ライカとカレー。今日はあの駅で降りようか。Vol.13|ライカM11 + ズマリット 50mmf1.5 + ビゾフレックス2

山本まりこ
ライカとカレー。今日はあの駅で降りようか。Vol.13|ライカM11 + ズマリット 50mmf1.5 + ビゾフレックス2

はじめに

2024年、1月。
新年のはじまり。

私の住む小さな海まちの小さな山の上には、菜の花が満開。町のいたるところに菜の花が咲いている。冬のキリっとした寒い風に吹かれながら、その鮮やかなイエローの花びらを揺らしている。そんな美しいイエローカラーを見ていると、寒い冬だけれどとても暖かい春のような気分になる。

この「ライカとカレー」の連載がスタートしたのは、2020年7月のこと。今から約3年半前。ライカの知識0からスタートして、いろいろなカメラと旅をして、今回は13回目の連載回となる。いろいろなライカと旅をしてきたなあ。

ちょっと並べてみよう。

こうやって並べてみると、本当にいろいろと旅をしてきたなあと自分でもびっくりする。

そして。
連載9回目の時、人生初、ライカのボディを購入した。マイライカ。
購入したカメラは、M11。迷いに迷って、M11を選んだ。
色も迷った末に、やっぱり自分が直感的に好きだと思うシルバーカラーを選んだ。
ライカM11が私のもとにやってきてから早1年経つ。

今日はライカの気分だなあ。
そんな気分の時、防湿庫からライカを取り出して撮影をする。大体、プライベートでのんびりとした時間を過ごしたいときだ。大きな撮影が終わった時や、忙しい日々を乗り越えたとき、ゆっくりとした気持ちでシャッターを切りたい、そんなとき、ライカを持ち出して写真を撮ってきた。
私にとってのマイライカは、癒しの一日にシャッターを切る、そんなカメラのようだ。

さて。
ライカM11については、以前旅して書いた記事がある。2回分。Vol.9とvol.11の回、ライカM11について書いている。そちらを読んでほしい。

上記記事も記載しているが、ライカM11が発売になったのは、2022年1月。
ライカM10と比べて大きな変化としては、2400万画素から6030万画素へと大きく画素数が増えたこと。そして、従来のM型カメラの定番であったベースプレートが無くなったこと。ベースプレートを取り外して行っていたバッテリー交換やSDカードの抜き差しも大分簡単&スピーディーに出来るようになった。さらに、バッテリー容量は、従来よりも容量が64%アップし、同時にカメラ全体の消費電力も抑えているため、より長時間の撮影が可能に。また、SDカードスロットに加えて、大容量64GBの内蔵メモリーも搭載し、M型カメラとしては初めてSDカードと内蔵メモリーの記録媒体へ同時に画像データを記録することが可能になった。

簡単にまとめると、軽量化・使い易さアップ・さらに高画素・内臓メモリー搭載・バッテリー持ちも良くなった、ライカ新型フラッグシップのデジタルレンジファインダーカメラだ。

筆者にとって特に気に入っている点は、液晶画面をタッチしてサクサクと設定できるところ、デジタルズームが1.3倍と1.8倍が利用できるところ。デジタルズームは、レンズを変えることなく倍率を変えて撮影できるので、とても気に入っている。そして、充電方法。USB Cタイプで充電できる。コードさえ持っていれば、旅先でも気軽に充電できるところが、ライカという高級なカメラだけれどもフットワーク軽く撮影できるので嬉しい。

そして、レンズもマイライカ。
ズマリット 50mmf1.5だ。ソフトフィルターをかけたような、柔らかい表現がとても人気のオールドレンズだ。解放F1.5で点光源に向かって撮影すると、大きな虹のようなフレアが写ることが最大の特徴。

さらに。外付けファインダービゾフレックス2をつけての撮影。こちらもマイライカ。
撮る作品を目で確認しながら撮影したい、ピントをしっかりと確認したい、という気持ちから、ビゾフレックス2を購入した。ビゾフレックスのファインダーを覗いてシャッターボタンを半押しすると、実際に撮れる露出で写る景色を確認することが出来る。ビゾフレックス2を覗いて撮影すると、液晶を見るよりも、はるかにピントが確認しやすい。

新大久保へ

この「ライカとカレー」の記事のクライアントさんは、カメラのキタムラさんだ。そのカメラのキタムラさんの社員さんのKさんから、いつも記事の執筆依頼がくる。以前、新宿北村写真機店を訪れたとき、Kさんにお会いして、撮影をした。メールから想像していた真面目でとっても優しいKさんそのままの方が現れて少しお話しした、ということを記事に書いたことがある。

