初心者におすすめのカメラ『OM SYSTEM OM-5 Mark II』|写真家 クキモトノリコ
はじめに
2025年7月に発売されたOM SYSTEM OM-5 Mark IIは、OM-5の後継機としての位置付けですが、画像処理エンジンなどの全体的なスペックとしては大きな違いはないものの、新たにCPボタンの搭載や、メニュー表示がOM-1やOM-3と同様の横位置ベースの表示となったこと、星空撮影時に便利なナイトビューモードの搭載など、いくつかの点で進化や変更が見られます。
メーカーとしては、登山などのアウトドアを楽しむ層へのアプローチを全面に押し出している印象ですが、今回は非アウトドア派(笑)な筆者が、日常や旅といった場面での使用感をご紹介します。

■撮影環境:F9.0, 1/250秒, +0.3段, ISO 200, WB 晴天, アートフィルター ジオラマ
初心者も、上級者も。マルチに対応できるバランス感
本機はフラッグシップモデルのOM-1シリーズと、エントリーモデルのOM-D E-M10シリーズの中間でミドルクラスに位置するモデルですが、フルオートやシーンモードが搭載されており、カメラ初心者さんでも使いやすい設計になっています。一方で、高速シャッター速度がフォーカルプレーンシャッターで1/8000秒と電子シャッターで1/32000秒(OM-D E-M10 Mark IVではそれぞれ、1/4000秒と1/16000秒)であったり、ライブコンポジット撮影も細かな設定ができる(OM-D E-M10 Mark IVではアドバンストフォトモードでカメラ任せとなる)など、中〜上級者の方にも納得の設計となっており、サブ機として所持するにもおすすめです。
本機はマイクロフォーサーズ規格のカメラであり、機材本体とともにセンサーサイズも小ぶりではあるものの、画像処理エンジン TruePic IXを搭載し非常に高画質であり、「小型・軽量」と「高画質」の両方を兼ね備えたカメラといえます。
緑に埋もれるようにして停められた軽トラに惹かれてシャッターを切りましたが、周囲に生い茂る草や木々の細かな葉もしっかり描写されています。

■撮影環境:F5.0, 1/640秒, -0.3段, ISO 200, WB 晴天, Natural
神戸の市街地を望む高台から、この日は大阪湾越しに遠く和歌山や友ヶ島、淡路島の端まで確認することができたのですが、写真でもしっかり捉えることができました。現像時にOM Workspaceにて「かすみの除去」を行なったものと比較してみてください。
▼オリジナル画像

▼かすみの除去後

■撮影環境:F9.0, 1/500秒, +0.7段, ISO 200, WB 晴天, Natural
ISO感度が200スタートのOM機では、Aモードでの撮影時に1/4000秒が上限だと露出オーバーになることも多いのですが、1/8000秒まで使えると安心です。

■撮影環境:F2.0, 1/6400秒, 0段, ISO 200, WB 晴天, Natural
暗くてシャッター速度が遅くなるシーンや、手持ちでスローシャッターを使いたいシーンでは手ぶれが心配ですが、こちらもOM-D E-M10 Mark IVの最大4.5段よりも強力な、最大6.5段(中央部、周辺部は5.5段、CIPA準拠)の5軸による手ぶれ補正のおかげで安心して撮影することができます。

■撮影環境:F4.0, 1/10秒, -1.3段, ISO 800, WB 4000K, Vivid
もちろん防塵・防滴性能が施されていることから、雨の日の撮影や砂埃が舞う中での撮影でも安心して持ち出すことができます。

■撮影環境:F5.5, 1/60秒, -1.0段, ISO 1600, WB オート, Vivid
ローカル線の後ろの窓から流れゆく風景を撮りたくて、ライブNDを用いたスローシャッターで撮影しつつ、後述の縦型動画も撮って、またスローシャッターに戻って…を繰り返していたのですが、モードダイヤルの「S」と「動画」が離れていて咄嗟の変更がしづらくて仕方ありませんでした。
そこで、ちょうど動画モードのすぐ隣にあるモード「C」に着目。このカスタムモードは、好きな設定を登録してすぐに呼び出すことができます。今回はライブNDを用いたスローシャッターの設定を登録することで、撮りたい設定でのスチール撮影と動画の行き来が非常に容易となり、快適に撮影ができました。

■撮影環境:F16, 1/4秒, +0.3段, ISO 100, (LIVE) ND16, WB オート, Natural
シャッターボタンを全押しする前に遡って記録できるプロキャプチャーモードも搭載されているので、シャッターボタンを押した瞬間では遅すぎた!という「決定的瞬間」を撮影することが可能です。

曼珠沙華にやってきたアゲハ蝶が、花の蜜を吸う器官である口吻を花に付ける直前の瞬間を捉えることができました。

■撮影環境:F5.6, 1/400秒, -0.3段, ISO 800, WB 晴天, Natural
新設されたCPボタン
OM SYSTEMの大きな特徴ともいうべきコンピュテーショナルフォトグラフィ機能。これらを素早く呼び出せるCPボタンはOM-3でその便利さを実感したのですが、このCPボタンが今回本機に搭載されたことは特筆すべき点といえます。また、これまで露出補正だったボタンが今回このCPボタンとなりましたが、そもそも露出補正は特にボタンを押さなくともダイヤルを回すだけで設定が可能です。ゆえにこの露出補正ボタンはいつも他の機能(デジタルテレコンやピントの拡大など)を割り当てて使っていたため、今回ここがCPボタンとなったことは個人的に大変嬉しいポイントです。
通りを歩く人をぶらすためにシャッター速度を落として撮影するにあたり、ライブND機能でND16を選択。すぐ呼び出せて設定できるのがありがたいです。

