タムロン 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 レビュー|広角からマクロまで、万能な軽量コンパクトレンズ

鈴木啓太|urban
タムロン 24mm F/2.8 Di III OSD M1:2 レビュー|広角からマクロまで、万能な軽量コンパクトレンズ

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はTAMRONからリリースされているEマウント用の広角単焦点F2.8シリーズから、24mm F2.8 Di III OSD M1:2(Model F051)をご紹介します。広角レンズは難しくてチャレンジしにくいという方にこそおすすめの1本です。ではさっそく紹介していきましょう。

ミラーレスが求めていた常用広角レンズがここに!

※TAMRONサイトより画像引用(https://www.tamron.jp/product/lenses/f051.html)

皆さんは、デジタル一眼レフよりもコンパクトになったミラーレスカメラに、デジタル一眼レフよりも大きなレンズを付けていることに疑問を抱いたことはないでしょうか。僕はいくら写りの良いレンズだろうが、常に持ち出したくなるレンズでなければ写真は撮れないと考えているタイプで、描写性能以上にレンズの軽さやコンパクトさに重きを置いています。

そんな中、TAMRONからリリースされた20mm、24mm、35mmの広角単焦点F2.8シリーズはコンパクトさと描写力を両立したレンズシリーズで、ついにミラーレスカメラにベストな広角レンズがリリースされた、と嬉しくなった記憶があります。実際にミラーレスカメラで使用してみるとその機動性の高さは想像以上。街中のスナップはもちろんの事、テーブル越しに家族を撮ることや複数人を撮影するにもベストな画角で、特に旅行では重宝します。

お気に入りの標準レンズに加え広角レンズを持っていくかどうか、荷物は軽くしたいけど良い写真も撮りたい……と、旅行の準備で悩んだ事がある人も多いと思います。本レンズは質量215gと近年リリースされているiPhone Proシリーズとほぼ同等の重さ。スマホくらいの重さだったらもう1つくらい持っていこうかな?という気にさせてくれるのは大きな強みで、24mmの広角レンズで表現される描写はきっと旅行の思い出をより良いものにしてくれるに違いありません。むしろ旅行では標準レンズを差し置いて、常用レンズになってしまう可能性も高いでしょう。つけていることを忘れてしまうほどの軽さは、ミラーレスカメラと好相性であると断言できます。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f5.6 1/100秒 ISO100 WBオート

TAMRON 24mm F2.8が万能広角レンズである3つの理由

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f4.5 1/40秒 ISO100 WBオート

冒頭ではフットワークの良さを取り上げてみましたが、まだまだ特徴の多い本レンズ。万能な広角レンズと言えるだけの理由3つ紹介していきます。

 

切れのある描写で日常生活を切り取る広角24mm

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f5.6 1/320秒 ISO100 WBオート

広角レンズを持ち出すシーンの多くは、旅行や風景にあると考えます。軽いが故に持ってきたはいいが、良く写らないのでは本末転倒。本レンズは開放F値を2.8スタートとすることで、ほぼすべてのF値において解像力が高いのが特徴です。F2.8でも十分な解像力を持っていますが、隅々までしっかり写したいのであれば、F4~5.6まで絞るのがベストです。全体の描写が均一化され、安定した描写が得られます。

ズームレンズでは隅の描写は絞っても向上しないものが多いですが、単焦点レンズはやはり解像力が高いと感じます。特に異常低分散レンズやガラスモールド非球面レンズなどを効果的に配置し、諸収差を廃していることがその結果につながっているのではないでしょうか。本レンズシリーズはどれもリーズナブルな価格ですが、描写は妥協しないTAMRONらしさを感じることができます。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f8 1/640秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f5.6 1/125秒 ISO100 WBオート

 

F2.8という十分な明るさを持ち、機動力の高いコンパクトボディ

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f2.8 1/5000秒 ISO100 WBオート

広角レンズを使う場合、絞ることが多いので明るいレンズは必要ないという声を聞きますが、個人的にはそうは思いません。暗めのレンズを使った場合、絞りこめる日中は問題ありませんが、少しでも日が陰ってきた場合、悪天候の場合などはISOを上げて対応せざるを得なく、結果として画質の低下を引き起こします。開放付近のF値であっても、無限遠で十分距離が確保できていればほぼパンフォーカスになるため、低ISOで撮れるのは明確な強みです。