そのKさんからの今回のご依頼は、
「ぜひ、山本さんのお店を撮ってほしいです。」とのこと。

山本さんのお店。
そう、実は筆者山本、昨年、今住む小さな海まちに小さなお店なる空間を作った。
その空間は、写真とスパイスカレーの空間PEANUTSuuと言う。ピーナッツぅ、と読む。

以前から、写真で人が集うことが出来るスペースをつくりたいなあと思っていた。そして、7年前から本気で学んでいるスパイス料理を出すことが出来る空間があったらいいなあと思っていた。さらには、写真を展示できるギャラリーがあったらいいなあと思っていた。そんないろいろな思いが叶う空間がポッと出てきたのだ。

この空間気になるなあと思って仲良しの不動産屋さんに「気になる~」とメッセージを送ってみると、あれよあれよという間に、物件を借りることになり、工事がスタートし、空間が出来上がった。そして、昨年10月から、PEANUTSuuがスタートした。

写真教室の教室として使用したり、月に3日間だけOPENするスパイスカレー店として営業したりしている。写真展も開催している。

ちなみに。
PEANUTSuuの名前の由来の一つは、PEANUTSuuがある小さな海まち二宮町の特産が落花生、ピーナッツなのだ。町のあちこちに落花生屋さんがある。だから、PEANUTSuuのスパイスカレーは、ピーナッツを隠し味に入れている。本当の大きな由来はまた別にあるのだけれど。それはお会いした方に直接お話ししますね。

では、今回は、PEANUTSuuのある二宮町を旅しよう。そして、PEANUTSuuのスパイスカレーを撮影しよう。

あれ。
でも。
この連載のタイトルは、「ライカとカレー。今日はどの駅で降りようか。」だ。
二宮町を旅するだけじゃ、駅も電車も利用しない。
さあ、どうしよう。

そうだ。
PEANUTSuuのスパイスカレーを撮影するなら、スパイスを購入するところから撮影しよう。
さあ、いつもスパイスを購入するお店がある新大久保に行こう。

新大久保を歩く

私は、月に1回くらい、新大久保に行きたくなる。
あの空気感が、好きなのだ。どうしても、好きなのだ。
人の渦、アジアのカオスのような場所、インドやネパールを肌で感じることが出来る場所を歩くのが好きなのだ。スパイスの匂いが漂う、あの街の香りが好きなのだ。あの街の中で、狭いスパイス店の棚に所狭しと並ぶスパイスたちを見ながら、たまにインドの店員さんに「ナニサガシテイマスカ~」と話しかけられながら今回はどのスパイスを買おうかなあ、そんな時間を過ごすのは、私にとってこの上ない至福の時間。

そして、もう一つ、楽しみがある。
新大久保には、無数のアジア料理店が立ち並んでいる。
インド、ネパール、タイ、韓国などなど、アジアのフード勢ぞろい、というくらい、お店がぎゅぎゅぎゅ―――っと並んでいる。今日はどこに行こうかなあ。そんなことを考えながら、行きの電車の時間を過ごすのも、幸せな時間。

JR東海道線で品川駅に向かう。山手線に乗り換えて新大久保へ。
今日は、ネパール料理を食べよう。

きた。
私のオアシス。

あああああああ。
この空気。
まるで本当にその国にいるような現地感。

目星をつけていたネパール料理屋さんに入ると、もう14時近くだというのに、席はほぼ満席。私以外は全員ネパールの人かな、と思うくらいネパールの方が多い。店員さんがネパールの方なので、みんな母国語で注文している。

私は、ネットで見てこれにしようと決めていた「モモ入りトゥクパ」を注文。モモもトゥクパもどっちも食べたかったからちょうどいい。モモはネパールの餃子のこと。トゥクパは、チベットやネパールなどで食べられるうどんのようなラーメンのようなもので、汁の中に麺が入った食べ物のこと。訳すと、餃子入りスパイスうどん、のようなものだ。

お客さんが帰っても、すぐに次のお客さんが入ってくる。相変わらず満席なる店内をいろいろ眺めながらモモ入りトゥクパを待つ。赤ちゃんを連れたネパールのご夫婦、お友達大勢で宴会をしているイケメンネパール男子たち、お友達とチョーミン(焼きそば)を食べる女子たちなどなど。まるで本当にネパールにいるみたいだなあ。そんなことを思いながら待っていると、モモ入りトゥクパが到着した。ネパールで食べたトゥクパやモモに近く、とても美味しかった。食後はミルクティ、チャイを飲んだ。

