写真家 木村琢磨がOMシリーズと巡る胡椒の聖地カンボジア ~胡椒職人を訪ねて4000km~【前編】
はじめに
「なんでカンボジア…?」
多くの人にそう言われました。
私がカンボジアを渡航先に決めた理由は「カンポットペッパーの聖地」だからです。
私はスパイスが好きで、その中でも胡椒は万能スパイスとして毎日愛用しています。中でも「カンポットペッパー」と呼ばれる胡椒は”普通の胡椒がハウスワインなら、カンポットペッパーは上質なボルドーワインだ”と呼ばれるほどのクオリティで、このカンポットペッパーと出会ってから私の胡椒好きはどんどん加速していきました。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離60.0mm(35mm判換算120mm) シャッター速度1/100秒 絞り値F4.0 ISO感度400
カンポットペッパーのホール。粉の状態の胡椒しか見たことがない人も多いかもしれません。ミル(粉挽き器)を使って挽いて、みなさんが普段使っている粉の胡椒にしてから料理などに使います。
一体どんな場所で、どんな人たちがこのカンポットペッパーを作っているんだろう…?
そう考え始めるととにかく自分の目で見てみないと気が済まなくなり、行ってきましたカンボジア。
今回のカンボジア取材にはOM SYSTEM OM-3とOM5 Mark IIを持っていきました。

私が訪れた6月末は絶賛雨季ど真ん中で基本的には「晴れ」よりも「雨」という状況です。となれば防塵・防滴性能は外せないのでOM SYSTEMのカメラはぴったりの選択肢です。
そして何より小型・軽量なので旅の負担にならないのも重要なポイントです。
レンズはOM-3には単焦点、OM-5 Mark IIにはズームレンズという組み合わせ。OM-3はグリップレスデザインなので大きなレンズよりもコンパクトな単焦点がデザイン的にもピッタリで、OM-5 Mark IIは改善されたグリップのおかげでズームレンズを組み合わせてもバランスが良いです。
カンボジア到着〜シェムリアップにて
関西国際空港からベトナムのノイバイ国際空港でトランジェット(経由地となる空港)し、シェムリアップ・アンコール国際空港へ。トータルで約9時間半のフライトです。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/640秒 絞り値F5.6 ISO感度200
関西国際空港からノイバイ国際空港へ。トランジット先のベトナムの街並みを飛行機の機窓から撮影。長いフライトになるので窓側の座席がおすすめ。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/640秒 絞り値F5.6 ISO感度200
ノイバイ国際空港にて。8−25mm PROは旅に出るなら持って出かけたいレンズNo.1かもしれません。超広角から標準までカバーしていて、今回の旅でも大活躍してくれたレンズです。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離:10.0mm(35mm判換算20mm) シャッター速度1/400秒 絞り値F4.0 ISO感度200
シェムリアップ・アンコール国際空港の上空付近にて。カンボジア時間で17時頃、空の表情もドラマチックになりはじめて訪れるカンボジアに期待が膨らみます。8−25mm PROは機窓からの撮影でも大活躍してくれました。
シェムリアップ・アンコール国際空港に到着したのは夕暮れ時。
日本とカンボジアの時差は2時間遅れ。なので日本時間19時に到着しましたが、カンボジアはまだ17時。空がほんのり赤く焼けていました。時差が少ないのは体の負担が少ないので非常に助かります。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離14.0mm(35mm判換算28mm) シャッター速度1/160秒 絞り値F4.0 ISO感度1600
シェムリアップ・アンコール国際空港に到着。空港周辺は水田が広がっています。雨季らしく空は雲が多く、雲越しにほんのり焼けていました。
今回、初カンボジアだったわけですが滞在期間中はカンボジアに移住している日本人の方がアテンドしてくださいました。
胡椒ソムリエの木下レイナさん。私が愛用しているカンポットペッパーの販売やシェムリアップで胡椒専門店を経営されている方で、今回の旅と胡椒畑の取材のコーディネートをしてくださいました。
レイナさんとは私が毎週聴いているラジオ番組をきっかけに繋がり、私にカンポットペッパーの魅力を教えてくださった方です。レイナさんとの出会いがなければカンボジアに渡航する事はなかったかもしれません。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離60.0mm(35mm判換算120mm) シャッター速度1/250秒 絞り値F2.8 ISO感度800
