鉄道撮影にグッと強くなったソニー α7 V|山下大祐
30コマ/秒は鉄道撮影で大活躍
鉄道撮影の観点では、先代のα7 IVとのちがいでもっともご利益があるのは、連写速度の大幅向上である。先代のメカシャッターと裏面照射型センサーの組み合わせから、電子シャッターと部分積層型センサーの組み合わせになったことで、最大10コマ/秒から30コマ/秒にアップしたのだ。実に3倍の飛躍である。
この違いを具体的に計算してみた。時速100キロの列車ではおよそ秒速27.8m。10コマ/秒のコマ間が9間あるとすれば、1コマ間で列車が進む距離はおよそ3.09mとなる。一方30コマ/秒なら1コマ間で列車が進む距離はおよそ0.96m。それぞれ同時に1コマ目を切ったとしたら、次のコマの列車の位置に約2mの差が生じるわけだ。
2mという違いは非常に大きなものだ。鉄道撮影の基本は、走っている列車を写し止めたいところに止めること。その上で経験則を付け足せば、様々な列車の捉え方において、30コマ/秒あればほとんどのシーンで連写任せに撮ることができると言える。

■撮影環境:1/4000sec f7.1 ISO 1000 焦点距離16mm
北総鉄道 西白井~白井
桜の枝先を画面右端に写し込んで、三方から桜に包み込まれるよう画面構成にしたため、そこに掛からないよう且つギリギリまで桜に近づけるべくシビアなシャッターチャンスとなった。こんな時こそ30コマ/秒の出番。たとえこのような風景的なカットであっても、列車の見かけ上の動きが速いシーンでは、シャッターチャンスはシビアになってくる。
最大16ストップのダイナミックレンジによる幅広い階調性能
ダイナミックレンジを示す“ストップ”という単位は、1ストップで光量が2倍、つまり1EVに相当する。α7 Vは従来αシリーズで約15ストップとされていたダイナミックレンジが進化、最大約16ストップとなった。そのダイナミックレンジを発揮するためにはメカシャッターを選択する必要があり、連写に優れた電子シャッターに比べて、最速10コマ/秒での撮影に限られるというのが注意点だ。
しかしながら、この16ストップというダイナミックレンジがもたらす階調性能は、明暗差の激しい画面においてトーンを破綻させることなく自然に描写できる。光源が直接写り込むようなシーンでは、光源周辺からシャドー部まで、撮影後にどこまで情報を見せるかが自由自在に調整できるほどに情報豊かに記録することが可能だ。

■撮影環境:1/2000sec f5.6 ISO 100 焦点距離132mm
富山地方鉄道 電鉄石田~電鉄黒部
夕日を背にやってきたトラディショナルな四角い電車をメカシャッターで連写撮影した。太陽の輪郭付近まで色を残しながら、直接光が当たらない列車前面の情報まで見せることができている。もちろん両立できる適正な露出で撮る必要はあるが、このシャドーの見せ方は現像時点でまだ余力を残している。もっと明るく見せることも可能で、現像時のトーンコントロールの自由度が高いということは、それだけ記録された情報が豊かだということだ。

■撮影環境:1/6400sec f8.0 ISO 640 焦点距離391mm
高山本線 婦中鵜坂~西富山
富山市内から見る朝の立山連邦は逆光の中である。ハイライトとなる空の明るさを飛ばさない程度に抑えつつ、険しい稜線の剱岳と乗客のシルエット、列車側面の質感が忠実に描写されている。これくらいの明暗差なら15ストップでも十分だろうが、余裕をもって記録できるほど、低ノイズで色再現力も高い。
3,300万画素はどうか
先代を踏襲する3,300万画素という画素数だが、完全新開発となる部分積層型センサーになったにも関わらず画素数が維持されたことは有り難い点である。また画像閲覧時のハンドリングや、使用が想定されるレンズが多様である点からしても、スタンダード機として最適な画素数であろう。プリントを想定する場合も300dpiでA2サイズ相当くらいまで伸び、全く不足がないことがわかる。

■撮影環境:1/640sec f5.6 ISO 200 焦点距離46mm
山陰本線 鎧~餘部
余部橋梁の“お立ち台”から定番カットを撮った。解像感はレンズの実力どおりにとてもシャープで良い。自宅モニターで等倍にして観賞すると、車両前部の渡り板に書かれた車両番号も「キハ47 5」と、しっかり読み取れた。

■撮影環境:1/640sec f8.0 ISO 400 焦点距離547mm
富山地方鉄道 電鉄石田~電鉄黒部
いまどきの電車には無いゴツゴツと部品が飛び出た富山地鉄14760形を撮った。リアルタイム被写体認識AFを作動させながらの連続撮影。それほど難しい場面ではないが、そつなく全コマにピントを得て先鋭な描写である。
スペックアップしたボディ内手ブレ補正
アルゴリズムの改善によって、よりブレやすい画面周辺部で最大6.5段の手ブレ補正が可能となっている。画面中央部ではさらに補正効果が得られるという。先代からおよそ1段分のスペックアップだ。使用感としてそのアップ分を確かめるのは難しいが、スローシャッター時の手持ち撮影で手ブレカットが少なかったのは確かだ。
線路端で撮影していると咄嗟にスローシャッターに設定してバタバタ撮ることもあるが、それでも意のままの撮影が楽しめた。手ブレは補正されて当たり前という時代に慣れてしまっているが、補正の無いカメラでは同じように撮影できなかっただろうと思うと、良いような寂しいような。