ズマリット 50mmf1.5の最短撮影距離は100cm。テーブルの反対側の端っこの角に置いて、ファインダーで覗いている体を後ろにのけぞらして撮影。

スパイス店も、数件はしごして、山のように購入。
いつも行く店は決めているのだけど、今回はあっちの店もこっちの店も入ってみようとドキドキしながら入店してみた。すると。いつも行っているお店よりも、このスパイスはこっちの方が美しい、これはここの方が安い、この店はクレジットカードが使えるなど、いろいろな発見があって楽しかった。決めることもいいけれど、新しいを感じることも大切だなあ、そんなことを思いながら興奮なるスパイス購入は終了。
今回も、肩が痛くなるくらいの重さのエコバッグを掲げて電車に乗り込む。

ああ興奮した。
ああ楽しかった。
私のオアシス新大久保よありがとう。
またすぐに来るからね。

帰りがけ、次に行くお店を選びながら歩いた。
次は、マレーシア料理だ、な。

さあ、二宮に帰ろう。

二宮を歩く

スパイスも購入したし、まずは、PEANUTSuuのある二宮町を歩いてみよう。
みなさんに、1月の二宮町をご紹介したい。

JR二宮駅から徒歩5分のところに入口がある小さな山 吾妻山の頂上には、お正月前から菜の花が咲いている。1月の中頃は、満開。
さあ、吾妻山に登ってみよう。

今回は、駅から25分くらいあるいたところにある中里口という登山口から登ることにした。

あ、猫さん。
こんにちは。

梅が咲いていたり
水仙が咲いていたり
ミツマタが咲いていたり

春はすぐそこ。
そんな景色をのんびりと歩いた。

頂上だ。

あ、メジロさん。

太陽がキラキラとしていて
菜の花がふわりふわりと揺れていて
鳥たちが鳴いていて
人々が笑っていて
ああなんて気持ちがいいんだろう。
楽園のよう。

もう何度来たか分からないくらい訪れているこの場所。
何度来ても、毎回思うのは、楽園のよう、ということ。
ありがとう、二宮。
ありがとう、吾妻山。

ズマリット 50mmf1.5は、ソフトフィルターのような柔らかな描写が特徴でもある。解放F1.5あたりで撮影していると、ふわふわでピントが合っているのか合っていないのか分からないくらいの柔らかな写真になる。私は、全開に柔らかい描写よりも少し引き締めて撮影したいと思い、JPEG設定のフィルムモードをビビッドに設定した。そしてさらに、フィルムモード設定の中で、コントラストとシャープネスを+1、などにして少しボディ内で調節して被写体によって変えながら撮影した。

お昼ごはん

あまりにも気持ちがいいので、芝生の上に布を敷いてごろんと横になった。
しばらく、ぼおっと青空を眺めていた。

遠くのお隣のグループのお話が聞こえてくる。
4~5人くらいのグループの中で、男の人が美味しいおかずの作り方を力説している。かれこれ30分くらいその男の人が一人で同じ話を何度も力説していた。おしゃべり好きな人は、やっぱりずっと話しているんだな、そんなことをぼおっと考えながら空を眺めていた。

さあ。
お昼ごはんを食べよう。

今日のお昼ご飯はビリヤニ。
ビリヤニは、インドの炊き込みご飯。
そう、PEANUTSuuで2月に出すことになっているお昼ごはん。

南インドのスパイスを効かせた炊き込みご飯の中には、二宮町らしくピーナッツとミカンが入っている。別添えで、ピーナッツソースが染み込んだ手羽先焼きPEANUTSuuチキン、スパイスピクルス、菜花のスパイス炒めが入ったピクニックBOXだ。

宣伝になりますが、2024年2月10日(土)~12日(月)10:00-14:00、PEANUTSuuにてビリヤニテイクアウトBOXを販売します。題して、「PEANUTSuuビリヤニ ”二宮菜の花BOX”」。
菜の花を見ながらビリヤニ、いかがですか。
みなさまのお越しをお待ちしています。
PEANUTSuu

我ながら、「美味しい!」と心の中で叫びながら完食。
帰るころには、富士山の上に、雲がにょきっとかかっていた。まるで、ちびまる子ちゃんの花輪くんの髪型みたいだなあ、そんなことを思いながらシャッターを切った。

菜の花と富士山を同時に見せたいとき、かなり絞って撮影した。F16くらいまで絞って撮影した。ズマリットは特に柔らかい描写なので、離れた被写体を同時に見せたいときは、F8とかではなく、思い切って絞ることが必要。

PEANUTSuuへ

写真とスパイス料理の空間PEANUTSuuは、JR二宮駅北口から歩いて5分のところにある。

北口駅前に立っているオリーブの木を撮影してPEANUTSuuに向かう。
ズマリットは、開放F1.5で点光源に向かって撮影すると、虹のようなフレアが描かれる。このレンズの最大の特徴でもあるところ。

