ソニー FE 100-400mm F4.5 GM OSS|撮って納得!新型高性能望遠ズームで鉄道撮影
はじめに
ソニー FE 100-400mm F4.5 GM OSS(以後、新100-400)は、これまでのラインナップの更新機という位置付けではなく、望遠ズームシリーズの新提案となるレンズである。私もかねてから「FEレンズ100-400mmの新製品」のウワサをちらほら耳にしていたが、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS(以後、従来100-400)の登場から9年ほど経つことから、てっきり同レンズのII型のことだと思っていたくらいだ。新たな系譜となる新100-400を様々な鉄道シーンで使ってみた結果をレポートしたい。




編成写真で大活躍
100-400mmといえば、列車大きめの編成写真派にとってはなくてはならないと言っても過言ではない焦点域。もちろん動体ブレは即失敗。露出面ではぎりぎりの値で撮るのが日常茶飯事なので、すこしでもレンズの開放F値は明るいに越したことはない。ズーム全域が開放F4.5通しなら、ズーミングによる露出減をシャッター速度やISO感度で補う必要もなく、選びたいシャッター速度と絞りを選択しやすい。明るさのメリットのほか、ストレスフリーのメリットも感じる。

■撮影環境:1/2500sec f6.3 ISO 400 焦点距離400mm
東海道本線 相生~岡山
時速300キロ近い新幹線の全力疾走をテレ端400mmでAF撮影。陽炎が出やすい悪条件下でも30コマ/秒の最高速連写にレンズはバッチリ追従した。一切不安のないレンズ駆動である。ほしいF値とシャッター速度を設定してからISO感度を決めたが、背景のボケ量に気が回せる余裕がある。

■撮影環境:1/1600sec f7.1 ISO 500 焦点距離476mm
東海道本線 新橋~横浜
新100-400で撮る早朝のサンライズエクスプレス。長編成の編成写真ではこの焦点域はまさに独壇場。ここでは1.4倍テレコンを活用し、手前のビル影を避けてフレーミングすることができた。テレコン併用時の写りや挙動がどれほどのものか、気になるユーザーは多いと思うが、この写真を撮るにあたってAF精度の変化や、目に見える画質の低下は感じない。むしろまだ単焦点レベルかと思えるシャープさだ。

■撮影環境:1/125sec f4.5 ISO 12800 焦点距離400mm(600mm相当APS-Cクロップ)
都営大江戸線 練馬~豊島園
地下鉄など地明かりの少ない場所での撮影は、少しでも開放F値が明るいほうが撮影には有利だ。このシーンでも相当な高感度を使う必要はあったが、開放値でギリギリ動体ブレのない露出を得ることができている。400mm以上必要でテレコンという選択肢もあったが、カメラ側でAPS-Cサイズにクロップして露出を優先した。
“大きい“100-400の優位性
今回の新100-400はサイズも価格も従来100-400より大きめ。従来100-400が最大径93.9mm、長さ205mm、327,690円なのに対し、新100-400は最大径119.8mm、長さ328mm、653,400円(2026年6月カメラのキタムラ調べ)である。従来100-400からすんなり入れ替えとはいかない。だからこそ新100-400は、従来100-400とのちがいを性能面で、それも劇的に感じられてこそ真価が見えてくるだろう。

■撮影環境:1/400sec f8.0 ISO 250 焦点距離400mm
大阪環状線 野田~西九条
従来100-400で撮影したカット。30コマ/秒AF追従のひとコマである。カメラはα9 III。全体を見ている分には実にシャープで、逆光下でも抜けが良い印象だが、ボケ部分の輪郭にやや硬さを感じる。

■撮影環境:1/500sec f5.6 ISO 400 焦点距離400mm
大阪環状線 野田~西九条
そしてこちらが新100-400で撮影した同撮影地の写真だ。こちらも大変シャープな解像感。カメラも撮影日時も違うので同条件比較ではないことを前提にするが、ボケ部分が柔らかく、滲んだような描写もなくなめらかだ。


前述の2枚をアップにした。従来100-400(上)と新100-400(下)である。カメラも違うため倍率も異なっていることを前置きにするが、それでも解像感の差があるといえるだろう。従来100-400の方は連写コマによってばらつきがあり、新100-400は全コマでほぼこの描写を得られた。おそらくAF精度と解像力の両面でこの差が生まれているものと思われる。というより、新100-400のポテンシャルが高すぎて差がついてしまったものであろう。例えるなら、ズームレンズ慣れした人が初めて単焦点レンズを使ったときのような、そんな感動さえ覚えるものだ。
これまでながく従来100-400を使ってきた。こんなアップでの観賞を想定しなければ、従来100-400も十分な性能なのだが、比べてしまったらより納得できる機材を使いたいと思うのは言わずもがな。新100-400は期待通り、いや期待をはるかに超える描写力でもって、従来100-400からの優位性は十分に感じることができるレンズであろう。
解像力を活かして撮りたい極ロングショット
編成写真で確認できた新100-400の解像力だが、これだけ精緻な描写が可能であれば鉄道風景写真にも安心して使っていきたい。この鉄道風景写真は風景の雄大さ、ボリューム感を見せることが第一なので、画面内の列車は小さく扱うのが基本。撮影距離に関わらず、被写体を小さく見せることをロングショットと呼んでいる。

