第12回フィルムカメラを始めよう!誕生40周年!写ルンです完全攻略
はじめに
こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はフィルムカメラを始めよう!シリーズ第12回として、フィルムの初心に立ち返り、「写ルンです」を特集していきます。
未だに中高生を中心とした若い世代に大人気な写ルンです、今回はその独特な写りや人気の秘密などを踏まえ、2026年7月1日で40周年を迎える「写ルンです」の今に追っていこうと思います!
※使用機材は注釈がない限り全て「写ルンです シンプルエース 27枚撮り ISO400」を使用しています。
一度はみんな使ったことがある?写ルンですとは

カメラを嗜む方、それ以外の方にも知名度抜群のフィルムカメラ「写ルンです」ですが、そもそもフィルムカメラって何?という方も多いはずです。まずここではフィルムカメラの代表ともいえる「写ルンです」とは何かをおさらいをしていきましょう。
「写ルンです」とは、今もデジタルカメラ界で業界をリードする富士フイルムが1986年に世に送り出した「レンズ付きフィルム」商品です。当時は使い捨てカメラとも呼ばれ、旅行先のタバコ屋さんや駅の売店、自動販売機などでも購入することができました。
最盛期には世界で1億本以上を売り上げ、ISO1600フィルムが入った「写ルンです 1600 Hi・Speed」やモノクロフィルムが入った「写ルンです Black & White」などなど数々のバリエーションを生産。今では残念ながら「写ルンです シンプルエース(ISO400 27枚撮り)」のみとなってしまいましたが、焦点距離32mmのプラスチックレンズ1枚からなるそのレトロな写りは、今もなお多くのカメラユーザーやフィルムファンを虜にしています。



何度目かのブームと写ルンですの今

写ルンですはここ5年程ずっと、女子高生やそもそもカメラ自体触ったことのない方を中心に安定した流行が続いています。なぜ、普段持ち歩いているスマートフォン等のカメラではなく、わざわざ写ルンですといった不便なツールを使うのでしょうか。ひとつは、スマホにはない独特の写りを得られるという事が挙げられます。確実にピントの合うスマホカメラよりも、撮影距離も固定化されていて、意図しないボケやブレなどが起こりやすい写ルンですは、デジタル世代にとって新鮮に感じるもの。
もうひとつは、便利な世の中において、敢えて不便さを体験する行為に重きを置いているのではと考えます。写真を撮るという行為をボタンひとつで終わらせるのではなく、フィルムを巻き上げ、ファインダーを覗き、構図を決めてシャッターを押す。その被写体は、友達や自分の好きなものがほとんど。写真を撮るまでの所作を含めて、写真として(さらに記憶として)焼き付けるということに価値を見出しているのではないでしょうか。
結果はすぐ確認できないうえに、ちゃんと写っているのかもわからない…といったドキドキの中で結果を待つというのは、スマホのアプリで写真をフィルム風に加工するのとは全く異なる体験であると言えます。現像、プリントやデータ化を経てようやく目に見える写真となる、フィルムならではのスローな工程は、スピードの速い現代社会の流れにはない「待つ楽しみ方」を新たな価値として提供していると考えることができます。


さて、そんなスローライフもひとつのウリと言える写ルンですは、今ではお店に現像に出したフィルムを、スマホ転送で受け取れるサービスも充実しています。現像とデータ化+スマホ転送で2,000円弱。高校生であればバイトやお小遣いで溜めたお金を使っての1枚ですから、スマホで気軽に撮るよりも1枚1枚の写真に思いが込められるのも納得です。写ルンですの流行はアナログへの回帰と言うよりも、「体験する価値」への魅力がより大きいのかもしれませんね。


写ルンですのフィルム現像に関する詳細はリンク先をご覧ください。
https://www.kitamura-print.com/column/special/film/utsurundesu/
さて、ここからは少し写ルンですのスペックを紹介しておきましょう!そんなの別に知らなくてもOK!という人は読み飛ばしてもらっても大丈夫です。上級者の方は知っていれば色々と応用が利くのではないでしょうか。
| フィルム | ISO400 135フィルム |
| 撮影枚数 | 27枚 |
| レンズ | 焦点距離=32mm F=10 プラスチックレンズ1枚 |
| シャッタースピード | 1/140秒 |
| 撮影距離範囲 | 1m~無限遠 |
| フラッシュ | 内蔵(有効撮影距離:1m~3m) |
| 重量 | 90g |
少しカメラをかじったことのある人であれば、F10&SS1/140秒かつレンズ1枚は結構びっくりするようなロースペックだと思います。笑
ISO400ですと晴れの日の適正露出はF11&SS1/500秒くらいですので、ざっくりF10,1/140≒F11,1/125とそろえて考えると大体2段オーバーくらいがデフォルトだと考えていただいてもいいかもしれません。これは晴れの日の日陰でもギリギリ適正露出が得られるようにもなっていると言えますので、晴れであれば基本的にどこで撮ってもきれいな写真が撮れるということを意味しています。春~夏にかけての晴れの日であれば気にせずガンガン撮っていけるのも魅力のひとつです。
写ルンですはこう使おう!テクニック解説

