ライカ ELMARIT-R 35mm F2.8 × LUMIX S1II|葛原よしひろ

葛原よしひろ
ライカ ELMARIT-R 35mm F2.8 × LUMIX  S1II|葛原よしひろ

はじめに

今回レビューさせて頂くのは、LEICAのELMARIT-R 35mm F2.8(エルマリート)です。
そして今回のレンズマウントはLEICA Rマウントです。

LEICA Rマウントは、1964年のライカフレックスの登場から2009年のR9生産終了までの約45年間続いたマウントになります。Rマウントは年代ごとの進化に伴い、1カム、2カム、3カム、R-ONLY、ROMの5種類があり、今回使用するのは私の私物の一番旧式となる1カムになります。この辺りの見分け方については私よりオールドマウントに詳しい坂井田プロのレビューを読んで見識を深めてください。

ボディには部分積層センサー搭載のLUMIX S1IIを使用して、最新のカメラにマウントアダプターを介してにはなりますが、50年以上前のレンズを装着した時の使用感や写りをお伝えさせて頂きます。

今回は私の初めての試みとして前半は動画で解説しながら作例を紹介させていただき、後半は韓国の釜山でのスナップとポートレートでレビューさせて頂きますので、最後まで是非ご覧ください。

ELMARIT-R 35mm F2.8の特徴

青い空に飛行機雲を発見したので満開の桜を窓枠構図でシャッターを切りました。

この動画で、お話しさせていただいた横位置と縦位置でのショット。

縦位置にすることで上部の青空を構図に取り入れることが出来たことが分かります。

絞りの違いによるショット

▼F2.8

開放F2.8はボケ感も強く色収差も少し強めに出ています。

▼F8

F8まで絞ると、全体的にシャープになり解像感もあるので、ある意味現在のレンズに近い写りになりました。

▼F22

回析の影響が強く、解像感の低下が顕著に表れます。全体的に少しイエロー寄りに写るのは、レンズに使用されている成分が絞ることで現われたものだと思います。この辺りはレンズの個体差や状態に寄るところが大きく影響するのですが、そういう違いを楽しむのもオールドレンズの楽しみ方だと思います。


この時撮影した、その他のショットもご覧ください。

韓国 釜山ポートレート

ここからは、韓国 釜山へ海外撮影会を行った際、撮影した写真を使用してレビューさせて頂きます。

カラフルな建物が並ぶ甘川文化村は釜山の有名フォトスポットになります。
急勾配の斜面に所狭しと立ち並ぶ建物を現代のレンズと比べるとシャープネスは劣りますが、なかなかの解像感と発色が優しい表現に繋がります。

今回の釜山は、初の海外ポートレート撮影会も兼ねており、スナップ撮影もしながら、ポートレート撮影は現地の民族衣装で撮りました。
ポートレートは絞りF3.5、スナップはF8で撮影したので、この2枚を見比べると、少し位置取りは違うのですが、ポートレートはボケ感が強く、スナップの町並みは手前から奥の建物まで、クッキリ写っていることが分かります。

狭い路地での撮影なので撮影者は交代しながらの撮影になるのですが人通りが少ない場所だったので、ゆっくり撮影することが出来ました。しかし細い路地なのでレフ版を使えず、モデルまで距離があったので、GODOXのクリップオンストロボV350を直接当てました。光としては硬いのですが、このレンズの開放絞りF2.8の程よく柔らかな描写により、硬さが和らいでくれました。

背景に急斜面の建物を入れて撮れる階段があったのでバックショットで撮影。撮影していて足元のポップな世界に吸い込まれるような雰囲気が好みでした。

この2枚ではスナップを絞りF5.6、ポートレートはF2.8で撮影しています。先ほどの比較と同様にボケ表現の違いが分かっていただけるのと同時に、先ほどのスナップでのF5.6とこちらのF8でもボケ感と解像感共に、急激に高くなるのも面白く感じました。

ここまで撮影してみて、このレンズの優しい雰囲気はポートレートに向いていると思いました。色味に関しては、好みの分かれるところではありますが、AWB使用時に全体的に通常より少しイエロー気味になるので人の肌も黄色が少し強く出る印象でした。

韓国 釜山スナップ

ホテルから近い海雲台の街を夜スナップしてみました。
この写真は賑やかな海辺の商店街で開放F2.8を使用してオールドレンズらしい柔らかさや滲みのあるボケ感と、シャッタースピード0.8秒のスローシャッターを使用して行きかう人々を被写体ブレさせて、温かみと賑わいのある雰囲気を表現してみました。

雨上がりだったこともあり、水たまりを利用して、ネオンや街灯を活かした街リフレクションを撮影してみました。リフレクションをしっかり写すために、絞りをF5.6に設定してシャッタースピードを先程と同じ0.8秒スローシャッターに設定して撮影しました。意外にもF5.6の割に光芒が出てくれるのが嬉しい特徴です。

先ほどまでの場所から少し離れた海に流れ込む川に高層ビル群が映り込む橋の上から、しっかりビル群を解像させたかったのですが、このレンズの回析が強いことも分かっているので絞りF13.5を選び、川に映り込むビルの明かりもしっかり表現するために、シャッタースピード2.5秒に設定して撮影しました。

ここまで、フォーカスについて触れてきませんでしたが、使用しているボディLUMIX S1IIのファインダーが凄く見えやすいので、今回撮影した条件、昼間にF5.6~F8まで絞って撮影するスナップ、昼間に開放F2.8~F3.5で撮影するポートレート、開放F2.8~F13.5での街スナップ、全ての条件下でピント合わせが難しく感じることはありませんでした。