今回アテンドしてくださった胡椒ソムリエの木下レイナさんのご紹介をさせてください。
1997年10月16日生まれ三重県四日市市出身で高校在学中にベトナム、インドへ渡航。悲惨な貧困格差と自分の恵まれた環境とのギャップに違和感を持ち、旅の中で出会ったカンボジアに海外移住を決意されました。カンボジアで食べた胡椒「カンポットペッパー」に衝撃を受け、現地カンボジアにて胡椒専門店『RAYS SHOP』胡椒カフェ『Rays Mrech Kampot Cafe』をオープン。【カンポットペッパーを世界に】の目標を掲げ、日本とカンボジアでカンポットペッパーの魅力を伝える活動をされています。
初日の夜はレイナさんに紹介していただいたカンボジア料理を楽しめるお店に。
メニューを開くと見たことも聞いたこともない料理がたくさんあり、その中でも「バナナの花のサラダ」は絶対日本では食べられないであろう一品です。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離17.0mm(35mm判換算34mm) シャッター速度1/25秒 絞り値F1.8 ISO感度400
これが「バナナの花のサラダ」です。パッと見は焼きそばや焼きうどんにも見えなくないビジュアル。口に含むとミョウガのような少し癖のある味ですが食べ始めるとクセになってきます。価格は2.5ドル(約370円)と日本と比べると非常にリーズナブル。
カンボジアのステーキ「ロックラック」には私がカンボジアで絶対に食べたいと思っていた「生胡椒」が添えられています。
この青く房の状態の生の胡椒を見たことがある人ってそういないのではないでしょうか。
生胡椒の味は最初にピーマンやししとうをかじったときのような青さが口の中に広がり、その後胡椒の爽やかな辛味が来る感じです。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離17.0mm(35mm判換算34mm) シャッター速度1/13秒 絞り値F2.8 ISO感度800
これがカンボジアのサイコロステーキ「ロックラック」価格は3ドル。日本円で450円ほどです。めちゃくちゃリーズナブルじゃないですか?ちょっとびっくりしました。基本的にカンボジアの料理はご飯と一緒に食べる前提のものが多い印象です。知らずに注文するとアレにもコレにもご飯が付いていた…なんてことになるので気をつけよう。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離17.0mm(35mm判換算34mm) シャッター速度1/20秒 絞り値F1.8 ISO感度800
そして、この緑の粒々が「生胡椒」です。私がカンボジアで絶対に食べたいと思っていた生胡椒とのファーストコンタクト。スパイス好きであれば一度は必ず食べておきたいですね。マイクロフォーサーズは近接撮影が得意で被写界深度も深いので旅の記録には最高の選択肢です。
カンボジアに行ってみようかなと思っているビール好きの方に朗報です。私が今回食事したお店ではなんとビール1杯0.5ドル(約75円)という衝撃プライス。他のお店も基本的に近い金額設定です。
スパイスが当たり前に使われていて、どの料理も美味しいし、しかもビールも安い。夢のような国です。
胡椒カフェにて
胡椒畑を訪れる前に木下レイナさんが経営している胡椒カフェ『Rays Mrech Kampot Cafe』にお伺いしました。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離17.0mm(35mm判換算34mm) シャッター速度1/30秒 絞り値F4.0 ISO感度200
木下レイナさんが経営している『Rays Mrech Kampot Cafe』の入口。植物に囲まれた素敵なお店です。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/13秒 絞り値F5.6 ISO感度200
大きな窓から優しい自然光が差し込む店内。お店の内観を撮影するなら35mm換算で16mmは欲しい。補正がしっかり効いている歪曲も少ないレンズなので建物を撮るにはピッタリ。
カフェでは胡椒を使った料理を楽しむことができ、観光でカンボジアを訪れている日本人のお客さんも多いです。近所に小学校があり学生たちの憩いの場にもなっています。
せっかくなのでカフェで提供されている胡椒を使ったメニューをいくつかご紹介したいと思います。旅といえばグルメも楽しみの要素なので是非撮影しておきましょう。可能であればマクロレンズを用意しておくと小さな食材なども撮影して残しておくことができるのでおすすめです。
