ソニーユーザーが羨ましい!便利ズーム「TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD」は星景写真でも便利だった

成澤広幸
ソニーユーザーが羨ましい!便利ズーム「TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD」は星景写真でも便利だった

はじめに

タムロンの「20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)」は小型軽量なソニーフルサイズミラーレス用レンズ。広角20mmから標準域の40mmまでをカバーする、ちょっと珍しい焦点距離で、さらに素通しF2.8を実現したレンズです。

ネットでは多くの写真家やYouTuberが高い評価のレビューを投稿しており、2023年4月には世界的に権威のある「TIPAアワード2023」を受賞したことも記憶に新しいですね。写真性能だけでなく、特に動画性能においても評価の高い注目のレンズとなっています。

さて、私がこの記事を書いているということは、「TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)」で星景写真を撮影したときにはどうなのか?ということを検証するためであります。抜群の人気を誇る便利ズームの星空適正はいかに?

20-40mm F/2.8 Di III VXDの特徴

このレンズ、なんと重量は365g!非常に小型で軽量なレンズです。画像はソニーのα7 IVに取り付けた状態ですが、非常にコンパクト。これだけ小型軽量であれば持ち運びは楽です。そして、広角から標準域までカバーできる焦点距離は風景~スナップ撮影と幅広くこなせるでしょう。f2.8の明るさを全焦点域で使えることから、ズームしたときに明るさが変わってしまうということもありません。

20mmのときはレンズが少し前面に出ます。40mmのときに引っ込むという仕様。確かにこれならズーム時の重心変化がさほどないため、動画撮影ではジンバル搭載時に便利だと思いました。ジンバルは重心がずれてしまうと滑らかな動きで撮影できなくなる可能性があるため、重心が変わるたびにバランスを取り直さなければならないからです。

VXD(リニアモーターフォーカス機構)を採用しているため、フォーカスは滑らかで駆動音もとても静か。動画撮影で人気があるもの頷けます。

中央・周辺の星像をチェック

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)
■撮影環境:ISO6400、f2.8、10秒、AWB、20mm

この写真を見てみましょう。背景に北斗七星、前景に木を入れたシンプルな構図です。この写真の中央と周辺の星を比べて収差がどの程度発生しているのかをチェックします。すると・・・

周辺に明るい星がくると少々星の形がいびつになります。そして若干の色収差も感じます。ですが、このレンズの価格と日中の撮影用途を考えると、充分すぎるほどの性能なのではと感じました。10万を切る価格設定でこの描写とは・・・いやはや、良い時代になったものです。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)
■撮影環境:ISO6400、f2.8、10秒、AWB、30mm
■フィルター:Kenko プロソフトンクリア使用
Photoshop Lightroom Classicで処理

ズームレンズというのは、構図内の一部を排除したいときにとても使い勝手が良いものです。20mmでは右側の木が邪魔で北斗七星から上の星も削った方がいいのではと考え、30mmにして星を滲ませるソフトフィルターをつけて撮影。これですっきりとした構図にすることができました。

注意点としてはズーム時に露出時間が長くなると星が線になって写りやすいということなんですが、このレンズは素通しf2.8なので、焦点距離に関係なく同じ設定で撮影し続けることができます。余計なことを考えずに済みますから、これは大変ありがたい。

また、フィルター径が67mmなのもありがたいですね。67mmって一番使用頻度の高いフィルター径だと感じています。タムロンレンズは67mmで統一されているものが多いので、フィルターワークもこれまで使用していたものと同じ機材で楽しめるでしょう。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)
■撮影環境:ISO6400、f2.8、10秒、AWB、33mm
■フィルター:Kenko プロソフトンクリア使用
Photoshop Lightroom Classicで処理

焦点距離が長くなるほど、画角内での星の動きが大きくなります。広角レンズでは気にならない程度の星の流れ方でも、標準域だとかなり気になるようになるでしょう。こうした標準域での星空撮影で、三脚のみ(赤道儀での追尾撮影を行わない)で撮影する場合は、「星がどの程度流れて写っているか」を意識して撮影画像をチェックしていくことをおすすめします。

昼間の撮影もしてみた

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)
■撮影環境:ISO100、f8、1/60秒、AWB、20mm
■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)
■撮影環境:ISO100、f8、1/125秒、AWB、40mm

逆光での撮影をテストしました。派手なゴーストが出ることもなくすっきりと写る印象。広角になればなるほどパンフォーカスで写りやすくなりますので、手前の風景にもピントが合いやすくなります。こうすることで奥行きを感じさせる構図で撮影できるのが楽しいですね。

■撮影機材:SONY α7 IV + TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)
■撮影環境:ISO200、f8、1/30秒、AWB、20mm

冬の浅間山に雪が積もった状態を「ガトーショコラ」と呼ぶそうです。後ろには濃いビーナスベルトが出現しました。

タイムラプス動画集

このレンズをメインにしてタイムラプス動画を制作してみました。CP+2023で使用したものですが、広角で広い風景を撮影しているものはすべてTAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)を使用しています。この動画を見ても非常に多様な用途で使用できるレンズだということがわかりますね。

まとめ

便利ズームという言葉はよく聞きますが、「TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD (Model A062)」はその中でもトップクラスの使いやすさと描写でとても驚きました。しかも安い・・・。残念ながらソニーEマウント用しか発売されていないので、他のマウントではネイティブで使用することはできないのですが、今後の展開に期待したいところ。ソニーユーザーが羨ましいですね・・・。

このレンズは私のYouTubeチャンネルでもレビューしています。こちらもぜひチェックしてみてください。

 

 

■写真家:成澤広幸
1980年5月31日生まれ。北海道留萌市出身。星空写真家・タイムラプスクリエイター。全国各地で星空撮影セミナーを多数開催。カメラ雑誌・webマガジンなどで執筆を担当。写真スタジオ、天体望遠鏡メーカーでの勤務の後、2020年4月に独立。動画撮影・編集技術を磨くべくYouTuberとしても活動している。
・著書「成澤広幸の星空撮影塾」「成澤広幸の星空撮影地105選」「プロが教えるタイムラプス撮影の教科書」「成澤広幸の星空撮影塾 決定版」「星空写真撮影ハンドブック」
・月刊「天文ガイド」にて「星空撮影QUCIKガイド」を連載中
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)正会員

 

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