静止画だけじゃもったいない!ソニーαで動画撮影に挑戦 Vol.2 ~撮影編~

木村琢磨
静止画だけじゃもったいない!ソニーαで動画撮影に挑戦 Vol.2 ~撮影編~

はじめに

Vol.1では簡単にですが動画の仕組みについて解説していきました。Vol.2では実際に撮影する時に必要なテクニックなどを解説していきます。
テレビやネット上では多種多様なテクニックを駆使して撮影された映像が流れています。こんな映像を撮ってみたい…と思う反面、クオリティの高い映像を見てしまうと「自分には無理だ〜」となってしまいがちです。いきなりハイクオリティな物ではなく、まずは動画を撮影するところがスタートラインです。継続して撮影を続けることで動画撮影に対するハードルもグンと下がります。今回は皆さんにも実際に撮影をしていただければと思います。

フレームレートとシャッタースピード

Vol.2では動画を撮影していく上で知っておくべき基本知識を解説していきます。
まずは動画を撮影する上で重要となるフレームレート動画の1秒間のコマ数)についてです。

Vol.1でも解説したフレームレート(ですが、フレームレートに合わせて適切なシャッタースピードを選択する必要があります。静止画撮影では被写体を止める、ぶらすなどの表現をする時にさまざまなシャッタースピードを選択しますが、映像の場合はフレームレートに合わせて適切なシャッタースピードを選択する必要があります。

基本となるフレームレートとシャッタースピードは
・フレームレート24fps=シャッタースピード1/50秒
・フレームレート30fps=シャッタースピード1/60秒
・フレームレート60fps=シャッタースピード1/125秒
となります。

パッとみて気がついた方もいるかもしれませんが基本的に「フレームレートの2倍分の1秒」が適切なシャッタースピードとなります。倍の数値が選べない場合は最も近い数値を選びます。
あくまで「基本」の設定となるのでこの数値だけが正解というわけではありません。動画撮影でも静止画撮影と同じくシャッタースピードによって被写体の動きをコントロールできるので実際に見てみましょう。

フレームレート24fps/シャッタースピード1/50秒
フレームレート24fps/シャッタースピード1/500秒

同じフレームレートでの撮影ですが被写体の動きが違って見えますね。
Vol.1でも解説したように動画とは静止画の連続したものをカメラが繋いで動画にしてくれているのでパラパラ漫画と同じ原理です。
静止画撮影と同じくシャッタースピードが速いと被写体ブレは抑えることができます。しかし動画の場合は被写体ブレがないとカクカクした動きになってしまいます。動画の場合は適度な被写体ブレが滑らかな映像を撮影するポイントになってきます。
鉛筆などを手に持って振ると肉眼でも適度な残像が見えますよね、これを再現する適切なシャッタースピードが「1/フレームレート×2秒」となります。フレームレートが高くなるほど被写体ブレは減っていくためスポーツ撮影のような動きの速いものは60fpsなどが使われます。

上記のように24fpsで撮影する場合はシャッタースピードが1/50秒となりますが、スチルで1/50秒となると手ブレは抑えられても被写体ブレが気になってくるシャッタースピードですよね。また、日中に1/50秒のシャッタースピードで撮影しようとするとISOを一番低くしてもレンズのF値を絞り込まなければ露出オーバーになりがちです。動画を撮影している人がレンズにNDフィルターを装着しているのを見かけたことはないでしょうか?
そうです、動画カメラマンがNDフィルターを常用しているのはシャッタースピードをフレームレートに合わせるために使用しているんです。日差しの強い日中にF値を開けて1/50秒のシャッタースピードで撮影となるとNDがなければ物理的に撮影ができません。

私も愛用しているNDフィルター。悩んだ時はND16〜32を1枚用意しておくと使い勝手が良いです。私はND効果を変えられる可変(バリアブル)NDフィルターを使用しています。

NDフィルター効果弱
NDフィルター効果強
NDあり 日中でも適切な露出で撮影できF値も小さくできる
NDなし 日中だと露出オーバーになりやすくF値も絞らなければいけない

フレームレートとシャッタースピードの関係性を解説していきましたが動画を撮影する場合はまずどのフレームレートで撮影するのか?が重要になってきます。フレームレートによって映像の滑らかさが違うためフレームレートが違うカットが混在すると違和感の原因につながります。なのでまずはどのフレームレートで通すのかを決める必要が出てきます。自分一人ではなく、複数人で映像を撮影して一つの動画にまとめる場合はフレームレートを共通にしておくと良いでしょう。