もしも座る席が選べる場合は光量を稼げる窓際を確保しましょう。屋内の蛍光灯などは料理の色も再現しづらくなるので自然光で撮影できるのがベストです。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離45.0mm(35mm判換算90mm) シャッター速度1/80秒 絞り値F2.8 ISO感度200
赤胡椒(完熟した胡椒)があしらわれたアイスコーヒーとクッキー。日本だと胡椒を飲み物に振りかけることは滅多にないですが、カンボジアではビールに黒胡椒など当たり前に使われています。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離60.0mm(35mm判換算120mm) シャッター速度1/60秒 絞り値F2.8 ISO感度800
赤胡椒のホールを60mmマクロで撮影。胡椒の実はかなり小さいので今回はマクロレンズを持参しました。赤胡椒のディテールが肉眼で見た以上に描写されています。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離60.0mm(35mm判換算120mm) シャッター速度1/125秒 絞り値F4.0 ISO感度800
こちらはカフェの庭で収穫されたバナナとマンゴーを使ったスムージーに赤胡椒を乗せたもの。赤胡椒は黒胡椒や白胡椒よりも辛さ控えめでとてもフルーティ。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離60.0mm(35mm判換算120mm) シャッター速度1/160秒 絞り値F4.0 ISO感度400
旅行で料理も記録に残しておきたい人は60mmマクロはおすすめです。35mm換算で120mmなので嫌なパースもつきにくく近接撮影の描写は流石のマクロレンズ。旅行用にはこの60mmと30mmの2本がコンパクトでおすすめです。こちらはアラビアータにペッパーキャビア(生胡椒の塩漬け)を贅沢に盛り付けた一品。どの料理も胡椒!胡椒!胡椒!のオンパレードで夢のような時間でした。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離60.0mm(35mm判換算120mm) シャッター速度1/200秒 絞り値F4.0 ISO感度400
最後に紹介する料理は胡椒を使ったフレンチトースト。ハチミツと赤胡椒のフルーティな香りが混ざり合って食欲をそそられます。パッションフルーツなどカンボジアらしいフルーツがたくさん盛り付けられていて目でも楽しめます。
カンポット州へ
カンボジア滞在3日目、いよいよ胡椒畑があるカンポット州に向かいます。
私が滞在しているシェムリアップはカンボジアの北西部に位置しており、目的地である胡椒畑はカンボジア南西部のカンポット州にあります。距離にして約450km。日本国内だと車でいつも出かけている距離感ですが国が変われば感覚も違ってきます。今回はバスに乗って8時間ほどの移動となります。


■撮影環境:マニュアル 焦点距離15.0mm(35mm判換算30mm) シャッター速度1/1000秒 絞り値F5.6 ISO感度200
シェムリアップからカンポットに向かうために乗車したバス。想像していたよりも大型の車両で快適です。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離:8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/6秒 絞り値F4.0 ISO感度400
バスの中はこんな感じ。シートもしっかりとしていて長時間の移動も苦になりません(個人差あり)。窓が綺麗なので車窓からの撮影も快適です。
約8時間の移動中、ずーっと車窓から撮影していました。景色が新鮮でしかも美しく全く飽きません。バスの速度はそれなりに早いのでシャッタースピードは最低でも1/1000秒は欲しいです。F値は開けすぎるとピントが合いにくくなるのでISOを上げてシャッタースピードを稼ぎます。
マイクロフォーサーズもかなり高感度の画質が良くなっているので、躊躇することなく高感度を選択。特にOM-3はOM SYSTEMのカメラの中でも最高画質だと思っています。もしも1台だけ持って旅に出るとなれば私はOM-3を選択するでしょう。
不思議とOM-3だとレンズが単焦点だけでも全く不満がなく、逆にOM-1 Mark IIやOM-5 Mark IIはズームで「なんでも撮りたい」欲が湧いてくるので、カメラのデザインやコンセプトでここまで撮影スタイルに変化が出るのかと自分自身でも驚いています。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離17.0mm(35mm判換算34mm) シャッター速度1/4000秒 絞り値F2.8 ISO感度1600
