「夜光水景」|雨の日の街が輝く瞬間を切り取る!雨粒や街灯で魅せる幻想的な写真の撮り方

Junya Watanabe
「夜光水景」|雨の日の街が輝く瞬間を切り取る!雨粒や街灯で魅せる幻想的な写真の撮り方

はじめに

初めまして。東京、主に秋葉原を拠点に活動しているフォトグラファーのJunya Watanabeと申します。私の作風は「夜光水景」これは私の造語で、雨が降る夜の都市に広がる幻想的な風景を意味しています。昨年9月には、このテーマを掲げた写真集も出版しました。

普段は写真集の制作を軸に、企業や自治体への作品提供、クライアントワークなども行っています。今回は、これまでに撮影してきた作品を例に挙げながら、「夜の街の撮影」について解説していきます。

ガラスについた水滴を活かした撮影

この日は寒く、屋内外の温度差でガラスが曇っていました。私はその曇ったガラスを手で拭き、意図的に模様を作って撮影しています。絞り気味で撮影しており、ボケすぎないようにすることで、歩く人のシルエットや街の雰囲気がしっかりと伝わるよう工夫しています。

■撮影機材:Sony α1 II + FE 14mm F1.8 GM
■撮影環境:1/80秒 f/8 ISO1250

雨の日はどうしても地面や壁ばかりに目が行きがちですが、私はなるべく「上」にも視線を向けるようにしています。時折、天井や上部の構造がガラスになっている場所があり、そこでは壁とはまた違った雰囲気の写真が撮れるんですよね。

■撮影機材:Sony α1 II + FE 14mm F1.8 GM
■撮影環境:1/400秒 f/1.8 ISO400

光の色に注目する

雨が降るとネオンやサイネージの光が地面に反射します。その「色」に注目すると、より魅力的な写真が撮れます。
ストレートに街の様子を写すのも良いですが、その色味を活かして、地面に落ちていたモノや雰囲気に合う小物と組み合わせて撮影したりもしています。

■撮影機材:Sony α1 + FE 50mm F1.2 GM
■撮影環境:1/1250秒 f/1.2 ISO800

電光掲示板に赤色の映像が流れていた瞬間を選び、その光が最も美しく感じられるタイミングを狙いました。Dr Pepperの缶にちょうど赤い光が当たるよう、位置を微調整しながら撮影しています。背景の色味や光の反射が、缶のデザインや質感をより引き立ててくれるよう意識しました。全体として、自然な中にも少しドラマチックな雰囲気を出したくて、光と構図のバランスにこだわった一枚。

地面に反射する光を狙う

地面に反射するネオンやデジタルサイネージの光だけを狙った写真です。地面のタイル模様やひび割れといったディテールに注目しつつ、そこに良い光が当たるようにポジションを調整します。とはいえ、理想の構図を見つけるのは意外と難しく、苦労することも多いです。単色の反射もいいですが、複数の色が混ざる瞬間を狙って撮るのが個人的には好きです。

■撮影機材:Sony α1 + FE 135mm F1.8 GM
■撮影環境:1/1000秒 f/8 ISO1250
■撮影機材:Sony α1 + FE 135mm F1.8 GM
■撮影環境:1/1000秒 f/8 ISO1250

地面と光源の位置関係にもよりますが、基本的には望遠レンズ(70mm以上)の方が狙いやすいと思います。このときは水たまりにできる雨の波紋も写したかったので、シャッタースピードは1/1000以上に設定しています。

街の構造物に注目する

秋葉原は「変化の街」と言われ、時代とともに姿を変えていきますが、標識などの構造物は街の変化をずっと見守ってきた存在。そう考えると、標識や信号機、ポストなどがとても愛おしく感じられてきて、気づけばそれらをすべて撮影するようになっていました。

■撮影機材:Sony α1 + FE 50mm F1.2 GM
■撮影環境:1/400秒 f/2 ISO800

中でも特に印象的だったのがこの写真です。雨が降るたびにこの標識を撮りに行きましたが、これほどまでに水滴が美しくついたのはこの日だけでした。雨の量や風向きで水滴のつき方が全然違うんですよね。構造物をポートレートのような感覚で撮っているので、ライトを当てた方が綺麗に撮れますが、この日は車のヘッドライトが当たる瞬間を狙って撮影しました。おかげで水滴のディテールが際立ち、よりかっこよく仕上がりました。

