ソニー FE 40mm F2.5 G レビュー|楽しくて実用的な、これぞ標準レンズ
名前のない単焦点トリオ
本サイトを含め、さまざまな媒体でこうしたレビュー記事を書いていると、気になるカメラやレンズというものがある。スペックや性能が目立つわけではないのだが、秘めたポテンシャルや価値を感じさせるレンズだ。
ソニーEマウントでそれにあたるのがFE 24mm F2.8 G、FE 40mm F2.5 G、FE 50mm F2.5 Gの3本。シリーズ名などは存在しないので製品名を列記したが、この3本、全長45mm、最大径68mm、フィルター径49mmと外装のスペックが共通。細かな形状もまったく同じなのだ。
パナソニックやキヤノンも広角~中望遠の単焦点レンズを、サイズを厳密に揃えてラインナップしている。カメラに補助器具を組んでいく動画撮影を念頭にしているが、この3本もそうした意図があるのだろう。
なぜ35mmではなく40mmなのか
ただしここで疑問が。この焦点域で3本をラインナップするなら、伝統的には24mm、35mm、50mmという刻みになるはず。ソニーEマウントにはSonnar T* FE35mm F2.8 ZAという、同じようなサイズの35mmレンズが存在している。Eマウント登場時からのロングセラーだが、それとバッティングしないよう真ん中は40mmとしたのだろう。
ただ結果としてこの真ん中の1本がトリオの存在感を高めている。僕はプライベートで撮るならレンズは35mmと50mmがあればよいのだが、35mmでは理想より画角が広く、50mmでは反対に狭く感じることがある。そんなときに選ぶのが40mmだ。

以前本サイトでも取り上げたことがあるが、1980年代初頭、ライカとミノルタの協業で生まれたMロッコール40mm F2を電子マウントアダプター経由で使っている。さらに描写力が欲しいときにはカールツァイスのBatis 2/40 CF(40mmF2)や、プラスで明るさや大きなボケも必要ならシグマ40mm F1.4 DG HSM | Artをマウントアダプターを介して使うこともある。
過去を振り返ると、キヤノンEFマウントの一眼レフを使っていたときは、EF 40mm F2.8 STMというパンケーキレンズを常用していた。「僕と40mm」について語り始めると止まらないのだが、そんなわけでトリオの中から、今回はこのFE 40mm F2.5 Gを取り上げる。

50mmより“標準”に近い
古くから40mmというレンズが存在する背景には、35mmフィルム、そしてそのサイズを継承したフルサイズ機の撮像範囲がある。24mm×36mmの対角線長は約43mm。カメラはこの「撮像面の対角線長」が、焦点距離のひとつの指標になる。
それより短い焦点距離は肉眼よりも遠近感が強調され、反対に長い焦点距離は圧縮される。つまり一般的に標準レンズとされる50mmは実はわずかに望遠寄り。40mmのほうが遠近感はニュートラルなのだ。常用とする焦点距離は好みが分かれるポイントだが、40mmは万人に受け入れられる、いい意味での“中庸さ”があると思う。ズームレンズしか持っていない人には、初めての単焦点レンズとしてもおすすめできる。

■撮影環境:シャッター速度1/500秒 絞りF2.8 ISO100 クリエイティブルック:ST

■撮影環境:シャッター速度1/250秒 絞りF2.5 ISO800 クリエイティブルック:ST
F2.5という絶妙なスペック
単焦点レンズといえば、一般的には明るいことがアドバンテージになる。本レンズの明るさはF2.5で、標準域としてはやや物足りないかもしれない。しかし仮にF2ならば表現の幅は広がるものの、確実に今より大きくて重たく、そして価格も高くなる。そして24mmや50mmとのトリオも成立しなかったかもしれない。
コンパクトなα7Cシリーズにマッチさせるという点でも、F2.5が現実的な答えだったのだろう。実際にはF2.8の大口径ズームレンズより明るく、絞り開放ならボケを活かした作画も可能だ。

■撮影環境:シャッター速度1/320秒 絞りF2.5 ISO100 クリエイティブルック:ST

■撮影環境:シャッター速度1/80秒 絞りF2.5 ISO100 クリエイティブルック:ST
万能さと軽快さが写真を楽しくする
今回はα7Cシリーズよりやや大柄なα7 Vで撮影したが、レンズ本体はわずか173g。軽い部類に入るスマートフォンほどしかない。バッテリーやメモリーカードを装填したα7 Vと組み合わせても、カタログスペックで868g。1日持ち歩いてもまったく苦にならない重量だ。
これがF2.8のズームレンズとしては軽量なFE24-50mm F2.8 Gではレンズ単体で440g、α7 Vと組み合わせると1135gとおよそ3割増しになる。

