デジタル全盛期に逆行したヴィンテージ風フィルムが面白い!|ILFOCOLOR VintageTone 400 作例&レビュー

ShaSha編集部
デジタル全盛期に逆行したヴィンテージ風フィルムが面白い!|ILFOCOLOR VintageTone 400 作例&レビュー

はじめに

ILFORD ILFOCOLOR Vintage Tone 400はILFORD(イルフォード)から発売されている35mmのネガフィルムです。

ILFORDといえばDELTAやHP、XP2といったモノクロフィルムのイメージが強いですが、今回ご紹介する『ILFORD ILFOCOLOR Vintage Tone 400』は製品名にも書いてある通りカラーネガフィルムでヴィンテージ風な描写が手軽に楽しめるフィルムとなっています。

最近はレトロやヴィンテージ風に写るフィルムが多く発売されていますが、一口に『ヴィンテージ風』といっても色味やノイズ感などはそれぞれ異なり、それが面白いところです。こちらのフィルムもどのような写りなのか気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は実際に撮影した作例をもとに特徴をご紹介いたしますので、フィルム選びの参考になれば嬉しいです。

色味は藍色が渋い寒色傾向

Camera:Leica M6
Lens:Leica Summilux-M 50mm f1.4 1st(後期)

ILFOCOLOR Vintage Toneの色味は寒色が強めな印象です。寒色といってもただ青に振っているわけではなく渋くて落ち着きのある藍色。チープな感じはせず、むしろ深みのある仕上がりで湿度感のある重厚な描写が期待できます。

例えば冬の日の少し寂しげな雰囲気や雪景色、曇りの日、温泉街、古風な街並みなど寒色が合うシーンとの相性が非常に良く、情景をしっかりと表現してくれます。

RICOH GR1

こちらは渋谷でスナップをしていた時に撮影した1枚です。街中で自転車を撮ったなんてことない1枚ですが、寒色の色味もあり自転車の無機質でクールな仕上がりになりました。

暖色傾向のフィルムで撮影してももちろん面白いのですが、都会的でクールなシティスナップがお好きな方にもおすすめだと感じます。

扱いやすい感度400

Camera:RICOH GR1

ILFOCOLOR Vintage Toneの感度は400。400というと高すぎず、低すぎない感度です。屋外はもちろん屋内や曇りの日など少し暗いところでも明るさを確保しやすいため、普段使いとしても十分扱いやすいフィルムでしょう。

Camera:Leica M6
Lens:Leica Elmarit-M 21mm F2.8 ASPH.

こちらの写真は温泉宿の貸切風呂で撮影した1枚です。雰囲気が非常に良く、お風呂にしっかりと浸かってリラックスすれば日頃の疲れも簡単に吹き飛ぶ名湯です。

今回はLeicaのElmarit-M 21mm F2.8 ASPH.で撮影。感度が400だったおかげもあり非常に撮影しやすいと感じました。

相性抜群な青と黄色

Camera:Leica M6
Lens:Leica Summaron-M 28mm f5.6[11695]

青い空に白い雲、ヤシの木の隙間から見えるオーシャンビューが絶景の南国リゾート。沖縄で撮影した写真ですが、データを「昔ハワイで撮影した」と言われれば違和感なく「そうなんですね」と受け入れてしまうほど味のある描写です。

画面左側のアンダー部を見ると先ほどお伝えした寒色傾向であることが見て取れますが、中心部のハイライトから明部が続く右下にかけてやや黄色味がかっています。彩度が控えめな青と黄色の配色は一部のヴィンテージデニムと通じるものがあります。

Camera:RICOH GR1

青と黄色は補色の関係に位置しており、お互いの色味を引き立ててくれるのでお互いが鮮やかに感じるという効果があります。撮影した時期、筆者が青と黄色の風景と聞いて思いついたのは青空をバックに撮るイチョウの紅葉でした。