■撮影環境:1/40sec f16 ISO 100 焦点距離29mm
東海道本線 さくら夙川~芦屋
公園の横で電車ウォッチングの少年。赤帽子のチャームに惹かれて咄嗟にスローシャッターを選択、列車をブラして動きをつけた。ちょうど車両間の隙間から光が差して赤帽子を照らしたところを手ブレすることなく撮ることができた。

■撮影環境:1/13sec f5.6 ISO 100 焦点距離26mm NDフィルター使用
東海道本線 さくら夙川~芦屋
手ブレ補正を機能させたままでも流し撮りが可能。おすすめはメカシャッター、電子シャッターに関わらず最高連写のHi+ではなくHiを使うこと。連写時のライブビューの見え方がOVFに近いアクションになるので被写体を追いやすい。
エクステンデッドRAW
α7 Vから採用された機能の一つがエクステンデッドRAWだ。撮影後のRAWファイルをソニー純正ソフトImaging Edgeで現像する際に使える機能で、高解像化するHi-Resと、ノイズを除去するNRの2つのメニューがある。AIを活用した処理のため、ピクセルシフトマルチ撮影などとちがって撮影時に特別な設定は不要だ。今回はエクステンデッドHi-Res処理した作例を見てみよう。


■撮影環境:1/400sec f8.0 ISO 100 焦点距離31mm
山陰本線 鎧~餘部
RAWをImaging Edgeで通常現像した写真(上)と、エクステンデッドHi-Res処理した写真(下)を連続で載せた。ちなみにこの処理を行うPCにも一定のGPU環境が求められる。処理した写真は1億3000万画素のデータになった。次はそれぞれの写真で同じ箇所を同じ倍率で拡大したものだ。


Hi-Res処理によって電線や鉄道橋の斜張部がはっきりして見えるようになった。民家の瓦屋根などがわかりやすく解像感が増しているが、画素数の差ほど劇的な差ではないように感じる。処理をかける絵面によっても効果の差は出るようである。
FE 50-150mm F2 GMとの使用感
FEレンズとの組み合わせもご紹介しておきたいと思う。開放F2シリーズの望遠ズームFE 50-150mm F2 GMを試した。フィルター径は95mmということからも外径の大きさを感じるだろうが、それでいてレンズ内手ブレ補正機構を備えない(OSSがつかない)レンズでテレコンの使用も不可ということで、とにかくF2の開放描写に価値を見出したいと思えるこだわりレンズだ。

■撮影環境:1/500sec f2.0 ISO 100 焦点距離77mm
北総鉄道 西白井~白井
試用では桜咲く北総鉄道にやってきた。ここではあいにくの空模様だったので花にレンズを近づけて前ボケを最大化させて白い空をカバーした。ボケ描写とピント位置のギャップを大きくするなら絞りはまず開放を選択しよう。花のついていない枝などが列車の顔に掛かる状況だったが、ボケの中に溶かし切ることでほとんど目立たなくなっている。
ピントはMFで置きピン。こういう一時的なMF操作のため、押す間AF/MFコントロール機能をカメラのC1ボタンに割り当て、普段から半押しAFはOFFで使用している。

■撮影環境:1/2500sec f5.0 ISO 400 焦点距離60mm
北総鉄道 白井~小室
晴れの日に再訪を果たし、跨線橋から鉄道風景写真という目線で切り取った。イメージカット狙いでなければボケは小さめにしておくのがベター。ブレないギリギリのシャッター速度と低いISO感度は保ちつつ、絞り値もできる限り高くする。バランスの取れた露出がいいだろう。インナーズーム方式なので橋の欄干にレンズを寄せてもぶつけにくい。
まとめ
α7 Vの進化点は今回ご紹介した点にとどまらず、RAW記録方式の整理やAIを用いたAWB機能など、撮像に関わるもののほか、グリップデザインの見直し、4軸マルチアングルモニター、2つのUSB Type-C端子の採用など、カメラ筐体の細かな改良点も多い。モデルチェンジが早い昨今の一眼カメラのなかでも、時間をかけて楽しめるモデルに仕上がっているように思う。
鉄道撮影においては、やはり部分積層型センサー採用による電子シャッターの本格実用化、それがもたらす連写の高速化が一にも二にも重要である。そういう意味では16ストップのダイナミックレンジを、電子シャッター時にも享受できるようにならないものだろうか。今後のファームアップなどにも注目していきたい。
■写真家:山下大祐
1987年兵庫県生まれ 日本大学芸術学部写真学科卒業。鉄道撮影プロダクション勤務を経て2023年独立。
幼い頃からの鉄道好きがきっかけで写真と出会い、作品制作の舞台として鉄道と関わるようになる。幾何学的な工業製品あるいは交通秩序としての鉄道を通して、人や自然の存在を表現しようと制作活動を行なっている。
鉄道事業者広報素材、インフラ、カレンダー、CMの撮影
鉄道誌・カメラ誌等で撮影・執筆
鉄道写真セミナー講師など
株式会社OfficeYAMASHITA代表
日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員















