第4回フィルムカメラを始めよう!中判スタートに国産二眼レフはいかが?:ヤシカ Yashicaflex編

鈴木啓太|urban
第4回フィルムカメラを始めよう!中判スタートに国産二眼レフはいかが?:ヤシカ Yashicaflex編

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はフィルムカメラを始めよう!シリーズ第4回として、前回のGX645AF Professional編から引き続き中判フィルムカメラを紹介していきます。今回はクラシカルなビジュアルと独特の撮影方法で人気抜群の二眼レフ、その魅力を紐解いていきたいと思います。

二眼レフとは?その歴史に触れてみよう

二眼レフとはその名の通り、カメラ前面にレンズが2つ付いている主に箱型のカメラを指します。レンズは上下に並んでおり、構図を決めるビューレンズ(上)と撮影を行うテイクレンズ(下)に分かれています。「レフ(reflex)」と名前に入っているとおり、ビューレンズを通った光がミラーに反射しファインダーからそれを覗くことで、カメラを通して世界を見ることができます。そして構図を決めた後、シャッターを切ることでテイクレンズを通った光がフィルムに当たり、撮影が行われるというわけです。一眼レフは、ビューレンズとテイクレンズの役割を1つのレンズが担うことにより成り立っていますが、二眼レフはこのようにそれぞれの役割を持ってレンズが配置されています。

二眼レフの歴史は長く、1800年代に今の小型二眼レフの原型となるモデルがヨーロッパ、そしてアメリカなどで開発されました。このころはまだ大型で用途は産業用、携帯性は皆無。我々が知っている中判フィルムを使う二眼レフの始まりは、1929年に発売されたローライフレックスとなります。

その後高級機のローライフレックススタンダード、普及機のローライコードがヒットし、二眼レフの人気がより一般的なものとなっていくのです。一般的とは記載したものの、1932年に発売されたローライフレックススタンダードで当時の価格で約45万円、普及期のローライコードでさえ24万円程度と、今の高級デジタルカメラとそう変わらない価格となっており、当時の一般庶民にはなかなか手の届く代物ではありませんでした。

日本での二眼レフブームとヤシカフレックスの誕生

■フィルム:Kodak PORTRA160

日本での二眼レフブームの火付け役は1950年に発売されたリコーフレックスIIIと言われています。当時の価格で約6~7万円という手ごろな価格帯の二眼レフは飛ぶように売れ、そこから数多の国産二眼レフが発売、一大ブームとなっていきます。

今回紹介するヤシカフレックスもその流れの一環で誕生したカメラで、初代ヤシカフレックスはヤシカフレックスB型として1953年、市場に登場しました。そこから改良が重ねられたヤシカフレックスB後期型(新B型)が、今回紹介するカメラです。

ローライコードのコピーとして知られ、ビューレンズ側にはフレネルレンズが搭載されたスクリーンがあり、非常に明るいという特徴があります。シャッター速度も二眼レフ最速の1/500。80mm F3.5のヤシコールがもたらす描写は目を見張るものがあります。レンズの周辺機構も汎用フード等を取り付けやすいBay1バヨネットを採用しており、欠点のほぼない機種だと考えます。

セミオートマットで、フィルムを巻き上げると1枚ずつセットされる仕組みを持っています。ただし、撮影した後も再度シャッターが切れるため、すぐに巻き上げないと撮ったのか撮ってないのか忘れてしまい、意図しない多重露光や撮影せずにフィルムを送ってしまうなどの二眼あるあるが発生するので注意して使いましょう。

ボディ貼り革がパリパリになってしまう持病があり、気になる方は貼り替えされている機種を狙うのも良いでしょう(パリパリになって剝がれているのは値下がりしているため、こちらを狙うのもありです)。また、新B型とヤシカ‐Dはほぼ同一でバリエーションが違うだけですので、どちらを購入しても問題ありません。基本的なスペックは以下を確認してください。