レンズそのものの強みとしては、軽さのほか、全長が64mmほどしかないというのも、取り回しの良さに拍車をかけています。カメラのグリップを握った手からわずかに飛び出る程度の小ささは、スナップにおいては瞬発力が高まり、登山でも周りの木々や岩肌にぶつかるといった心配が減るのも精神的に安心できる部分です。フォーカシングしてもレンズの長さが変わらないのも実用性が高いポイントと言えるでしょう。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f2.8 1/40秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f2.8 1/30秒 ISO1250 WBオート

 

最短撮影距離0.12m!寄れる広角レンズ

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f8 1/125秒 ISO2000 WBオート

広角レンズは、最短撮影距離が短めに設定されているのもその特徴のひとつです。ですが、本レンズはなんと最短撮影距離0.12mと、従来のレンズよりもさらにもう一歩寄って撮影できるという強みがあります。数値だけではなく、具体的にどのくらい寄れるかは作例を撮影したシーンをご覧いただければ一目瞭然です。

フード先端が当たってしまうほど寄れるので、場合によってはフードを外すことも検討しましょう。グリップを握った指から僅か2cmほどしか出ないレンズ全長は、驚くほどコンパクト。

ほぼ接写と言える距離だというのが、お判りいただけたかと思います。同じ被写体でも寄りと引きを楽しめ、バリエーション豊かに撮影が可能。広角の性能を維持しながら、ハーフマクロと言える撮影も可能とあれば、万能広角レンズと言う意味をご理解いただけるのではないでしょうか。

また、寄ることで背景が大きくボケるため、スペックよりも大きなボケと感じられることもしばしば。最短撮影距離で撮影する場合は可能な限り絞った方が、ピンボケを防ぐことができますので是非覚えておきましょう。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f2.8 1/50秒 ISO2000 WBオート

本レンズをもう一歩使いこなすために覚えておきたいポイント

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境: f2.8 1/400秒 ISO100 WBオート

ここまで万能レンズと紹介してきましたが、いくつかある弱点も理解しカバーしていく必要があります。

1点目は歪みです。樽型の比較的大きなゆがみは特に建造物を撮影する際に際立ってしまうポイント。歪みはカメラ内レンズ補正機能をオンにすることで十分な補正がされるため、必ず設定を入れておきましょう。また、RAWデータについては現像ソフトでレンズプロファイルを適用することで、歪みを補正することができます。

2点目は周辺の光量落ちがやや大きいことです。基本的に絞ることで改善していきますが、完全に解消させるためにはこちらもカメラ内レンズ補正や、現像時のレンズプロファイル及び周辺光量補正で対応していく必要があります。

これらの特徴を念頭に置いて撮影するだけで、最終出力は大きく異なるでしょう。どのレンズにも弱点はありますので、レンズの理解を深めることが上達に繋がっていきます。一方、ボケは綺麗で、逆光や色収差には比較的強いレンズですので、そういった撮影では力を発揮できるでしょう。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f8 1/30秒 ISO200 WBオート

まとめ

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f9 1/60秒 ISO100 WBオート

広角レンズに挑戦したいけど、いきなり高いレンズは買えないという方に特におすすめの本レンズ。紹介した利点がありながら、価格は3万円台と非常にリーズナブルで、最初の1本には十分すぎるほどの性能を持っています。広角は標準レンズとは異なる撮影方法が求められるため、背景整理やパースを活かした表現を身に着けるには練習を重ねる必要があります。そういった意味でも手の届きやすい価格と言うのは、全ユーザーに推薦できる点です。

また、マクロ撮影の練習にもなり、最短撮影距離ではマニュアルフォーカスや三脚を使う、できる限り絞るといった基本動作を身に着けることができます。フルサイズ対応レンズですが、APS-Cで使えば36㎜程度の準広角レンズとして使用できるのも高得点。その機動性の高さから上級者のサブレンズにも実用的な1本、是非使ってみてください!

それでは、また次の記事でお会いしましょう。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 24mm F2.8 Di III OSD M1:2
■撮影環境:f5.6 1/200秒 ISO400 WBオート

 

 

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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