ニコン Z fc レビュー|熊切大輔

熊切大輔

ニコン Z fc レビュー|熊切大輔

シャッターチャンスとカメラの関係

 シャッターチャンスに強くなる方法。それはカメラがすぐにシャッターを押せる状態にあることです。当たり前ですが、ここが一番重要なのはおわかり頂けると思います。首からいつもカメラが下がっている状態が理想的です。

 ではいつも首から下げたくなるカメラ、とはどんなものでしょう。当然サイズは小さく軽く、そして何よりデザインの良いカメラでファッションの一部にもなるような格好の良さが重要です。撮る楽しみと同等に持ち歩く楽しみがある。そんなカメラがZ fcなのです。

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ニコン Z fcについて

 フィルムカメラの名機FM2を彷彿とさせるボディデザインは往年のファンはもとより、若い世代にもかっこよく新鮮に感じられるのではないでしょうか。

 ダイヤル類もアナログ式になっていますが、これは単にデザイン的に昔風になっているだけではありません。スイッチOFFの状態でも首から下げた時に上から見て、設定がひと目で分かる利便性も兼ね備えているのです。もしかすると、液晶画面で設定を確認するよりも直感的に設定を理解できるかもしれません。ちなみにダイヤル類は回した時の感触、トルクをそれぞれ微妙に変えるなど、細部に渡ってアナログ的なこだわりのある作りとなっています。

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 そんな撮ること・持ち歩くことが楽しくなるカメラ、Z fc。7月23日のZ fc 16-50 VR SLレンズキットとボディの販売から予想以上の反響があったようで、NIKKOR Z 28mm f/2.8 Special Editionレンズキットの登場が少し遅れていましたが、いよいよ2021年10月1日に待望の発売となりました。

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 そこで私のオススメのZ fcの使い方を一つお話します。それはZ fc-GR1 (エクステンショングリップ)を装着することです。

 本体は445gと小型軽量が特徴となっていますが、かなり個人的な感覚かもしれませんがボディの持つ雰囲気、イメージよりも軽く思えるほど軽量なのです。そこに約84gのエクステンショングリップを装着することで、イメージ通りのしっくり来る重量感になります。

 加えてやや上重心なボディバランスも下にさがって、安定感がぐっと増してきます。当然小さなグリップですが指掛かりも断然良くなり使い勝手がよくなります。普段小型カメラにあえてグリップを付けない派の私ですが、サイズ感に大きく影響しないモノとしての質感と、利便性を強く感じられるエクステンショングリップはオススメのアイテムです。

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 今回ボディと共に大きな注目を集めているのが、もう一つのキットレンズとなったNIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)です。ボディ同様FM2と同時期のマニュアルレンズにインスピレーションを受けた鏡胴デザインは、当然の様にZ fcにピッタリマッチしています。

 今までリリースされたZシリーズの単焦点レンズは比較的に長めのサイズとなっていましたが、この28mmは小型軽量になりZ fcの小型ボディとのサイズバランスが絶妙にとれている印象となっています。

 開放F値は2.8ですがそのレンズ表現は優秀で、タップリとしたボケ味も十分楽しむことができます。0.19mまで寄れる近接撮影能力を活かして遠近のギャップをつけて、よりボケ味を楽しむ構図で撮影してみました。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
■撮影環境:ISO100 F2.8 SS1/100

 合焦面の高精細な画から柔らかくボケていく表現はメリハリの効いた美しい描写能力を持っていることがわかります。ちなみに、画角を合わせてもう一つのキットレンズNIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRでも撮影してみました。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
■撮影環境:ISO400 F4.8 SS1/125

 当然開放値が違いますのでボケ味に関しては比較的弱めです。しかし、コンパクトなDXキットレンズですがこちらもキレとボケのバランスが想像以上に良く優秀なレンズであることがわかりました。NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VRには4.5段効く手ブレ補正効果を発揮する光学式VR機構も内蔵しており、こちらも手に入れたいレンズに仕上がっています。そんな2本のレンズとZ fcを持って街を切り撮ってみました。

