~ 寄り道で見つけたマイペンライ ~ ソニー FE 24-105mm F4 G OSS レンズと共に タイ後編|平野はじめ
はじめに
さて、前回のあらすじはー
タイに入国して早々に「ぼったくりタクシー」の洗礼を受け、バンコクで迎えた初めての朝は「暑季(しょき)」の入り口。
慣れない暑さの中、色や音、人々との出会いでタイを体感していました。カメラを向け、ファインダーをのぞいていたのは、口角を上げ、夢中で撮っていた自分自身。
鍵がかかっていた引き出し(写真への向き合い方)がスッと開いた気がしました。
どうやら私は、”タイランドマジック”にかかったみたいだ。それは、この国ならではの仏教が関係しているのでしょうか。
おきよめカラー

■撮影環境:焦点距離 72mm SS 1/320 F7.1 ISO160 WBマニュアル
特徴的な色があるお店を発見。花火専門店だと思った私。
タイ語で「僧侶が身につけるべき8つの必需品」という意味のお店らしい。名前からしたら、魔法の道具でも販売しているようですね。
ここには、お坊さんにお供え物を渡す時に必要な仏具と参拝用品が売られています。
タイの人々は日常的にタンブンをおこなうため、街中にこのようなお店が多数あります。
※タンブンとは、お寺へのお布施や寄付、托鉢(たくはつ)の僧侶への食事の提供をすること。
アクセントとして、色の統一感を出して切り取りました。
みなさんにとって、タイといえばどんなカラーを思い浮かべますか?
僧侶との出会い

■撮影環境:焦点距離 17mm SS 1/320 F7.1 ISO100 WBマニュアル
人口の約94%が仏教徒であるタイには、30万人以上の僧侶と3万以上の寺院が存在すると言われています。アメリカ全土にあるマクドナルドとスターバックスの店舗数を合わせた数よりも大きく上回る、個性あふれるお寺があり、外観にもこだわりや深い意味があります。
写真を撮るために僧侶を探していたら、偶然にも目の前に声をかけやすそうな方があらわれたので、写真を撮らせてもらいました。
修行

■撮影環境:焦点距離 24mm SS 1/160 F7.1 ISO1250 WBマニュアル
撮影の後、「私たちについてきなさい」と言われ、僧侶の友人たちに続きました。これから特別なお参りをするとのことで、横目で所作を確認しながらみようみまねでお参りをしました。
聞く話だと、高僧へ教えを請うためや、修行(瞑想など)を行うため、互いに他の寺院へ足を運ぶこともあるそうです。
この先で何がおこなわれたのかは、みなさんのご想像におまかせしましょう。
一つだけ言えることは、ここでの出会いは私の視点がかわるきっかけにもなった、ということでしょう。

お参りの後に「プラクルアン」というお守りを僧侶からいただきました。なんだか戦利品のようで嬉しい。見た目は落雁(らくがん)のようですね。 現地では、車内に置いたりネックレスにしたりしている人をよく見かけていました。
寺院に「プラクルアン貸出所」が設けられていて、「プラクルアン」は借りるもの(チャオ)らしいです。
まさか、これは返却が必要なのかと思い、一瞬ひやっとしましたが、いただいて問題はないようです。

集合写真を撮影すると言われ、私は先輩方を背にするのは失礼だと思い、階段の上に立ちましたが、彼らはさらに上へ上がってきます。
彼らより高い位置に立ってはダメだとお叱りをうけました。
“修行”疲れをしている顔だったので、私の顔はふせておこう。

交流を深める目的なのか、僧侶と連絡先を交換して、次の目的地へ向かいました。
ちなみに、2024年の3月から毎日欠かさず画像が送られてきます。世界中探しても毎日連絡をくれる僧侶はそう多くはないでしょう。今では、日付が変わるギリギリになっても通知がないと逆に気になってしまいます。
曜日ごとにカラーが決まっていて、何故か水曜だけは時間帯で2つ送られてきます。タイでは色、仏像の種類、数字は、お寺参りする際などに覚えておいた方が良い事柄になるそうです。
未完成の哲学寺院

