梅雨を彩るアジサイ|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

吉住志穂
梅雨を彩るアジサイ|上手に撮る方法をプロが紹介 ~吉住志穂~

はじめに

梅雨になると大きな花を鮮やかに咲かせるアジサイ。花のような部分はガクが発達した装飾花と呼ばれるもので、中央の粒々とした部分が本来の花です。そこを丸く囲んでいるのがガクアジサイで、咲き方はガク咲きと呼ばれます。ポピュラーな丸い形のアジサイはガクアジサイが品種改良されたもので、咲き方はテマリ咲きと呼ばれます。ガクアジサイに対してホンアジサイとも呼ばれます。

アジサイは品種改良が盛んで、日本、海外問わず、次々により美しい品種が登場しています。ホンアジサイを一輪の花のように前後にボケを入れて写すのも良いし、ガクアジサイの一片をアップで写すのも良いでしょう。テマリ咲き、ガク咲きという形の違いを感じつつ、豊かな品種の魅力を味わいながら撮影してはいかがでしょうか。

雨を脇役に

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO + M.ZUIKO DIGITAL 1.4x Teleconverter MC-14
■撮影環境:絞り優先・175mm・F4.0・ISO800・1/100秒

梅雨の花なので雨を感じさせようと、背景に雨の線を入れました。雨を写すには雨粒の落ちる速度に合わせて、シャッター速度を少し遅めにする必要があります。ここでは1/100秒を選択しました。もちろん、シャッター速度を遅くすればするほど雨の線は長くなりますが、シャッター速度が遅いと被写体ブレが発生するので程よい値を取りました。

背景が明るいと雨の線が目立たないので、濃度のあるところを選びましょう。画角が狭いほど雨の線は長くなりやすいので、テレコンバーターを使用して、焦点距離をのばしています。

横から撮ってボケを作る

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/400秒

ボケを作るには距離の差が必要です。主役に対して背景ボケ、前ボケともに、間隔が空いている場所を探しましょう。しかし、アジサイは株に対して正面から見ると奥行きがあまりない咲き方をしています。思いっきりクローズアップすればボケは作れますが、写真のような、ちょっと引いた大きさで撮る時はボケを作るのがむずかしいのです。

そこで、花を正面ではなく、横から見れば手前の花と奥の花とで奥行きを作りやすくなるので、このような前ボケも取り入れることができます。ひとつの株の中で主役、前ボケ、背景ボケを作るのは距離がとりにくく難しいですから、奥の株が主役なら、手前の株を前ボケにするといった具合に、隣り合った株同士という距離感でボケを作るようにすると良いでしょう。

プラス補正で優しい雰囲気に

■撮影機材:OMシステム OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO1000・1/320秒

ガクアジサイのダンスパーティーという品種は八重咲きの装飾花が華やかで、とても人気が高く、鑑賞するだけではなく、写真にしても映えますね。撮影したのはだいぶ陽が傾いてきた時間帯で、花には直接光が当たっていないのですが、むしろそれが良いのです。花に光が当たると影ができるので硬い印象になってしまいます。

光がないと色が濁りやすいですが、プラス補正をかければ明るく写すことができます。ここでは+1.7EVの補正をかけました。やわらかな光と淡い色が相まって優しい雰囲気に仕上がりました。前ボケもふんわり感を感じさせてくれるので、装飾花のボケを散りばめて、画面を埋めています。

明暗差を生かす

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・115mm・F2.8・ISO200・1/640秒

林の中で咲くアジサイを写しました。見上げると木々の木漏れ日がかすかに差し込む程度で、鬱蒼としていました。花には光があまり当たらず暗いので、明るい木漏れ日と重ねると、明暗差が生じてシルエットになります。もちろん、露出補正をプラスにしていけば花を明るく写すことはできますが、それではもともと明るい背景が白く飛んで、真っ白になってしまいます。

ここは木漏れ日が程よい明るさになるような露出を選び、花は成り行きでシルエットになる値を選びました。シルエットにしたとき、丸い形のアジサイではただの黒い塊になってしまうので、形がわかりやすいガクアジサイ系の花がおすすめです。

強い光を生かす

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro
■撮影環境:絞り優先・60mm・F2.8・ISO200・1/2000秒