さてここからは、写ルンですの使い方と描写を見ていきましょう。普段デジタルカメラを使っている方からすると、ローファイな写りが何とも魅力的に感じられるはずです。
屋外編:しっかりと撮るために

写ルンですが最も力を発揮するのは、晴れの日の屋外。その独特な写りを存分に発揮してくれます。フィルム一眼レフなど逆光の時は露出補正などで撮影するのが基本ですが、写ルンですにはその機能はありません。ですので、極力逆光以外で撮るのが基本です。逆光で撮りたい場合は、フラッシュを使用しましょう。
さらに気を付けなければいけないのは手ブレです。SSが1/140しかない写ルンですはボディも90gと軽く、ちょっとしたことで手ブレを発生させてしまいます。写ルンですの手ブレは天候に関わらず発生します。片手でラフに撮れるのが魅力ではありますが、意図的にブラしたくない場合はしっかり構えて撮るようにしましょう。



写ルンですはほぼパンフォーカスなので、切り取りや構図を意識することがコツです。曇りの日で光と影を使えない場合も有効なテクニックです。次は、写ルンですで陥りやすい失敗例について説明していきます。
▼失敗例1:写真が暗い

屋外でも曇りや日陰の暗いところではこの様にアンダーになってしまいます。暗いかな?と思ったらフラッシュを焚く癖を付けましょう。
▼失敗例2:手ブレ

晴天の昼間ですが、手ブレしてしまった例。SS:1/140秒はしっかり構えて撮らないと想像以上に手ブレが発生します。明るい場所ではフラッシュを使用してもブレてしまうので注意が必要です。
屋内編:露出(明るさ)を失敗しないために

屋内で写ルンですを使うコツは必ずフラッシュを焚くこと、これに尽きます。フラッシュを使用しない場合、晴れた屋内でもほぼアンダー、場合によっては全く写らないことも多々あります。これが写ルンですの失敗写真で最も多いシチュエーションです。どうしてもノンフラッシュで撮りたい場合は、自然光がたくさん入る窓際の直射日光が当たるところで使いましょう。特に夜の屋内でのフラッシュなし撮影は厳禁です。フラッシュなしではほぼ写らないと思った方が良いでしょう。
屋内や夜の屋外でフラッシュを焚いた際の写真は独特です。ザ・フラッシュという写りになりますが、ファッションやストリートフォトなどでは敢えてこのザ・フラッシュが好まれるケースもあります。


薄暗い場所でフラッシュを焚きながら、素早くカメラを振ることでブレのある写真を撮ることができます。写ルンですはボディが軽くSSを変更することができないため、成功率は低めですが覚えておいて損はないテクニックです。
次は、写ルンですの屋内撮影で陥りやすい失敗例について説明していきます。
▼失敗例:フラッシュ焚き忘れ

屋内撮影の典型的な失敗例、暗いところで撮影してしまったため、完全に明るさが不足しています。屋内では必ずフラッシュを焚きましょう。
ちょっとしたテクニック編
ここでは写ルンですを使ったちょっとした撮影テクニックを3点紹介します。
逆光でゴーストを出す


1つ目はオールドレンズでもおなじみゴーストを載せるテクニック。ファインダーから覗いても写真の様な光の輪を確認することはできませんが、逆光に向けて思い切ってシャッターを切ることでこのような写真を撮ることもできます。
フィルムはある程度白飛びに強いですので、逆光でも気にせずガシガシ好きなシチュエーションでシャッターを切るのも良いアプローチです。効果的なアクセントになったり、写真を邪魔してしまったりとメリット・デメリットはありますが、一風変わった写真を撮ることができます。
日中にフラッシュを使う


