ネイチャースナップのすすめ|初めての場所で撮影するときの考え方

小林義明
ネイチャースナップのすすめ|初めての場所で撮影するときの考え方

はじめに

北海道に移る前に住んでいた家がまだ山梨にあって、毎年3回ほど庭の手入れと撮影を兼ねて行き来しています。このとき車での移動距離は片道800kmほどになり、下道だけで移動するようにして撮りたいと思ったところがあれば寄り道するといった感じですが、あまりゆっくりしている時間もありません。

今回はいくつか用事があって、いつも以上にタイトなスケジュールで動いていたのですが、それでも何かしら見つけながら毎日撮影していました。

移動ルートもいつもと違い、行き当たりばったりで撮影したところも多く、そんな旅程で何を考えていたのかをお話ししたいと思います。

目的地の山梨で撮影した一枚。例年たくさんの観光客がいて寄らずにスルーしてしまう場所だったが、今年は人もあまりいなかったので寄ってみたら、花壇の後ろに富士山がそびえていて気持ちのよい景色が広がっていた。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM + C-PLフィルター
■撮影環境:F16 1/60秒 +0.7EV補正 ISO800 WB太陽光

行き当たりばったりで撮影地を探す

まったく初めて移動するルートや、知らない場所で撮影地を探す場合、最近はスマホアプリのGoogle Mapsを利用しています。現在地の地図を開いてから、気になるキーワードを入力して検索します。よく使うのは「滝」や「池」、「湖」など季節を問わずに見られるものです。

今回は春だったこともあり、群馬のあたりで「カタクリ」と入力したらいくつか出てきたので、そのなかのひとつを目的地にして移動しました。行ったことがない場所がどんなところなのか、ワクワクします。

ルートの検索やナビでは、だいたいここで表示される時間通りに移動できることも分かっているので、積極的に活用しています。車移動だけでなく、徒歩や公共交通機関を使ったルート検索もできます。

難点があるとすれば、効率優先のルートで案内されるので、トイレやコンビニ、休憩ポイントがなくひたすら走り続けることになることが多いです。心配なら事前にこういった場所も調べておいて、あらかじめ経由地としておきましょう。

自然的なものを撮影するのなら、細かい情報が載っている観光地図もあれば便利です。道の駅などがあったら立ち寄って、観光情報を仕入れておくと役に立ちます。

移動する時に欠かせないツールとなっている「Google Maps」。自宅から小樽のフェリーターミナルまでの移動を調べると、有料道路を使わないと7時間半程と表示される(左)。ほぼこの時間通りに移動できるので、長距離移動ではとくに重宝する。
この移動途中に「滝」が見られる場所を調べると、いくつか提案してくれる(右)。こんな感じで移動しながら探していくと、新しい撮影地を発見することもできる。

私は基本的に車移動なので、駐車場がある場所を選ぶのもひとつのポイントとしています。行ってみたら車を停める場所がなくて諦めたり離れたところに車を停めて歩いたりすることもあるので、良さそうな場所が見つかったらあらかじめ調べておくほうがいいことも多いです。

また移動途中にいい景色があって撮りたいと思っても、車を安全に停められない場所では諦めるようにしています。時々、観光客が道路の真ん中に車を停めてスマホを構えているような姿を見かけますが、事故が起きてからでは遅いのです。

さらにネイチャースナップ的にはピンポイントで決まった景色や被写体だけを撮影して終わりではつまらないので、ある程度歩き回れるよう適度な広さがある場所を選ぶようにしています。その場所で散策しながら自分の目で被写体を探せるようなところが理想的です。

移動中にGoogle Mapsで「カタクリ」と検索したら出てきた公園に寄ってみることにした(左)。公園の案内板にはカタクリは表示されていないが、湿性花園の近くでカタクリが咲いていた。初めての場所では忘備録として場所の名前や様子がわかるものを撮影しておくと、後で役にたつ(右)。
すでにここではサクラが満開になっていて、カタクリにはちょっと遅いタイミングだった。ほとんどの花は終わっている状態だったが、かろうじて形のいいカタクリが日陰に残っていたので撮影できた。サクラが咲き始めたタイミングで見にきたら、きれいに咲いているはずだ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F8 1/125秒 +0.7EV補正 ISO1600 WB太陽光
カタクリを見ていたら、花を見にきていた女性に声をかけられて、この花の名前を尋ねられた。実はこの花にはまったく気づいていなくて、見逃していた。花はスミレっぽいのに葉はフクジュソウのようで、不思議な形だ。調べてみたらヒゴスミレという花で、個人的には新発見だった。いつもと違う場所に行ったからの出会いだったのかもしれない。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F8 1/320秒 +0.3EV補正 ISO500 WB太陽光 1.6倍クロップ
この公園ではサクラが満開になっているのと同時にモミジの新緑がきれいだった。その両方の雰囲気を伝えられるよう、サクラを背景にしてモミジの新緑を切り取った。ひとつの場所でできるだけ多くの景色を見つけられるようにすることも大切だ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F8 1/200秒 +0.7EV補正 ISO320 WB太陽光

