オールドレンズを始めよう!作例編Vol.3:ライカ Summilux-M f1.4/35mm 復刻スチールリム

鈴木啓太|urban
オールドレンズを始めよう!作例編Vol.3:ライカ Summilux-M f1.4/35mm 復刻スチールリム

はじめに

こんにちは!フォトグラファーの鈴木啓太|urbanです。長年オールドレンズやフィルムを中心にポートレート、スナップ、家族写真を撮影しております。今回はオールドレンズを始めよう!シリーズ第6弾のご紹介です。

作例編第3回目となる今回は、大人気Leica(ライカ)レンズの復刻として話題となった、Summilux-M f1.4/35mm Steel Rim(通称:復刻スチールリム)を紹介していきます。2022年に復刻した現代のオールドレンズ、さっそく紹介していきましょう。

※作例ではオリジナルの色を損なわない様に、RAWデータの露出調整のみにとどめています。

Leica Summilux-M f1.4/35mmとは?

※ライカWEBサイトより引用(https://leica-camera.com/ja-JP/photography/lenses/m/summilux-m-35mm-f1-4

Leica Summilux-M f1.4/35mmシリーズはLeicaのレンズを語る上で、避けては通れない1本です。ハイライトが淡く飽和するにじみ玉の代名詞であるSummilux-M f1.4/35mmは、1961年に当時で最も明るい広角レンズとして登場しました。200g程度の重量と長さ3cmを切る小型レンズにも関わらずF1.4を備える様は、とても60年以上前に製造されたレンズとは思えません。

Summilux(ズミルックス)は現代までさまざまなバリエーションが存在しますが、今回紹介するスチールリムは、ほとんど仕様が変わることなく35年以上製造され続けたSummiluxの中でも最初期と呼ばれるモデルの復刻版です。レンズの先端、縁(Rim)の部分が鉄(Steel)でできていることから「スチールリム」と呼ばれています。

今回の復刻モデルではオリジナルのフード(OLLUX)を模したものと、スリットが入った円形フードが付属するという充実ぶり。復刻版のレンズスペックも記載しますので、ぜひご確認ください。

メーカー Leica
レンズ名 Summilux-M f1.4/35mm (通称:復刻スチールリム)
マウント Leica Mマウント
発売年 2022年
絞り設定範囲 F1.4-F16
フィルター径 46mm
重量 約200g
最短撮影距離 1.0m

フードが2種類付くのは良いのですが、どちらも癖があり扱いにくいのが残念。オリジナルを模したフードはフィルターが使えず、円形フードはフィルターと組み合わせると画面周辺がややケラれるという欠点があります。他社から販売されている長さが短いフードや超薄型のフィルターを使えばケラれを抑えることができますので、純正品にこだわらないのであればそれを使うのも良いでしょう。

復刻版とオリジナルの違いはいかに

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f1.4 1/1500秒 ISO100 WBオート

最新のSummiluxは非球面レンズを採用し、艶を残しながらも端正な写りをするレンズですが、球面レンズで構成されたSummiluxは、最も美しく滲むレンズと言っても過言ではないと考えます。逆光下のフレア、ゴースト、にじみから構成される独特な絵、絞り開放でのピント面はシャープさも持ち合わせるといった独特なもの。

同構成となるSummilux 第一世代後期(2ndモデルとも呼ばれる)との比較では、復刻スチールリムの方がよりシャープになったように感じました。もちろん、レンズ硝材まで100%同じというわけではないのかもしれませんが、同じ光学設計を踏襲していることもあり、描写傾向は同等という結果となりました。

ただこれはあくまで、2ndモデルとの比較かつ私自身の感想になりますので、オリジナルのスチールリムとは異なると感じるという方もいらっしゃるのではと考えています。当時のレンズは60年以上も経過したものであり、同じ光学設計を踏襲していても、レンズの状態で写りに差が出ることは容易に想像できてしまいます。

しかし、多少の描写の違いはあるにせよ、撮影して「あ、Summiluxだな」と感じたのは間違いありません。しかもファーストショットでそう思わせるだけの力があったことは、皆さんにお伝えしたいと思います。

描写の概要

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f1.4 1/4000秒 ISO100 WBオート

よくレンズレビューに絞り開放では柔らかく、絞れば鋭くなるという記載がありますが、正にそれを体現しているのが本レンズだと言えます。特にこの第1世代Summiluxは、絞り開放からF5.6あたりまでの描写が分かりやすく段階的に変化していくレンズです。

開放の特徴はにじみとゴースト。にじみは開放からF2くらいまでが美しく、そこからF2.8、F4と絞ることでにじみが薄れ、写真のコントラストが目に見えて上がっていきます。ゴーストは開放時に最も出やすく、これもF2~2.8くらいまで絞ることでゴーストを抑えることができるため、ややうるさいと感じる場合は手で光をさえぎるハレーションコントロールの他に、絞りを調整するということにもチャレンジしてみるのが良いでしょう。

一方で、F8~11まで絞り込むことで硬質な描写に変容するのがこのレンズの利点です。今回、Leica M10と復刻スチールリムのみを持って夏の旅行に出かけましたが、情緒的なシーンでは開放を多用し、しっかりと旅の記憶を残したい場面では絞り切ることで、現代レンズとさほど変わらない程の解像力でそのシーンを切り取ることができたのではと思っています。

