軸と視点がずれず、目標物をスムーズに見つけられます。
新開発センサーでダイナミックレンジが16ストップへと拡大、そしてαシリーズ伝統の解像感
輝度差の大きなドラマティックなシーンほど、撮影時だけでなく撮影後の処理まで考える必要があり、シャドウ部やハイライト部の諧調がいかに残せているかが作品の良し悪しに直結します。これまでもαシリーズの豊かな諧調表現能力には助けられてきたのですが、α7 Vでは新開発の有効画素数約3300万画素の部分積層型センサーを搭載。よりダイナミックレンジが広がり16ストップに。明部、暗部共に粘るようになり風景写真家にとっては大きな魅力です。(α7 IVは15ストップ。現状16ストップの機種は本機とα7R VIの2機種のみ)
※メカシャッター使用時

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:焦点距離73mm 絞り優先AE(F8、1/4秒、補正なし) ISO800 太陽光 CPLフィルター

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 20-70mm F4 G
■撮影環境:焦点距離40mm 絞り優先AE(F11、1/90秒、-1EV) ISO400 太陽光 CPLフィルター

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 16-35mm F2.8 GM II
■撮影環境:焦点距離16mm 絞り優先AE(F11、1/750秒、-0.5EV) ISO400 太陽光

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 70-200mm F2.8 GM OSS II
■撮影環境:焦点距離165mm 絞り優先AE(F6.7、1/60秒、+1EV) ISO400 曇天 CPLフィルター

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 16-35mm F2.8 GM II
■撮影環境:焦点距離16mm 絞り優先AE(F16、0.7秒、-0.5EV) ISO400 太陽光 CPLフィルター
純正アプリとの組み合わせがパワーアップ、エクステンデッドRAWへの対応
「エクステンデッドNR」と「エクステンデッドHi-Res」ふたつの機能があり、前者はディテールやシャープネス・質感を損なわずにノイズ低減処理をする機能。後者は画素数を4倍に高解像化する機能です。両方ともAIを活用して処理を行います。これまでもサードパーティー製のRAW現像アプリ(LightroomClassicやPhotoshop、その他)を使えば同様のことができていたのですが、メーカー純正のRAW現像アプリでできるようになったのは嬉しいですね。なお重い処理のためパソコンへのGPU搭載が必要となります。本機以外にも「α1 II」「α9 III」「α7R VI」が対応しています。
※「α1 II」「α9 III」に関しては一部対応していないRAW方式があります

■撮影環境:焦点距離333mm マニュアル露出(F5.6、1/2000秒) ISO12800 太陽光
そう明るくない曇天条件でしたが、豪快に流れ落ちる滝しぶきを写し止めるため思い切ってISOを上げました。
左の「ノイズ低減なし」の写真では高感度ノイズが目立ち、真ん中の「ノイズ低減オート」ではノイズは少ないものの岩の質感が感じられません。右の「エクステンデッドRAWによるノイズ低減処理」をおこなった写真では、ノイズの少なさと岩の質感が両立されています。
下はそれぞれを部分拡大したもの。ノイズ感とディテールの出方が違うことがよくわかります。

手ブレ補正の強化
α7 IVの5.5段分からα7 Ⅴでは中央7.5段分・周辺6.5段分へと性能アップを果たしています。

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 16-35mm F2.8 GM II
■撮影環境:焦点距離16mm 絞り優先AE(F11、0”5秒、補正なし) ISO6400 オート