■撮影環境:焦点距離 24mm SS 1/160 F13 ISO100 WBマニュアル
「真実の聖域」と呼ばれている 「サンクチュアリー・オブ・トゥルース」。
この旅でどうしても行きたかった場所の1つです!
一度に入場できる人数が決まっており、2時間ほど待って、ようやく中へ入ることができました。
寺院は7つの問いで成り立っていて、各所の壁面は「どう生きるか」など、哲学的なテーマが彫刻で表現されていました。
世界最大級の木造建築で、海風で釘が錆びるという理由から釘を使わないことには驚きました。40年以上も経過しているのに、まだ完成していないといいます。
着慣れない袈裟

■撮影環境:焦点距離 66mm SS 1/125 F11 ISO125 WBマニュアル
着慣れていない袈裟を巻きつけ、不安そうな表情を浮かべていた少年たち。 最近出家したばかりだろうか、色褪せていない衣が静かに物語っていました。
多くの男性は一生に一度は出家すると言われていているタイ。修行に入ることが多い18歳未満の子どもたちは、学校の長期休暇を使って出家すると話をしてくれました。
私も毎日が学びの連続で、彼らの姿はどこか自分に重なりました。
イケメンはいつになっても僧侶になることができない

■撮影環境:焦点距離 33mm SS 1/80 F8.0 ISO125 WBマニュアル
人との距離が近く感じたこの国で、どこか女性と僧侶の距離が遠く見える時がありました。それは、女性が僧侶にふれてはいけない、もし触れられてしまったら修行は最初からやりなおししなければならないと言われているからでしょうか。
露店でブロマイドを売られたりするくらい、人気の高いアイドル僧侶もいるといいます。
タッチ

■撮影環境:焦点距離 87mm SS 1/320 F8.0 ISO320 WBマニュアル
アーントーン県にある、タイで一番大きい、高さ93mの黄金の巨大仏像「ワット・ムアン(Wat Muang)」。降魔印(ごうまいん)を結ぶお釈迦様の指先に触れてお祈りするというスタイルです。
一緒に写りたくても、周りに誰もいなければ頼みようがありません。α7 IVのバリアングルはこういう時も重宝します。でも、後ろ姿で写る自撮りはむずがゆい感じがします。
宝石箱

■撮影環境:焦点距離 12mm SS 1/50 F4.5 ISO8000 WBマニュアル
お堂の中でお参りをされている姿を撮影したくて、交渉を試みたものの、曖昧な返事を出されたまま、お寺の門も閉ざされ、外で待つこと1時間半。ようやく一人の男性が暗闇の奥から出てきて、「こちらの若い衆が対応する」とのことで紹介されました。
一度閉ざされていた堂内が再び開いたとき、まるで宝箱を開いたかのように、暗闇の奥から微かに輝く光がこぼれ出し、感動しました。
静かに座り、お経を唱え出す若い僧侶の後ろで、私も手を合わせ、特別な時間をいただいたようでした。
このシーンでは高感度撮影にも関わらず、ノイズをおさえることができました。
こちらの寺院は、銀細工職人によって建てられた世界初の銀の寺です。
さいごに

約1ヶ月ほどかけて巡ったタイでは、たくさんの人と出会い、今まで知らなかった歴史や風習についても多く学ばせてもらいました。タンブンという文化の中、旅の道中で飲食を恵んでもらうこともありました。
人との繋がりを大切にし、お互いを思いやる温かさ、そして言語の壁をこえた何かを感じました。
ついついファインダーを向けたくなるのは、”微笑みの国タイ”というだけの理由だけではない。
仏教の教えの延長線上にある、タイ人の生き方のモットー、笑顔の奥にある深い人生哲学をのこしたいと思ったのかもしれません。
■写真家:平野はじめ
日本有数の麦の生産地佐賀市で育つ。その生命力に魅了され、商標登録を取得。自分探しの渡米で写真に目覚め、帰国後舞台撮影などを経て独立。「廃にでさえ美は存在し、目に見えるものがすべてではない」という視点をもとに、ドローンでも一瞬を切り取る。新聞・ラジオ・TV出演・業界誌執筆や個展開催など、フォトアーティストとしてだけではなく、モデル・タレントとしても活動の幅を広げている。
現在、佐賀市公認観光アンバサダーリーダーも務める。ニコンHPで「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S×平野 はじめ」を公開中。
2023年 ソニー ワールドフォトグラフィーアワード 日本部門賞 第1位 2024年 同部門賞 第2位 2025年 一般公募部門 ライフスタイルカテゴリー 世界第1位
PX3やIPAなど世界的フォトコンテストでも受賞多数。