▼Yashica Yashicaflexスペック

形式 6×6cm判レンズシャッター式二眼レフカメラ
発売年 1957年
使用フィルム 120ロールフィルム16枚撮り
レンズマウント レンズ固定式
使用レンズ Yashikor 80mm F3.5(35mm判換算:44mm相当)
絞り F3.5~F22
最短撮影距離 1.0m
ファインダー フレネルレンズ入りマット(ルーペ付き)
シャッター 1秒~1/500秒、バルブ
巻き上げ方式 セミオートマット(スタートマーク合わせ自動巻き止め)
多重露光 可能
レンズバヨネット Bay1バヨネット
セルフタイマー あり(約10秒)
質量(重さ 約1010g

ヤシカフレックスが誇る描写力

■フィルム:富士フイルム PRO400H

国産二眼レフカメラは機種として細かな違いがあるものの、基本的な性能としては大きく変わりはありません。国産二眼レフ最高峰としてミノルタ オートコードがあり、特に後期型のオートコードはローライコードにも勝るとも劣らない描写力を誇ります。筆者はこれまで10種類近くの二眼レフを使用してきましたが、トップクラスの描写はオートコード、東京光学のプリモフレックス、そして今回紹介するヤシカフレックスで間違いないのではと考えています。

ヤシカ二眼レフには様々な名称のレンズが搭載されましたが、ヤシノン、ヤシコールが有名です。ヤシカフレックス新B型のヤシコールは発色、解像力については申し分ありません。開放での描写は非点収差によるぐるぐるボケが見られますが、中判カメラは絞って使うのが基本となりますので、気になるレベルではないかと考えています。ボケと解像度が両立されるF5.6~F8が筆者おすすめの絞り値。最短撮影距離の短さは全二眼レフが抱える弱点でもありますので、二眼レフを使ってどうしても寄りたい!という方は後述するクローズアップアクセサリーを付けるのが良いでしょう。

それではさっそく、その描写力をご覧いただきましょう。筆者のヤシカフレックスは祖父の形見を直して使っており、このカメラで家族写真を沢山撮影してきました。ポートレートの作例を中心として、スナップ、風景と紹介していきます。F値はF5.6を中心に開放F3.5からF11程度までさまざまに撮っており、F5.6~F8を最も多用しています。

■フィルム:富士フイルム PRO400H
F3.5絞り開放での1枚。ぐるぐるボケが見られます。
■フィルム:Kodak PORTRA160
F8程度で撮影。F8でも十分なボケが得られるのが中判フォーマットの特徴です。
■フィルム:富士フイルム PRO160NS
F8程度で撮影。太陽を入れなければ逆光にもある程度耐性があります。
■フィルム:富士フイルム PRO160NS
F4程度で撮影。この立体感と光の捉え方は中判フォーマットならでは。
■フィルム:富士フイルム PRO160NS
F5.6程度で撮影。ポートレートでは特にF5.6~F8程度の絞りがおすすめです。
■フィルム:Lomography Color Negative 120 ISO400
F3.5での撮影。梅雨時期の急な雨の中での1枚、これぞヤシカフレックスという描写です。
■フィルム:Lomography Color Negative 120 ISO100
F4程度での撮影。二眼レフは慣れてきても水平垂直を取るのが難しいカメラ。まずはここを意識して撮影しましょう。
■フィルム:富士フイルム PRO160NS
F3.5で撮影。最短撮影距離のチェックのためテーブルに置いてセルフタイマーで撮影しました。セルフタイマーは手ブレ防止にも役立ちます。
■フィルム:富士フイルム PRO400H
F5.6程度で撮影。子どもの興味も引き付ける二眼レフ、シャッター音が小さいのもgood。
■フィルム:Lomography Color Negative 120 ISO400
F8程度で撮影。二眼レフは中央に被写体を置くのが最もバランスよく感じます。

