テーブルフォトの心得|Nana*
はじめに
初めまして。フォトグラファーのNana*と申します。普段は料理、テーブルウェア、花、コスメなどを中心に撮影しています。今回から、テーブルフォトについての連載を始めることになりました。テーブルフォトに関する基礎知識や、私の経験に基づくテクニックなどを紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
なお、ここで取り上げる「テーブルフォト」は、カフェスナップのように、限られた条件の中で一瞬を切り取るような写真とは区別しており、被写体をベースに、光、構図、スタイリングといった全ての要素を自分でコントロールして、一から作り上げるものと定義づけます。

テーブルフォトの魅力とは
テーブルフォトは、自宅ですぐに始められるジャンルです。特別な被写体は必要ありません。朝食のコーヒーとパン、テーブルに飾った花など、日常の中にあるものが被写体になります。撮ることを通じて、それまで見過ごしていたかもしれない日々の風景に意識が向くようになり、暮らしそのものが愛おしく感じられるようになることも、このジャンルの魅力だと思います。私自身もそうでした。テーブルフォトを始めたのはある陶芸作家の器に出会ったことがきっかけでした。その器の魅力を伝えたくて、本格的に撮り始めました。

■撮影機材:SONY α7 + Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4
■撮影環境:F値不明 1/2000秒 ISO100
身近なものに意識を向ける
被写体と丁寧に向き合い、どうすればその魅力が伝わるかを考える姿勢が、写真の質を左右します。被写体を観察する上で、特に意識したいのが光です。部屋に届く自然光は、季節や時間帯、天候によって常に変化しています。こうした変化に気づくためにも、日頃から身近なものに意識を向けておくことが大切です。毎日使うグラスでさえ、光の当たり方一つで全く異なる表情を見せてくれます。

■撮影環境:F2.8前後 1/1250秒 ISO100
撮影の前に、ゴールを設定する
テーブルフォトを撮るときには、何をどう表現したいか、テーマは何か、などのゴールを設定して、完成形のイメージを作ることが大切です。曖昧なまま撮ろうとすると、写真を撮るまでの過程で、スタイリングや構図などに迷いが生じることがあります。イメージをできる限り具体的にしておくことで、各要素を決定しやすくなります。 そして、主題や見せたい部分が伝わりやすくなり、見る人の印象に残りやすい写真になると思います。


■撮影機材:SONY α7 IV + Carl Zeiss Makro Planar T* 100mm F2
■撮影環境:F値不明 1/5秒 ISO100

■撮影機材:SONY α7 III + Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4
■撮影環境:F2 1/60秒 ISO100
イメージを作るのが難しい場合は、小さな目標を設定してみましょう。料理であれば「おいしさが伝わるように撮る」などです。どうすればおいしさが伝わるのか、もう少し掘り下げてみることで、「艶」「色」「立体感」など表現すべき要素が見えて来ると思います。
またイメージを作れるようにするために、情報収集に努めることをお勧めします。インプット量が多いほど、引き出しも増えていくので、日頃から感度を高めておくことも大切です。雑誌、本、映画、音楽、アート、インテリア、グルメなど、様々な情報が写真を撮る際のヒントになります。
自分の好みを知ろう
それでもイメージが浮かばない場合には、自分の好みを知ることから始めてみましょう。過去に撮影したお気に入りの写真でも、好きな写真家の作品でも構いません。一枚を取り上げて、詳しく分析してみましょう。
分析すべき項目は大きく三つに分けられます。まず光です。光の向きや質を見るときには、影に注目すると分かりやすいと思います。ハイライトとシャドウのバランス、光の回り方や硬さを確認しましょう。次にトーンです。写真全体のコントラスト、明るさ、色相、彩度、配色などを確認します。そして構図と被写界深度です。どこにピントを合わせているか、絞りや被写界深度はどれくらいか、被写体の前後のボケ具合、ディテール、構図、配置や余白感、パース、小物使いなども含め、分析します。
次の2枚は花を撮影したもので、同じ花器を使っていて、スタイリングの系統としては似ていますが、印象が違うと思います。1枚目の方が被写界深度が浅く、背景がボケていますが、光のコントラストは2枚目よりも高く、シャドウが暗く落ちていることが分かります。一方で2枚目は被写界深度が深く、ディテールもはっきりしていて、写真というよりも写実的な絵画のような印象です。同じようなものを撮る場合でも、撮り方、仕上げ方で印象が異なります。

■撮影環境:F値不明 1/80秒 ISO100

■撮影環境:F値不明 0.6秒 ISO100
細かく分析することは、自分の好みを具体的に把握するきっかけになります。分析したら、練習として同じように撮影してみましょう。なお、他の方の写真を参考にする場合には、著作権侵害にならないよう、公開などせず、あくまで練習として行うよう注意してください。撮影後はどこが違うかを比較し、次の練習へと繋げます。絵画の世界でも模写はよく行われますが、写真においても同様です。練習を重ねるうちに、好みのトーンやコントラストなどが明確になり、それが自分らしい表現へと繋がっていくこともあると思います。
さいごに
今回はテーブルフォトの心得について紹介しました。この連載を通じて、思い描く写真に少しでも近づくお手伝いができれば嬉しく思います。
■フォトグラファー:Nana*
スティルライフフォトを中心に、広告撮影、動画撮影、アートディレクション、プロップスタイリング、グラフィックデザインなどのクリエイティブ制作に携わる。パーソナルワークとして2013年から暮らしをテーマに写真を撮り続けている。
2018年4月よりNHK文化センター青山教室「AURORA写真塾」講師