でも実は、この写真、ちょっと工夫して撮影している。
お気づきの方はいるだろうか、この写真、90度左回転してある。
青空に輝く虹のようにフレアを入れたかったので、オリーブの木の下部分にフレアを入れて撮影した。それを左側に90度1回転してみると、このような虹がかかったオリーブの木になった。
点光源から、円を描いて出現するフレアで、遊びながら撮影した。

てくてく。

駅から5分歩くと、菜の花色のイエローの外壁の建物が見えてくる。
PEANUTSuuだ。

小さな花壇には、菜の花が咲き始めている。

鮮やかなブルーカラーの壁。
晴れた日に輝く二宮の海をイメージして色を選んだ。

ギャラリーはこんな感じ。

もちろん、厨房もある。
チラリ。

厨房は、意外に広い。
通常は、私とスタッフ2名、合計3名でスパイスカレーを調理&盛り付けしている。そして、営業日以外は、スパイス料理の研究をしている。

PEANUTSuuの目の前の通りは一応二宮の銀座、駅前通りなので、人通りはたくさんある。そして、バスがビュンビュンと走っている。

PEANUTSuuのスパイスカレー

この日はスパイスカレー営業日ではなかったけれど、せっかくなので、スパイスカレープレートを作った。

通常、このようなプレートでお客様にご提供している。
メインのカレーはPEANUTSuu Chicken Curry(ピーナッツぅチキンカリー)、ダル(お豆のカレー)、ラエタ(ヨーグルトサラダ)、サブジ(野菜の炒め物)、副菜などがのったプレート、1日30食限定、でご提供している。

PEANUTSuu Chicken Curryは、二宮町の人気の落花生屋さんのピーナッツを隠し味に入ったPEANUTSuu特製カレー。その他ダルやラエタ、サブジなども二宮町や西湘の素材をふんだんに使用している。

10月にOPENして数回営業しているけれど、このPEANUTSuuを目指して全国からお客様が来て下さる。関東圏や近隣県からだけではなく、東北や関西や山陰、九州からも。写真教室の生徒たちや、写真家山本まりこのファンでいて下さる皆様が駆けつけて下さっている。さらには、二宮町の方や、西湘の方、スパイスカレーの噂を聞いてきて下さる方も沢山来てくださっている。おかげさまで予約席は、予約開始から1時間ほどで毎回満席に。感謝、感謝、感謝の日々です。

この「ライカとカレー」を見たという方も、来て下さったら嬉しいな。
もし来てくださったときは、ぜひお声をかけてくださいね。
2月は、2月10日(土)~12(月)でビリヤニテイクアウトをします。
3月は、3月8日(金)~10(日)でOPEN予定です。
ぜひ、お待ちしています。

おわりに

ライカとカレー、初めてのマイライカでの撮影となった今回。
愛する海まち二宮と、そして、自分で作った空間PEANUTSuu、そして、PEANUTSuuのスパイスカレーを撮影した。読んで下さっている皆さまが、楽しんでくれていたら嬉しい。

ライカで撮影すると毎回思うことがある。
撮影しているその時よりも、パソコンでじっくり写真を確認しているときに、その美しさに惚れ惚れする、それが毎回なのだ。

例えば、菜の花の鮮やかなイエローも、パソコンの大きな画面で確認したとき、なんて美しいイエローなんだろう、そう感じた。吾妻山の木々の間にきらめく光も、大きな画面で見たときに、ドキドキした。

何だろう、それは、撮影の余韻のようなものが写っているのを感じるから、なのかも知れない。シャッターを切る瞬間、誰もが興奮するあの瞬間、その時に感じていたあの煌めく思いが、パソコンの大きな写真を見た瞬間にぶわっと蘇る、そんな感じなのだ。少し忘れかけてしまっていたあの時の感動が、画面を見た瞬間に呼び覚まされるというような。言葉にならないような不思議な感情が写っている、と言うか。でもそれは、ライカというカメラで撮った時にしか感じていない特殊な感情でもあるのだ。

これを読んでいる皆さんにも、ぜひ味わっていただきたい、そう思う。

たくさんの場所に旅をし、撮影し、執筆してきたこの「ライカとカレー」。
いつか写真展を開催してみたいなあ、本も出版したいなあ。そんなことをぼおっと考えたりしています。

さあ。
次はどの駅で降りようか。
ライカと一緒に。

■撮影協力
写真とスパイスカレーの空間「PEANUTSuu」
神奈川県中郡二宮町二宮1135-4
PEANUTSuu

 

 

■写真家:山本まりこ
写真家。理工学部建築学科卒業後、設計会社に就職。25歳の春、「でもやっぱり写真が好き」とカメラを持って放浪の旅に出発しそのまま写真家に転身。風通しがいいという意味を持つ「airy(エアリー)」をコンセプトに、空間を意識した写真を撮り続けている。

 

 

関連記事

人気記事