ヤシカの二眼レフ購入のポイント、役立つアクセサリー

ヤシカの二眼レフは数多くの種類があり、かつ、かなり売れたカメラですので、中古カメラ市場で見つけるのは難しくありません。今回紹介しているのはヤシカフレックス新B型となりますが、それ以降に登場したヤシカマットシリーズを狙うのも悪くないでしょう。

ただし、ヤシカマットを含む後期のシリーズには露出計内蔵となっているものが多く、今は動かない、動いても適正露出を示さないものも多く見受けられることから、個人的には新B型、それと同等機種のヤシカ‐Dを推奨します。ヤシカフレックス最終機に当たるヤシカマット124Gはビジュアルも良く、露出計内蔵かつ軽量とヤシカファン憧れの機種。やや高価にはなりますが、クランク巻き上げを体験したい方は高級機のヤシカマットシリーズを選ぶのも良いのではないでしょうか。

ビュー&テイクレンズの周りに見えるのがBay1バヨネット。内と外があり外にはレンズフード、内にはクローズアップアクセサリーやコンバージョンレンズが装着できます。

新B型(それ以降の機種含む)はレンズ前面にBay1バヨネットといわれる汎用バヨネットが付いており、それに対応したレンズフード、クローズアップアクセサリー、広角&望遠のコンバージョンレンズをつけられるのが魅力です。特にこれら3アイテムはヤシカオリジナルだけではなく、Kenkoやサン光機、ローライなど他社からもBay1バヨネット対応のアクセサリーが大量に出ているので、入手しやすいというメリットがあります。そういった面でもBay1バヨネット対応機種を選ぶのは重要なポイントであると考えます。

また先述した通り、フレネルレンズが入ったスクリーンは非常に明るく、ピント合わせの精度が向上することからも新B型以降の機種を選びたいところです。

二眼レフでの撮影で便利な露出計「SEKONIC L-308X」

二眼レフは露出計を内蔵していない機種がほとんどですので、外部露出計を用意する必要があります。今はスマホアプリでも露出計がリリースされていますが、筆者推奨はセコニックのL-308X。入射光式測光が可能なため、明暗差が大きいシーンや逆光のシーンなど適切な露出を測ることができ非常に重宝します。

特に他のフィルムカメラも使っている方でカメラ任せの露出でうまく撮れないとお悩みの方、是非一度使ってみてください。ご自身の写真が大きく変わると思います!

■フィルム:Lomography Color Negative 120 ISO400
初日の出での1枚。非常に難しい露出ですが、露出計を活用することで中判フィルムのラティチュードの広さを活かしきることができました。

おわりに

■フィルム:富士フイルム PRO400H

前回記事で、6×4.5cmフォーマットの富士フイルム「GX645AF」を紹介しましたが、こちらとはまた異なる真四角フォーマットの魅力を知っていただけたのではないでしょうか。中判と言えばこの真四角フォーマットに憧れてはじめるという方も多く、目指すはハッセルブラッド等高級機にはなりますが、手始めとしての二眼レフは最高の機種だと考えています。

カメラ自体のクラシカルなビジュアルに加え、ファインダーを真上から覗く独特の撮影方法も見る人を引き付ける大きな要因。3万円前後で始められる二眼レフ、是非手に取ってファインダーを覗いてみてください!真四角の世界にきっと感動を覚えるはずです。

2024年5月31日(金)より筆者も出展する「国産中判フィルム展」という写真展が都内で開催されますので、是非足を運んでみてください。ヤシカフレックスをはじめとする34機種の様々な中判カメラの写真を知ることができるチャンスですので、これから中判カメラを始めたいという方必見の展示となる予定です!実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるフィルムワークショップ「フィルムさんぽ」にもご参加いただければ嬉しいです!ではまた、次の記事でお会いしましょう!

 

 

■国産中判フィルム写真展
開催日時:2024年5月31日(金)~6月3日(月)

場所:HuBase
東京都文京区水道2-13-4ビクセル文京103

公式サイト
https://amemiya-hair.tokyo/kokusan-cyuban2024/

 

 

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

 

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