フィルターで写真が激変!キットレンズ撮影でもここまで変わる「H&Y 角型フィルター K-Series」と「ケンコーレインボーハロ」

はじめに
今回はカメラとセットで販売されているキットレンズで、筆者おすすめの少し特殊なフィルターを使用して、どのくらい撮影画像を変化させることができるかチャレンジしてみました。
最初に購入したキットレンズを活用しているユーザーは非常に多いと思いますが、撮影を重ねてくるとキットレンズでは少し物足りなく感じる事もあるのではないでしょうか。実際にいろいろな撮影をしていくとキットレンズだけでは対応できないシーンなどもあって、望遠レンズや広角レンズ、単焦点レンズなどのレンズの追加購入にいたることがほとんどですが、せっかくなので筆者が気に入っているフィルターでキットレンズがもっと活用できる方法を紹介したいと思います。
着脱が簡単で使いやすいフィルターシステム H&Y「角型フィルター K-Series」

今回おすすめする一つ目のフィルターは、「H&Y」社の「KH3-B 100mm Kシリーズ フィルターホルダー MarkIII + ナチュラルCPLセット」です。この専用ホルダーとCPLフィルターのセットに角形のハーフNDフィルター「Soft GND8 (0.9)」を追加すれば、ポートレートや風景撮影などマルチに使用ができるセットになり、角型フィルターを初めて使用される方におすすめセットになります。角形フィルターシステムは少々高価なものになりますが、使いこなすことができれば、キットレンズでの撮影でも画像を大きく変えることができます。

角形フィルターシステムはいろいろなメーカーから発売されていますが、「H&Y」の角形フィルターシステムは「マグネット式ワンタッチ着脱」や「スライド式ロック機構」が採用されており、マグネット式のためホルダーをワンタッチで装着でき、フィルターの着脱がより簡単なのが大きな特徴です。
またドロップインCPLフィルターも簡単に着脱が可能な事と、フィルターの調整も大型の回転ダイヤルのおかげでPL効果の調整も非常にしやすい構造になっています。初めて使用するユーザーでも簡単に扱うことができるフィルターシステムです。


PLフィルターの効果はご存知の方も多いと思いますが、反射光をコントロールすることにより、鮮やかな発色やコントラストが得られるフィルターです。一般的には水面やガラスなどの表面反射を抑えたり、青空をより鮮やかにする効果を得られるフィルターなので、風景写真を撮る方は使用頻度の高いフィルターです。



PLフィルターを持っている方や使っている方は多くいらっしゃると思いますが、ハーフNDフィルターを使っている方はまだまだ少ないと思います。ハーフNDフィルターは、画面内の露出差が大きいシーンで明暗差を少なくして白トビ・黒ツブレを抑える効果があります。主に日の出や日の入り前後の風景の輝度差を抑える目的で使用する事が多いのですが、筆者がよく利用するシーンでは、水面のリフレクションと空の明るさをそろえたりする場合などに使用します。
ハーフNDフィルターにはいろいろな種類や濃度があります。撮影シーンの状況によって効果の違うものを使うのがベストですが、最初の一枚としてグラデーション効果がニュートラルなソフトタイプの「Soft GND8」がおすすめです。

■撮影環境:シャッター速度1/500 絞りF5.6 ISO800 焦点距離27mm(35mm換算)

■撮影環境:シャッター速度1/320 絞りF5.6 ISO800 焦点距離27mm(35mm換算)
※H&Y 100x150mm Kシリーズ GNDフィルター「SOFT GND8」使用
GNDフィルター「SOFT GND8」を空の明るい部分にあてて水面と明暗差を調整する事で、空の明るさとリフレクション部分の明るさを近づけさせることができました。GNDフィルター「SOFT GND8」は、立幅が150mmあるので、GNDフィルター効果をあてやすい位置に上下に調整できます。撮影する構図に合わせて自由に調整できるのが角形GNDフィルターの大きな特徴です。
水のある風景などに使いたいPLフィルターと角形GNDフィルター

■撮影環境:シャッター速度15秒 絞りF16 ISO100 焦点距離28mm(35mm換算)
※H&Y ドロップインナチュラルCPL + 100x150mm Kシリーズ GNDフィルター「SOFT GND8」使用
ここからはAPS-C機「ソニーα6700 高倍率ズームキット」で、先に紹介したH&Yフィルターシステムを使用して撮影した作例を紹介します。