本レンズの面白さはこの多様性ではないでしょうか。1本で、多様な表現に耐えうるのはさすがLeica。可能性を感じるレンズに違いありません。

▼F1.4

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f1.4 1/1500秒 ISO100 WBオート

▼F8

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f8 1/60秒 ISO100 WBオート

上の2枚はF1.4とF8の比較です。F1.4は一見緩い描写に見えますが、しっかりと解像しつつもハイライト周辺ににじみが伴う描写となっています。F8では現代レンズと遜色ないほどにしっかりとした描写が見て取れます。周辺光量落ちはこのレンズの弱点で、絞ってもかなり大きく光量落ちが残るのが特徴です。

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f1.4 1/1500秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f8 1/180秒 ISO100 WBオート

特徴を活かした撮影方法:順光・斜光編

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f1.4 1/1000秒 ISO100 WBオート

順光・斜光での撮影はその最大の特徴である、にじみを活かした撮影を狙ってみましょう。にじみの効果はとてもさりげないものですが、現行レンズとは明らかに異なる、いわばその場の光を閉じ込めたかのような表現をすることが可能です。

光の飽和をコントロールするには絞り開放かつ順光・斜光を狙うのがおすすめですが、ハイライト部分が非常に飛び易いため、カーテンなど光をディフューズできるものがあれば活用していくのが良いでしょう。

また、レンズのスウィートスポットを利用することで、立体的な描写になることも押さえておくべきポイント。スウィートスポットとはレンズの特徴と描写性能のバランスを最大限に発揮できる絞り値及び撮影距離の組み合わせの事で、レンズごとに異なっています。本レンズはF2~F3.5付近が特徴のある描写と解像感のバランスを確保できるポイントですので、是非活用してみましょう。

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f2 1/4000秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f2 1/125秒 ISO100 WBオート

特徴を活かした撮影方法:逆光編

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f1.4 1/4000秒 ISO100 WBオート

Leicaレンズのゴーストと言えば、Summarit 50mm F1.5やSummicron C 40mm F2に代表されるような虹のゴーストが有名ですが、本レンズもそれと同傾向の表現が可能です。安価なオールドレンズによくみられる、ゴースト発生時(逆光時)のコントラスト低下が少なく、特徴的な描写を自在に扱える特別なレンズと言っても良いでしょう。

また、ゴーストの出せる時間帯が早いというのも特徴のひとつです。オールドレンズの代表格、Super-Takumarもゴーストが特徴ですが、夕方の太陽光が傾く時間帯でなければゴーストは現れず、限られた時間で撮影する必要があります。本レンズは太陽の位置がある程度高い位置でもゴーストが出るため、表現に取り入れやすく長時間撮影に活かせるのが最大のメリット。

ボケの傾向は素直で使いやすく、あまりシーンは選ばないのではと考えます。木漏れ日が多い雑木林などでボケを活かした撮影をし、少し陽が傾いてきたらゴーストを取り入れるなどアクセントを付けられれば、同じシーンでもバリエーションを稼ぐこともできます。

高価ですが、その価値は十分にある、広角オールドレンズの頂点のひとつとも言えるのではないでしょうか。

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f2 1/60秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f2 1/4000秒 ISO100 WBオート
■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f1.4 1/4000秒 ISO100 WBオート

まとめ

■撮影機材:Leica M10 + Summilux-M f1.4/35mm (11301)
■撮影環境:f1.4 1/3000秒 ISO100 WBオート

さて、いかがだったでしょうか。とにかく万能なレンズですが、万人に受けるレンズではないというのも、このレンズの魅力なのではないでしょうか。にじみはほぼ強制的に写真を淡くしてしまいますし、ゴーストが早い時間で出てしまうのはデメリットとも言えるでしょう。ですが、200gという軽さと表現の豊富さでは右に出るレンズはないのではと考えます。

この復刻スチールリムは中々手に入りにくい状況が続いていますが、キタムラネットショップや新宿 北村写真機店を覗いてみて入手の機会をうかがってみてくださいね!

この記事でオールドレンズに興味を持っていただけたのであれば、僕が執筆している「ポートレートのためのオールドレンズ入門」そして「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」に数多くのオールドレンズの作例と詳細な設定等解説を載せておりますので是非ご覧ください。また、実践的な撮影方法が知りたい場合は、僕が講師を務めるオールドレンズワークショップ「フランジバック」にもご参加いただければ嬉しいです!では、次の記事でお会いしましょう!

 

 

■フォトグラファー:鈴木啓太|urban
カメラ及びレンズメーカーでのセミナー講師をする傍ら、Web、雑誌、書籍での執筆、人物及びカタログ撮影等に加えフィルムやオールドレンズを使った写真をメインに活動。2017年より開始した「フィルムさんぽ/フランジバック」は月間延べ60人ほどの参加者を有する、関東最大のフィルム&オールドレンズワークショップに成長している。著書に「ポートレートのためのオールドレンズ入門」「ポートレートのためのオールドレンズ撮影マニュアル」がある。リコーフォトアカデミー講師。

 

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