風景撮影でのα7R Vの便利な使い方|齋藤朱門

齋藤朱門
風景撮影でのα7R Vの便利な使い方|齋藤朱門

はじめに

 今回は筆者のメイン機として現在使用中である、ソニー α7R Vの特徴や風景写真撮影で使用する際によく使う便利な機能などを紹介したいと思います。

α7RVの特徴

 α7R Vはその名の通り、α7の中でも高解像度が大きな特徴であるRシリーズの第5世代のカメラです。前世代のα7R IVとイメージセンサー自体は同一なので解像度も同じく61MPですが、内部処理や細かい使い勝手の部分が改善されています。また、風景撮影向けの機能が増えているのが風景写真家には嬉しいポイントだと思います。

以下のハードウェア面でもα7R IVと比較すると改善点が多いと感じます。
●4軸マルチアングルモニター
●カスタムダイヤル
●静止画・動画・S&Qの切替えダイヤル
●CFexpress Type A / SDカード両対応
●ボディ内手ブレ補正は8段
●動画性能強化
●AWB性能の向上

4軸マルチアングルモニター

 筆者の場合、風景写真撮影でも縦構図で撮影することも多いのですが、滝・渓流の撮影時や高い位置から見下ろした構図で撮影する場合、これまではモニターの角度が縦方向には変えられなかったため、モニターの視認性が悪く不便でした。

 α7R Vで4軸マルチアングルモニターとなったことで、自由度高くモニターの角度を変更できるので、大幅に使いやすくなったと感じています。

カスタムダイヤル

 手前右のダイヤルはこれまでは露出補正専用でしたが、カスタムダイヤルとなったことで、さまざまな機能を割り当てられるようになっています。

 筆者の場合、写真撮影時は常にマニュアル露出モードで撮影しているため、露出補正ダイヤルはあまり意味がなかったのですが、ISO感度設定を割り当てるようにして使っています。このダイヤルにはロックボタンもついているため、誤って変更したくない場合にはロックをしておき、変更したいときは簡単に親指で変更できるので便利です。

静止画・動画・S&Qの切り替えダイヤル

 静止画(写真)・動画・S&Qのモード切り替えダイヤルで簡単に撮影モードを切り替えられるようになっています。

 α7R Vでは動画性能が大幅に向上したため、美しいシーンを写真撮影しながら、8K動画も撮っておこうと思った時に、さっとこのダイヤルを切り替えてRECボタンを押すだけで動画を撮ることが簡単にできて便利です。

CFexpress TypeA / SDカード両対応

 風景写真の静止画撮影の場合はCFexpress TypeA対応は不要と思われるかもしれませんが、使ってみると書き込み速度向上の恩恵によって、書き込み完了待ち時間が短縮され、撮影のテンポを阻害されることが少なくなりました。

 特に筆者の場合は露出ブラケット撮影をよく使うこともあり、露出ブラケット撮影したデータが全て書き込まれないと設定変更できないことが少々ストレスになっていたのですが、CFexpress TypeAカードの場合は非圧縮RAWデータでブラケット撮影した場合でもほぼ待ち時間がありません。

ボディ内手ブレ補正

 8.0段分のボディ内手ブレ補正となり、これまでの手ブレ補正性能から大幅に向上しています。

 風景撮影では日中の光量が十分にあるシーンよりも薄暗いシーンでの撮影が多いと思いますが、そういった光量不足な場面では特に、これまでのα7シリーズでの手ブレ補正性能では不十分だったと思います。そのため、できるだけ三脚を併用するかもしくは後処理でノイズ除去をする覚悟でISO感度を上げる必要がありました。

 α7R Vになり、特に純正レンズと組み合わせた際の手ブレ補正性能が格段に高くなり、手持ちでも十分なクオリティで撮影できるので、例えば、森を散策しながら撮影する際などは、三脚なしでも問題なく撮影することが可能になったと思います。

AWB性能の向上

 α7R Vでは新たにAIプロセッサが搭載されたことで特にAF認識機能の強化がフィーチャーされていますが、このAIプロセッサとカメラ前面に搭載されている「可視光+IRセンサー」により色再現性能やAWB性能が更に向上しているようです。

 筆者の場合はRAW撮影なので、後処理時に自由にWB調整は可能ですが、やはり撮影時にモニターに映る色が見たままの色に近いということは安心感や撮影時のモチベーションにも繋がりますので、風景写真撮影でも嬉しい点ではないでしょうか。