車窓から撮影した景色。カンボジアは牛がとても多いです。話を聞くとカンボジアでは牛は生活を支える「資産」とのこと。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/200秒 絞り値F4.0 ISO感度200
途中休憩で立ち寄ったドライブインのような場所で購入したカンボジアの肉まん「ヌンパオ」卵がまるまる一つ入っています。このボリュームで1ドル(約150円)。基本的にカンボジアでは安くて美味しい食べ物がたくさんあるのでグルメ目的で訪れるのも大アリだと思います。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/100秒 絞り値F4.0 ISO感度200
個人的に衝撃を受けたのがこのマンゴー。日本だと完熟した柔らかいマンゴーを食べるのが一般的ですが、カンボジアでは硬いマンゴーをスティック状にカットして塩と唐辛子を混ぜた調味料「オンバルマテ」をディップして食べます。最初は「うーん……」というのが正直な感想でしたが、食べれば食べるほど何だかクセになってきて、気がつけば自然と手が伸びている状況に。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離17.0mm(35mm判換算34mm) シャッター速度1/2500秒 絞り値F2.8 ISO感度160
日本ではありえない景色…!ノーヘルも当たり前の状況です。多分ここは高校だと思うのですが、ちょうどバスが横を通ったタイミングで通学している学生たちが門の前に出てきました。二輪の3人乗りは流石に日本では見ることがないですね…笑

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/3200秒 絞り値F4.0 ISO感度1600
8−25mm PROの8mmで撮影。フードを外して窓にピッタリくっつけると反射を最小限に抑えて撮影ができるのでクリアな結果を得られます。カンボジアは広大な景色が広がっているので超広角との相性は言うまでもなく最高です。車からの撮影は広角レンズを使うことで「深いピント(ピンぼけ軽減)」「ブレが目立ちにくい」「被写体を画角に収めやすい」などメリットが多いので参考にしてみてください。
今回、OM-3にはM.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8 IIをメインにして、OM-5 mark IIにはM.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROをメインに装着して2台体制で運用しています。どちらもコンパクトなので2台持ちでも負担はほとんどありませんし、レンズ交換の手間も省けるのでメリットは多いです。最悪1台故障してももう1台ある安心感、海外取材では保険のもう1台が必須です。OM-5 Mark IIは現行機種同様のメニュー構成が採用されているので、使い勝手がかなり向上して2台持ちがしやすくなりました。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/1600秒 絞り値F5.6 ISO感度800
首都プノンペンに入りトンレ・サップ川に架かる「日本友好橋(チュルイチョンバー橋)」を渡ります。8−25mm PROでなければ収まりきらなかった一枚です。シェムリアップを出発してから約6時間、ずーっと車窓からの景色を撮影していました…笑

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/500秒 絞り値F4.0 ISO感度800
プノンペンに到着したら次はカンポット行きのミニバスに乗り換えなのですが、乗り場まで少し距離があるのでトゥクトゥクを利用します。カンボジアはトゥクトゥクがあちらこちらに走っていますし、送迎用の専用のスマホアプリもあります。窓がないので移動しながらのスナップを楽しみやすいですが、トゥクトゥクからカメラやスマホを出して撮影していると通り過ぎの原付のスリに遭うこともあるとか。なので撮影する時はあくまで車内から。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/3200秒 絞り値F4.0 ISO感度400