■撮影環境:F13, 1/4秒, -0.7段, ISO 200, (LIVE) ND16, WB 晴天, Natural
OM-3の記事でも触れましたが、多重露出撮影もボタンひとつで呼び出せて、また撮影した画像の確認後もスムーズに多重露出撮影に戻ることができます。個人的に、RAWで撮った画像を呼び出して重ねることも多いのですが、撮影した画像の確認後、再び同じ画像に重ねる状態に戻ってくれる点も嬉しいポイントです。

■撮影環境:F1.8, 1/500秒, -1.0段, ISO 200, WB オート, Natural, 多重露出(2枚)
肉眼では露店の向こうに鳥居が見えているのですが、カメラで撮影すると明暗差からどうしても背景が真っ暗になってしまいます。そこでCPボタンからHDRを呼び出して撮影。肉眼での見た目に近い写真となりました。
▼普通に撮影した場合

■撮影環境:F1.8, 1/50秒, -1.3段, ISO 200, WB オート, Natural
▼HDR撮影

■撮影環境:F1.8, 1/50秒, -1.3段, ISO 200, WB オート, Natural, HDR2
日常から旅まで、あらゆる場面で活躍
カメラ本体が約400gととにかく小型・軽量で、本格的な登山などのアウトドアでの有用性をよく目にする本機ではありますが、私のように特にアウトドア派ではないユーザーにとっても日常生活から旅まで、あらゆる場面での相棒として、気軽にストレスなく連れ出せるカメラです。
地元神戸の街を見下ろせるスポット「ビーナスブリッジ」で、イギリスから旅行中のカップルと出会い、声をかけて撮らせてもらいました。その後すぐにその写真をカメラに搭載されたWi-Fi接続でスマートフォンに転送、iPhoneのAirDrop機能を用いてその場で写真を送るととても喜んでもらえました。

■撮影環境:F9.0, 1/200秒, +1.3段, ISO 200, WB 晴天, Natural
友人たちと神戸の須磨海岸へ夕食に出かけました。その日はとても綺麗な夕焼けだったのですが、テラス席だったこともありじっとしていられずにカメラを持って走り出てしまいました。「友人と食事」といった、撮影がメインでない日にも気軽に連れ出せるサイズ感はやはりありがたいです。また、夕焼けの色はカラークリエーターで記憶のイメージ色に仕上げました。

■撮影環境:F5.5, 1/50秒, +0.3段, ISO 1000, WB 晴天, カラークリエーター COLOR+3, VIVID+1
神戸からだとちょっとした小旅行、少し遠めの遠足くらいの距離にあたる、和歌山の素敵なカフェを訪ねました。自宅兼カフェの敷地内には大きな栗の木があり、それがちょうど収穫期だったことから栗拾いを撮らせていただきました。栗を拾ってカゴに入れるところはシャッター速度を落としてスピード感を出してみました。

■撮影環境:F5.0, 1/80秒, -0.3段, ISO 640, WB オート, Natural

■撮影環境:F5.0, 1/60秒, -0.3段, ISO 640, WB オート, Natural
季節の花はやはり撮っておきたいもの。よく晴れた日、黒い背景に真っ赤な彼岸花(曼珠沙華)を浮かび上がらせるべく、木陰で光の当たっているお花を選び、アートフィルターのポップアートIIで撮影しました。

■撮影環境:F5.6, 1/125秒, -1.3段, ISO 200, WB 晴天, Natural, アートフィルター ポップアートII
友人たちと伊勢・志摩へ出かけました。室内での撮影にはやはり明るい単焦点レンズが便利。旅の機材として今回もレンズは高倍率ズーム+単焦点の組み合わせで出かけましたが、カメラもレンズも小型軽量で、旅の荷物全体が小さくまとまり助かりました。

■撮影環境:F2.8, 1/200秒, +0.3段, ISO 400, WB オート, Natural
スマホに転送、そのままアップも可能な縦型動画
以前のOM-5から搭載の機能となりますが、動画撮影時に画面を縦にして撮影すると、そのまま縦型の動画として記録されます。今回はいくつかの素材を繋げる編集をしましたが、撮影後カメラに転送、そのままSNSにアップすることが可能で、手軽にショート動画などスマートフォンでの閲覧用の動画の撮影と投稿ができます。
まとめ
OM-5とOM-5 Mark IIの違いはマイナーチェンジと呼ばれるものではあり、個人的にはAI被写体認識AFが搭載されていない点が残念ではありますが、CPボタンといったいくつかの点においては確実に進化し、使いやすくなっています。OM-1クラスの高スペックは必要ないけれどE-M10シリーズでは物足りない、そんな層にピッタリであるとともに、買い替えを見越して長く使うことを考えるとカメラ初心者さんにとってもベストな選択肢といえます。
OM-5 Mark IIは、機能・サイズ感・コスト面のすべてにおいて非常にバランスがよく、「何か一台、一眼カメラを持つならこれ!」と、多くの方に自信を持っておすすめできるカメラです。

■撮影環境:F6.3, 1/2000秒, -1.7段, ISO 400, WB 晴天, Vivid
■写真家:クキモトノリコ
学生時代に一眼レフカメラを手に入れて以来、海外ひとり旅を中心に作品撮りをしている。いくつかの職業を経て写真家へ転身。現在はニコンカレッジ、オリンパスカレッジ講師、専門学校講師の他、様々な写真講座やワークショップなどで『たのしく、わかりやすい』をモットーに写真の楽しみを伝えている。神戸出身・在住。晴れ女。
公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員