上の写真はソニーα6700とキットレンズ(E 18-135mm F3.5-5.6 OSS)に、H&Yの「専用ホルダー」+「PLフィルター」+ 角形ハーフGNDフィルター「Soft GND8」を装着した状態です。レンズのフィルター径に合わせて、専用のアダプターリングで調整して装着します。このフィルターシステムは大口径のレンズにも対応している為、キットレンズに装着するとやや大げさなフロントヘビーの状態になってしまいますが、いろいろなレンズに幅広く対応できるのが魅力のポイントです。
この状態で撮影した写真が下記の東京駅の写真になります。PLフィルターで水たまりのリフレクションの調整をし、角形ハーフGNDフィルター「Soft GND8」でリフレクション部分と実像との明暗差を調整しています。

■撮影環境:シャッター速度1/2 絞りF16 ISO100 焦点距離28mm(35mm換算)
※H&Y ドロップインナチュラルCPL + 100x150mm Kシリーズ GNDフィルター「SOFT GND8」使用
より印象的な写真になるように、日没後にもう一度撮影をしてみました。思っていたよりも雨上がりの水たまりの乾きが早く、まったく同じ場所からは撮影できませんでしたが、水たまりを探してその中にミニ三脚を立てて撮影してみました。特にこの様な撮影パターンのローアングルでの撮影には、大きな三脚は必要なく高さの低いミニ三脚の利用が便利です。今回の撮影では、Leofotoのミニ三脚「MT-03+LH-25」を使用してローアングル撮影をしています。

■撮影環境:シャッター速度13秒 絞りF11 ISO100 焦点距離28mm(35mm換算)
※H&Y ドロップインナチュラルCPL + 100x150mm Kシリーズ GNDフィルター「SOFT GND8」使用

■撮影環境:シャッター速度1/15 絞りF16 ISO100 焦点距離27mm(35mm換算)
※H&Y ドロップインナチュラルCPL + 100x150mm Kシリーズ GNDフィルター「SOFT GND8」使用
水のある風景だけでなく、空が大きく入る風景などの明暗差を整えるのにとても有効な角形GNDフィルターやCPLフィルターは、風景写真を撮る際に持っておくと目で見えている世界と少し違う世界の撮影が可能になります。
スローシャッターで不思議な世界を演出する高濃度NDフィルターの世界

■撮影環境:シャッター速度15秒 絞りF16 ISO100 焦点距離27mm(35mm換算)
※H&Y ドロップインCPL/ND1000 使用
次に紹介するのは、高濃度のNDフィルター「ND1000」です。「ND1000」というと光の透過率が1/1000になり、10絞り分減光する事が可能なフィルターです。大きく減光する事が可能なフィルターなので、日中の晴天でもスローシャッターが可能になります。普段、お店などでよく目にするNDフィルターはND8、ND16、ND32などが多いですが、今回は高濃度のNDフィルターを使用する事で目に見えている日中の風景を少し不思議な感じに撮影します。


今回使用する高濃度NDフィルターは、先に紹介したH&Yシステムのラインナップからセレクトした「100mm K-Series ドロップイン CPL/ND 1000フィルター」です。このフィルターは、CPLフィルターとNDの効果が一つになったフィルターで、専用ホルダーを使用したドロップイン方式なので素早く着脱が可能です。
下の2枚の写真は、通常撮影と高濃度NDフィルター1000を使用した表現の違いです。高濃度NDフィルター1000を使用することにより、日中でもかなりのスローシャッターで撮影する事が可能になり、動いている被写体を大きくブラして撮影する事が可能になります。実際にゆっくり動いている観覧車を高速回転しているかの様に撮影することも可能になります。

■撮影環境:シャッター速度1/50秒 絞りF16 ISO100 焦点距離90mm(35mm換算)

■撮影環境:シャッター速度15秒 絞りF13 ISO100 焦点距離88mm(35mm換算)
※H&Y ドロップインCPL/ND1000 使用
先の2枚は少し極端なイメージで撮影していますが、実際には日中の水辺の風景などが、とても効果的な使用用途になります。有名な撮影スポットでも撮影時間によっては、平凡的な写真になってしまう事が多々あります。下の写真も茨城県大洗の「大洗磯前神社」の海の鳥居で有名な撮影スポットで、もっとも人気のある撮影時間帯は日の出前後の時間になりますが、今回の撮影時間はお昼前の快晴で穏やかな波の風景です。こんな時に活躍するのが高濃度NDフィルターになります。