バスと違ってトゥクトゥクは目線が低くなるのでよりリアルな景色を撮影できます。窓もないので写りもクリアです。バスより速度は遅いとはいえそれなりに速度は出ているのでシャッタースピードに注意して撮影します。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/1600秒 絞り値F4.0 ISO感度:200
これもトゥクトゥクからの撮影ですがカンボジアは車間距離がとにかく狭いです。みんな隙間をすり抜けるように走っていきます。通りすがりにスリに会うのも納得の距離感です。ぶつからないかヒヤヒヤしながら乗っている反面、この距離感が撮影していてすごく面白かったりします。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離8.0mm(35mm判換算16mm) シャッター速度1/30秒 絞り値F5.6 ISO感度400
ミニバスのチケット売り場に到着。これはチケット売り場の隣の露店ですが商売っ気はありません。カンボジアの人は基本的にのんびりと過ごしている印象です。お店の人も寝てるかスマホで動画を見ています。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離21.0mm(35mm判換算42mm) シャッター速度1/30秒 絞り値F5.6 ISO感度400
これ、露店で売っているとある食材なのですが、これなんだと思いますか?形だけ見るとズッキーニ的なものかな?と思いましたが、正解は「アボカド」です。日本のアボカドと比べるととにかく長いです。可食部が多いのでなんだかお得な気がしますね。
ミニバスに乗ってプノンペンからカンポットへ約3時間の移動。カンポットに到着したのは現地時間の18時を過ぎた頃でした。カンポットに到着してからも移動はトゥクトゥク。囲いがないトゥクトゥクのおかげでカンボジアの風をダイレクトに感じられます。どんどん景色が変わっていくのでどのタイミングで撮影を終えればいいのか…撮影しながら、悩みながら、カンポットの宿泊地に向かいます。結果的にこの日だけでも千枚以上の車窓からの写真データがSDカードに記録されていました。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/1000秒 絞り値F1.8 ISO感度1600
カンポットのトゥクトゥクから撮影。レンズを25mmに変えて少しタイトなスナップ写真を。F1.8シリーズの単焦点はコンパクトで写りもいいのでOM-3の良き相棒です。特に17mmと25mmはII型になって防塵・防滴仕様になったことで雨季のカンボジアでも安心して持ってくることができました。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離21.0mm(35mm判換算42mm) シャッター速度1/6秒 絞り値F4.0 ISO感度200
カンポットのホテルからの景色。目の前には「プリーエック・タエック・チュー川」が広がりカンポットの夜景が水面に映り込んでいます。美しい景色だったので手持ちハイレゾショットで高精細に撮影。三脚不要でハイレゾショットが使えるのは旅カメラとして完璧。特に景色などは少しでも鮮明に写しておきたいと思うことが多いので、小さなカメラで高解像撮影ができるというのはそれだけで楽しいしモチベーションが上がります。
カンポットに到着してホテルにチェックイン。自室のバルコニーに出てみるとライトアップしたカンポットの街並みがよく見えます。早速、M.ZUIKO DIGITAL ED 8-25mm F4.0 PROを装着したOM-5 Mark IIで手持ちハイレゾショット撮影(5000万画素相当の記録が可能)。手ぶれ補正もよく効くので低感度でも楽に撮影できます。
カンポットはカンポットペッパーの主産地ということで、街中にはカンポットペッパーを使った料理が食べられる専門店が数多くあります。この日の晩御飯ももちろん胡椒料理です。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/160秒 絞り値F1.8 ISO感度3200
胡椒専門店での晩御飯。胡椒料理にはビールが合うのでカンボジア滞在期間中はビールばっかり飲んでいました。今回注文したビールはその名も「CAMBODIA」。カンボジアのビールは基本的に少しあっさり目のテイストなのでグビグビいけます。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/80秒 絞り値F1.8 ISO感度3200
