ソニー α7 IV × 木村琢磨|エントリーとは言わせない、新たなるベーシックモデル

木村琢磨

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はじめに

私がソニーを使うのは広告写真の撮影が主な用途だ。なかでもフラグシップのα1は値段にも驚かされたが、何より搭載されているスペックに度肝を抜かれた。α1があればもはや撮れないものはないのでは?と見せつけられたような気がした。

今回ソニーから登場したα7 IVはそのα1の性能を継承したベーシックモデルとなっている。ソニーのラインナップにはα7シリーズ、Rシリーズ、Sシリーズ、α9シリーズ、α1と用途ごとに分かれているが、どの機種にも得意なジャンルがあるため単純な上下関係というわけではないと思っている。

ソニーを使うときは商業写真の頭になっていることが多いため、今回はα7 IVを持って気軽にスナップ撮影をしてみることにした。気軽に撮れるのがα7シリーズの特徴である。

持ち出したくなるボディ

普段使用しているα1はボディ質量が約737gに対してα7 IVは約658gと随分軽い。数字だけ見ると100gも違わないからそんなに大差ないのでは?と思いがちだが、この「ちょっとした差」が持ち出す気持ちにさせてくれるのだ。今回は標準ズームのFE 24-105mm F4 G OSSをメインで使用した。グリップがしっかりとしているためGMレンズと組み合わせてもバランスが良く使うレンズを選ばない。

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グリップ形状が絶妙でGMレンズとの相性もバッチリ。

前機種のα7 IIIと比べて大きく変わったのは…といくつか上げたいところだが、全体的にスペックが底上げされているため個人的にこれは良かったというポイントを挙げてみる。

画素数アップ

2420万画素から3300万画素にアップしたことでより高解像度に、さらにトリミング耐性も向上した。画素数アップに伴うノイズの増加なども特になく、躊躇することなく高感度も使える。むしろ画素数が上がったことで、最終的にリサイズするとα7 IIIの2420万画素よりもノイズが目立たなくなる。

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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/16 1/80秒 ISO100 焦点距離34mm
■3300万画素はベーシックモデルとしては高画素な部類だ。ハイエンドクラスの画質をベーシックモデルに落とし込んできたソニーの本気を感じる。木々の細かなディティールまで驚くほど再現されている。

背面液晶のバリアングル化

これはバリアングル好きには待ちに待った仕様ではないだろうか。個人的にチルト式よりもバリアングルの方が使い勝手が良く、どの位置にカメラがあってもモニターが自分の方に向くので、写真を撮るという上ではチルト式よりも優れていると思っている。α1にも採用されているチルト式のメリットは光軸がずれないことだが、モニターが見えなければ意味がないのでα7 IVのバリアングル搭載は羨ましい限り。

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α1にも搭載して欲しかったバリアングルモニター。 このためだけにα7 IVが欲しくなる。 チルト式よりもヒンジ部分に注意が必要だ。

ファインダーの高画質化

一眼はファインダーが命。特に一眼を使う理由としてファインダーを覗いて撮影したいという人は多いはず。私の場合はファインダーと背面モニターと使う割合は半々か背面液晶の方が多いが、日差しが強いシーンや長時間カメラを構えるシーンではファインダーをメインで使う。ファインダーの見えがいいだけで目の疲れ方も違うしピントが見える安心感も増す。オールドレンズを使う人には嬉しい進化ではないだろうか。

UIの変更

メニューが一新されα1やα7S IIIと同じメニューになった。私はα1のサブ機でα7R IVを使用しているがメニューが違うことと画作りの違いに悩まされていた。α7 IVではα1と同じ設定で撮影ができるためα1やα7S IIIと同時使用しても違和感ないのは嬉しい。また、スチルとムービーの切り替えが専用ダイヤルになったため、モードダイヤルをクルクル回すことなく瞬時に切り替えられるようになった。

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スチルとムービーの切り替えが専用ダイヤルになったので瞬時にスチルとムービーを切り替えることができる。 α1よりも使い勝手が全体的に向上していてちょっと羨ましい。

ベーシックモデルという位置付けながらハイエンドモデルのα1に迫る(超えてる部分も?)進化であり、ベーシックやエントリーという言葉はα7 IVには似つかわしくないのかもしれない。もちろんボディの材質や耐久性に関しての差はあるのかもしれないが、出てくる画や写真を撮る上での基本スペックはフラグシップ顔負けだ。

気軽にスナップを楽しむ

α7 IVにFE 24-105mm F4 G OSSを組み合わせて私が普段気分転換に訪れる海岸に向かった。気の向くままにレンズを向けシャッターを切る。そんなのんびりとした撮影体験をさせてくれるのもα7 IVの特徴かもしれない。α1を使っているとついつい仕事モードになってしまうのだが、α7 IVは「もっと気楽に写真を楽しもう」という気持ちにさせてくれた。

