キヤノン RF85mm F1.2 L USMとRF85mm F2 MACRO IS STMを比較レビュー|自然風景を切り撮って検証

GOTO AKI
キヤノン RF85mm F1.2 L USMとRF85mm F2 MACRO IS STMを比較レビュー|自然風景を切り撮って検証

はじめに

こんにちは。写真家のGOTO AKIです。今回は焦点距離が同じ2本のレンズ、キヤノンの「RF85mm F1.2 L USM」と「RF85mm F2 MACRO IS STM」を取り上げます。

焦点距離85mmといえば、ポートレートレンズというイメージをお持ちの方も多いと思いますが、このレビューでは風景を題材にそれぞれの特徴をご紹介していきます。実勢価格差約4.5倍の両レンズは、比較されることがほぼない別カテゴリーと言ってもいいレンズですが、どんな違いや特徴があるのかを東伊豆で撮影してきた写真を見ながら、レビューしたいと思います。では早速みていきましょう!

デザインと特徴

▼RF85mm F1.2 L USM

「RF85mm F1.2 L USM」は、開放F1.2の大口径標準単焦点レンズです。質量1195g、サイズは全長117.3mm、最大径103.2mmの手にずっしりと感じる大きさで、気軽に持ち運べる携帯性よりも画質を優先した設計です。

レンズ側部には「AF/MF切り替えスイッチ」と「フォーカスリミッタースイッチ」が配置されています。レンズ内手ブレ補正機能は非搭載ですが、ボディ内手ブレ補正機構を搭載したEOS R3・R5・R6・R6 Mark II・R7で使用すれば、ブレを気にせず手持ちでの撮影を楽しめます。

赤いラインのすぐ右側のリングはRFレンズでお馴染みのコントロールリングです。筆者はISO感度や露出補正などを割り当てて、電子ビューファインダーで設定の効果を確認しながら使っています。クリック感があるためファインダーを覗きながらの操作も安心の設計です。

 

▼RF85mm F2 MACRO IS STM

「RF85mm F2 MACRO IS STM」は、開放F2の小型軽量の中望遠単焦点レンズです。質量500g、サイズは全長90.5mmで「RF85mm F1.2 L USM」と比べると重さは半分以下、全長も20%ほど小さく携帯性に優れ、手持ち撮影がしやすいデザインです。

RFレンズとしてはリーズナブルなレンズですが、操作を快適にするコントロールリングを装備しています。鏡筒側部には「フォーカスリミッタースイッチ」が配置され、ハーフマクロ撮影の際に素早いフォーカスが楽しめるよう、0.35m~0.5m、0.5m~無限遠 、FULLの3つの範囲に切り替え可能です。

その他「AF/MF切り替えスイッチ」「手ブレ補正スイッチ」も装備され、ボディ内手ブレ補正機構を搭載しているEOS R5などのカメラでは、約8段分の手ブレ補正効果が得られます。ボディ内手ブレ補正機構を搭載していないEOS RやEOS RPでは、約5段分の手ブレ補正効果です。

ぞくっとくる解像感

「RF85mm F1.2 L USM」をEOS R5に装着して、ずっしりとした重量を感じながら駐車場から海へ。他のRFレンズと同じように開放の描写力への期待が高まります。

夕方、西の光を反射した雲とその姿を淡く映し出す海面の表情に惹かれF1.2で撮影すると、その場の空気感を丸ごと捉えたような臨場感にぞくっときました。ピントを合わせた箇所に芯があるのに全体はやわらかい印象で、高解像度と高コントラストの強さと、繊細さをあわせもった納得の描写力です。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/250秒 F1.2 ISO100

海面にピントを合わせ、手前の岸壁はF1.2でぼかした一枚。明るい開放値を使うと、低めのISO感度のままで速いシャッター速度で撮影できるため、ザラザラとした荒れの少ない高画質のデータが作りやすく、A0・A1などの大きいサイズのプリントを展示する場合にもメリット大です。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/1250秒 F1.2 ISO100

上の作例と同じ撮影位置からの遠景のカットです。夕日を受けた雲の表情から海面の繊細な写り込みまで肉眼で見る以上に繊細な描写力。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/1600秒 F1.2 ISO400

色味の少ない夕刻、カメラ前の植物を前ボケにしてやわらかな色を写真に生み出した一枚。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/2秒 F1.2 ISO1600

海から駐車場へ戻る林道で撮影。肉眼ではほぼ真っ暗に近い明るさのため、ISO感度を1600に上げて、画面中央部にピントを合わせてF1.2で手持ち撮影をしました。シャッター速度は1/2秒のスローシャッターでしたが、カメラのボディ内手ブレ補正効果でブレることなく撮影できました。約8段分の補正効果は見事ですね。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/6400秒 F1.2 ISO50

こちらは早朝の一枚。明るい光のカーテン周辺から雲や波の繊細な線まで、その場の被写体と空気感を捉えてくれるレンズです。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/8000秒 F1.2 ISO400

朝の光が射し込んだ蜘蛛の巣。蜘蛛にピントを合わせて、光や色彩をボケとして捉えた一枚です。撮影現場では「レンズのASCコーティングが効いているなぁ」などとは全く考えないでいいほど、普通にフレアやゴーストが気にならないレベル。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/60秒 F1.2 ISO50