2つ目は日中シンクロです。日中シンクロと書くと難しいイメージに捉えられてしまうかもしれませんが、要は日中にフラッシュを使うということだと捉えていただければOKです。
日中シンクロの利点は逆光時も被写体を明るく撮れることが挙げられますが、写ルンですにおいては逆光時だけではなく「どこでも確実に被写体を明るく撮れる」ということが最も大きなメリットであると言えます。ですので、筆者は逆光時に関わらず晴れの日でも極力フラッシュを焚くことを心掛けています。なお、フラッシュを使っても日中手ブレしてしまうのは変わりませんので、そこは気を付けましょう。
ソフトに撮る


3つ目はレンズにハンドクリームなどを塗ってよりソフトに見せるテクニック。写ルンですはその機構上あまり凝った撮影ができないので、普通の使い方に満足できない方はレンズに何かを塗るといったテクニックを用いるのもいいでしょう。レンズフィルターさながらの効果を出すことができます。
コツは薄く塗ること。あまり厚く塗りすぎるとぼやけすぎてしまうため、さっと塗るくらいにとどめておきましょう。レンズを拭けば元通りですので、27枚すべてに塗るというよりはお試しで1~2枚やってみるのが良いですね。
多様化するレンズ付きフィルムの紹介

レンズ付きフィルムシリーズは写ルンですだけではないのをご存知でしょうか。名前は写ルンですではないものの、今もフィルム製品に力を注ぐKodakやLomographyからも様々なレンズ付きフィルム製品が出ています。
Kodak:FunSaver

まずはKodakのレンズ付きフィルムシリーズのFunSaverです。写ルンですとの違いは入っているフィルムの感度がISO800ということ。より明るく撮れ、暗いところ(曇り)に強いということが挙げられます。スペック面でもF9及びSS1/120と各社同製品の中では若干明るいのが特徴です。
コダックのフィルムを使えば暖色よりの温かみのある発色を表現することができます。F値の関係からか最短撮影距離は1.2mと若干の違いがあるものの、晴れの日中の使用感はほぼ一緒です。写ルンですがISO400製品しかなくなってしまった今、フィルムの好みや天候で機種を選択できるというのはユーザーにとってはありがたいことです。

Lomography:Simple Use Film Camera

フィルムユーザーであればご存知、LomographyのSimple Useです。これは写ルンですやFunSaverのLomography版と考えていただければ問題ありません。違うのは次の2点。
・フラッシュにカラーフィルターがついており、独特な表現が可能
・フィルムを入れ替えることができ、本体の再利用が可能(ただしフィルムの入れ替え後の撮影は保証対象外)
どちらも写ルンですとFunSaverにはないメリットですね。本体が再利用できるということは予備のフィルムを持っていくことで、旅などの長期利用にも耐えられとても実用的。カラーフィルターもフラッシュに色付けをするなど、多様なアプローチが可能です。入っているフィルムもLomoのカラーネガフィルムをはじめ、モノクロや色が紫になるフィルムなど様々な本体バリエーションが用意されているので、ぜひ試してみることをお勧めします!スペック上F9及びSS1/120となっており、FanSaver同等ほぼ変わらない使用感と思っていただいてよいでしょう。

レンズ付きフィルムを水中で使おう!Simple Use Underwater Case

昔あった水中写ルンですは、残念ながら2019年に廃盤になってしまいました。そこで登場したのが、Lomography Simple Use Film Cameraを水中で使えるようにした防水ケースです。水深10mまで使える優れものですので、水中写ルンですの代わりに使用することができます。
やはり何といっても防水の強みを活かした水辺での撮影をするのに持ってこい。主に海などでの使用が良いですが、晴れの日のプールなどは濁りの無いより美しい水中撮影が可能ですので、作品撮りにも相性○。最低でもISO400、可能であればISO800のフィルムを使用することで、美しい水中撮影が期待できるでしょう。


まとめ

今でもまだまだ人気の衰えることのない写ルンですシリーズ。今年で40年となりますが、デジタルカメラが進化した今でこそ、新たなポジションを確立し、若い世代にも絶大な人気を誇っています。先述の通りフィルムデータの受け取りも進化を遂げているので、ストレスなくその楽しみ方を享受できるはずです。ぜひ、今年の春は写ルンですからフィルムを体験してみてください。きっと今までと違った思い出となるに違いありません。
より実践的な撮影方法が知りたい場合は、筆者が講師を務めるフィルムワークショップ「フィルムさんぽ」にもご参加いただければ嬉しいです!ではまた、次の記事でお会いしましょう!

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。













