写真に温度感を宿す、ニコン Zfのフィルムグレインで広がる表現
はじめに
クラシカルなデザインが魅力的なNikon Zf。
シルバーモデルのリリースと同時にアップデートされた機能のひとつが、「フィルムグレイン」です。
フィルムグレインは、写真にフィルム特有の「粒状感」を加えることで、質感や雰囲気を変化させる機能。デジタル特有のクリアでシャープな描写に対して、あえて微細なざらつきを加えることで、やわらかさや空気感のある表現を楽しむことができます。
今回は、そんなフィルムグレインの機能としての魅力や実際の作例を交えながら、おすすめのシーンや楽しみ方をご紹介します。
フィルムグレインとは

フィルムグレインとは、Nikonのミラーレスカメラ「Zf」に搭載された、写真や動画にフィルム特有の粒状感を加えることで、質感や雰囲気を変化させる機能です。あえて微細なざらつきを加えることで、どこかやわらかく、ノスタルジックな印象へと仕上げることができます。
この機能は、2025年秋のファームウェアアップデートによって追加された新しい表現機能。現時点(2026年4月)ではNikonの中でもZfにのみ搭載されており、フィルムカメラを思わせるヘリテージデザインとの相性の良さも含めて、Zfの魅力をより一層引き立てています。



粒状感の強さは6段階、粒子サイズは3段階から選択可能。組み合わせによって、自分の好みに合わせた質感に細かく調整することができます。
さらに特徴的なのが、粒子の出方がランダムであること。フィルムグレインの効果は撮影画面では確認できず、仕上がりも毎回少しずつ異なります。そのため、デジタルでありながら、フィルムカメラで撮影しているような“偶然性”や“ワクワク感”を楽しめるのも大きな魅力です。
一方で、HDR合成や多重露出など一部の機能とは併用できない点には注意が必要です。
フィルムグレインの魅力

66mm F6.3 SS:1/500 ISO100
フィルムグレインは、写真に粒子を加えることで質感を変化させる機能…ではあるのですが、単に見た目が変わるだけではなく、写真全体の印象にも大きく影響を与えます。
正直、私は普段からどちらかというとクリアで透明感のある写真が好きなので、「写真に粒子を加える」ということに対して、最初はそこまで魅力を感じていませんでした。
しかし実際に使ってみると、見た目の変化以上に、写真の空気感や温度感が変わったり、撮影したときの感情までも含めて表現できるように感じられ、思っていた以上に奥深い機能であることに驚きました。

50mm F1.8 SS:1/125 ISO100
さらに、Zfには「イメージングレシピ」という、クリエイター自身の色で写真表現ができる機能が備わっているため、フィルムグレインと組み合わせることで、自分ならではの表現の幅をより一層広げることができます。
普段使っているレシピに変化を加えるのはもちろん、フィルムグレインと相性の良いレシピを新しく考えてみるきっかけにもなり、これまでとは少し違う視点で写真と向き合えるようになりました。
光と影を探す、ノスタルジーなスナップ

40mm F2 SS:1/500 ISO125
フィルムグレインはさまざまなシーンに取り入れることができますが、特におすすめなのがスナップ撮影です。

40mm F2 SS:1/500 ISO125
歴史的建造物や、少しレトロな雰囲気が漂う街並みなど。そうした場所にフィルムグレインを加えることで、写真により温かみや奥行きが生まれます。

68mm F2.8 SS:1/125 ISO100
また、光と影のコントラストが印象的な場面でも、その効果は際立ちます。スナップで出会う何気ない一瞬に、少しだけ物語性を添えてくれるような感覚で楽しめる点が魅力。
温かみのあるテーブルフォトを撮る

50mm F1.8 SS:1/500 ISO100
実際に使ってみて、特に相性の良さを感じたのが料理写真でした。

50mm F1.8 SS:1/250 ISO200

50mm F1.8 SS:1/250 ISO200
粒子を加えることで、写真にほんのりとした温かさが生まれ、調理中の様子やラフに盛り付けた一皿など、日常の空気感をそのまま残すことができます。
少し力を抜いた自然なシーンほど、フィルムグレインの魅力が活きる印象です。

70mm F2.8 SS:1/1000 ISO100

40mm F2 SS:1/2000 ISO100
一方で、カフェなど洗練された空間では、控えめに使うのがおすすめ。粒子サイズは「小」、強度は2〜3程度に設定すると、自然で上品な仕上がりになります。
曇りの日でも、風合いのある一枚に

40mm F2 SS:1/2000 ISO100
写真を撮る上で、どうしても苦手意識を持ちやすい曇りの日。
私自身も、光が足りない日には少し気持ちが沈んでしまうことがあるのですが、フィルムグレインを使うことで、その印象が大きく変わりました。

50mm F1.8 SS:1/125 ISO160

50mm F1.8 SS:1/125 ISO160
曇りの日に室内で撮影したお花の写真では、マットな光と粒状感が自然に馴染み、晴れの日とは違ったやわらかく落ち着いた雰囲気に仕上がりました。まるでフィルムカメラで切り取ったような、独特の風合いを楽しむことができます。

85mm F1.8 SS:1/2000 ISO100

85mm F1.8 SS:1/2000 ISO100
また、同じく曇りの日に出会った動物のシーンでも、コントラストの低い状況の中で、粒子がやさしく印象を引き締めてくれました。
天候に左右されず、その場の空気をそのまま活かせるという点でも、フィルムグレインの奥深さを感じます。
デジタルだからこそ試してみたくなる、質感をプラスする楽しさ

50mm F1.8 SS:1/2000 ISO100
フィルムグレインは、写真にアクセントを加え、表現の幅を広げてくれる機能です。
デジタルならではの高精細で美しい描写に、あえて「粒子」という揺らぎを加えることで、写真の見え方は大きく変わります。きれいに写すだけでは拾いきれない、空気感や温度、感情といったものを、やさしく写し取ってくれる存在だということを、実際に使ってみて実感しました。
Nikon Zfは、高画質で安定した描写ができる一方で、こうしたフィルムグレインのような機能によって、風合いのある表現まで楽しめるカメラでもあります。
新しい表現や記憶に残る写真を撮りたい時に、フィルムグレインは、その一歩をそっと後押ししてくれる機能だと思います。
■フォトグラファー:Yuri
大阪を拠点に活動。「ときめきとやすらぎを届ける旅と季節の写真」をテーマに、国内外で創作活動を行う。観光プロモーションや企業の広告・SNSの写真撮影、映像制作などを手掛ける。また、ニコンカレッジ・富士フイルム公式写真セミナーの講師やメディア記事の執筆など、写真の楽しさを伝える活動にも注力している。