遊歩道をスナップ撮影した作例です。なんでもない風景に臨場感やドラマを感じてしまうほど、F1.2のやわらかい描写は魅力的。どこか映像のワンシーンを切り取ったかのようなイメージが生まれます。

F1.2で撮影した動画のクリップです。暗いシーンでもISO感度を上げず、動画撮影に必要な1/30秒~1/60秒のシャッター速度で撮影が可能です。

解像感の比較

ここでは「RF85mm F1.2 L USM」と「RF85mm F2 MACRO IS STM」それぞれで同じ被写体を撮ったらどう見えるのかを比較してみたいと思います。薄曇りの天候で、ピクチャースタイルはスタンダード、同じ位置から三脚で撮影した2枚をご覧ください。
(同じ焦点距離85mmでもレンズの設計上の理由で写る範囲に誤差があります)

RF85mm F1.2 L USM
RF85mm F2 MACRO IS STM
RF85mm F1.2 L USM
RF85mm F2 MACRO IS STM

「RF85mm F1.2 L USM」で捉えた作例は、高コントラストで色のりもよく、全体的にクリアな印象です。一方「RF85mm F2 MACRO IS STM」の描写力も素晴らしく、コントラストはやや弱めですが十分な解像感です。価格差を考えるとかなりのコストパフォーマンスの良さを感じます。AFのスピードに関しては、この撮影シーンでは大きな差は感じませんでした。

近接撮影は「RF85mm F2 MACRO IS STM」の得意技

「RF85mm F2 MACRO IS STM」はコスパがよいだけでなく、近接撮影でも威力を発揮します。最大撮影倍率0.5倍のハーフマクロ撮影が可能で、最短撮影距離は35センチ。本家のマクロレンズには及びませんが、体感としてはかなり「寄れる」実用度の高いレンズです。

下は2枚は同じ被写体を「RF85mm F1.2 L USM」と「RF85mm F2 MACRO IS STM」の最短撮影距離で捉えた作例です。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F1.2 L USM
■撮影環境:1/500秒 F1.2 ISO400

「RF85mm F1.2 L USM」の最短撮影距離85センチで撮影。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/100秒 F2 ISO400

同じ被写体の中央部分を「RF85mm F2 MACRO IS STM」で捉えたものです。最短撮影距離35センチまで近寄って撮影しています。中望遠としてだけでなくマクロ的な撮影も楽しみたい方には「RF85mm F2 MACRO IS STM」のスペックはかなり魅力的ですね。

下の2枚は「RF85mm F2 MACRO IS STM」の最短撮影距離35センチで夕暮れ時に捉えた写真です。ホワイトバランスは太陽光で撮影しているため、色温度の関係で全体的に青い印象の作例になっています。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/30秒 F2 ISO400
■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/20秒 F2 ISO400

この2枚がどれぐらい近寄って撮られているかは、下の現場写真でご確認ください。

結構近いですネ。被写体にぶつかりそうです。

「RF85mm F2 MACRO IS STM」は「RF85mm F1.2 L USM」のF1.2のやわらかな描写には一歩及びませんが、比較せずに単体でみますと、かなり魅力的な描写力を備えているレンズであると感じました。

下の作例の3枚は朝の光の中、F2で捉えた作例です。カメラとピントを合わせた被写体の距離が異なるため、ボケの大きさは変わっています。被写体に近いと背景のボケも大きくなりますね。それぞれ海岸沿いの林道で撮影した作例です。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/8000秒 F2 ISO400
■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/6400秒 F2 ISO400
■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/2000秒 F2 ISO400

使い勝手の良い「RF85mm F2 MACRO IS STM」

「RF85mm F2 MACRO IS STM」は「RF85mm F1.2 L USM」のボケや臨場感ある描写力には一歩及びませんが、軽量小型なので手持ちで撮りやすく、かつ手ブレ補正も備えた近接撮影にも強いメリットがあるレンズです。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/2000秒 F2 ISO400

こちらは蜘蛛の巣へ当たった光が分解されて、光のカーテンのように描写された一枚です。光がレンズに入っていますが、嫌なフレアやゴーストもなく強い逆光耐性を実感します。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/13秒 F2 ISO250

夕刻の暗い林道で撮影。シャッター速度は1/13ですが、手ブレ補正機能のおかげでブレることなく撮影できました。

まとめ

今回は「RF85mm F1.2 L USM」と「RF85mm F2 MACRO IS STM」の比較と、それぞれの特徴を活かした作例をご覧いただきました。

「RF85mm F1.2 L USM」の高解像感と高コントラストはワンランク上の描写力。F1.2を活かしたやわらかなボケ味を活かした作品など、じっくりと撮影に取り組みたい方におすすめです。対して「RF85mm F2 MACRO IS STM」は小型軽量でハーフマクロの機能もあり、撮影範囲が広い実用的なレンズです。コストパフォーマンスにも優れていますので、皆さんのスタイルに合わせてお選びください。

■撮影機材:キヤノン EOS R5 + RF85mm F2 MACRO IS STM
■撮影環境:1/3200秒 F2 ISO400

 

 

■写真家:GOTO AKI
1972年、川崎生まれ。1993~94年の世界一周の旅から今日まで56カ国を巡る。現在は日本の風景をモチーフに創作活動を続けている。2020年日本写真協会賞新人賞受賞。武蔵野美術大学造形構想学部映像学科・日本大学芸術学部写真学科 非常勤講師、キヤノンEOS学園東京校講師。

 

 

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