初めての撮影現場では

その場に滞在できる時間にもよりますが、何でも撮れるような準備をして歩きます。今回持ち歩いていた機材はCanon EOS R5に、RF24-240mm、EF100mmマクロ、タムロン150-600mmでした。これで大抵の風景から花やいきものの撮影に対応できます。撮影する場所の様子が掴めるまでは24-240mmをつけていることが多いです。

広い景色が撮れる場所では、まず風景的に撮影してから細かな部分に目を向けていきます。せっかく青空が広がっていたのに気がつくと雲が広がってイメージが変わってしまったということも多いので、手早く撮影します。

今回はサクラが満開だった小さな駐車公園に寄って撮影していたら小鳥がやってきたので、一通りサクラの景色を撮影してから150-600mmに付け替えて小鳥を狙いました。小鳥は移動してしまうことが多いので、見つけたらすぐに撮影しておいたほうがいいこともあります。

移動途中にサクラが満開で咲いている峠道があった。きれいだなぁと思いながらゆっくり上がっていくと、車を数台停められる駐車公園があったので、そこに入って雲ひとつない青空を背景にサクラを撮影。まだ緑も出てきていない北海道から来ていきなりこの景色を見ると、それだけでテンションが上がる。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F13 1/160秒 +0.3EV補正 ISO400 WB太陽光
その奥の方で咲いているピンクのサクラには小鳥がやってきているのが見えた。超望遠レンズに付け替えて、しばらく見ているとメジロやヒヨドリがやってきていた。花が咲いているところでは小鳥やチョウなども見られるので、探してみると違うシーンに出会うことができる。
■撮影機材:CANON EOS R5 + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F6.3 1/800秒 ISO1600 WB太陽光 1.6倍クロップ
チョウの飛ぶ姿をみつけて、どこかにとまってくれないものかと見ていたら、地面に落ちているハナモモの花にとまり蜜を吸っていた。近くにはきれいに咲いているハナモモもあるのに、どうしてわざわざこの落ちた花を選ぶのか不思議だった。熟成された蜜でもあるのだろうか。
■撮影機材:CANON EOS R5 + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F6.3 1/1000秒 +1EV補正 ISO500 WB太陽光 1.6倍クロップ

天気によっても狙い方は違ってきます。現場に着いたらまだ花も咲いていなくて、曇天でちょっと肌寒いようなことがありました。このときは、歩いていると小鳥の囀りが聞こえてきたので、超望遠をつけてゆっくりと歩いていると、あちこちで小鳥の姿を見られました。暖かければチョウなどの昆虫の姿があってもよい時期でしたが、このとき撮影できたのは鳥だけでした。

鳥などのいきものは撮るのが難しいと思う人がいるかもしれませんが、姿を見たら動かずに静かに見ているようにすれば意外と逃げないでいてくれます。見つけた途端に近づいていくと警戒して逃げられてしまいますから、まずはじっと動きを止めて警戒を解き、落ち着いたらカメラを向けるようにしましょう。

広い景色しか撮らない、花しか撮らないといった方もいますが、いろいろな自然の姿に目を向けてみると、どんなところでも退屈することなく撮影を楽しめます。

新緑も芽吹き始めムラサキハナナが一面に広がっていた。こんなところはチョウなどがやってきて絶好の撮影ポイントとなるはず。ただ残念なことに曇天で気温も低くチョウは活動していなかった。でも、諦めずに静かに歩いていると、小鳥の鳴き声が大きいことに気がついたので、超望遠レンズをつけて歩いてみることにした。
いちばん大きな声で囀っていたのがこのガビチョウ。外来種で、関東一円ですごい勢いで増えている。カタクリの公園でも見かけた。近くで声がするので静かに見に行ってみると、気持ちよさそうに囀っていた。すっきりした背景となるようなカメラポジションを選んでシャッターを押した。いきなり近づくと逃げられてしまうことが多いので、少しずつ距離を詰めていこう。
■撮影機材:CANON EOS R5 + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F6.3 1/1250秒 +0.7EV補正 ISO6400 WB太陽光 1.6倍クロップ
近くで声がしていたので、チャンスがあれば姿を見られるかもしれないと思っていたら、期待通りキジが姿を現してくれた。しばらくジッとしていたら興味を持ったのか、向こうからカメラの方を見にきてくれた。適度に距離を持って観察していると、30分程自然な行動を見せてくれた。相手が安心してくれればシャッターチャンスは多くなる。いきものとの適切な距離を持って撮影できるようになろう。
■撮影機材:CANON EOS R5 + TAMRON SP 150-600mm F5-6.3 Di VC USD G2
■撮影環境:F6.3 1/1250秒 +1EV補正 ISO4000 WB太陽光 1.6倍クロップ