■撮影環境:シャッター速度1/500秒 絞りF5.6 ISO400 クリエイティブルック:FL
もちろんズームと単焦点を同列で比較はできないが、先に触れた通り40mmは真の標準レンズともいえる存在。引けば広角、寄れば望遠のような使い方ができる。そうして40mm一本勝負、己のフットワークで絵作りができるようになると、被写体を探したり、切り取っていくのが楽しくなる。さらに他の焦点距離もより的確に使いこなすことができると思う。自分の写真にマンネリや行き詰まりを感じているEマウントユーザーには、リハビリ薬にぜひこのレンズを処方したい。

■撮影環境:シャッター速度1/80秒 絞りF2.5 ISO500 クリエイティブルック:FL

■撮影環境:シャッター速度1/80秒 絞りF2.5 ISO1000 クリエイティブルック:ST
描写も質感も高いレベル
電子補正によって小型化を実現したレンズではあるが、レンズ構成は9群9枚とかなりの枚数が詰まっている。うち3枚は非球面レンズを採用。描写は絞り開放からシャープで、ボケがややうるさく感じることもあるが、十分すぎる光学性能といえる。
さらに絞ったときの精細感が高く、α7R VIなど高解像度のRシリーズに装着すれば、そのポテンシャルをしっかり引き出せるはずだ。またAPS-Cフォーマットのカメラに装着すれば、フルサイズ換算で60mm相当とやや長めの標準レンズに。適度な圧縮感は、40mmとはまた違った絵作りが楽しめる。

実用性だけでなく、アルミ製鏡筒のビルドクオリティも魅力。絞りリングは上質なクリック感があり、Aポジションにすることでカメラ側での操作、さらにスイッチでデクリックも可能にするなど、利便性も兼ね備えている。
なお側面にはよくぞこのサイズに…と感心したくなるフォーカスホールドボタンも備わっている。正直押しやすくはないのだが、カスタマイズでよく使う機能を呼び出せるのはいい。

近接能力や耐逆光性も◎
最短撮影距離が28cmと、焦点距離のわりに短いのもポイント。しかもMF(マニュアルフォーカス)では3cm縮まって25cmになる。たかが3cmと侮るなかれ。クローズアップ感が増すのはもちろん、被写界深度もさらに浅くなる。
そもそも極力寄ろうとするならば、AFよりMFのほうがピントを合わせやすい。側面にAF/MF切り替えスイッチがあり、MFにしてリングを近距離側へ回転。あとはファインダーを見ながら、カメラを前後すればよい。これをAFでやろうとすると、寄ったり離れたりを繰り返すことになる。

■撮影環境:シャッター速度1/80秒 絞りF2.5 ISO200 クリエイティブルック:FL

■撮影環境:シャッター速度1/320秒 絞りF2.5 ISO100 クリエイティブルック:ST
ソニーのEマウントレンズには初期にリリースされたZEISS銘の製品もあるが、現在はG MasterレンズとGレンズに大別される。前者はプロ仕様でより高性能とされているが、後者に属する本レンズも無理のないスペックが功を奏しているのか、十分な性能を有している。
それを感じたのが逆光だ。下の写真は西日を差す太陽がもろに写り込み、一方で被写体は影だらけというレンズには厳しい状況。ごくわずかにフレアやゴーストもあるが、抑え方が実に上手なのだ。

■撮影環境:シャッター速度1/640秒 絞りF8 ISO100 クリエイティブルック:ST
まとめ

■撮影環境:シャッター速度1/100秒 絞りF8 ISO100 クリエイティブルック:ST
派手さはないものの、通好みな要素を詰め込んだといってもいい本レンズ。αユーザーならカメラに着けっぱなしにして常用レンズするもよし、カメラバッグに忍ばせてスーパーサブにするもよし。シンプルに写真を撮る楽しさを再認識させてくれるレンズで、上級者からビギナーまで、幅広い人に自信を持っておすすめできる。
もちろん現行品で新品も購入できるが、発売から5年が経ち、中古の玉数が揃っているのもありがたい。などと書いていたら猛烈に欲しくなってしまった。これ以上40mmレンズは増やすまいと思っていたのに。
■写真家:鹿野貴司
1974年東京都生まれ。多摩美術大学美術学部二部映像コース卒。さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。著書『いい写真を取る100の方法』が玄光社から発売中。公益社団法人日本写真家協会会員。