都市景観の撮影

続いて街全体の景観撮影の話に移ります。私のテーマのひとつに「一つの街を徹底的に攻略する」という考え方があります。ゲームで例えるなら、全武器をコンプリートするような、アイテムをすべて集めるような感覚です。完全にゲーム感覚ですね。秋葉原で数年撮影していますが、それでもまだ見たことのない構図があると感じています。一つの建物や風景を軸に、周囲をくまなくチェックして、撮れるポイントを探し出しています。

■撮影機材:Sony α1 + FE 35mm F1.4 GM
■撮影環境:1/400秒 f/1.4 ISO800

お店に撮影許可をもらったり、ホテルの部屋を予約して撮影したりと、意外といろんな場所から街は撮れるものです。長年同じ場所で撮っていると、関係性が生まれて、普通では撮れないようなシチュエーションにも出会えるようになります。

■撮影機材:Sony α1 + FE 50mm F1.2 GM
■撮影環境:1/250秒 f/5.6 ISO1250

ホテルのシャワールームがガラス張りになっていて、シャワーを浴びながら秋葉原の景色が楽しめるという面白いロケーションでした。雨は降っていませんでしたが、シャワーを浴びたあとの水滴がガラスについたのに気づき、シャワーをあえてかけて水滴のバランスを整えて撮影しました。

そして雨の日といえば、リフレクション写真。

■撮影機材:Sony α1 + FE 12-24mm F2.8 GM
■撮影環境:1/250秒 f/2.8 ISO800

この手の写真は何を伝えたい写真なのかわかりにくくなりがちですが、難しいこと抜きにして情報量が多くて見た目のインパクトが強く、シンプルに「きれい」なのでつい撮ってしまいます。

リフレクションには様々な表現がありますが、都市をテーマにしているため、個人的には「はっきりと写っている」反射が好みです。撮影時点で水平垂直を整えるのは大変ですが、ピシッと整った構図はやはり気持ちが良いものです。

■撮影機材:Sony α1 + FE 12-24mm F2.8 GM
■撮影環境:1/250秒 f/2.8 ISO800

強風や大雨のときは水面が揺れてしまい、きれいなリフレクションを作るのが難しくなるため、小雨のタイミングを狙うのがおすすめです。完全に雨が止んでしまうと、路面の光が弱くなったり、通行人が傘をささなくなるため、「雨感」が薄れてしまいます。雨が降っていても、傘を使って水面が揺れないようにしながら撮ると、きれいなリフレクションが撮れます。

機材について

夜間に撮影することも多いため、基本的には明るい単焦点で運用しています。雨の日にレンズ交換をするのは効率が悪いので、ボディは常に2〜3台体制です。

雨の撮影時にレインカバーなどをつけているかという質問をよく受けるんですが、基本的にはカメラ、レンズ剥き出しで撮影してます。大雨の状況で撮影することもありますが、こまめにタオルなどで拭くようにしているので機材が故障したことはありません。特にソニーのGMシリーズは防塵・防滴性能も高く、信頼して使っています。ただし、あまり濡らしすぎるのは推奨されないので、必要に応じてレインカバーなどを使うのが安心です。

おわりに

今回ご紹介した内容は、雨の日撮影の一例に過ぎません。実際にはちょっとした工夫や視点の変化で、まだまだ多くの表現が楽しめます。水たまりの反射や傘をさす人のシルエット、濡れた地面に映る光など、雨の日ならではの魅力的なシーンが街にはあふれています。

春が終わり、もう少しすれば梅雨の季節がやってきます。ぜひ雨の日を創作のチャンスととらえて、カメラを持って街に出てみてください。いつもの風景が、きっと違って見えてくるはずです。

 

 

■写真家:Junya Watanabe
夜の東京にフォーカスし撮影を続けるフォトグラファー。Creative Team「Akihabara Records」
著書に『夜光水景』(芸術新聞社)。幻想的な都市の夜景を「夜光水景」として独自に表現し、写真集の発表や企業・自治体への作品提供も行う。

 

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