■撮影環境:シャッター速度1/200秒 絞りF16 ISO200 焦点距離27mm(35mm換算)
NDフィルターを使用しない場合、ISO感度を下げて絞りを絞っても明るい日中ではシャッター速度をあまり下げることができません。よって目で見たままの風景を写すことになり、やや平凡な普通の写真になってしまいます。
そこで、高濃度NDフィルター1000を使用することで大きく減光して長秒露光を可能にし、ここでは海の表情を大きく変化させます。今回は高濃度NDフィルターに合わせて、追加で角形ハーフGNDフィルター「Soft GND16 (1.2)」を重ねて使用し、空の表情にも少し変化を加えてみました。
長秒露光をすることで、海の表情は大きく変化して「静寂」や「荘厳」な雰囲気さえ感じることができる作風に仕上がりました。

■撮影環境:シャッター速度20秒 絞りF16 ISO100 焦点距離27mm(35mm換算)
※H&Y ドロップインCPL/ND1000 + 100x150mm Kシリーズ GNDフィルターSOFT GND16使用
ここで高濃度NDフィルターを使った少しお遊び的な撮り方を紹介します。もちろん夜の撮影であれば高濃度NDフィルターを使う必要がない撮り方ですが、日中の長秒露光ならではの不思議感が漂う写真になります。
下の写真は、高濃度NDフィルターを使用して長秒露光5秒で三脚・セルフタイマーで撮影した写真です。セルフタイマーを利用して自らがカメラの前に立ちモデルになり、5秒間露光しているうちの2秒程度をじっと動かず立ち、その後シャッターが閉じるまでの間に素早く構図内からフェードアウトする事により、風景に溶け込んだ半透明の自撮り撮影をする事ができます。

■撮影環境:シャッター速度5秒 絞りF10 ISO100 焦点距離27mm(35mm換算)
※H&Y ドロップインCPL/ND1000 + 100x150mm Kシリーズ GNDフィルターSOFT GND16使用
高濃度NDフィルターを使用することにより、日中でもスローシャッターが可能になり目で見た風景と違った表現が可能になります。もちろん高濃度NDフィルターを使いこなすには長秒露光になる為しっかりとした三脚が必須になりますが、いつもの風景を同じレンズを使っても違った風景にしてくれる効果が高いフィルターになります。
特に水辺の風景などの撮影が多い方には、先に紹介したPLフィルターや角形フィルターと合わせて撮影することにより、今までと違ったイメージで撮影できるのでおすすめです。
幻想的な世界を表現するフィルター ケンコー「レインボーハロ」

■撮影環境:シャッター速度1/60秒 絞りF4.5 ISO800 焦点距離52mm(35mm換算)
※ケンコー「 レインボーハロ」使用
次に紹介するのが、かなり特徴のある描写を表現するケンコーの「レインボーハロ」です。このフィルターは、「グルグルの渦巻き型のボケ効果」と「光のリング効果」を発生させる特殊なフィルターです。肉眼で見ている世界とは、まったく異なる幻想的な表現をしてくれるとてもユニークなフィルターになっています。2024年の12月に発売されましたが、人気のフィルターになっており2025年4月現在もなかなか入手できない状態が続いています。


この「レインボーハロ」は、本当に被写体に向けてファインダーを覗いてみないとどのような効果が出るのかがわからないフィルターで、被写体の周りの色合いや光源の影響を受けて様々な効果が現れます。またレンズの焦点距離や絞りの値によっても効果の影響度合いが変化するので、一つの被写体を撮影するにしても、ちょっとした角度の違いでも効果が変わるのでいろいろなパターンで撮影する事が可能です。逆に言えば、同じように写真を撮ることが難しいフィルターと言えます。

■撮影環境:シャッター速度1/800秒 絞りF4.5 ISO100 焦点距離51mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用

■撮影環境:シャッター速度1/500秒 絞りF5.6 ISO3200 焦点距離53mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用

