【オールドレンズ】味のあるボケと淡いグラデーションを楽しめる「AI Nikkor 50mm F1.8S」

水咲奈々
【オールドレンズ】味のあるボケと淡いグラデーションを楽しめる「AI Nikkor 50mm F1.8S」

はじめに

ピントリングに数字は刻まれていませんが、F2の絞りに合わせることも可能です。

 1980年頃に発売された「AI Nikkor 50mm F1.8S」は、ニコンがエントリーユーザー向けに開発した一眼レフ「Nikon EM」に合わせて、低価格・小型軽量のレンズシリーズとして開発されたレンズです。

 前回レビューした「Nikkor-HC Auto 50mm F2」は、1972年の発売で、同じく低価格・小型軽量のお財布に優しいレンズでしたが、本レンズも同コンセプトのコスパのいいレンズです。本レンズの魅力を、「マウントアダプター FTZ」を介して「Nikon Z fc」に装着して撮影した、スチールとムービーで紹介いたします。

 

ショート・ムービー

■撮影機材:Nikon Z fc + AI Nikkor 50mm F1.8S

 今回は沖縄の2箇所の海辺で撮影してきました。海の彼方にある理想郷「ニライカナイ」から琉球の創世神アマミキヨが上陸したときに、最初に足をおろした場所とされている「ヤハラヅカサ」と、うるま市の車で行ける離島「藪地島(やぶちじま)」の、道なき道の先にある鍾乳洞「ジャネー洞」です。

 「ヤハラヅカサ」は光を遮るものがない波打ち際での撮影が主なので、可変式のNDフィルターを使用しています。特に太陽光の強い沖縄では、NDフィルターがないと、すべての画が白飛びしてしまいます。

 対して「ジャネー洞」は、撮影したのは鍾乳洞の入り口ですが、かなり暗くて明暗の差が大きい場所です。この、両極端な光の状態のムービーを組み合わせるために、ピクチャーコントロールの「フラット」を使用して、全体の色彩は抑えめにしました。後半の緑の葉のシーンだけ、編集時に少しだけ鮮やかにして、みずみずしさを出しています。

 カメラにトライポッドグリップを装着し、ストラップを前に引っ張ってテンションをかけながら、手ブレを抑えるように撮影。波の音や鳥の声は、外付けマイクを装着して同録しています。

 光が丸くボケるようなシーンで、ピントリンクを回しながら、アウトフォーカスから徐々にピントを合わせていく撮影方法は、大きなレンズだと三脚がないと上下にブレてしまって、酔うような画になってしまうのですが、コンパクトな本レンズでは気軽に行えました。

 

歪曲収差と色収差が少ないので、心地良く撮影できる

■撮影機材:Nikon Z fc + AI Nikkor 50mm F1.8S
■撮影環境:絞りF5.6 1/200秒 ISO100 AWB クリエイティブピクチャーコントロール「ポップ」

 本レンズはガウスタイプのレンズ構成で、絞り羽根枚数は7枚、いわゆるパンケーキレンズと言われる薄い形状が特徴的なレンズです。絞り開放はF1.8で、一段刻みでF値を変更できます。また、ピントリングには数字が刻まれていませんが、開放値の次の絞りだけF2が使用できます。

 海辺の撮影で気になるのが水平線の歪みですが、歪曲収差の少なさが見て取れると思います。色収差も感じられず、絞り込めばシャープな画が得られる標準画角のレンズとして、心地良く撮影できます。F5.6の絞り値ですと前後のボケも自然なので、人の目の見え方に近いナチュラルな描写になり、旅のワンシーンを切り取るのに最適です。

 

開放時の賑やかなボケ

■撮影機材:Nikon Z fc + AI Nikkor 50mm F1.8S
■撮影環境:絞りF1.8 1/4000秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール「風景」

 開放時の描写は、これぞオールドレンズ!と言いたくなるくらい淡くて、フレアも感じられます。ピントが合っているヤドカリ部分はシャープですが、ボケ部分は、絵の具を水のついた指でなぞってボカしたような流れるような描写で、若干の二線ボケも見られます。

 光の丸ボケも多く出るため、賑やかな画になっています。このボケを煩いと見るか、楽しいと感じるかは好みだと思いますが、筆者は賑やかなボケは大好物なので、スチール、ムービーともに丸ボケが出るシーンを選んで撮影していました。

 

周辺光量落ちも、特徴あるボケも写真のスパイスに!

■撮影機材:Nikon Z fc + AI Nikkor 50mm F1.8S
■撮影環境:絞りF1.8 1/2000秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール「ビビッド」

 被写体の色の濃さと、ピクチャーコントロール「ビビッド」の相性もあって、逆光での撮影にも関わらず、バキッとした力強い画になりました。

 周辺の光量落ちが見られるのと、前ボケの賑やかさがわかりやすいカットになりましたが、最新のデジタル機種向けのレンズではないので、はっきり言ってしまえば、それがオールドレンズの醍醐味。周辺の暗部は主役の赤い花を引き立ててくれて、味のある前後のボケは、画全体を不思議なムードに仕上げるスパイスとなってくれました。

 

ちょっとの指の操作で被写体のムードをガラリと変えられる

■撮影機材:Nikon Z fc + AI Nikkor 50mm F1.8S
■撮影環境:絞りF1.8 1/200秒 ISO2000 AWB ピクチャーコントロール「ビビッド」

 量産型のレンズらしく、重厚な金属感を味わえる操作感ではありませんし、プラスチッキーな外観ではありますが、Nikon Z fcのボディと合わせると、今自分がデジタルで撮影しているのか、銀塩で撮影しているのかわからなくなるような、不思議な感覚になるレンズです。

 ピントの山は見やすく、液晶画面でもファインダーでも、MFでのピント合わせは難なく行えました。どこにピントを合わせても面白いような被写体では、自分の指のちょっとした動きで、被写体のムードをガラリと変えることができるので、いつもよりも被写体に向き合う時間が長くなりました。

 

オールドレンズならでは!フレアもゴーストも大歓迎

■撮影機材:Nikon Z fc + AI Nikkor 50mm F1.8S
■撮影環境:絞りF1.8 1/125秒 ISO100 AWB クリエイティブピクチャーコントロール「トイ」

 オールドレンズで撮影していて楽しいのは、こんな描写が得られたとき。逆光耐性の強い最新のレンズは、綺麗にフレアを取り除いてくれますが、全体に霞がかったようなノスタルジックな描写を、無性に味わいたくなるときがあります。そんなときに手渡しくなるレンズです。

 ムービーの中盤の木漏れ日のシーンでは、フレアもですが大きなゴーストを出せています。このフレアとゴーストの出方なら、ポートレート撮影にも似合いそうだなと、撮影しながら色々なシチュエーションでのフレアとゴーストを想像して楽しくなりました。

 

スチールとムービー両方で楽しめるレンズ

■撮影機材:Nikon Z fc + AI Nikkor 50mm F1.8S
■撮影環境:絞りF2 1/400秒 ISO100 AWB ピクチャーコントロール「風景」

 構図内の色数が少なかったり、落ち着いた色合いの場合は、前ボケもそれほど賑やかにならず、ふんわりとボケる傾向にあります。

 オールドレンズらしい味のあるボケと、霞がかかった淡いグラデーション、周辺光量落ちのノスタルジックなムードを味わえるコスパのいいレンズです。使いやすい画角なので、ぜひ、スチールとムービーの両方で楽しんでいただきたいです。

 

■写真家:水咲奈々
東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、イベントや写真教室など多方面で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。日本写真家協会(JPS)会員。

 

 

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