風景写真撮影に便利な機能強化

 α7R IVには搭載されてなかった、α7R Vの風景撮影に役立つ便利な主な機能として以下があると思います。

1.露出ブラケット機能の改善
2.フォーカスブラケット機能
3.バルブタイマー機能
4.フルタイムDMF
5.ピクセルシフトマルチ撮影の改善

1. 露出ブラケット機能の改善

 以前の記事でも紹介していますが、輝度差が大きなシーンでは筆者は必ずと言っていいほど使用している露出ブラケット機能の使い勝手が改善しています。

 以前までは予め決められた露出ステップ幅と撮影枚数の組み合わせしか選択できなかったのですが、α7R Vでは露出値ステップ幅と撮影枚数の組み合わせが自由にできるようになっています。

2. フォーカスブラケット機能

 被写界深度合成の記事でも紹介していますが、フォーカスブラケット機能が搭載されました。これまでは被写界深度合成のためにフォーカス位置を変更しながら複数枚の撮影を行うのは少々面倒でしたが、フォーカスブラケット機能によりかなり簡単に行うことができるようになりました。

3. バルブタイマー機能

 以前までは30秒以上のバルブ撮影を行うためには外付けのタイマーレリーズが必須でしたが、ボディ内にバルブタイマー機能が搭載されたことで、通常のバルブ撮影ではタイマーレリーズが不要になりました。撮影時はカウントダウン表示があるので、便利ですね。

4. フルタイムDMF

 筆者の場合、拡大表示しながら拡大AFを使って狙ったところにピンポイントでフォーカスを合わせるか、拡大AFが苦手なシーンではMFに切り替えてMFでフォーカスを合わせることが多かったので、わざわざDMFに切り替えてDMFを使うことがほとんど無かったのですが、α7R VでフルタイムDMF機能が搭載されたのでこの切り替えの煩わしさが無くなりました。

 フルタイムDMF機能を有効にしておけば、拡大AFでフォーカスを合わせ、さらにフォーカスを追い込みたい場合はフォーカスリングを触るだけでフォーカスの微調整ができ便利です。

5. ピクセルシフトマルチ撮影の改善

 4枚もしくは16枚の画像を合成することで超高精細な画像を生成するピクセルシフトマルチ撮影ですが、残念ながらα7R IVまでは画面内に動きがある場合に正しく画像が生成されないことがあり、特に自然風景では使い所が限られてしまっていたのですが、α7R Vからは海や渓流や、木々が風で揺れているようなシーンでも正しく画像生成できるようになっています。

 展示等で大きなプリントで見せたいと思うような撮影シーンでは、積極的にピクセルシフトマルチ撮影も行うようになりました。

作例

 α7R Vで撮影した作例をいくつか紹介したいと思います。

■撮影機材:ソニー α7R V + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:マニュアル露出・400mm・F7.1・ISO100・1/320秒
■撮影機材:ソニー α7R V + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:マニュアル露出・336mm・F11・ISO100・1/80秒
■撮影機材:ソニー α7R V + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:マニュアル露出・69mm・F14・ISO100・0.5秒
■撮影機材:ソニー α7R V + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:マニュアル露出・84mm・F5.6・ISO100・1/250秒
■撮影機材:ソニー α7R V + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:マニュアル露出・171mm・F11・ISO100・1/40秒
■撮影機材:ソニー α7R V + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:マニュアル露出・115mm・F6.3・ISO100・1/20秒
■撮影機材:ソニー α7R V + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:マニュアル露出・135mm・F11・ISO100・1/15秒
■撮影機材:ソニー α7R V + タムロン 50-400mm F/4.5-6.3 Di III VC VXD
■撮影環境:マニュアル露出・171mm・F13・ISO100・1/13秒

まとめ

 今回は筆者のメイン機として現在使用中の、ソニーα7R Vの特徴や風景写真撮影で使用する際の便利な使い方を紹介しました。

 α7R VはAIプロセッサ搭載であるという特徴以外にも、風景写真撮影に便利な機能が大幅に改善されていますので、是非この記事の内容を参考にして風景写真撮影に役立てていただけると嬉しいです。

 

 

■写真家:齋藤朱門
宮城県出身。都内在住。2013年カリフォルニアにて、あるランドスケープフォトグラファーとの出会いをきっかけにカメラを手に取り活動を始める。海外での活動中に目にした作品の臨場感の素晴らしさに刺激を受け、自らがその場にいるかのような臨場感を出す撮影手法や現像技術の重要性を感じ、独学で風景写真を学ぶ。カメラ誌や書籍での執筆、Web等を通じて自身で学んだ撮影方法やRAW現像テクニックを公開中。

 


 

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