■撮影環境:シャッター速度1/160秒 絞りF3.5 ISO3200 焦点距離27mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用
また使用する焦点距離によって、「レインボーハロ」の効果も大きく変わります。フィルターの中心部は、効果が出にくい構造になっている為、焦点距離を望遠で使うと全体的にレインボーハロ特有の効果が弱い表現になり、逆に広角側で使用すると周辺により強い効果がでる構造になっています。
ケンコー「レインボーハロ」で花を撮る

■撮影環境:シャッター速度1/1000秒 絞りF5.6 ISO200 焦点距離91mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用
「レインボーハロ」の「グルグルの渦巻き型のボケ効果」はお花撮影にかなりマッチしたフィルターです。撮影の際には望遠側を使用することで、周辺を柔らかくボカす効果が発生し、より中心部を印象的に表現することが可能になります。
メインの被写体と背景の色合いによって、様々表現が可能になる「レインボーハロ」。同色系でまとめて撮影すれば、派手な効果は抑えられソフトな周辺ボケを演出できます。またメイン被写体と背景になる色合いが異なれば、メイン被写体の色を背景に乗せたリングを発生させたりすることが可能になり、様々な表現が可能になるとてもユニークなフィルターです。
今回は、SONY α6700高倍率ズームキット(E 18-135mm F3.5-5.6 OSS)を使用していろいろなシーンで撮影をしてみましたが、お花の撮影では焦点距離100mm前後(35mm換算)で撮影した場合が一番自分の好みにあった効果でした。この効果の好みはユーザーによって異なると思うので、いろいろな焦点距離で撮影を試してみてほしいフィルターです。

■撮影環境:シャッター速度1/320秒 絞りF5.6 ISO200 焦点距離165mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用

■撮影環境:シャッター速度1/3200秒 絞りF5.6 ISO800 焦点距離103mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用

■撮影環境:シャッター速度1/500秒 絞りF5.6 ISO100 焦点距離90mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用

■撮影環境:シャッター速度1/500秒 絞りF5.6 ISO100 焦点距離174mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用
ケンコー「レインボーハロ」でストリートスナップ

■撮影環境:シャッター速度1/500秒 絞りF4 ISO400 焦点距離33mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用
次に「レインボーハロ」を装着したSONY α6700高倍率ズームキット(E 18-135mm F3.5-5.6 OSS)で、ストリートスナップを楽しんでみました。花の撮影よりもやや広角側で撮影したものが多くなりますので、先ほどの花の写真のフィルター効果とは少し違った印象になるかもしれません。
通常のスナップ撮影であれば、あまり気にしなかった風景や被写体も「レインボーハロ」を通してみる世界は別世界に見えるので、いつもの場所がまったく別の風景に見えとても新鮮にスナップ撮影を楽しむ事ができました。非常に楽しめるフィルターであるのは間違いないのですが、どのような効果を表現するのが最適なのか判断が難しいフィルターでもあります。

■撮影環境:シャッター速度1/12500秒 絞りF3.5 ISO400 焦点距離27mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用

■撮影環境:シャッター速度1/200秒 絞りF5.6 ISO400 焦点距離64mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用

■撮影環境:シャッター速度1/50秒 絞りF5.6 ISO400 焦点距離63mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用

■撮影環境:シャッター速度1/30秒 絞りF5.6 ISO400 焦点距離75mm(35mm換算)
※ケンコー「レインボーハロ」使用
まとめ
風景撮影などに有効なH&Yのフィルターシステムと、花やスナップ撮影などの撮影に面白い効果を発揮するケンコーの「レインボーハロ」の2点を紹介しました。今回の撮影に使ったレンズは、カメラ本体と一緒に販売されている高倍率のキットレンズを使用して撮影しています。撮影に凝ってくるといろいろなレンズが欲しくなってきますが、フィルターを使うことで標準レンズ・キットレンズでも撮れるイメージを大きく変えることができます。少し撮影にマンネリ化を感じている人は、特殊なフィルターを試して撮影に変化をつけることも気分転換にいいかもしれません。
■写真家:坂井田富三
写真小売業界で27年勤務したのち独立しフリーランスカメラマンとして活動中。撮影ジャンルは、スポーツ・モータースポーツ・ネイチャー・ペット・動物・風景写真を中心に撮影。第48回キヤノンフォトコンテスト スポーツ/モータースポーツ部門で大賞を受賞。
・公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員
・EIZO認定ColorEdgeアンバサダー
・ソニーαアカデミー講師