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS
■撮影環境:焦点距離600mm相当(APS-Cモード使用) 絞り優先AE(F8、1/30秒、補正なし) ISO1000 太陽光 CPLフィルター
AI搭載で大幅に強化されたAFと新エンジンBIONS XR2による高速性能
ベーシック機として初のAIプロセッシングユニットが搭載されました。この点においては下位機のα7C IIに搭載済みなのでモヤモヤとした思いを抱えつつα7 IVを使っていた方もいるのではないでしょうか?被写体が止まっていることの多い風景撮影ではAF性能のアップを実感することは難しいかもしれませんが、動体撮影においては被写体認識、捕捉スピード共に明確な進化を感じ取ることができます。α7 IV比で被写体認識に【昆虫・車・列車・飛行機・オート】が加わったこともトピックのひとつです。
新開発の部分積層型センサーにより読み出し速度が大幅に向上、さらに画像処理エンジンもBIONS XR2へと進化したことで電子シャッター使用時では秒間約30コマのブラックアウトフリー連写が可能となりました。高速化に伴いバッファも強化されています。α7 IVではUHS-IIのSDカード使用時ではすぐに連写がスローダウンしてしまったので常にCF express Type Aを使用する必要があったのですが、本機ではSDカードでもスローダウンまでに相当な枚数を撮ることができます。とは言え連写を多用する方、特に最大速度での連写や後述のプリ撮影を想定する場合にはやはりCF express Type Aの使用がおすすめです。
また、近年のトレンドでもある「プリ撮影」機能にも対応。シャッターボタンを半押し状態で待機しておけば全押しの瞬間から遡ること1秒前までの記録が可能となりました。こちらも動体撮影が多い方には心強いですね。

■撮影環境:焦点距離200mm 絞り優先AE(F2.8、1/1000秒、補正なし) ISO1600 太陽光 CPLフィルター
小鹿が頭を上げたと思ったら急に走り出しました。このような咄嗟のシーンでも確実なAFで被写体を追従してくれます。さらにブラックアウトフリー(電子シャッター使用時)と併せることでよりフレーミングに集中できます。電子シャッターによる歪みは感じませんでしたがもっと高速なものを写し止めたり、追従したりするにはα1 IIやα9シリーズに一歩譲ることになるともいえます。その点はご自身の使い方によって本機を選ぶか、より高速機を選ぶかを決めればよいでしょう。

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 28-70mm F2 GM
■撮影環境:焦点距離46mm 絞り優先AE(F2、1/250秒、-0.5EV) ISO800 太陽光 CPLフィルター

■撮影機材:ソニー α7 V + FE 70-200mm F4 Macro G OSS II
■撮影環境:焦点距離200mm 絞り優先AE(F4、1/3000秒、+0.5EV) ISO3200 太陽光
その他
●操作系の継承
α7シリーズの操作系が継承されていますので、前モデルからの変更でも違和感なく使うことができます。
●バッテリー
α7 IVと比較すると撮影可能枚数が増えました。大体カメラが新しくなるとバッテリー消費が増えることが多いのですが、こちらは嬉しいポイントです。ファインダー使用時α7 IVでは520枚だったものがα7 Vでは630枚に。液晶モニター使用時では580枚から750枚にアップしています。
●バルブタイマーの搭載
α7 IVにはなかったバルブタイマー機能が搭載されました。またタイマーを設定していない時でもバルブ露光中は露光時間が液晶モニターに表示されるようになり、バルブ撮影中でも時計を見る必要が無くなりました。
●RAW記録方式の変更
「非圧縮RAW」がなくなり「画質優先の圧縮RAW」が選べるようになりました。ファイルサイズを抑えつつ画質を損なわずに記録できるのは容量の節約に役立ってくれます。ひとつ残念なポイントを挙げるとすればα7 IVでは選べた「ロスレス圧縮RAW」のL,M,Sサイズが選べなくなった点でしょうか。

まとめ
これまで動体撮影に関しては上位機に数歩譲る印象だったソニーのベーシック機ですが、α7 Vは全方位がアップグレードされ「真のオールラウンダー」に仕上がっています。 4軸マルチアングル液晶による自由度、16ストップのダイナミックレンジ、AI搭載AFと高速性能、そして純正アプリとの連携強化。どれも実際に撮影していて実感できる進化で、信頼性の高い一台に仕上がっていると感じました。興味を持っていただいた方は全国のカメラのキタムラ店舗まで足を運んでみてくださいね。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
■写真家:高橋良典
(公社)日本写真家協会会員・日本風景写真家協会会員・奈良県美術人協会会員・ソニープロイメージングサポート会員・αアカデミー講師