私の場合はシネマチックな映像が好きなので24fpsでの撮影が多いですが、フレームレートで迷った場合は汎用性の高い30fpsを選んで撮影しましょう。

まずは三脚を使った撮影から

フレームレートが決まったら次はいよいよ撮影です。
動画を撮影する時にまずは三脚を使ってしっかりと構図を作ってRecボタンを押すところから始めてみましょう。Vol.1でも解説したようにまずは静止画の延長線上で考えます。
「動く写真」をベースに色々な被写体を撮影してみましょう。
いきなり「絶景」でチャレンジ!…ではなく、まずは身近にある被写体で撮影するのが良いでしょう。どのような被写体がどのような動きをしているのかを観察してみることが重要です。

葉っぱ

道端、公園、庭、色々な場所で植物を見かけます。最も身近な被写体の一つではないでしょうか?私も好きでよく撮影します。葉っぱを観察していると風に揺られたり、光を受けてキラキラしたりしていますね。写真では風は厄介者ですが動画では名脇役です。風が揺らした葉っぱは映像映えします。

写真でも光は大切な要素ですね。光があるおかげで影も生まれます。
先ほど撮影した葉っぱ、この葉を鮮やかに見せてくれるのも光ですしその影を生み出してくれるのも光です。どこでどのような光が見られるのか探してみましょう。

太陽のように直接的な強い光もあれば、木漏れ日のような柔らかな光もあります。太陽を直接撮影する場合は光が強すぎてセンサーを痛めてしまうこともあるため可能であれば濃いめのNDフィルターを使用して撮影しましょう。

スチルでも人気の高い川や海。動画でも人気の被写体の一つです。常に動きがある被写体なので映像映えしますね。光との相性も良くキラキラ輝かせたりすると映像の間を繋ぐ「インサートカット」としても使いやすい映像となります。
水辺での撮影は水没の危険性もあるため防塵・防滴のボディとレンズ、落下防止のストラップを組み合わせて撮影すると安心です。

カメラを動かさなくても被写体の動きだけで十分に映像として成り立ちますよね。この素材たちを組み合わせるだけでも十分動画作品になります。

動画を素材として撮る

映像を撮影する場合ある程度の尺とバリエーションを確保しておく必要があります。写真は一瞬を切り取るものですが、動画は一連の流れを撮影するものなのである程度のバリエーションと尺が必要となります。

私の素材撮りの目安は以下の通りです
・同一の被写体で寄りと引きの画角
・1カット最低15秒の尺

私が動画撮影でズームレンズを多用する一つの理由として画角のバリエーションを多めに撮れることが挙げられます。単焦点レンズは明るいF値が魅力的ですが被写界深度が浅すぎて動画の場合多用しすぎるとボケが多すぎて見にくくなる場合があります。特にフルサイズミラーレスは被写界深度が浅いので私は開けてもF2.8、常用で使うのはF5.6~8.0あたりが多いです。被写界深度が浅いシーンは間に挟むアクセントとして使うと効果的です。

未編集の素材カット。実際には数秒しか使わないがなるべく長めの尺で撮影しておくと後で長回しのシーンとしても使うことができる。画角のバリエーションがあるだけで映像のテンポも良くなります。

Vol.2まとめ 動画は撮影して完成ではない

今回撮影した素材を1本にまとめています。
画角違いのカットがあるだけで映像に動きが出てきます。

今回は映像の基本となるフレームレートとシャッタースピードの関係性、そして動画を素材として撮る場合のポイントを解説していきました。
同じカメラを使っての撮影でも撮り方は全然違います。
ですが構図やアングルなど静止画のノウハウをそのまま動画に活かすことも可能ですので最初は静止画を撮る感覚でRecボタンを押しましょう。

写真は撮影して完成ですが、動画の場合は撮影が終わったから完成というわけではありません。もちろん1カットで見せる動画であれば話は別ですが、基本的に映像には「起承転結」の構成があると見てくれる人を飽きさせません。
編集作業を始めると「もっと素材を撮っておけばよかった」となることも少なくありません。なので現場では使わないかも、というような素材が編集時に生きてくることもありますので映像素材はとにかく多めに撮影します。

次回のVol.3ではカメラワークなども解説していきます。
少しずつ撮影テクニックを身につけていきましょう。

 

■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。

 

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