写真も補色のおかげかバックの澄み渡る青空も輝くイチョウの葉も優しく鮮やかです。青空も画面右下から左上にかけてグラデーションもあり飽きない仕上がりになりました。

“ヴィンテージらしさ”の肝となる粒状感

Camera:RICOH GR1

粒状感はフィルム・デジタルを問わず描写のクリアさや、その写真の印象を決める重要な要素の一つですよね。写真の右側を見ると分かるのですが、ILFOCOLOR Vintage Toneの粒状感は感度が同じ400である富士フイルムのSUPERIA PREMIUM 400やX-TRA400、kodakのPORTRA 400などと比べるとやや粗めの印象です。

“粗め”というとネガティブに感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、本フィルムではこの粒状感があることで”ヴィンテージらしさ”をより一層引き立ててくれています。

力強いコントラストでドラマティックな仕上がりに

Camera:RICOH GR1

ILFOCOLOR Vintage Toneは上記のフィルム達と比べても比較的コントラストが強いフィルムといえます。この写真では写真の中央部ハイライトや海面部、サーファーの後ろ姿などを見ると明暗差がくっきりしています。

撮影時は大海原にサーファーが立ち向かうドラマティックな仕上がりを期待していたので筆者としては大満足です。もしフィルムデビューの方や撮影に慣れていない方は逆光や明暗差が強いシーンでの撮影時はフラッシュを使用しても良いかもしれません。

※ 水族館や動物園、博物館や劇場、テーマパークの一部エリアなどフラッシュの使用を禁止している場所があります。それらの場所ではフラッシュを使用しないよう注意しましょう。

似ているけれど違う商品

新宿 北村写真機店のフィルム売り場では、本フィルムの近くにレンズ付きフィルムの「ILFOCOLOR RAPID HALF FRAME」という、パッケージのカラーがとても似ている商品を発見。

ILFOCOLOR Vintage Toneは24枚撮りなのに対して、ILFOCOLOR RAPID HALF FRAMEはハーフサイズでの撮影なので24枚の倍である54枚撮ることができます。お得だと思ったのですが、中にはILFOCOLOR Vintage Toneとは異なる専用フィルムが装填されています。

ILFOCOLOR VintageToneが寒色寄りな落ち着きのあるトーンに対して、暖色寄りでヴィヴィットな描写だそうです。もちろんどちらも素敵なのですが、ご購入時にお間違いのないようご注意ください。

また「テーマパークで1日を通して何枚も撮影しそう」という場合や、旅行など多めに撮りそうな日など24枚撮りが心配な方は予備も購入すると安心かもしれません。

おわりに

最近のデジタルカメラは高感度でもノイズが少ないクリアな描写や、連写時の高速化、シャッターを切る前から撮影ができている機能、AIによる高精度な被写体追従機能の向上...など技術の発展にともない高性能化を遂げています。そんな中、ILFOCOLOR Vintage Toneはノイズがやや粗めで撮影枚数が24枚とデジタルが発展している真っ最中の現代とは逆行しているようなフィルムでしょう。

これはフィルム全般にも言えることですが撮影枚数などの制約の中で失敗を防ごうとピントや構図はいつもよりも慎重になります。1枚1枚じっくりと撮る楽しみはそのままに、仕上がった写真のドラマティックで精悍な写真を見ると、印象的な仕上がりということもありデジタルとは違った新鮮さを感じました。

常用のフィルムとしても、いつもと違った写真を楽しむときの飛び道具としても面白いフィルムです。新宿 北村写真機店のほか下記カメラのキタムラ店舗でお取り扱いしており現像ももちろん承っておりますので、気になる方はぜひご来店ください。

 

販売店舗一覧

新宿 北村写真機店
カメラのキタムラ 東京/渋谷店
カメラのキタムラ 名古屋/サカエチカ店
カメラのキタムラ 福岡/ミーナ天神店
カメラのキタムラ 大阪/なんばCITY店

 

 

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