私が絶対に滞在中に食べるぞ!と思っていたイカの生胡椒炒め。これがもう絶品でしかもビールによく合うのだから困ったもんです。店内はかなり暗くてアンバーなライティングでしたがF1.8の単焦点のおかげで難なく撮影できました。OM-3は高感度画質もクリーンなのでISO3200でも躊躇なく使えます。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離17.0mm(35mm判換算34mm) シャッター速度1/60秒 絞り値F1.8 ISO感度800
さすが胡椒専門店、ということで様々なブランドの胡椒がテーブルの上に置かれています。色々なブランドの香りを嗅いでみましたが同じ胡椒でもこんなに差があるのか…と。私が普段愛用しているカンポットペッパーとはまた方向性が違っていて奥が深い世界だと。感覚的にコーヒーの世界に近いのかな?と思います。私はコーヒーも好きなのでなんだか似たものを感じます。
胡椒専門店を出た後はカンポットの夜市を少し覗いてみました。
台湾に行った時に夜市は体験しましたが、カンボジアの夜市はまた雰囲気が違っていて、なんだかちょっとワイルドな感じがします…笑
私が訪れた時期は名産品のドリアンのシーズンで、あちらこちらでドリアンが販売されています。独特な香りに最初は「う〜〜ん…」という感じでしたが、慣れてくるとドリアンのお店が見えていなくても「この角を曲がったところにドリアンのショップがあるな」と、そんな感じであまり気にならなくなります。
慣れたからと言ってドリアンは良い匂いか?と聞かれれば「No」と答えますけど…笑

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/60秒 絞り値F1.8 ISO感度800
お菓子や飲み物でドリアンの存在は知っていたけれど、本物のドリアンを見るのは初めて。想像以上に固くトゲトゲしていてちょっと手が痛いかも。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/160秒 絞り値F1.8 ISO感度800
夜市を歩いていると突然視界に飛び込んできたメリーゴーランド。夜市の中心部に設置された謎のメリーゴーランドは注目度抜群。メンテナンスされてるのか…ちょっと心配かもと余計なことを考えてしまいます。
OM-3に単焦点の組み合わせはものすごく楽です。まず焦点距離で迷わなくていいし被写体との距離感も自分の足で調整するので、自分が撮りたいと思った被写体に集中しやすい。特に17mmと25mmはどちらも標準と呼ばれる画角なので自分がいま見ている景色が綺麗に収まりやすい。OM-3と単焦点の組み合わせはコンパクトなので気軽に持ち出せるし「撮らなきゃいけない」という変な圧もなくて良い。個人的な感覚かもしれませんが、ズームレンズはやはり「失敗したくない」「なんでも撮りたい」という欲が少なからず出てくるので、シャッターを切る前に一つアクションが発生してしまう。単焦点は一つ手順を飛ばして撮影に入れるので実はシャッターチャンスに強かったりもします。旅に持ち出すとなればやはりズームの方が安心感はありますが、一度単焦点だけ持ち出して旅に出かけてみてほしいなと思います。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/80秒 絞り値F1.8 ISO感度800
カンボジアにはラウンドアバウト(円形交差点)が多くありその中心部にはよくオブジェが設置されています。夜市の近くのラウンドアバウトには光り輝くドリアン。独特。

■撮影環境:マニュアル 焦点距離25.0mm(35mm判換算50mm) シャッター速度1/40秒 絞り値F1.8 ISO感度3200
裏路地はちょっとしたディープスポットになっています。地元のバンドがライブするステージがあるバーがあったり、路地裏にテーブルを広げて食事する家族などちょっとしたカオスです。カンボジアはスナップ好きの人には絶対おすすめですね。私は普段はスナップよりも風景写真が多いですが、カンボジアではスナップを撮影するのがとにかく楽しくて、日本にいる時の10倍…いやもっとかもしれません、それくらいスナップ撮影を楽しんでいました。もしかしたらOM-3に単焦点の組み合わせというのが背中を一押ししてくれたのかもしれません。
カンポットに到着したところで前編は以上となります。後編ではいよいよ胡椒畑に向かいますが、畑以外にも紹介したい場所があるので後編もお楽しみに。
【つづく】
■写真家:木村琢磨
1984年生まれ。岡山県在住のフリーランスフォト&ビデオグラファー。広告写真スタジオに12年勤務したのち独立。主に風景・料理・建築・ポートレートなどの広告写真の撮影や日本各地を車で巡って撮影。ライフワーク・作家活動として地元岡山県の風景を撮影し続けている。12mのロング一脚(Bi Rod)やドローンを使った空撮も手がけ、カメラメーカー主催のイベントやセミナーで講師を務める。
