とは言え、今回の昼と夜のスナップが建物中心の風景的な撮影だったことや、ポートレートも撮影慣れしているモデルという事もあり、撮影時にあまり動かないことなど撮影しやすい条件での撮影だったこともあります。一つ条件が違うのは、夜スナップはスローシャッターを多用したこともありフォーカスをマニュアルで合わせる事に加え、合わせたフォーカスを維持する必要もある状況だったことです。

実は、先程述べたファインダーの見えやすさだけで無く、ここでもLUMIX S1IIの性能に助けられています。それは強力な手ブレ補正機能です。実際、この写真は手持ちでどこにも体や手すらも固定することなく、普通の体勢で2.5秒のスローシャッターで撮影しています。当然、このレンズには手ブレ補正機能は搭載されておらず、ボディ側の手ブレ補正機能だけが効いている状態という事になります。余談ではありますが、手ブレ補正付きの35mmレンズを装着した場合、最高7秒まで手持ち撮影したことがあり、あまり撮影経験が豊富でない撮影者でも少し教えると1秒くらいのスローシャッターが容易に切れるようになるのは本当に凄いと思います。

撮影終わりに、お腹が空いたので晩御飯にしました。開放F2.8、最短撮影可能距離付近で撮影、さすがに現代のレンズ程には寄れませんが、十分テーブルフォトでも使えます。近接撮影時の開放F2.8のボケ感も前後ともに自然な良い感じのボケだと思います。

翌日は朝から海雲台海岸の近くの、最近人気の可愛い乗り物がある場所へスナップ撮影に行きました。
アンティークな雰囲気の電車とその上を走る小さくてカラフルなモノレールは観光客に人気のようで朝から多くの人が並んでいたのですが、線路脇をずっと歩けるようになっているので、撮影が目的の我々には嬉しいシュチュエーションです。


海を背景に撮影できる階段があったので、そこから手持ちでモノレールを動画撮影してみました。
海に向かって真っすぐ撮影すると、すぐ目の前をモノレールが通り過ぎていきます。

何処にもカメラも撮影者の身体も預けず純然たる手持ち動画撮影ですが、S1IIのブレの少なさは本当に圧倒的な性能だと思います。動画撮影時においてもレンズ性能は静止画と変わらず、現代のレンズには及びませんが水平線がさほど歪まず発色も良く、程よく古いレンズの雰囲気も残るので楽しむことが出来ます。


続いて同じ場所から斜めを向くと、海雲台の街と海を背景にモノレールが離れていったり、近づいてくる様子が撮影できるので、そちらの構図でも動画撮影してみました。

手持ち動画の撮影としては、先程以上に難しい体勢での撮影なのですが、ブレは凄く少なく撮影できました。50年以上前のレンズで手持ち動画撮影できるなんて、ロマンを感じてしまいます。

この構図が気に入ったので静止画でも撮影してみたのですが、動画の構図はモノレールを強く表現する構図のため、そのままでは動きがない分、この場所の高さの表現が足りないので、空を少なくして、海と下の線路と遠くの街を入れた風景的な構図にして撮影しました。

モノレールの側道から、そのまま海側に降りられる道があったので、海沿いに出てみると、可愛いカエルの置物がある映えスポットでした。少しかすんでいましたが、快晴の青い海はとても気持ちの良い風が吹いていて、絶好のフォトスポットでした。

来るときはタクシーで来たのですが、この場所から私のホテルが見える事に気づき、海岸沿いを真っすぐ歩けば良さそうなので帰りは海沿いをスナップしながら戻ることにしました。

モノレールの背景に見えていた高層ビルの下を通ったので見上げながらのショット。
絞りをF11まで絞って撮影してみました。それなりに解像感があり、ビルの線もシャープに見えますが、拡大するとビル上部に行くほど甘くなっています。奥のビルに関しては解像感そのものが低く感じます。この日の状況が霞んでいた事も関係すると思いますがF11まで絞っても、こういう解像感とシャープネスを求めるような撮影には現代のレンズを使用する方がよさそうであります。

海雲台ビーチでのショット、長い砂浜の先に高層ビル群がありビジネス街の目の前がビーチなんて海雲台は海好きには堪らない街だと思います。この写真も絞りF11なのですが、遠景の中央部に関しては解像感がありますが周辺部に向けて解像感が失われていくことが分かります。

それでも、このレンズの描く優しい雰囲気は海雲台ビーチの魅力を伝えるのには良いレンズだと思います。

さいごに

このレンズは癖玉だと思います。それは絞りだけでなく被写体との距離での解像感の変化が大きく、ボケ表現も絞りと距離で大きく変化します。それに伴い使用する被写体も選ぶ必要が出てきたりします。それでも、このレンズの描写には素晴らしい表現力があり、特にポートレートやスナップにおいて優しい雰囲気で撮影したい場合に、このレンズを使いたくなります。

癖玉と言いましたが、決してこちらの意図を無視するような事はなく、撮影時にレンズと対話しながら撮影すると、それに一生懸命答えてくれます。依頼された仕事の場で使うビジネスパートナーではなく、休日を共に過ごせる古い友人のような感覚で付き合っていくと、このレンズならではの描写が自分の表現を少し後押ししてくれる印象です。興味を持って頂いた方に一言。古いレンズなので、1本ずつ少し違う表情があったりすると思いますが、個体差では無く個性だと思って長く語り合える一本に出合って欲しいです。

 

 

■写真家:葛原よしひろ
ジャンルに捉われず何でも撮影するマルチプレイヤースタイルの写真家。カメラメーカー等の写真セミナー講師としても全国的に活動している。大阪芸術大学写真学科卒/滋賀県高島市公認フォトアドバイザー/JPS(日本写真家協会)正会員

 

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