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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/22 1/250秒 ISO400 焦点距離85mm
■流れ着いた流木を中望遠で撮影。被写界深度を優先してF22まで絞って撮影。どこかノスタルジックな写り。
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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/22 1/250秒 ISO400 焦点距離24mm
■同じ流木を広角側でパースをつけて撮影。α7 IVでの撮影は「興味を惹かれたものにレンズを向ける」ことが多かった。
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左:オリジナル(3300万画素) 右:トリミング(約800万画素)
■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/16 1/400秒 ISO400 焦点距離105mm
■3300万画素もあれば大胆にトリミングしても六切りサイズ(254×203mm)の画素数は十分に確保できる。撮影後のトリミングで望遠効果も作り出せるので高画素の恩恵は大きい。構図に迷ったときは少し広めに撮影しておき後からトリミングで構図を決めるのもテクニックのひとつだ。
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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/11 1/1250秒 ISO400 焦点距離70mm
■岩に付着した藻の質感にリアリティ感じる写り。今回はほぼ全てのシーンでファインダーを覗いて撮影している。AFがいくら優秀でも100%ということはないのでピントが見えるファインダーは安心感がある。
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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/16 1/400秒 ISO400 焦点距離72mm
■ちょっとでもカメラを構える位置がズレると思った位置に太陽の反射がこないシーン。ファインダーレスカメラも好きだがファインダーを覗く行為はやはり特別感がある。
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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/11 1/8000秒 ISO400 焦点距離105mm
■メカシャッター1/8000秒で撮影することで水の動きを止めた。シャッタータイムラグも短く、思った瞬間を写し取ることができた。
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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/16 1/400秒 ISO400 焦点距離66mm
■FE 24-105mm F4 G OSSとα7 IVとの相性はバッチリだ。α1でも十分な写りをしてくれていたので何も心配していなかったが、α7 IVで一眼ミラーレスデビューをする人にはFE 24-105mm F4 G OSSを推したい。
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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/16 1/400秒 ISO400 焦点距離66mm
■FE 24-105mm F4 G OSSとα7 IVとの相性はバッチリだ。α1でも十分な写りをしてくれていたので何も心配していなかったが、α7 IVで一眼ミラーレスデビューをする人にはFE 24-105mm F4 G OSSを推したい。
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■撮影機材:SONY α7 IV+FE 24-105mm F4 G OSS
■撮影環境:f/16 1/400秒 ISO400 焦点距離105mm
■海岸を歩く子どもを画面のアクセントとして配置。高精細なファインダーのおかげで子どもの動きを確実に捉えながらの撮影ができた。

まとめ

ソニーのカメラはα1とα7R IVと愛用していて、どちらの機種も商業写真を撮るためのカメラとして導入したもの。確実性や高画素が求められるため導入した2台だが、作品を撮るためにはあまり使っておらずどこか「仕事カメラ」という感じがしていた。

今回、α7 IVを使用して感じたのは作品を撮ってみたいと思えたこと。明らかにα1やα7R IVとは違う気持ちでシャッターを切ることができるカメラだったのだ。今回は通称便利ズームと呼ばれるFE 24-105mm F4 G OSSをつけての撮影だったが、α7 IVは単焦点レンズと組み合わせて撮影しても面白いだろうなと思った。特にFE 50mm F1.2 GMのような標準レンズとの相性は間違いなくいいのでは?と使いながら思っていた。

α7 IVはベーシックモデルではあるが中身はフラグシップ顔負けの一台だ。ソニーがα7 IVをベーシックモデルとしてラインナップしたことで、必然的に他社もベーシックモデルのスペックの底上げを迫られることになるだろう。α7 IVは全体的なスペックが底上げされたことで「長く使える一台」に仕上がっている。特にファインダーのスペックなどは型落ちした時に差を感じることが多いが、α7 IVは3年~5年は余裕で使えるだろう。

デジタルカメラも長く使える一台が求められる時代になっている。α7 IVは間違いなくその条件を満たした一台であり、α7 IVでフルサイズミラーレスデビューという選択肢は大いにアリだ。今回は短い期間での使用ではあったが、このレビューを書いている私自身α7 IVが欲しいという気持ちになっているのだった…。

■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。

α7 IV レビューはこちらの記事でもご覧頂けます

■ソニー α7 IV レビュー|風景写真家 高橋良典
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485344549/

■ソニー α7 IV レビュー|静止画も動画も撮りたい人に!これからのスタンダードミラーレスカメラ!
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484908191/

■ソニー α7 IVが登場!|上位モデル撮影性能を継承した新時代Basicモデル
https://www.kitamura.jp/shasha/article/484754618/

■ソニー α7 IV レビュー|葛原よしひろ
https://www.kitamura.jp/shasha/article/485650113/

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