撮影時の季節感で絵作りする

今回の移動ではフェリーを降りた新潟ではサクラが咲き始め、群馬や埼玉では満開、目的地である山梨は平地では終わっていたものの、富士山周辺では見頃になってきていました。それぞれの場所で季節感が違っていて、どこも新鮮に見えました。

自然の写真というと絶景とかピークの時期を撮るのが最高だと思われがちですが、それはごく一瞬の限られたチャンスでしかありません。毎日好きなところで撮影できるのなら問題ありませんが、実際には無理でしょう。

自分が動ける限られた時間の中で撮ることを考えると、今いる場所がどのような季節になっていて、それをどうしたら写真で表現できるのか、今撮るべき景色も見えてくると思います。

東京で勉強会を開催したときはサクラはだいぶ散っていて、サクラをメインにするにはちょっと遅いタイミングでした。でも、散ったばかりのサクラの花びらを主役にしたり脇役として画面に入れて撮るようにすると、このタイミングの季節感が出てくるようになりました。

サクラが散り始めてしまったから撮れるものがないではなくて、ちょっと発想を変えることで見えてくるものも違ってくるのです。

フェリーを降りて第一目的地の新潟では、まだサクラが咲き始め。ちょうど一輪だけ花びらを開き始めた枝があったので、これからどんどん咲いていくことをイメージして撮影した。この1枚の写真だけではインパクトはないが、季節の移り変わりを表現する上では重要な1カットになる。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F8 1/500秒 -0.7EV補正 ISO640 WB太陽光 1.6倍クロップ
山梨に到着したときは、平地ではもうサクラはほとんど散ってしまっていた。ハス池を見に行ったら種の殻が落ちたところにサクラの花びらが散っていたので組み合わせて画面構成し、春の微妙な季節感を表現してみた。サクラの花びらがなければ、季節感が分からなくなる。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM + C-PLフィルター
■撮影環境:F9 1/200秒 +0.7EV補正 ISO1600 WB太陽光 1.6倍クロップ
富士山の見える河口湖ではサクラが満開となり、まさに見頃となっていた。運よくすっきりと晴れて富士山も見えていたので、この日はサクラと富士山の組み合わせを重点的に撮影していた。ド定番であってもそれが撮れる条件になることは珍しく、わざわざそれを逃す必要もないのだ。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F14 1/80秒 +0.3EV補正 ISO200 WB太陽光
サクラのピークは過ぎていたが、足元を見るとサクラの花びらが草の先端にくっついて絶妙なバランスを保っていた。今にも落ちてしまいそうな感じがして、華やかなサクラのシーズンが終わってしまう儚い雰囲気を表現してみた。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F6.3 1/250秒 -0.3EV補正 ISO1250 WB太陽光
すぐ近くでは、タンポポの上にヤブキリの幼虫が乗っていて、花粉を食べていた。その背景に散ったサクラの花びらを入れることで、今の季節感を盛り込んだ。サクラの花びらは一枚だけだと他の花がボケているようにも見えるので、複数入れたほうが伝わりやすい。
■撮影機材:CANON EOS R5 + EF100mmF2.8 Macro USM
■撮影環境:F3.5 1/160秒 +1EV補正 ISO250 WB太陽光 1.6倍クロップ
ミツバツツジが咲き始めていて、つぼみも多く花の密度も低かったので、その色合いを前ボケにして新緑を撮影した。このほかにミツバツツジが咲いているカットと組み合わせれば、どんな花が前ボケになっているのか伝えることができるので、組み写真をイメージしながら撮影の幅を広げていきたい。
■撮影機材:CANON EOS R5 + RF24-240mm F4-6.3 IS USM
■撮影環境:F6.3 1/200秒 +1EV補正 ISO200 WB太陽光

まとめ

撮影に行こうと思った時に、いつも同じ場所に行っていませんか。そうすると結果的に毎年同じ写真を撮って満足しているか、それに満足できずモヤモヤしているのではないでしょうか。SNSでバズった他人が撮った写真を見て真似しようとしても、タイミングが違ったら同じように撮ることもできません。

それなら思い切って、情報もなく行ったことがない場所へ行ってみるといいと思います。外れることもありますが、初めての場所は新鮮で気分転換にもなりますし、新しい発見もあるはずです。こういった体験の繰り返しで、どこでも撮影ができるようになります。そして、何度か足を運べば新しい馴染みの撮影地となるのです。

自分の目で被写体を見つけるスキルアップとなりますので、ぜひ行き当たりばったりで撮影する楽しさを体験してみてほしいと思います。

 

 

■自然写真家:小林義明
1969年東京生まれ。自然の優しさを捉えた作品を得意とする。現在は北海道に住み、ゆっくりとしずかに自然を見つめながら「いのちの景色」をテーマに撮影。カメラメーカーの写真教室講師などのほか、自主的な勉強会なども開催し自分の視点で撮影できるアマチュアカメラマンの育成も行っている。

 

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