スナップで街めぐり。一瞬の情景を愉しもう。Vol.6|北千住

富久浩二

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はじめに

 15年くらい前にこの場所のスナップ撮影会に参加し裏道が特に楽しかった記憶があり、ふと思い出して行ったら予想以上に楽しい写真が沢山撮れた。それから通うようになり今では北千住はお気に入りの場所だ。商店街のシャッターの絵が地味に良くて、そのシャッターが開く前に行くと、いいなと感じる瞬間に沢山出会える。今回はそんな街をどう撮っているのかを紹介したいと思う。 

北千住駅4階から

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■撮影機材:ソニー RX1

 駅改札を出てガラス窓から外を見ると全体的に地味だが、構図的にはぞくぞくっとする場所があった。少し様子を見ていると、ぽつりと赤い傘をさした女性が一人現れた。これだけ広範囲に見渡しても傘の色以外地味なところが気に入った。この場面は構図的にできるだけ広角で捉え、傘の人を小さく入れて収束点もきちんと見えるようにして奥行き感を出すことに気を使った。左側のエアコンの室外機の並びや、その上のパイプが収束点に向かって行く様子もとても気に入っている。

シャッターの狼と犬

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■撮影機材:ソニー RX1

 ずっとここで待っていた訳ではなく、この少し先を歩いていたら散歩しているわんことすれ違い、その時にこの狼があった事を思い出し駆け足でこの場所へ戻った。少し覗き込んでわんこ先導で来るのはわかったので、頭が出てくる瞬間が撮れるなと考え、ここで待機。ぱっと見では気が付かないと思うが、狼とわんこ共に舌が出ていて、繋がり感があるところが一番のお気に入り。こんな感じで軽く説明して、あはは面白いってなる写真が好きでそんな瞬間を狙っている。

赤ずきん繋がり

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■撮影機材:ソニー RX1

 色を合わせるのは比較的簡単だが、このずきんまでとなると雨の日しかありえない。自転車はあっという間に通り過ぎるので近くに来て気が付いたのでは、こうは撮れないと思う。遠くから来る人や自転車に気を配ることは簡単そうで難しい。自分の場合、目の前に集中し過ぎないようにする為、待って撮る場合は正面へ3割、それ以外に7割の意識をもっていくようにしている。正面はもう決まっているのだから気にし過ぎはもったいない。ファインダーの外を意識することがこう言った場面では大事になる。

猫がトカゲを狙っている

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■撮影機材:ソニー RX1

 壁にかわいい黒猫の大きな絵、その猫の目線の先にあるものを狙ってみる。少し待っているとジャケットを着た若者が歩いてきて、ジャケットの隙間からトカゲの絵がちらっと見えた。猫が狙うものと言えば小動物が頭に浮かぶ。ここで若者の顔が写ってしまうとトカゲの印象が薄くなるので、近づいてきた所で首の少し下あたりが入るようにシャッターを切った。撮った写真を見て良かったなと思うところは、レンズの光軸が猫の目、トカゲに行っていない所。もしどっちかに光軸が寄っていた場合は、このようなストーリーを感じる事ができない中途半端などっちつかずの写真になっていたかなと思う。

ローマの休日

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■撮影機材:ソニー RX1

 映画に出てきた像のレプリカがこんなところに。口元にはワインの空瓶が沢山あり、像が少し傾いて酔っぱらっている感じがするところがお気に入り。一つだったら面白くないが、二つ何かがあると物語を感じやすい。雨の日に濡れた顔でもう一度撮ってみたい場所だ!

河川敷の駐輪場

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■撮影機材:ソニー RX1

 カラフルな自転車置き場。このように全てが止まっているものを撮影する場合はじっくりと構図を考えることができるので、模索した色々なパターンの中から選択して撮影を行う。左側の自転車の前輪の影の並びを特に気にして、ここが右の自転車の後輪と被らないように調整。また自転車、影、レインボーの床以外は写さないようにする為カメラを高く持ち上げて、見下ろす様に撮影した。ボケもいらないので絞っている。

お店の幟(のぼり)を使ったスナップ

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 商店街を歩いていれば必ずある店舗前の幟(のぼり)。基本薄い布なので近づいてみると向こうの景色が透けて見える。特に黒い幟の場合、その先が明るければこんな感じで歩いている人を撮る事ができる。クロネコヤマトの幟は黒猫のシルエット越しに狙えるので探して撮ってみよう(笑)。レンズは布にくっつけるとただ暗いだけになるので布から少し距離を撮って幟の模様や文字などを使うと良い。

バイクと自転車

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 商店街を行き交う人を撮ってもそこそこ良い写真にはなるが、特別にするのは難しい。ここでイメージしたのは車輪の丸と何かとの組み合わせ。自転車が沢山行き交っていたので前輪と組み合わせてみた。ここで大事なのはカメラの高さ。上から撮ると自転車の車輪の中にバイクの車輪をうまくはめることができない。綺麗に撮るためには光軸を真っすぐにして、あおりを少なくすることが必要。車輪2つを最高の位置で撮る事ができたと思う。

酒屋の瓶ケース

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■撮影機材:ソニー α7R III + Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

 光が強い日は何かを通した写真が撮りやすい。店舗を囲っているビニールカバーが半透明な黄色だったので、全体がセピア色になって面白いかなと思った。飲み終わったビールの瓶がケースに収まっていたので、その隙間と組み合わせて行き交う人を中に入れてみた。半透明なものを見かけたら、まずはレンズを近づけて、面白くないなと思ったらプラス1となる要素を探すことをオススメする。 

まとめ

 北千住、いかがだっただろう。古い宿場町とは言え流石に江戸時代の雰囲気は味わえないが、独特の雰囲気のある街でスナップをするのは楽しいものだ。旧日光街道は横に抜ける細い道が地味に素晴らしい被写体の宝庫だったりする。一本道を行ったり来たりだけではなく、ジグザグに小道を歩くときっといい写真が撮れると思う。都心もいいが、たまには少し離れた古い町並みも面白い。

■写真家:富久浩二
日々の通勤風景を主に、いつも見ている変わりばえのない、しかし二度とやって来ない一瞬の情景を大切にし、ちょこっと人が入った物語りのある写真をテーマのもとに、人びとの優しく楽しい感情が伝わる事を目標に日々撮影している。子供の頃の目線、何と無く懐かしさを感じて貰える様に、ライブビューを使った低い目線、思い切って背伸びをした様な高さからの撮影が特徴的。

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