真上から注ぐ光が、ガクアジサイの花影を葉っぱに落としていました。このシーンでは3つの撮影パターンが考えられます。花にピントを合わせる撮り方。葉っぱにピントを合わせる撮り方。花は入れずに葉っぱだけを狙う撮り方。基本は花が主役ですが、影がメインなので葉っぱにピントを合わせた方が良いかと思います。花を入れない撮り方は影の正体を見せないので、見る側に答えを考えさせることができます。それも面白いですよね。

梅雨とはいえ雨続きの合間の晴れた日は、夏を間近に感じさせるような強い日差しが降り注ぎます。やわらかい雰囲気で撮るには不向きですが、そんな日だからこそ、強い光を生かした撮り方も探ってみたいものです。

ホワイトバランスで白さを表現

■撮影機材:OMシステム OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO200・1/1000秒

カシワバアジサイは北米原産で、花は白く、円錐状に花をつけます。葉っぱには大きな切れ込みがあり、柏の葉に似ています。一般的なアジサイの仲間で、開花期は同じですが、姿が全く違うのでアジサイだと知らない方もいるでしょう。

近所の方がお庭で育てている花を撮らせてもらいました。夕暮れの西日が当たっていたので、光が透けて輝きを感じ、背景は日陰なので黒く締まり、白い花が映えますね。本来の花色は真っ白なのですが、ちょっとクリームがかっているのは夕日の光が当たっているためです。ホワイトバランスをオートすると夕暮れの黄色みが補正されますが、ホワイトバランス晴天で撮ると、本来の光の色が再現されます。

前ボケで包み込む

■撮影機材:OMシステム OM-1 + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・150mm・F2.8・ISO1000・1/320秒

ボケの中から主役だけがぼやっと見えていますが、主役の部分以外は手前にあるアジサイの前ボケで覆われています。もちろん主役にはしっかりピントが合っていますよ。3枚目の作品を撮った場所で撮影したのですが、ピンクのアジサイが前ボケになって奥の紫の花にピントを合わせた状態です。ガクアジサイは花と花とに隙間があるので、その隙間越しに奥の花を狙い、ピントを合わせています。

前ボケが主役を囲むような形になっているので、全体が包まれたように見えています。こういった場所を探すのは苦労しますが、ガクアジサイやヒガンバナなど隙間のできやすい花では比較的見つけやすいので、望遠系のレンズを使って、前ボケを作る要領で隙間から奥を覗いてみてください。

多重露出でボケを作る

■撮影機材:OMシステム E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
■撮影環境:絞り優先・28mm・F2.8・ISO200・1/200秒

2枚目の作品の解説の中で、アジサイの株を正面から狙うと、平面的に咲いているのでボケが作りにくいとお話ししました。しかし、ボケを取り入れる方法もあります。それは多重露出を用いた撮り方です。一枚は普通に撮影し、もう一枚はピントをぼかして撮るとボケを重ねることができます。

多重露出というと全く違う画像を合わせるイメージを持っている方もいるかと思いますが、このようにボケを重ねるという使い方もできます。ボケを作る時はマニュアルフォーカスにして意図的にピントをずらしてください。ぼかしたいので絞りを開けるのも忘れずに。ボケの量やフレーミングを少しずらして、ベストな重ね方を模索してみてください。

さいごに

「梅雨の花だからアジサイはしっとりと写す」という、決まったイメージがありますが、それをあえて覆すのもおもしろいものですよ。ポートレートではその人物のイメージ通りに写すのはもちろん、別の表情を引き出して新たな側面を見出すように、花もいろいろな狙い方をしてみてください。通り一辺倒な表現で万人のイメージに合わせるのではなく「私はこう思った」と思う撮り方をしてみましょう。それが撮る人の個性ですし、個性的な写真は見ていても新鮮に感じます。雨の日も、曇った日も、梅雨の合間の晴れの日も、アジサイの新たな表情を探しに、カメラを持って出かけてみてください。

 

 

■写真家:吉住志穂
1979年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。写真家の竹内敏信氏に師事し、2005年に独立。「花のこころ」をテーマに、クローズアップ作品を中心に撮影している。2021秋に写真展「夢」、2022春に写真展「Rainbow」を開催し、女性ならではの視点で捉えた作品が高い評価を得る。また、写真誌やウェブサイトでの執筆、撮影講座の講師を多数務める。

・日本写真家協会(JPS)会員
・日本自然科学写真協会(SSP)会員

 

 

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