■撮影環境:1/400sec f8.0 ISO 200 焦点距離135mm
上越新幹線 高崎~上毛高原
谷川岳のピークと“国境”を越えてきた上越新幹線が競演する。ちょうどみなかみ町の月夜野リンゴは開花時期をむかえ、白い花弁も画面をにぎやかにしてくれた。深度の深い絵にするが、絞りすぎない開放から2絞り(F8)程度がもっともレンズの解像力が高い。小さく青色を主張する列車のほか、画面の隅々まで目を見張るほど詳細な描写だ。

■撮影環境:1/200sec f8.0 ISO 100 焦点距離116mm
山陰本線 鎧~餘部
ライフワークにしている山陰本線余部橋梁の撮影にも使ってみた。山登りを伴うため新100-400をバックパックに収納し、撮影地では手持ち撮影を敢行。低感度を優先しギリギリまでシャッター速度を落としたが、ボディと協調する光学式5軸手ブレ補正のおかげでフレーミングは安定した。レリーズ時も力を抜いてシャッターを押そう。手持ちでフレーミングの固定が目的なら、手ブレ補正モードはMODE1が良い。

■撮影環境:1/1250sec f4.5 ISO 200 焦点距離276mm
本四備讃線 児島~宇多津
太陽が画面に入った作例。おまけに光源のフレアがシャドーを食う状況だったが、おかしなゴーストなどどこにも見当たらず、実績のあるナノARコーティングIIの効果を改めて実感する。
攻めた流し撮りも簡単攻略のインナーズーム
鉄道写真に使うなら流し撮りがしやすいかどうかも、レンズ選びでは評価基準になる。手ブレ補正のアルゴリズムなどレンズ内の挙動だけでなく、物理的な重さや全長といったことも撮影動作に影響を与えるため、レンズの扱いやすさもよく確認したい。新100-400はインナーズームなので、画角を変えてもレンズを振る動作に影響が少ない。またサイズの割に軽くできているので、列車が来る瞬間までカメラを構えて待っていても、意外と長いこと我慢できるのだ。まだ試せていないが、インナーズーム機構であることは、ズーム間流し撮りも優位に撮影できそうである。

■撮影環境:1/6sec f14 ISO 100 焦点距離187mm
福知山線 道場~三田
流し撮りには手ブレ補正モードのMODE2を使うことが推奨されている。カメラの振りに応じて適切なアルゴリズムで動作するようになる。そして新100-400で加わったMODE3は、スポーツや野鳥など不規則な動きを追いかけながら撮るような、フレーミングがシビアな撮影に向いている。
フィールドで使えるタフさも抜かりなく
各部シーリングや前玉のフッ素コーティングは、Gマスターレンズの高い水準で効果的に施されている。レンズ前端にフード前端と同様のゴム素材を入っており、レンズを下に向けて仮置きするのにも安心な配慮だ。フードについてはFE 300mm F2.8 GM OSSと同様に、ロック付きバヨネットフードが採用されており脱着がスムーズだ。

■撮影環境:1/800sec f4.5 ISO 500 焦点距離377mm
東海道本線 さくら夙川~芦屋
土砂降りの雨を切り裂くようにかけていく新快速電車を撮影。待機中は車内でしのげたものの、手持ち撮影を強いられる場所であるため、撮影中は傘を差すことができず。新100-400はそんな状況を不具合なく耐えてくれた。何気にこのシーンで列車にAFがくるのもすごいではないか。

レンズ前端にゴム系素材が入っているので、床などに仮置きすることがあってもレンズが傷みにくい。新100-400は差し込み式フィルターのスロットが備わったが、前端にもスクリューが切ってあり、95mm径のフィルターが装着可能。

三脚座は組込式で脱着不可。ロックノブのフタを開けるとセキュリティースロットがあらわれる。また三脚座リングにはストラップ環も備わる。
まとめ
車両中心のアップ、風景中心のロング。どちらのシーンでも新100-400が写し出す精緻な描写、AFスピード/精度いずれも大満足だった。単焦点レンズで撮ったときのものに似た感動すらあって、このレンズで撮る意味を見出すのには十分過ぎるほどだ。望遠ズームとして長らくGマスターのブランドを牽引してきた従来100-400だが、新100-400の登場によりユーザーのレンズ選びは悩ましいものになるだろう。個人的には撮影結果を比べてしまったら大きさなんて…買ってから考えても遅くはないだろう。
■写真家:山下大祐
1987年兵庫県生まれ 日本大学芸術学部写真学科卒業。鉄道撮影プロダクション勤務を経て2023年独立。
幼い頃からの鉄道好きがきっかけで写真と出会い、作品制作の舞台として鉄道と関わるようになる。幾何学的な工業製品あるいは交通秩序としての鉄道を通して、人や自然の存在を表現しようと制作活動を行なっている。
鉄道事業者広報素材、インフラ、カレンダー、CMの撮影
鉄道誌・カメラ誌等で撮影・執筆
鉄道写真セミナー講師など
株式会社OfficeYAMASHITA代表
日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員