ニコン Z fc 作例

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
■撮影環境:ISO400 F5.6 SS1/125

 DX(APS-C)フォーマットのセンサーに対して画質的にネガティブなイメージを持っている方も中にはいらっしゃると思いますが、心配は無用です。切れのある高精細な画を切り撮ることが出来ます。都電に乗って王子の飛鳥山公園に行きました。SLが展示しておりそのメカメカしい機関部分に心惹かれシャッターを押しました。真正面から平面的に撮ることによってデザインが効いた構図になります。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR
■撮影環境:ISO400 F5 SS1/1000

 Z fcはZシリーズ初のバリアングル液晶モニターを採用しました。動画で画像確認しながらの収録用はもちろん、スチールでは縦位置でのアングル変化も出来るようになるなど撮影フィールド、表現が更に広がりました。日本橋の福徳神社は車止めも鳥居の形をしています。地面スレスレのローアングルで捉えると本物の鳥居とダブルでくぐるお子さんが楽しそうに写りました。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
■撮影環境:ISO400 F5.6 SS1/200

 水面反射もローアングルが効くシーンです。よりクリアに多くの情報を写し込むには水面ギリギリを狙いたいところです。クリアな二重世界が不思議な一瞬を生みだしました。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
■撮影環境:ISO200 F2.8 SS1/200

 当然ハイアングルの表現も広がります。チルトではカバーできなかった真下に液晶を向けたアングルなど、高所のフォトジェニックな被写体も捉えることが出来ました。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
■撮影環境:ISO400 F5.6 SS1/200

 悟ったようにこちら見ているような猫に出会いました。Z fcは動物AFもしっかりと対応。機能的にZシリーズの上位機種から見劣りすることはありません。28mmはS-Lineレンズ以外で初のマルチフォーカス方式を採用。動き物もスムーズでスピーディかつ高精度にピントを捕まえてくれます。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
■撮影環境:ISO1600 F2.8 SS1/4000

 高感度は常用ISO51200と余裕のある高感度描写を実現しています。ISO1600、3200あたりの「使える高感度」の画質は全く問題なく暗所での撮影も躊躇なく挑めます。夕暮れの巣鴨地蔵通りの大きなこけしの柔らかい明かりが灯りました。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
■撮影環境:ISO400 F2.8 SS1/800

 像面位相差AFとコントラストAFを自動的に切り換え、素早く高精度にピント合わせを行うハイブリッドAFは瞬間的に現れる被写体に的確に対応してくれます。提灯と風車の間の一瞬を捉えました。スナップの瞬間性を活かした画作りを後押ししてくれます。

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■使用機材:ニコン Z fc + NIKKOR Z 28mm f/2.8(Special Edition)
■撮影環境:ISO1600 F2.8 SS1/1000

 カメラがノスタルジックだとそれに合わせた画作りをしたくなります。フィルムの頃を思い出し、モノクローム専用機にするのも楽しいかもしれません。Zシリーズ全般でおなじみのクリエイティブピクチャーコントロールもすべて楽しむことが出来ます。カーボンモードにして飲み屋街をハードボイルドに写してみました。

まとめ

 シンプルにカメラが持ち歩きたくなるような物であれば、シャッターを押す回数は自ずと増えていきます。カメラが違うだけでこんなにもシャッターチャンスに巡り会えるのか、モチベーションを上げてくれるカメラを持った人は必ず実感できるはずです。

 技術も大事ですがまずは身近に写真のある生活を楽しんでいただきたい。そうすれば自ずと素敵な作品をご自身が撮ることが出来る、そう思います。初心者もベテランも同じ様に撮影を楽しめる、そんな写真ライフのパートナーにピッタリのカメラがこのZ fcだと思います。

■写真家:熊切大輔
東京生まれ。東京工芸大を卒業後、日刊ゲンダイ写真部を経てフリーランスの写真家として独立。ドキュメンタリー・ポートレート・食・舞台など「人」が生み出す瞬間・空間・物を対象に撮影する。
スナップで街と人を切り撮った写真集「刹那 東京で」を2018年に発売と共に写真展を開催。2021年には写真集&写真展「東京美人景」そして「東京動物園」の三部作で東京の今を撮り続けている。
公益社団法人日本写真家協会理事

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